破滅ルート知らないから避けようがないけどとりあえず幸せになりたいです
次に私が目を覚ましたのは次の日の朝だった。たくさん寝たので体の調子はいいが頭の中にいろいろな情報が溢れて混乱している。ウンウン唸りながら脳内で情報を整理していると、ノックの音が聞こえてきた。
「リリー、入るわよ」
凛とした声とともに部屋に入ってきたのはお母様だった。私と同じ黒髪に銀の瞳を持ったお母様、アンナ・アルラリアは『月の女王』と呼ばれるほどお美しい方だ。昔、王族の中にもお母様に恋い焦がれた方がいたらしいがお母様の実家の家格が低く、結婚は断念されたらしい。公爵家の跡取りであるお父様と結婚する際もいろいろと言われたらしく、お母様がヴァルリラ伯爵家の養女となることでやっと結婚できたのだと前にお母様が教えてくれた。
「まぁリリー、もう起き上がって大丈夫なの?」
「はい、お母様。もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
「なら良かった。リオンも心配していたからあとで元気なところを見せに行ってあげて」
「はい」
リオンお兄様は年の離れた兄だ。今はアルラリア公爵家の跡取りとしてお父様の補佐をしているらしい。お兄様はお父様似らしく、私やお母様とは違う濃い茶髪だ。
そういえばお姉ちゃんも同じような色だったと今更思い出す。お姉ちゃんには申し訳ないことをしてしまった。ああ見えて責任感が強いから私が死んだのは自分のせいだと思っているかもしれない。
「リリー?どうしたの?」
お母様の声でハッと我に帰る。
「いえ、なんでもありません」
「そう、ならいいけど」
お母様は首を傾げながらそう言った。お姉ちゃんのことを考えていたら表情が暗くなっていたようだ。
私はもうリリー・アルラリアなのだ。前世でゲームばかりしていたワタシではない。前世の記憶も経験もリリー・アルラリアのものとして自分の為に使おう。それも私の武器だ。
私はこの世界でリリー・アルラリアとして幸せになる。
それが私の目標だ。
神様お願いします。
どうか私が破滅しませんように。
いや、破滅ルート知らないから自分で避けようがないんで。