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拝啓、家族へ〜俺はまともな家庭を築きたい〜

 大波乱だった野球を終え、折角の日曜をダラダラと満喫していた俺だったが、新しい家族との接し方はとても難しかった。特に妹よ、お前だ。家ですれ違うだけでビクビクと怯えたり、俺がトイレから出てきた瞬間速攻で逃げたり、挙げ句の果てに食事中にフォークで俺の事刺そうとしたり、あまりにも偏見が酷くない?しかも、親父とはアレで打ち解けたのか、なんやかんや楽しそうに話してるじゃねーか。アレか、ナウシカ的なアレなのか?とりあえず、噛まれるんじゃなくて刺されとかないといけないのか?大丈夫、怖くない怖くない。って、こっちからするとカッター持って刺そうとしてくるお前の方がよっぽどこえーよ。一軒家だから、まだ自分の部屋があるから安心して過ごせる場所はあるけど。って、思ったのは、大きな間違いだった。ご飯を食べ終わり、部屋に戻ってしばらく携帯をイジっていると、隣の夫婦部屋からベットの軋む音と親父と母さんの喘ぎ声が聴こえてきた。時刻は、21時30分。いくらなんでも盛り過ぎだろ!?そう。悲しい事に、この家には、俺が安心していられる時間がほぼほぼない。

 なぜか?いや、考える必要もない。答えは、家族が俺以外まともじゃないからだ!!

 これは流石に、許容しちゃいけない。それを許せば、この家族は社会的にマズイ奴らと扱われても妥当な認識になってしまう。何度も言うが、特に妹。将来社会に出るお前は、今のうちにその腐った思想を正さないととんでもない事になる。むしろ、現在進行形で学校とかでいじめられてないのか?大丈夫なのか?異端者扱いされてない?

 そういうわけで、俺は、今後、この家族をどうにかしないといけない。……、自分の友人関係を考えるとロクでもない奴が山程いて人の事を言えない気もするが、ウチはウチ。ヨソはヨソ。とりあえず、出来る事から始めよう。初めは妹と仲良くなる事から。と言いたいが、そんな上手くいくはずもない。いきなり腹を刺されてバッドエンドだ。なら、お母さんと仲良くなって妹の事を聞くべきか。よし、まずはそうしよう。適切な距離感って大事だもんな。徐々に徐々に行こう。アイツの負担にならないように。

 夏の名残が残る夜、俺はそう決めた。




 次の日、俺が朝起きた頃には、母さんと妹とはもう家にいなかった。一瞬、あの一連の出来事が全部夢かと思ったが、俺の様子を見た親父が、母が妹を車で学校に送っていると言ってきた。なんと、俺の妹はお嬢様学校、御花畑小学校に通っているんだと。どっからそのお金が出てるのかわからないが、ともあれ、知らない事を一つ知った。よしとしよう。ただでさえ妹の学校生活が心配だったのに、そんな場所で妹がやっていけてるのかどうかさらに不安になったけど。なやともあれ、自分の事も大切だ。妹の事は今日のバイト終わりに母さんに聞くとして、今は学校へ行く準備をしよう。洗面台に向かって足を運ぼうとした時、親父に止められた。

「我が息子よ、これを見ずしてどこへ行く?」

 親父が偉そうに腕を広げてアピールしてきたのは、食卓に並んだ美味しそうな朝ごはんだった。ご飯に味噌汁、きんぴらごぼうに焼き鮭。真ん中に置かれたボウルには、レタス中心のサラダが入っていた。

「え、これ、母さんが作ったのか!?」

 思わず、テーブルに駆け寄って用意された席へ着く。

「すごいだろー!」

「凄いけどアンタが威張る事じゃねーだろ」

「父さんが母さんを捕まえてなかったら、こんな朝ごはん食べれなかったんだぞ?つまり、これは父さんが作ったと言っても過言ではないのでは?」

「母さんの評価を自分の評価にしようとすんなよ!!大の大人が恥ずかしくねーのか!?」

「父さんだって褒められたい」

「だから褒められねーんだよアンタは」

 大人げなく落ち込む親父の姿は、スーツ姿が似合ってない。年相応なのに何でだ?あぁ、精神年齢の幼さがその老けた顔にもにじみ出てるからか。親父の知らなかった面を一つ発見。いや、これはいらねーな。「なんか酷いこと思わなかった今?」「いや、別に?」親父の質問を適当にあしらい、朝ごはんを急いで食べる。少し勿体無いが、時間の都合上仕方ない。これからはもっと早めに起きよう。

 そして、大満足な朝食を終え、食器を台所へ片ずけて歯を磨こうと洗面台へ移動しようと思ったら。

 ピンポーン。いつもより早い時刻に、インターホンが鳴った。

 親父の顔を見ずに玄関へ。どうせ茶化されるだけだから。いや、今も「ヒューヒュー!」言いながら茶化してくる。非常に腹立たしい。唯一の救いは、うまい朝食を食べてお腹が満たされいるおかげで、それがどうでもよく感じる事だ。ガチャりとドアを開けると。

「もーう、遅いぞ竜星君!今何時だと思ってるの?カレン、怒っちゃうぞ!」

 そこには、【可憐】という名前とは真逆の存在、デブという言語を擬人化したような女子がいた。わざとぶりっ子を演じているが、左手にポテトチップスを抱えてる姿が見てて痛々しい。こいつは、……悲しい事に俺の幼馴染だ。

「人違いです」

 ただそう言ってドアを閉めようとするが、ドアの間につま先を入れられ閉めれない。デブなのに動けるデブなのが妙に鼻につく。

「待つでゴワス。知らないのか?幼馴染からは逃げられない」

「こえーよ。そんな幼馴染ただただ恐怖しか感じねーよ」

「ふふふ、だがしかし、それこそが愛!!」

 いくら俺でも我慢の限界点が軽く突破した。何言ってるんだこのデブは?

 後方に足を振り上げ、あえてドアを開き、奴のスネを思いっきり蹴飛ばす。

「いったぁーーーーーーーーーーーーい!!」

 と叫ぶ彼女を放置し、15分待ってろ、と告げてドアを閉めた。もちろんカギも閉めた。

 子供の頃からつるんでる事もあって怒るハードルが低くなってるんだと思うが、それでも、奴の人を腹立たせる才能は天下一品だ。……、少しだけ面白いとは思うが、それでも腹立たしさがくっついてくる。二律背反の面白さ。

「ヒューヒュー!ヒューヒュー!朝からお熱いねー!」

 よし、洗面台へ行く前にあいつをブン殴ってからにしようそうしよう。

 俺は、躊躇せず、まっすぐ親父の所へ向かった。

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