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マイスターとロゼック  作者: 田中 奏
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回想、誕生、邂逅。

プロットが適当すぎて過去の自分を殴りたい。

遠い昔、人類はある一つの実験を試みた。

それは倫理的に許されざることであったがその方法以外に人類が生き残る術は、恐らくそれしか残されていなかった。

その方法とは人間と武器を一体化させ武器になれる人間、ロゼックを造り出すことであった。そもその技術には不明な点が多く現在でも解明されている情報はごく僅かなものだ。しかし現にロゼックの創造に成功し、存亡の危機を回避していることを考えれば判断は正しかったのであろう。

ロゼックは己を武器化し、それを扱うマイスターとの適合率が高ければ高いほどその進化を発揮できる。

そして武器状態で傷ついても人間としての体にはほとんどフィードバックがない上に痛みを遮断できることから研究が進められたのであった。実用化の決め手となったのはロゼックが通常の人類と生殖が可能であることだった。このことが判明し、一度ある程度のロゼックを造り出してしまいさえすれば研究者の手を加えずとも数を増やすことができ、メンテナンスの必要すらほぼなくなった。ただし、ロゼックは人間として生まれ育つ為に武器として使用できるまでには十数年を要する。そこで当時の研究者は初期ロゼックを予定よりも多く生み出し、その1割をロゼックの増殖に回した。その上で出産、発育の過程を大幅に短縮する装置を作りそれらを駆使して大量のロゼックを生み出したとされる。その性質上、ロゼックを道具として見なす者が大半だったことが研究者唯一の誤算であったろうが、これはある意味では仕方のないことなのである。時には道具として、時には奴隷として扱う『人間』が後を絶えなかったが武器としての使用を第一として生み出されたロゼックがそれを受け入れてしまうのも拍車をかける一端であった。

そこで新たな法が作られロゼックの人権が確立された。その後ロゼックの一般化により残存した人類はその後、繁栄を続け現在に至る。

現代ではロゼックとは役割上の名前に過ぎず道具として扱われることもない。ロゼックの血筋は代を重ねる度にその血が薄れある世代までは着実にその数は少なくなっていたが、ある世代を境にその数は変動を止めた。

まるで、この先の未来で再び人類に困難が訪れることを予測するように。その過程でロゼックとマイスターの為の教育機関が各所に設立された。

その機関は、デュオマイソロジーと呼称されていた。


俺がマイスターとしての才能を持って生まれたことは俺の人生で最大の幸運であったと断言出来る。両親から早々に見捨てられた俺が拾われそのまま養われたのはひとえにそのマイスターとしての能力故であるからだ。俺を拾ったのはマイスターとロゼックの為の教育機関、とあるデュオマイソロジーの理事長であるクロック=トローゼだった。

クロックは俺の安全を保障することと引き換えに一つの条件を提示した。

曰く。

「君がいずれ出会うであろう特殊なロゼックのマイスターになってもらいたい。それが君にとっても私にとっても、そして彼女にとってもそれが一番なんだ」

俺は生きるためにその道を選んだ、その手を取った。

今思えばなんとも怪しい言葉だが不思議と素直に聞くことができた。

最後にアイツはこう付け加えた。

「これから、君には色々な困難が訪れるだろう。その過程で多くの人に出会うだろう。だが忘れないで欲しい。君が心の底から信じられるのは唯一自分だけなのだ

クロックがどういう意図で言ったのかはアイツ自身しか知りえないことだが、俺はそもそも両親に捨てられた時点で他人を信じるという行為に疑問も持っている。だがその一方で信じたい心があるのは確かだ。

クロックはそういう俺の心理を見抜いて先の言葉を残したのかもしれない。

そうして俺は拾われた。まだ知らぬ未来のロゼックのマイスターになるために。


それから十年が過ぎた。

その間にクロックから出来うる限りの指導を受け、非合法な任務に徐々に駆り出されるようになった。

今はクロックが理事長をしているデュオマイソロジー「原初の理」に在籍している。

しかし、未だに相棒は現れていない。そのおかげで周りからは『独人シニスター』と言われている、らしい。

少しばかり昔のことを懐かしみながらボーッとしていると不意に声がかった。

「なーにボーッとしてんの、実習に遅れるよ?」

少し呆れた、見慣れた顔が覗き込んできている。

「わかってる、言ったところで見学しかやれることはないけどな」

こいつは同級生の職人、アンナ=エーベルハルト。灰がかった金髪と綺麗な碧眼、やや中性的な顔立ちと体格に人懐こい性格が合わさり男女ともに交流が広い。

俺がとある事件に関わっている際に出会い、それ以来こうしてことあるごとに俺に絡んでくる。

「もーそうやっていじけないの。また影口叩かれてたこと気にしてるの?」

「さあな。俺にもよくわからん」

「まあなんでもいいけどさ、私まで遅刻になるの嫌だからね。ほら行くよ」

「へいへい」

俺が投げやりに返事すると不満げな視線をこっちに向けた後に教室の出口へ歩いて行った。

ならお前だけ行けばいいだろ、と思ったが口には出さない。なんだかんだ心配してくれているのはわかっている。

特に持っていく必要な物があるわけではないので手ブラでアンナの後を追う。

正直気は進まないが、俺のせいでアンナまで教師の不興を買うのは忍びないのでそこは割り切りるしかない。そんな後ろ向きな考えを巡らせながらアンナと共に演習場へと向かった。

適度な厨二加減って難しい。

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