ある男の話 ~病院での生活3~
「秀也君朝ですよ〜!」
俺は重い身体を無理やり起こす
「朝から騒がしいですよ...彩夏さん」
起きて起きて、と言ってくるこの看護師の名前は舞沢彩夏昔、よく遊んでもらった近所のお姉さんだ
''とある理由''によってこの病院に入院しなくてはならなくなった俺は今日も高校へ行くことはできず病院生活をスタートさせなくてはならないのであった────
□
今日は5月30日、退院予定日まであと少しだ
「ご馳走様でした」
―――今日の飯も美味しかった
「おっ!綺麗に食べたね!」
彩夏さんは俺の食べ終わった食器を片付け始めている
「それじゃあ、今日も頑張ろう!行くよ〜」
朝食を綺麗に食べ終えると、俺はリハビリをするためにリハビリテーションのある病棟に向かう事になっている
一人でそこまで行くのは大変なので彩夏さんに手伝ってもらい現地まで連れていってもらった
「ごめん!秀也君、ちょっと行かなくちゃならない用事が出来ちゃった」
リハビリテーションに着くなり彩夏さんはそう言ってパタパタと走っていってしまった
「よし、頑張ろう」
俺は気合いを入れた
「今日もよろしくお願いします」
「えーと、神上さんですね」
担当の先生から本日のメニューを聞かされ俺はリハビリを始めた
「頑張ってるね、神上君」
俺がリハビリをしていると唐突に院長が声をかけてきた
「そんなに早く高校へ行きたいのかい?」
―――当たり前だ、どれだけ俺が''高校生活''を楽しみにしていたか
「はい...」
俺が元気なく答えると
ハッハッハッ、そうか頑張れよ〜と言って院長はどこかへ行ってしまった
「はぁ、何だったんだ?」
―――まぁいいか気にすることは無い
俺は上手く動かすことのできない右足をゆっくりゆっくりと動かし始めた
「今日もお疲れ様でした」
そういうとリハビリテーションの先生は他の患者の元へ行ってしまった
リハビリテーションの病棟から俺が入院している一般病棟までは少し距離がある
「さて、どうするかな」
俺は階段の下で悩んでいた、エレベーターを使えればいいのだが俺は閉所恐怖症であるため階段を使わないと自分の部屋には戻れなかった
「あのー良かったら手を貸しましょうか?」
松葉杖をついて立ち往生していると見知らぬ女の子が話しかけてきた
―――正直言って困っていたから助かる
見たところ同い歳ぐらいだろうか、ショートボブの女の子はどこか小動物を連想させられる
「あ、あの?」
俺が黙っていると女の子は少し怯えたような表情でこちらを見上げてきた
「えーと、誰だか分からないが助かる。一般病棟の513番まで手伝ってくれないか?」
「分かりました!!」
さっきまでの怯えたような表情はなくなり元気よく返事をして俺は肩を貸してもらい階段を登り始めた────
「ありがとう、助かったよ」
「いえいえ、困った時はお互い様です。」
―――なんていい子なのだろうかこのご恩は忘れません
「ところで君はなんで入院しているんだ?」
「わ、私ですか!?実は気管が弱くて発作が起きてしまったんです」
―――喘息か何かだろうか?
「あっ、すいませんもうそろそろ検診の時間なので私も自分の部屋に帰りますね」
そう言って階段を降りていく彼女、姿が見えなくなるまで見送ると自室の扉に手を掛けた
「そういえば名前聞いてなかったな」
―――同じ病院に入院しているならまた会えるか
そう言って自室を扉をゆっくり閉めたのであった
□
「ごめんねぇ〜秀也君、帰ってくるの大変だったでしょ」
昼飯を持ってきた彩夏さんは部屋に入るなり謝罪をしてきた
「あー、知らない女の子に助けてもらったので大丈夫でした」
俺がそう言うと彩夏さんはニヤニヤしながら
「へー知らない女の子ね〜」
と呟やいた
「もしかして好きになっちゃったりとか〜??」
「いえ、名前も知りませんですし...」
「そっか〜また会えるといいね」
―――まぁ、借りができたのでいつかは返したいと思うが
「それじゃあ、昼飯食べちゃいな〜食べ終わったら食器取りに来るからね〜」
「俺って普通なら今は高校だよな...」
一人きりになった病室で俺は忘れかけていた事実を思い出した
「とりあえず飯食べちゃうか」
学校よりも先に、今は飯を食べることを優先した────
3ヶ月ぐらい更新していなかったのですが
久しぶりに更新しました
今回は名前の分からない少女がでてきましたね!
(どこかででてきたような...)はやく秀也の高校生活が始まるといいです
PS
小動物は好きです