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なろうラジオ応募作品(1000文字以内短編)

量子力学的双子

作者: 江古左だり

『科学的な部分』はふわ〜っとお読みください。

 アマラとカミラは『量子力学的双子』と呼ばれていた。


 イングランド南部に住む18歳。縮れた赤毛に似合のそばかす。白くて細い手足だった。


 この双子、どんなに離れていても互いの状態がわかる。


 アマラが「カミラは今自転車に乗っているわ」と言えば確かに自転車に乗っているし。カミラが「アマラの服にアイスがついちゃったの」と言えば服のアイスを拭いているのだった。


 それがあたかも量子ー1つの量子を2つに分けたとき、どんなに互いが離れていても互いの状態に気づくーのようだから『量子力学的双子』と呼ばれていた。


 ある日アマラが消えた。

 

 カミラにアマラのことを尋ねると「元気にしているわ」と言った。


 今眠っている、笑っている、食事を摂っていると何でも答えてくれる。しかし居場所を尋ねると首を振るばかりだった。


「私がわかるのは、アマラの状態であって居場所ではないの」


 次にカミラが消えた。船上パーティの最中。忽然と。


 騒然とする中、カミラが無事を知らせてきた。アメリカ大統領の携帯にである。


 「アマラと共にいるわ。心配しないように」と言って電話を切った。


 双子の行方はようとして知れない。


 誰かが『量子力学的双子チャレンジ』という悪ふざけを始めた。

 量子は人間が観測をすると波の状態から己を粒の状態に変化させる。『観測すれば双子が撮れるのでは』というジョークだ。


『双子が写りますように』と強く願いながら適当な場所をカメラで撮る。


 すると。本当にカミラやアマラがカメラに写る。

 シャッターを切るまでは何も無いが、写真に縮れた赤毛が写った。


 そばかすは消えて透けるほど白い手足。悪戯をする子供のような笑顔。騒然となった。


 ある者はパリで『モナ•リザ』の隣に。ある者はリオデジャネイロのベンチに座る姿を。南極で白熊の上に股がる写真すら撮れた。


 緑のシャツにオフホワイトのスカート。同色のパンプス。手を振っている。


 世界中の人間がシャッターを切った。写る時もあれば写らない時もある。


 誰かが言った。


『双子は『量子もつれ』を起こしているのではないか』


 量子は観測しなければ居場所を確定しない。双子は常にあらゆる場所にあらゆる状態でいる。カメラのシャッターを切るときだけー観測しようとするときだけー居場所が確定される。つまり姿を現すのではないか。


 誰も本当のことはわからない。わかるのは2人が写真にうつり続けることだけだ。


『量子力学的双子』は今日もどこかで観測されている。

「映る」動画やリアルタイムで他の物に反射して現れることに対して使う。


「写る」はカメラなどで撮影された静止画などに対して使う。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど……これが量子力学。 完全に理解した(わかってない この作品が実は一番量子力学しているのではと、感想やその返信を読ませていただいて思いました。 量子力学は難しい(やはりわかってない…
[良い点] わたしも量子力学のなんたるかを正確には把握していないのですが、 これはあらましをふわっと説明していて、それでいて面白い読み物になっていると思います。 写真に写るのが心霊的なものではなく量子…
[一言] シュレディンガーの双子( ˘ω˘ )
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