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【壱弐参】がけっぷち冒険者の魔王体験  作者: 壱弐参【N-Star】
第2部
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069

「リエル! ジャミングビートを使って魔物を飛ばせるな!」

「あいよぉ!」

「ティミー! 漏れて飛び上がった奴を狙え!」

「任せて!」

「クー! 低ランク冒険者の盾になれ!」

「うん!」

「お前ら、手を休めるな!」

「「応っ!!」」

 冒険者ギルドの仲間たちは俺の指揮下に入り、間にリーダー経験が長い者を据える。

 これだけで簡単な指揮系統はできた。だが、いかんせん数が足りな過ぎる。

「凄いね」

「あぁ? どういう事だよっ?」

「錬度こそ僕の時代とあまり変わらないけど、この時代の冒険者は物凄くまとまっているようだね」

 ラルスの言葉の意味はわからなかったが、ラルスの時代では冒険者間はギスギスしていたのだろうか?

 まぁ、美人揃いのパーティだったから、無駄に交流はあったかもしれないけどな。というか、こいつらはティミーたちの前でええかっこしたいだけではなかろうか。

「っしゃああ! 見てた、ティミーちゃん!?」

 このくそ忙しいのに見てられる訳がないだろう。

「五匹目ぇええええっ! クーちゃん五匹目だよぉおおおおお!!」

「クーは十七匹っ」

 答えるところは凄いけどな。

「ファンダム! 右翼に回って冒険者たちの指示を頼む!」

「お任せください!」

 年老いたとはいえ、長年冒険者をやっていたダイヤモンドランクのファンダムだ。その経験があれば、大規模なパーティを任せられる。

「それじゃあ、僕も使ってくれ。存分にね」

 ラルスの言葉に俺は目を丸くする。しかし、ラルスは表情を変えないまま、俺を見ていた。

「……はっ、まさかレジェンドランクを使う事になるとは思わなかったな!」

「せめてもの罪滅ぼしだよ」

「よし、ラルス! 聖魔法で飛行系の魔物を落とし、適宜対処しろ! 強い奴からやれよ!」

「はは、早速人使いが荒い。でも、やるしかないよね……! オーラブラスト!」

 天高く光源魔法を放ち、魔物の視界を奪い去るラルス。落ちて来た魔物の首を的確に落としていく。

 とんでもない才能もあったもんだ。しかし、この状況であの戦力があるのはありがたい。

 ったく、こんな時にキャロは一体どこに行ってるんだ?

 そう考えながら魔物の首を落とした俺の背後から、大きな足音が聞こえた。

 ちらりと振り返ると、そこにはアルム国の騎士団、団長のガウェインが鋭い眼光をこちらに向けていた。

「アルムの国を守るのだ! 全員進めぃ!」

 だが、騎士団の足はそれ以上進まなかった。

 ……ここにも平和の弊害が出たか。ろくに実戦経験のない騎士団の兵に、いきなりこの魔物の大群は正直厳しい。

「何をしている! 前進するのだ!」

 ガウェインの言う事は耳には届いているだろう。しかし、身体が反応しない。戦闘とはそういうものだ。本来、冒険者は戦闘の恐怖を克服するところから始めるものだ。兵には訓練ばかりでそれがなかった。……時代故だろうな。

「ガウェイン! ここはいい! 住民の避難をさせろ!」

 前方のワイバーンと戦いながら、俺は仕方なくガウェインに指示を出した。

「くっ! 私に指示するつもりか!」

「そうだよ! 今は言い争ってる暇はないんだ!」

「おい! 貴様ら! 奴にあれだけ言われて何とも思わぬのかっ!」

 だが、やはり兵たちの足は動かない。今にもここから逃げたいような顔つきだ。

 ったく、せめて同じような実力の者が奮起してくれれば――――

「――――邪魔よ、どきなさい」

 その時、聞き覚えのある声は俺の耳に届いた。

「ディルアの言った通り、あなたたちは住民の避難に手を貸しなさい」

 背中で聞く声は、いつもとは少し違い、威厳のような、気品のような色を纏っていた。

「き、貴様まで私を愚弄――なっ!?」

 俺は、そこでようやくまた振り返った。そしてそれは、ガウェインも同じだったようだ。

 騎士団の分厚い壁を割って現れた集団(、、)。それは、アルム国の騎士団とは違う、意志の強い目を持った、本物の騎士団。

「愚弄ですってっ!? アンタふざけてるの!? 私は第五十九代ストロボ国、国王ジェイコブ・ハミルトンが娘! キャロ・ハミルトン様よっ! 一国の騎士団長如きを私が愚弄する訳ないでしょう!」

 ……そうか、そういう事だったか。キャロが向かった先は大転移装置。そしてその先は故郷のストロボ国。ジェイコブやジェイスンが準備をしてきた戦力を覚えていたという事か。実力こそアルム国と大差ないだろうが、それ以上に気合いに満ちている。これは、ジェイスンの仕事かもしれないな。

 だが、キャロ。自分に「様」はいらないと思うぞ。

「援軍だ! 皆、ストロボ国の騎士団と協力しろ!」

「「応っ!」」

「ちょっとディルア! 私の仕事とらないでよ!」

「いいから! お前の足が必要なんだよ! あそこで飛び回ってるのなんとかしてくれ!」

「ふふん! そうでしょうそうでしょう! ディルアには私が必要だものねぇ!」

「あぁ! 超必要だよ!」

「……ば、ばっかじゃない」

「いいから早くしろ!」

 ったく、自分で言って自分で照れて、忙しいヤツだな。

「ふん! もう、仕方ないわね! ふっ!」

「と、飛んだっ!?」

 ガウェインの驚きと共にキャロは空を駆け、ワイバーンの集団に飛び込んだ。そしてなだれ込む騎士団たちは、互いの背中を庇い合うように散り散りに冒険者たちの下へ向かった。

「う、うぉおおおおおおおっ!」

 その時、騎士団の中の一人が腹の底から雄叫びをあげた。

「おぉおおおおおおおっ!」

 それに続くように声を出した者もいた。

 よし! ストロボの騎士団に触発されて、気持ちが動いた!

「ガウェイン! 参加できるヤツは前に出せ! 他は避難に協力しろ!」

「……くっ! 貴様ら! 私に続け! 自信のない者は避難誘導に当たれ!」

 ようやく俺の言う通りにしてくれたガウェインの指揮能力はやはり高く、的確にドラゴンやワイバーンを倒していった。ったく、冒険者になってれば仲良くなれたかもしれないのに。

 こうして、キャロのおかげもあり、東門での戦闘は形になった。

 だからこそなのだろう。ここで勇者ラルスが出した結論は大きなものだった。

「ディルア! 行く(、、)なら今しかないぞ!」

「行くってどこにだよっ!」

「魔界に決まってるだろう! ここは僕が持つ! 今ならヴィクセンは魔物をこちらへ送ったばかりだ! 魔王城の侵入経路も手薄だろう!」

「で、でもここの皆が……!」

「大丈夫! 僕の使命が嘘だと言うなら、証明してみせろ! そしてこの魔物たちを止めさせるんだ!」

 そういう事か。ヴィクセンの下に行けば、ここの魔物たちも止められるかもしれない。何故なら、ここの魔物たちはヴィクセンの指示で来ているからだ。ならば、指示で帰還させる事も可能だろう。

「行こうディルア!」

「当然、私も行くわよ!」

「アタシも行くよっ!」

「アォオオオオオオオオオオオンッ!」

 ティミーの手が俺の手を包む。キャロは中空で止まり、高みから言い放つ。リエルはドラゴンの首を落としながら言った。クーなんて、既にハーディンを呼んでいたのだ。

「……そうだな。行くしかない。いや、行くぞ魔王城!」

「「応っ!!」」

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 ハーディンも到着したようだった。

 その時のパーティメンバー以外の顔は、正直見ものだった。あのラルスでさえ驚いていたのだから。

「エンシェントドラゴンが……人間の言う事をきいているだと?」

 ハーディンの首に乗る俺たちを見て、ガウェインが言った。

「はははは、さすが魔王派。驚かせてくれるよ……!」

 ラルスの声は、震えながらも、どこか楽しそうだった。

「魔王……か」

 どこからか、聞いた事があるような冒険者の声がする。だが、違った。それは、どこからか、ではなくいたるところからだった。いつもヤジを入れてくる冒険者らしい、そんな見送り方だったのだ。

「ははははは! やっぱりディルアは魔王だったようだぜっ!」

「ランクAのエンシェントドラゴンだぜ!? おい魔王様よ! 今度乗らせろよなっ!」

 ったく、安い魔王もあったもんだな。

「何カアッタト思イ、待機シテオリマシタ。行クノデスネ?」

「喋ったぁ……」

 ガウェインの太く逞しい声は、気持ち悪いくらいに裏返っていたが大丈夫だろうか?

「あぁ、行く。サクセスを助けなくちゃいけないしな」

「コノハーディン。身命ヲ()シテ……(アルジ)ノ友、ディルア様ヲオ守リ致シマス」

「無理かけるな」

「滅相モナイ」

 ラルスにここを任せる以上、戦力不足になってしまうのは否めないが、仕方ないだろう。

 条件は、相手も同じ。いや、ヴィクセンが行動を早めた以上、俺たちは完全に後手に回ってしまう。だからこそここで起死回生の後の先を撃つ。

 未知の領域――魔界。

「待ってろよ……サクセス!」

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