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FIGHT CLASS  作者: 元馳 安
22/39

三中



 七月の半ばを迎えて残り一週間となり、間も無く夏休みを迎える。


 放課後に戸森は神崎に呼ばれた。


 都合よく神崎と話せる機会ができたと思った戸森は、夏休みの間はファイトを毎週にしてほしいと神崎に伝えようとしたが、その考えは見事に打ち消された。


「七月最後の土曜日でファイトは当分の間、止める」

 神崎の言葉に戸森は呆然とした。


「えっ? どうしてですか?」


「用事で俺がいない。しばらくファイトは無しだ」

 神崎の言葉に戸森は露骨に落胆しながら頷いた。


「夏休み明けにはできる」

 その言葉にも戸森は静かに頷いた。


 戸森が全員に連絡すると、やはりみんなも残念がっていた。

 吉田が残念がっていたのが戸森には意外だった。



 翌日、帰宅時刻になると校門から少し離れた場所に三中の制服を着た生徒が数人で(たむ)ろしていた。


 新垣の話はどうやら本当のようで、誰かを待ち伏せしているようだと戸森は思った。

 校内でも知らないのはごく一部の生徒でそのごく一部に戸森は入っているのである。


 塚田の一件を聞いていない戸森はぼんやりと三中の生徒を眺めていた。


「……何だお前? なんか用か?」

 じっと見つめる戸森を睨みながら三中の生徒が声を掛けた。

 暑いにも関わらず長袖ワイシャツを捲りもせずに着る戸森は清潔感があり真面目で大人しそうな優等生に映った。


「何でもありません」


「お前、三年の塚田って知ってるか?」

 三中の生徒の一人が戸森に訊ねる。


「知ってます」

 戸森は素直に答えた。


「連絡取れるか?」


「取れません」


「そうだろうな。もう、帰れよ」

 真面目そうな戸森に用はなく、面倒臭そうに手を払う三中の生徒の言う通りに戸森はその場を去った。


「中村先輩が目ぇ光らせてっから、こっちは何も出来ねぇよ。殴って吐かせりゃあいいんだよ」

「あの人、変な正義感あるからやり辛ぇんだよな」

 去り際に三中生徒の遣り取りが聞こえた。





 次の日、戸森が登校すると三中の生徒はやはり二中の校門近くに(たむ)ろしていた。


 教室に入ると既に新垣たちは登校していた。


「カズ、三中が探してるのって塚田先輩?」

 戸森の言葉に意外そうな顔をする新垣。


「そう。戸森もいよいよ三中がウザくなってきたろ」


「うん。昨日、声掛けられた。塚田と連絡取れるかって」


「マジで?」


「三中がこんなに固執するって何やったの?」

 戸森の単純な疑問だった。


「塚田先輩が三中の女子に暴言吐いたか、殴ったって聞いた」


「じゃあ、あの人も三中の誰か狙ってんの?」


「それはない。バカだから弱い奴に手出してよ、塚田先輩、チキンなのにイキって、大事(おおごと)になったらビビって逃げてんだよ」

 怖くて外出ができないという言葉に戸森は呆れた。先輩の塚田は三中を気にして逃げ回って学校に来てないのだ。


「塚田先輩なんてすぐ捕まりそうじゃん。でも、全然姿見せないんだって。だから、三中のヤツらがウチに乗り込むとかって言ってんだよ」


「ふぅーん」

 我関せずだった戸森も三中を気にしていた。

 新垣は三年生と一年生から何とかならないかと話を振られているのだ。


「塚田先輩、三中の中村って奴にビビってた」

 新垣の言葉に対して戸森は単純な疑問しか浮かばなかった。

 昨日話した三中の生徒も「中村」という名前を出していたことを戸森は思い出した。


「その中村って人……強いのかな?」



 戸森たちは二中と三中の諍いに巻き込まれていくことになる。





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