灯り
筆者のいとこのいとこであるIくんが経験した話。つまるところ、筆者とは血縁がない。
Iくんの家は少し郊外にあるマンションで、バイト先はそれなりに離れたところにあった。そのためか、バイトを終え帰る頃にはもうあたりは薄暗くなってしまっていたらしい。Iさんの通る道は電灯が少なく、日が落ちると真っ暗になってしまうのが嫌で、できるだけ急ぎ足で帰るようにしていた。いやな理由はそれだけではなかった。Iくんの家の周りは住宅街なのだが、なぜか電気が消えるのが異常に早く、Iくんが帰ってくる頃には明かりの灯っている家はほとんどなかった。それが闇を増幅し、Iくんの不安を募らせたのだった。
その日もIくんはバイトが終わり、急いで帰路についたとのこと。ふとあたりを見ると、やはり明かりのついている家はほとんどない。時々明るい家を見つけては、少し安堵していた。
そんなこんなで目的地に着いたとき、Iくんはある違和感を抱いた。Iくんの目の前にある自分のマンションは、Iくんは独り暮らしだというのに、彼の部屋の明かりがついていた。明かりがついている部屋はちらほらあったが、何故かその中の一つに自分の部屋があったのだ。泥棒か何かだと思ったIくんは、あわてて家に戻った。
恐る恐る扉を開けると、誰もいない。だがやはり部屋は明るかった。電気のつけっぱなしではないのは一目瞭然だった。なぜなら、電気はどこもついていなかったからだ。それではなぜ部屋が明るいのか。部屋には、窓からの明かりがさしこんでいたのだ。そのせいで、部屋が明るく見えていたらしい。
Iくんはこの話だけをし終えると、そそくさといなくなってしまい、特に続報もなかった。
ここからは筆者の感想だが、この話どこか違和感を感じないだろうか。そもそも、バイトが終わって帰ったのは夜だというのに、一体何故窓から明かりがさしこんでいたのか。月明りだと考えることもできなくはないが、だとして外から明かりがついていると思うほどに部屋を照らすことはできるだろうか。そして、外からの明かりで照らされているのだとしたら周りの部屋も同じような状態になると思うが何故電気がついているように見えたのはIくんの部屋だけだったのだろうか。