最強勇者とエピローグ
その後の事を語るとしよう。
白王討伐に赴いたルーテリア王国騎士団70名は、54人もの死者、負傷者を多く出しながらも、白王の討伐に成功。
その道中、ルーテリア王国が長く指名手配としていたフィリスマナーーーー本名ギニシア・ティラスの捕縛に成功する。
ギニシアは心神喪失状態にあり、質問に答えられる状態に無かったが、専門の拷問官の元で記憶を読まれ、後に処刑される事が決定した。
今回の件で、多くの死傷者が出る結果となったが長く王国を苦しめた白王、そしてギリシアの捕縛は高く評価され、死者の遺族には国から手当が送られ、負傷者には特別優遇措置が取られる事となった。
第一騎士団団長、ヴォルド・ハース。
全身の裂傷こそあれど目立った負傷はなく、軽い手当の後に現場復帰となった。
第一騎士団副団長、ロイ・マッカス。
全身の裂傷、擦り傷、内出血、肋骨を三本骨折、鎖骨骨折、左腕及び右腕の不全骨折多数、鼻骨骨折。
数ヶ月の療養予定を繰り上げ、2ヶ月で医療院を退院し、現場復帰。
第二騎士団副団長、カイル・ノットン。
外傷、内傷なし。
が、体調不良を訴え三ヶ月の療養に入る。
第三騎士団団長、エレノア・ハース。
右腕複雑骨折、一部臓器の損傷、左目神経断裂。
ハース家に伝わる魔法薬により、数日で退院し現場復帰。
第三副騎士団団長、ハンナ・キールズ。
死亡。
各騎士団の団員が大幅に減った為、大規模な編員が行われる事となった。
そして、鏡颯斗。
白王討伐直後に行方が知れず、東の森にて目撃報告あり。
その後、城内にて姿が確認されている為、捜査不要とのこと。
✳✳✳
「そろそろ、本当の事を聞かせて頂けないでしょうか、 『カイル様』」
蝋燭の明かりだけが照らす部屋の中、ルーテリア王国国王は恭しく頭を下げる。
その下げた先にいるのは、ルーテリア王国第二副騎士団団長、カイル・ノットンであった。
本来ならば逆の立場ながら、国王はカイルに頭を下げる事を何も恥じてなどいなかった。
それどころか、誇らしい程だった。
「おいおい、キミは今や国王様だよ? ボクに頭を下げていいのかい?」
「何を仰る。カイル様に頭を下げられる儂の身にもなって欲しいのじゃ。本来ならば、玉座に座るべきは儂ではなく、カイルであるべきじゃのに」
「ふふ、変わらないね。キミは小さい頃から、そうやって何かとボクを王にしたがる。でも、聞きたいのそんな事じゃないんだろう?」
「そうであった。……カイル様、聞かせて欲しい。儂はあの時、一体何を呼び出したのじゃ? 儂には、アレが世界を救う鍵になるとはとても思えぬ、もっと、悪いものに思えるのじゃ」
「......そうだね、もしかしたら、キミの予想が当たるかもしれない。だけどまだ、彼はどちらでもないんだよ。百年前のあの時の様に、光と闇が別れた様に、二百年前のあの時の様に、天と地が争った様に、彼はその節目にある。もし、キミの思う通りだとしても、今のボクに止める事は出来ないよ。あの子は、強すぎるんだよ。あれはちょっと異常だ」
「それは、カイル様でも勝てぬ、という事ですか?」
「さぁ、どうだろうね。だけど、もしかしたら、ボクが動く事になるかもしれないね。もう既に、釘を刺されちゃったんだけどね」
「もしもの時は、ルーテリア王国は、儂は迷わずカイル様につきます。祖なる王にして、最も古き最強と謳われた勇者様」
蝋燭の明かりが、ゆらりと消える。
長いようで短いような、やっぱり長い気がする1章を終えることが出来ました。
読んでくださった方、ありがとうございます。
色々と拙い文章で、伝えたい事が伝えられたのか疑問は尽きませんが、今1度ありがとうございます。
しばらくはこれまでの話の修正を入れて、第2章に移りたいと思います。
それでは、これからも宜しくお願いします。
誤字、脱字、おかしな点ございましたらご気軽に感想欄でも何でも良いのでご指摘下さると助かります。