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FIGHT CLASS  作者: 元馳 安
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 二十時より少し前に始まったファイトは、二十一時には終わり、無駄話をしながらだらだらと時間を過ごし、二十三時には地下室を出ていた。


 ファイトが終わった四人は言い知れぬ爽快感と達成感に酔いしれていた。


 四人とも一度も喧嘩をしたことがない。殴り合いは憧れでもあった。


 新垣はこの日の出来事で塚田への思いが一気に冷めていた。それは常日頃から塚田が口にしている武勇伝が口から出任せであることに気付いたからだ。


 そして、何よりもファイトした地下室の方がよっぽど格好良いと感じている自分がいたからに他ならない。


 新垣の戸森に対しての見方は変わった。新垣だけではなく、杉田と伊藤も戸森を強い男として認めていた。


 秘密と興奮で満ちた地下室に次はいつ来れるのか。


 またファイトをしたいと言うと、神崎は一つの条件のもと必ずすると約束した。


 それは、絶対に誰にも言わないことだった。


 四人はその足で銭湯に向かった。



 銭湯から出た四人は神崎が住むマンションへ行き、傷の手当てを行った。氷嚢で冷やしただけの顔の腫れが引くはずもなく、友人の家に泊まることと嘘をついてまでしたのは、野蛮とも思える殴り合い。その殴り合いで四人の中は急激に縮まっていた。


「顔の傷は『階段で転んだ』で通せ」


 神崎は化粧道具を使って傷を目立たなくした。三人にはファンデーションなど肌をメイクする化粧道具を渡し、化粧の仕方を教えた。


 次の日、お昼頃に帰宅した戸森は化粧の効果もあってか、何も言われることはなかった。

 しかし、その夜に油断した戸森はお風呂上がりに紫色に腫れ上がった顔を母親に見られると詰問された。戸森は『階段で転んだ』で通すと、友達の家の階段で転んだことになり、小学校時代に仲のよかった原田 新次郎宅へ行くと言った手前、迷惑が掛かると思い、『転んだ』で通した。

 戸森家では勇気に外出禁止令が出た。


 休みが明けた月曜日、学校に登校すると、腫れた顔の戸森を見たクラスメイトは更に戸森との距離を開けた。戸森は何も感じなかった。戸森の心持ちはすでに学校生活になかった。


 新垣が登校すると新垣は目だけで戸森に挨拶した。絶対に誰にも言うなという神崎の言葉を全員が守っていた。


 戸森は新垣と目を合わせて、胸元で軽く左手を上げた。新垣も手を軽く上げた。


 二人は少し笑った。


 次はいつあのような興奮が得られるのか、戸森は楽しみで仕方がなかった。



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