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 マージェリーが、私の中でだんだん感じられなくなってきている。それに気付いたのは、いつだっただろうか。もしかしたら、私とマージェリーが同化してきているということ?

そうなのだとしたら、マージェリーよりも前世の記憶を持つ私が表に強く出たまま、ということになるけど、マージェリーはそれでもいいの? と…少しだけ不安に思う。

 でも、正直なところを言えば、マージェリーがこの場所で馴染むのはかなり大変だと思う。

前世の記憶のある私は、日本という国に生まれ育ったごくごく平凡な庶民だということは分かってる。そんな私でも、修道院のような特殊な環境下で生活するのは、普通は大変だと思う。ただ私が前世でクリスチャンだったという記憶も持ち合わせていたから、まだ神の奉仕者として生きるということに対して、あまり苦にならないところがあっただけ。もしそうでなかったら、慣れるまで相当苦労したと思う。

ちなみにだけど、この世界に生きているからなのか前世で信じていた神様への信仰は今どうしてなのか、消えてしまってるの。不思議ね。

マージェリーが神様を信じていたかは、正直言えば分からないの。でも、きっと信じてはいなかったと思える。前世程ではないけれど、この世界での宗教も人それぞれという感じだから。

敬虔な信者もいれば、全く信じようとしない者もいる。だから、マージェリーが神様を信じていないのではないか? という予想がつくだけで、実際にどうなのかは記憶の中に神様に言及するようなものがないから、分からない。

 そんなことをぼんやり考えていた時にマージェリーがどんどん感じられなくなっていることに気付いて、ただ私の中で眠っているのではなかったの? と思ったところで、もしかしたらマージェリーと私が一つになってきてたのかもしれないって思った。

それこそ、二重人格だったり多重人格だったりという状態の人が、それぞれの人格が主格となる人物と統合されていくのと同じなのかしら? なんて思ったんだけど…私は別に主人格じゃないわよ?

もしかしたら、私が強く出ている方がマージェリーにとっては都合がいいのかもしれない。この場所で生きて生活していくには。


 ⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑


 私と言う人間は、間違いなく前世で子供に関わる仕事をしていたと思っている。確信はある。でも、記憶には実は残っていない。だから、ある意味当時学んだはずの知識も抜けている。手探りで孤児院の子供達に接している状態なの。だから、本気で思っている。


『どうして肝心な記憶がないのよー!』


叫びたいくらいに思っているわけだけど、仕方ない。そう言う意味では、諦めが肝心だって分かってるし、切り替えていきましょう!

 そうして私は毎日子供達と一緒に過ごしながら、親を亡くしたり、捨てられたりといった境遇の子供達に寄り添い続けた。


 この頃からだろうか、私よりも二歳年下の少年と言うよりは、青年と言うほうが正しい気もするけど、孤児院に来たばかりの頃に男の子達と追いかけっこをして、真っ先に私が追いかけた彼…デリックに懐かれた、と私が感じるようになった頃だった。

気付けばいつもデリックが私の隣にいて、私の奉仕を手伝うようになっていた。勿論、他の子供達だって手伝ってはくれていた。女の子達なんて私の隣を競い合うように手伝うのを楽しんでくれている様子もある。

でも、彼女達よりも先に気付けば私の横にいる、そんなことが増えていくことに気付くのは時間がかからなかった。何より、男の子でないと出来ない力仕事を一手に担ってくれることが多かったから、女の子達からの少しの文句はあっても、否定的な意見はあまり出ていない。それもあって、余計にデリックは私の隣に並ぶことをやめようとはしなかった。


(どうしてデリックは私のそばにいるのかしら?)


なんて思うだけで、私自身は修道院に入った時点で…ううん、正確に言うなら、この世界に転生したかもと気付いた時からだと思うけど、恋愛なんてものは頭の中から抜け落ちていることにすら気付く暇もなかった。


 ⁑ ⁑ ⁑ ⁑ ⁑


「そうだったわ。孤児院の子供達一人一人に自分の持ち物と分かるように、刺繍で作ったワッペンを作ろうと思ってたのよ。とくに小さな子供達って文字が読めないものね」


 今私は年長の女の子達と一緒に刺繍をしているんだけど、隣には現在進行形でデリックも一緒にいる。

小さな女の子達の好きなモチーフは女の子達に聞けるからいいんだけど、男の子に関して言うとちょっと分からなくて、デリックに頼ったということもある。

本当ならデリックには男の子達の好きな物を教えてもらって、刺繍の時間にはいつものように剣術を学びに行ってもらう予定だったけど、今日はたまたま剣術を教えてくれている聖騎士の先生が、どうしても外せない用が出来てしまい、代理の先生もいないから、という事情もあって、男の子達は勉強の時間に当てられてるんだけど…デリックだけは私の相談役という恰好で女の子達と一緒にいる。


(まさか、好きな子でもいるのかしら? でなきゃ、女の子しかいない場所に一人男の子が混ざるのは勇気がいると思うのよね…。ま、それはどうでもいいか、がんばれ青少年!)


 て具合に私はスルーしておしまい。後にデリックにこの頃のことでは色々と苦情を訴えられることになるのだけど、『そうですか』で私が終わらせたことを、ここで告白しておこうかしら。

 この孤児院には子供が十五人。

文字の読み書きを学び始める年齢としては六歳から。私が前世で学校に入学した年齢と同じ。この孤児院だとハリーがちょうど六歳。ハリーから上の子供達は皆学んでいることになる。

こちらの世界では学校に通えるのは貴族だけだから、平民で学ぶ機会があるのは基本的に商人の子供や地方の役人になるような立場の子供くらい。

そうでなければ、本人が興味を持って文字を学ぼうとしない限りは、生涯文字を知らずに終わることもある。

そういう意味では、この孤児院は文字の読み書きも簡単な計算も学ぶ機会がある分、将来的に孤児院を出て生きていくことを考えると恵まれている方じゃないか、と思う。

 それで、まだ文字を読めない子のためのワッペンだけど、トビーはトンボ、エイミーはリボン、ヘレンは花、ハリーは魚(まだ文字を習い始めたところだったから)。刺繍をするためにシンプルだけど可愛い感じのものがいいだろうと考えていたら、ポリー、オーレリア、ヴィヴィアンの三人が私のところへタイミング良くやってきたから、三人も一緒に考えて欲しいと頼んでみたところ…他の子供達の分も作るほうがいいと言われてしまい、結局全員の分を決めることになったわけだけど…。

さすがに、好みがハッキリしてくる年齢の子供達に嫌いだったり苦手だったりするものは避けた方がいいから好きな物を知りたいと私が彼女達に伝えると、彼女達はあっさりと他の子供達の好きな物を教えてくれた。ただし、男の子達のことは分からない、ということだった。そこでデリックに助けを求めることになったんだけど…私の隣を常にキープしながら、他の男の子達の好きな物を教えてくれて…ついでに、ワッペン作りの時にも付き合ってくれた、という恰好だった。

お読みいただきありがとうございます(*^^)


年下男子がアップし始めました。でも主人公はほぼほぼスルーし続けます。がんばれ、デリック。

作者的にはスルーし続けるマージェリーさんが大好きです(笑)


子供達だけで15人分の名前があるので、登場人物一覧があるほうが親切なのだろうか?と思うことがあります。

でも正確には自分が忘れないための備忘録の意味しかない事実もあるので、PC内で作って終わりかもですが。


ブックマーク登録と評価、いいねをありがとうございます!

評価が増えてると一瞬ですが何故増えてるのか悩む癖はどうしようもないな、と思う今日この頃です。

小心者のせいか嬉しいの前に一瞬考えるのは本当どうなのか、と。

嬉しいより先に悩むってのは、きっとずっと変わりそうもないので、色々自分でも困ってたりします…(;'∀')

とにもかくにも、いつも読んでいただいて嬉しいです。ありがとうございます(*^^)

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