ある男の話 ~病院での生活~
「今日も退屈でつまらない学校生活が終わる...」
青春真っ盛りのはずの高校一年生の夏、俺''神上秀也は放課後の教室で呟いた
「家に帰ってゲームでもするか...」
周りの奴らは夏休みが近いこともあってか
「〇日の夏祭り楽しみだねぇ〜」
「一緒に行こ〜!」
「なぁなぁ今度海行かね??」
「あー悪いその日部活あるわ」
などと浮ついた話ばかりしている
―――どいつもこいつも馬鹿みたいだ、俺は夏休み特に予定がある訳では無いのに
目つきの悪い秀也は悔しさのあまり周りの同級生立ちを睨んだ
―――なんか神上君怒ってない??
―――お前なにかしたのかよ
教室が少しざわついた
―――またやってしまった...
俺はそそくさと帰り支度を済ませて席を立った
「あの~すいません」
教室から出て昇降口への階段を降りようとしたとき、唐突にショートボブの背の低い女子が話しかけてきた
―――俺と同じクラスの人じゃないな...
「神上君...だよね?」
俺の記憶にある限りならこの学年に神上という名がつくのは俺だけのはず
―――だが俺は人違いだと促す
「いいえ、人違いでは?」
「あ、そ、そうですか、す、すいません」
そう言って肩を落としながら教室の方へと去っていく彼女
―――誰なんだ一体、どこかで見たことあるような気がするが...残念ながら思い出すことは出来なかった
他人は俺の事をひねくれているとか、怖いとか言うが本当はただのコミュ症の目つきが悪いただの高校生だ
「どうしてこうなったんだ...」
秀也は昇降口に着き、こうなるとは思いもしなかったつい三ヶ月ほど前の事を思い出していた────
~入学式前日より~
「明日から俺の新しい生活が始まるのか!!」
俺は''高校生''というものに憧れていた、なんて言ったって―――人生で一番enjoyできる時だ!!
とか勝手に思っていた、そのため入学式前日の俺は期待と高揚感でいっぱいだった。
そして入学式当日────
俺が目を覚ました時は白い部屋にいた、鼻に薬品の匂いが漂ってくる―――ここはどこだ?
身体を起こそうとした時、足に違和感を感じた、そこで俺は思い出した
「そうだ、俺は今病院にいるんだった...」
前日になかなか寝付くことができなかったからか、起きたのは遅刻ギリギリの時間だった、朝飯を食べる余裕もなく俺は玄関を開けて自転車に跨った
―――時間に余り余裕がない
「急げ急げ!このペースじゃ間に合わない」
私立''氷山高校''へ向かう途中にある坂道を俺は登っていた
―――下りは楽だ
とか思っていたのが間違いだった、登りが急な坂道だったため、下り道も急だったのだ、俺は猛スピードのまま坂道を下り、そして────
「木にぶつかったんだ...」
''木にぶつかったせいで足を骨折しました''なんて恥ずかしくて誰にも言えない。俺は動かない右足を見つめながらため息混じりに呟いた。
「はぁ、俺の、夢の高校生活第一歩が...」
一歩目で早速道を踏み外してしまった。お医者様の話によると
「あーっと、こりゃまた綺麗に折れてますな。治るまでせいぜい二ヶ月程度かかりますよ、大丈夫!治った時は前より丈夫になりますよ」
正直に言って何が''ダイジョウブ''なのか分からなかった―――この医者は大丈夫の意味を知っているのか?
それよりも
「二ヶ月もかかるんですか!?俺は今からでも高校に行きたいのに?」
「治るまでこの病院に入院してくださいね」
医者の助手である看護師に言われてしまった
「貴方の気持ちも分かりますが医者として怪我人を家に返すわけには行きませんなぁ」
そうして俺は入院生活を余儀なくさせられた
「はぁ、何やってるんだろ俺...」
夕日が綺麗に見える丘の上の病院の病室で俺は一人呟いていた────
それからの生活はいろいろ厳しかった
足がまだ使えないのでトイレに行く時は車椅子を使わなくてはならないし風呂に入る時も足に付けられているギプスを濡らすなと医者に強く言われたため、風呂に入る度にラップを巻いて袋を被せないと入浴できなかった、見舞いにくる友達もおらず俺は高校の予習をしたり漫画を読んだりと好き勝手に過ごしていた────
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「明日でやっと一ヶ月か...」
俺はカレンダーにバツ印をつけながら呟いた
―――先月の今頃は自室のベッドでわくわくしていたのに
人生何が起こるか分かったもんじゃない
どうやら俺の入院生活はまだまだ続きそうだ────
見ている人が一人でもいるなら頑張れる!
ここを直した方がいいとかなんでもいいので感想まってます!