がんばってもなんともならないこともある
「フッ。とうとう来てしまったか、異世界に。必然と言えば必然か・・・。」
中田宇宙―ナカタソラはなんやかんやで死んでなんやかんやで神様になんやかんやで生き返らされてなんやかんや異世界に転移されたのだ。
「この世界に来る前に神から説明があった気がするが・・・。思い出せないな。興奮しすぎていたか。」
無理もないだろう。ソラは前世では妄想妄想妄想の生活を送っていた。
押し寄せる大軍に刀1本で立ち向かうソラ。
前世では存在しなかったが、彼女をかばい負傷してしまうソラ。
勇者となり魔王と戦うソラ。
妄想には事欠かなかった。
「さて、ところでここはどこだ?周りは木だらけでわからない。とりあえず我が下僕を召喚するとしようか。」
ソラは前世で妄想の中で創り出した魔人をこの世界に生み出そうとした。
この世界なら生み出せる気がしたのだ。
「我が問いかけに答え、姿を現せ!焔炎を司りし魔人、イフリートよ!!」
「さぁ、出てくるがいい。」
「・・・さぁ、いでよ!!」
「・・・・・・イフリーーーート!!!!」
シーン
出てくるはずはなかった
この世界に魔法は存在するが都合よく妄想の中にいる存在が現れるわけがなかった。
「出ないのか・・・。今は我が魔力が足りぬか・・・。仕方ない。魔人はおいておくとして、ここがどんな場所か調べなければいけない。」
今現在ソラがいる場所は小さな林の中だが、それをソラが知る術はない。
「こういう時は星を見るんだったな。幸い今は夜だ。星がよく見える。現在地を把握するのにそう時間はかからないだろう。」
ソラは星を読もうとしているが、それは悪手であった。間先ほどの魔人を召喚しようとした際に発した大声を聞きつけたゴブリンたちが忍び寄って来ていた。
ソラは前世では星の読み方など学んでいなかった。
しかもここは異世界でありこちらの星などわかるはずもない。
ソラがしたことは大声を出し自分がここにいると敵に知らせ、上を見上げ周りに注意を向けず、美味しく食べてくださいと言わんばかりの行動であった。
「ふむ・・・。ここは角度が悪いのか、いまいち位置が把握できないな。少し動いて別の場所から確認してみるか・・・。」
角度など全く関係ないが、知ったかをするのはソラの癖であった。
ソラは場所を移ろうとしているが、ゴブリンはそれを許さなかった。
木の陰に隠れていたゴブリンたちが一斉に現れる。
「グギィ・・・キシャー!」「グギーキシャー」「グギキシャ」「グシャ」「シャー」
「な、なんだこの醜いバケモノどもは!?こんなやつがいるのか!?」
「イフリート!出てこい!ルシファー!!ゼウス!」
いくら叫んでも現れるわけがない。
だが大声で叫ぶことは一定の威嚇に放っているようでゴブリン達は遠巻きに眺めるだけで攻撃してこようとはしない。
ソラは調子に乗ってしまうやつだった。
体格的にも負けそうにないということがそれに拍車をかけていた。
「ふは、ひひ。我に怖気付いたか!!この薄汚れたバケモノ共め!ひは!下がれ虫ケラが!!!」
ソラは大声を出しながら無謀にもゴブリン達へ距離を詰める。
ゴブリンは1歩後ずさるが、すぐに気を取り戻し手に持った棍棒でソラを殴ろうとする。
「うわ!あぶね!テメー何しやがんだボケ!」
間一髪でなんとか躱すソラ。
「当たったらどうすんだよ!オラ!」
ソラは目の前のゴブリンめがけて蹴りあげる。
喧嘩など妄想の中でしかしたことのない小心者のソラの蹴りであったが、ゴブリンは体格的にソラに劣っていたこともあり蹴り飛ばされる。
「グギャー!!」
「フン!弱いな!そらそらそら!!」
自分がこの場面において強者であると理解したソラはゴブリンへ追い打ちをかける。しかしそれを許すゴブリン達ではなかった。蹴り飛ばされた味方をかばうように1匹のゴブリンがソラの前に立ち、歯をむきだしにして威嚇する。
ソラは新たに目の前に現れたソイツにターゲットを変え、蹴りを繰り出そうとするが、後ろに回り込んだゴブリンによる棍棒での攻撃を腰に受けてしまう。
「ぐっ!?痛・・・ぁ。痛いなこの野郎!」
すぐさま後ろにいるゴブリンに攻撃をしようとするが今度は前にいたゴブリンに足を噛まれてしまう。
「痛い痛い痛い!!やめろ!はなせ!痛い!」
「キシャーーー!!」
離すわけもなく、右足に噛み付かれたまま倒れ込む。
そこに追い打ちをかけるゴブリンからの棍棒での殴打。
耐久力の「た」のじもないソラはそこで気絶した。




