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3. ゴブリンはRPGで序盤に倒される

 スライムを連れて、小さな洞窟に戻ってきた。

 そして、ドカっと腰を下ろす。


 剣と盾を地面に置いた。

 実家からくすねてきたものだ。


 剣も盾も重かった。

 ルッツはろくに体を鍛えてこなかったから、武具を持って歩くだけで大変だった。


 装飾が施された武具はどれも高そうに見える。

 でも、俺は使い切れていない。

 宝の持ち腐れだ。

 正直、売ってしまったほうが遥かに有用な気がする。


 鎧を脱ぐと、だいぶ軽くなった。

 少し休憩しながら、俺は自分のステータスを確認してみる。


「ステータス・オープン!」


 ……何も表示されない。


 ステータスなんてものはこの世界にはない。

 俺はルッツの記憶で知っていた。


 でも、異世界っていったらステータスだろ?

 レベルとかスキルとか……それが異世界の醍醐味ってやつなのに。

 神様はわかってねーな、ほんと。


 すごいスキルが付与されていて「なんだこのチートスキルは!?」って驚きたかった。


「あーあ、ちょっとがっかりだぜ」


 気を取り直してスライムたちをみる。


 四匹の中でアインスがリーダー的存在だ。

 体もアインスが一番大きく、年長者感がある。


 一番小柄なのがフィーアだ。

 フィーアは大人しく、俺の近くにいることが多い。

 そして人懐っこい。


 ツヴァイは孤高の感じがある。

 もしツヴァイが人間だったら寡黙な男だろう。


 そして、ドライはやんちゃ坊主だ。


 目を離すとどこかに消えていることが多い。

 洞窟に来るまでに、何回もドライを見失って大変だった。

 ゴブリンに見つかったらどうするんだよ、と俺はヒヤヒヤしていた。


 ドライはしっかり見張っておく必要がありそうだ。

 今は俺の持っていた剣と戯れている。

 新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。

 勝手にどこかに消えてしまうよりも、剣で遊んでもらった方が楽だ。


 スライムと言っても個体ごとに性格が全然違う。

 それは人間と同じだ。


 スライムたちを見ていると、癒やされる。

 そして、眠くなってきた。

 今日はだいぶ疲れたな。

 一眠りしよう。


◇ ◇ ◇


 あー、よく眠った。

 目を覚ました俺は伸びをする。

 洞窟で眠っていたから肩が痛い。

 貴族の出のルッツはこんな硬いところで眠り慣れてないんだろうな。


 周りを見渡すと、スライムたちがいる。

 ドライは剣と戯れるのが飽きたのか、壁のところでゆっくりしていた。

 もうおもちゃには飽きたのか?

 ところで――、


「剣はどこだ?」


 周りを探しても剣がない。

 おかしい。

 寝ている間に盗まれた?

 いや、そんなわけないな。


 剣だけ盗んでいくのはおかしい。

 同時に盾と鎧もなくなっているはずだ。

 もしかして……と俺は考える。


「おい、ドライ。剣を食っただろ」


 ドライに問い詰めるが、もちろん返事はない。

 スライムは声を発することができないから。


 ただ、ドライがビクッと動いた。

 焦ったようにぴょんぴょんと飛び跳ねる。


 スライムの特性の一つに『消化』がある。

 この力を使ってドライが剣を食べたと考えた。

 そして、俺の予想は当たっていたようだ。


「こいつ! 吐き出せ!」


 ドライを持ち上げて、上下に動かした。

 だけど、時既に遅し。

 きっとドライの腹?の中で消化されてしまった。


 くそっ、剣がなかったら戦えないぞ。


「まあ、焦っても仕方ないな」


 別に俺は剣士になりたいわけじゃない。


 あくまで俺はスライム使いだ。

 スライムで戦えれば良い。

 どうやってスライムで戦うかはわからないが……。


 スライムをたくさん集めたところで、たいした戦力にならない。

 実家から追放されたのも納得できる。


 ここがゲームのような世界ならチートスキルの覚醒に期待できるが、あいにく、ステータスというものが存在しない。


 ここからどうやって成り上がろうか。

 と、そう思ったときだ。


「うおっ……!」


 唐突に、ドライが光り輝く。

 まばゆさに目がくらみ、刹那、目を閉じた。

 そして、ゆっくりと目を開け――俺は驚愕した。


「え? まじで?」


 ドライが剣になっていた。

 水色の剣だ。

 シンプルなデザインの片手剣。

 カッコいい。


 でも、なんで剣になったんだ。

 もしかしてスライムは食べたものに擬態できるのか?

 いや、しかし。

 ルッツの記憶ではスライムに『擬態』なんて能力はなかった。

 そんな強力な能力があるなら”最弱の魔物”と言われていないはずだ。


「もしかして、俺のジョブ『スライム使い』が関係してるのか?」


 それなら納得ができる。

 なんたって『スライム使い』はチートジョブだからだ。


「よくやったぞ、ドライ!」


 これをスライムソードと呼ぼう。

 グリップを握り、剣を持ってみる。

 軽い。


 さっき持っていた剣と比べると、まるで重さがない。

 これなら筋力のない俺でも振れる。


 試しに剣を振ってみる。

 ぶん、と音がした。


 切れ味も悪くなさそうだ。

 軽い分、相手に与えるダメージも少なくなるが、振れないより剣は断然良い。

 今の俺に適した武器だと言える。


 盾と鎧も他のスライムに食べさせてみよう。

 ということで、盾と鎧をそれぞれ別のスライムに与えた。


 ツヴァイには盾、フィーアには鎧を食べさせ、擬態させた。


 軽くて丈夫な盾と鎧になった。

 全部水色の装備だ。

 ブルーウェポンの完成だ。


 今の俺ならゴブリンにも勝てる気がする。

 良い武器ってのはそれだけで戦闘力を大幅に上げてくれる。

 さあ、出陣だ。


◇ ◇ ◇


 ゴブリンはすぐに見つかった。

 多分、俺が戦ったゴブリンだ。


 ゴブリンは俺を見つけるいなや、ぐがああ、と威嚇してきた。

 ふん、その程度でビビると思うなよ。

 今の俺にはスライムソードとスライムシールドとスライムアーマーがある。


 加えて、いつか異世界に行くと確信していた俺は日本で剣術を学んでいた。

 もちろん独学だ。

 通販で西洋剣のレプリカを購入し、家の近くの公園で素振りをしていた。


 不審者を見るような目で見られることもしばしば。

 しかし、今日このときのためだと考えれば痛くも痒くもない。


 夜遅くに警察が来て連行されることもあったが、それも今思い返せば良い思い出だ。

 俺が「異世界に行ったときに敵を倒すためです」と正直に答えたら、病院に連れて行かれそうになった。

 ……それも良い思い出だ。


 ゴブリンとの戦闘は想定の範囲内だ。


 ゴブリンが棍棒を振ってきた。

 雑な動きだ。


 俺はスライムガードで受け止めた。


「ぐっ……」


 衝撃がスライムガードから伝わってきる。

 この体はひょろひょろだから、押し負けそうになる。

 だけど気合で持ちこたえた。


 スライムソードでゴブリンの腹を斬る。


「がああああああ」


 鮮血が舞う。

 人間と同様、ゴブリンの血も赤色だった。

 スライムソードの切れ味は中々だ。


 ゴブリンの俺を押す力が弱まる。

 俺は盾を思いっきり押した。

 すると、ゴブリンがよろめく。


「ハアッ――!」


 その隙を逃すまいと、俺はスライムソードでゴブリンを斬りつけた。

 ゴブリンの体に、腰から鎖骨にかけて深い切り傷を与えた。


 うがああぁぁぁぁぁぁ、とゴブリンは悲鳴を上げる。

 しかし、俺は容赦しない。


「終わりだッ……!」


 スライムソードで胸を貫いた。

 ゴブリンの体に致命傷となる穴が開く。


 そして、スライムソードをゴブリンから引き抜くと、ゴブリンはガクッと膝から地面に倒れ込んだ。

 ゴブリンはすぐに息絶える。

 こうして俺はゴブリン戦をなんなく制した。


 俺はいずれ最強になる男だ。

 ゴブリン程度に苦戦するわけがない。

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