厨5話
「こ、この…貴様らァ!!」
ソラは自分がへとへとに疲れるまで努力して採った魚をゴブリンたちに食われたことに怒った。
「ん?」
「なんだ?」
「戻ってきたみたいだ。」
ゴブリンたちはソラの怒声でソラがトイレから戻ってきたことを知る。
「その魚はなぁ…その魚はァ!!」
「な、なんだ、どうした?」
「も、もしかして食べちゃいけなかったのか?」
「そんなもん当然に…。」
そこまで言い、ソラはゴブリンたちと会話が成り立っていることに気づく。
「なぜ会話が成り立つ…?」
「へ?た、確かに。」
「も、もしかしてゴブリン語をマスターしたんじゃ?」
「そんな短期間で無茶な…。」
「でも実際に会話できてるし…。」
「ふん、なるほどな。」
ソラは戸惑うゴブリンたちに自分がたどり着いたある考えを話す。
「簡単なことだ。俺がゴブリン語をマスターしたに過ぎない。」
「そ、そんなはずはねぇ。そんな簡単なもんじゃねぇ。」
「いや、それほど俺の頭脳が優れていたという事だ。」
「す、すげー。」
「まじかよ…。」
「なんせ前世では世界を統べる存在だったからな…。」
「ま、まじかよ!」
「すげー!!」
「し、信じられんが…。」
ソラは前世では陰キャぼっちだったが、もし生きていればそうなっていたことは間違いないだろう。
と、ソラは信じ切っているので微塵も嘘だとはゴブリンたちに感じさせなかった。
「ふん。だが貴様ら…。その俺が採った魚を……。」
魚を勝手に食べられたことをソラは思い出し怒りがまたこみあげてくる。
「あ、あぁ!魚は美味かったぜ!」
「今まで食べた中で最高に温かかったぞ。」
「長うまかったぜ!」
しかしゴブリンたちの純粋な感謝を伝えられ、怒りが霧散する。
「へ?あ、あぁ。それは良かった…な。」
前世では最後に感謝されたのがいつだか思い出せないくらい昔の事だったので、こんなに感謝されたのでは怒るにもいかなかった。
「お、お前達のために採ってきたんだからな…。よかった…よかった…。」
「うぅ…。それなのに俺たちときたら…。うぅ。」
「ど、どうしたんだ?」
「俺たちァどうせお前らが戻ってこねぇと思い込んで、お前の心を踏みにじることをしちまった…。」
「お前を信頼出来ていなかったんだ…。」
「そ、そうか…。ま、まぁ気にするな。最初はそんなもんだ。誰でもそうだ。そうに違いない。」
もとより戻ってくる気もなく、魚を勝手に食べられたことにブチ切れようとしていたソラには心をえぐられるような懺悔だった。




