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魔法は『世界』の法則を捻じ曲げる術である

 聖条のカリキュラムは初日からも授業がある。

 それは通常の科目に加えて魔法の科目もあるからという当然と言えば当然の理由である。

 もっとも、通常科目は魔法師になった時点でそれなりにこなせると判断されているため、かなり短縮されている。

 特に数学・物理は分かっていなければ話にならない。それらの科目で行われるので確認程度であり、ありえないような速度で進行していく。全員、感覚として身に付けているものだからだ。

 それでも魔法科目――特に実技に時間を割くため土曜の午前中は休日返上である。もっとも土曜の午前中は、そのまま実習に当てられているのだが。


 閑話休題。


 丈の授業が始まった。 




「魔法は『世界』の法則を捻じ曲げる術である。




 ……諸君も聞いたことはあるだろうが、教科書的にはこのような定義になっている。

 では実際、どんなことが出来るのか? 久賀、任せた」


 丈の授業が始まった。


「あんた教師だろ! 自分でやれよ!」

 と言いつつ結局説明を始める藍は、おそらく真面目な部類に入るのだろう。


「主には、魔力によって様々な形で『世界』に干渉することが出来る。


 その形態としては、魔力を単純に動かす『操作魔法』。

 魔力が『情報体』であるという特性を利用する『付加魔法』の二つとなっている。

 中には『占星術』のような例外もあるが、これも魔力が『情報体』であるという特性を利用しているため、やはり大別としては物質として扱うか、情報体として扱うか、この2つ」


「続けろ」


 丈の授業である。


「マジか。

 ……『操作魔法』は主に、魔力を物理干渉できるようにする<念動>の魔法を基軸にしたものが一般的で、『機構魔法』などが応用例。

 『付加魔法』は、特に自身の『存在』を反映させる『属性魔法』が代表的。


 また、これらは単独で利用されるのではなく、組み合わせで利用されることが多い。

 <身体能力補完魔法>――いわゆる<身体強化>などは、魔力によって肉体の動きを補助するため『操作魔法』の1種であるが、これに“加速”や“硬化”の『付加魔法』を付与して利用されるのがいい例だろう」


 そこでいったん区切った。


「…………」

「…………」


 丈の授業、その筈である。


「他にも()()()から姿形を借りることで魔法の効果を上げる『象徴魔法』、特定の文面や行動により術の効果を上げる『儀式魔法』がある訳だが、この辺りは意外と無意識に使用していることが多い。

 神話を模倣するようなのは敬虔な信徒くらいのものだが、銃弾を模倣して<魔弾>の魔法を使用したり、鉄の強度を再現した<障壁>の魔法だったりするのも『象徴魔法』に当たる。

 こういった魔法を使用する際に、イメージを強固にすると、精度や威力が上がる。方法としてはよく用いられるのは呪文を唱えることだが、これが『儀式魔法』だ。

 この辺りは魔法で出来ることというよりも、使い方やコツの部類に入るんじゃないか?」


 最後の一言は「もう別の話しか残っていないぞ」というアピールである。

 ちなみに無視された。


 丈の授業、ということになっている。


 種類の話が続いているためそのまま残りも上げてしまう。


「『占星術』:『情報世界』より数値を読み取り、来るべき未来を予測する。魔法師の実力により、精度や時間が変化する。見るだけであるため、一般的には魔法ではないとされる。

『錬金術』:魔法の理想状態生成能力・触媒効果を利用して、化学反応・物理現象を誘起する魔法。トリガーとなる魔法自体はともかく、実際は化学反応・物理現象でしかないため、こちらも魔法ではないという意見がある。

『降霊術』:『精霊』やその力を召喚・利用する<転移魔法>の一種、事前の契約と非生物の<転移魔法>を行使する魔法力が必要になる。未契約の召喚は力を借りれなかったり、最悪召喚対象が敵になるため、実戦でぶっつけ、なんてのは最悪の選択だ。<転移魔法>の一種だから、これも使い方の話になるな。

『気功術』:一応違いもあるが『仙術』とも呼ばれる。魔力を力の循環としてとらえて身体能力活性化、あるいは自身を『世界』の一部とすることで一体となり、その力を行使する。<身体強化>とは別物だが、こちらの方が()()()()らしいな。ちなみに通常は効率が悪いためこちらより<身体強化>を利用する。というか普通はそもそも使えん」


 一覧を読み上げるように説明を始めたとこからも投げやりな雰囲気が分かろうというもの。

 しかし、仕方ないだろう。


 丈の授業なのだから。


「あとはそうだな、これも『付加魔法』の一種――」

「よし、もういいぞ」


 どうせまだ続けることのになるのだろうと藍が説明を続けようとしたところで丈から止めが入った。


「は?」


 一体ここまで来てなんだと言うのだろうか? というのが藍の本音である。……漏れている音からして本音も何もないのだが。


「終わりの時間だ」


 丈が言ったと同時に終業を告げるチャイムが鳴る。


「号令」

「気をつけ、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」


 丈の授業は終わった。


「…………、って、ちょっと待て!」

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