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 長かったような短かったような一ヶ月が過ぎ、いよいよ選定の儀の当日がやって来た。

 一体どんな儀式なのか?

 そもそも、俺にこの儀式をやらせて、一体何を企んでいるのか?

 色々と判らなかった事が漸く判る。


 それにしても、アレッサたちから選定の儀が終わって一段落したら話したい事があると言われたのだけども、一体何の話なのだろうか?

 何か酷く思い詰めたような、真剣な様子だったのが気になるのだけど・・・。

 今は考えても仕方がない。とりあえず、まずは選定の儀を終わらせて、それからの話だ。


「これより、アベル・ユーリア・レイベスト殿の選定の儀を執り行う」


 王の宣言と共に儀式が始まる。

 と言っても、まずは俺一人で聖域と魔域の鉱山に行き、最奥からそこでのみ採掘される特殊な鉱物を取って来る事になる。

 普通に、これだけで数日は確実にかかるらしい。

 まあ移動もあるし、聖域の方はともかく、魔域の方の鉱山は言ってしまえばダンジョンだ。最悪まで攻略するのに相応の時間もかかって当然だろう。


「それでは、行ってまいります」


 これからは、儀式が終わるまでは一人で全てをこなすように義務付けられている。

 それが、選定の儀を受ける当事者のみに課せられた使命だそうだ。

 むしろ、相応の難易度を有するこの儀式を無事に終えられるだけの力量があるのかを試す意味合いもあるのだろう。

 まあ、世界時の洗礼でレジェンドクラスにまでなってしまった俺には、あまり意味の鉈要素だと思うけど

ね。 

 恭しく答えて、その場をあとにする。

 ただ、選定の儀と言う特殊な儀式、或いは見極めが始められる事を告げられるだけの会場には、それだけの為だけに随分と多くの人々が集まっている。

 中には王以外にもこの国の重鎮までも揃っていたりする。

 その様子を見るとやっぱり面倒な事を企んでいるんだろうなと、半ば確信してしまうが、今はまあ良い。

 とりあえず、まず向かうのは魔域の方の鉱山だ。

 さっさとこの面倒事を終わらせてしまおう。


 で、まず行く魔域の鉱山なんだけども、実は鉱山とは言っても海の中に沈んでいる。

 聞いた話では、数十万年前に地殻変動で沈んだ島の鉱山だそうだ。

 その頃はまだ辛うじて魔域の範囲外で、最前線の防衛基地として使われていたと記憶に残っているらしい。

 後に、沈んだかつての防衛拠点を、魔域内部での魔物の討伐と見に行った結果、かつての鉱山の最奥から不思議な鉱物を発見したのが、そもそも、選定の儀と呼ばれる試練が始まるキッカケとなったそうだ。

 正直に言えば、俺としては儀式そのものよりも、海に沈んだかつての遺跡の方に興味がある。

 かつての転生者たちが居た時代よりもはるかに遠い過去の遺跡。

 当然ながら既に調べ尽されているのだろうけれども、当時の様子を知る何かがまだ発見されずに残っているかも知れない。

 そう思うと徹底的に調べてみたい誘惑にかられるけれども、まあ、これは別に後でも良いだろう。

 魔域に沈んだこの遺跡は、選定の儀に使われる特別な場所ではあっても、別に立ち入りが禁じられている訳じゃない。やることが終わってから、ジックリと調べればいいのだ。


 王都に設けられた会場から海の魔域まで一気に飛行魔法で飛ぶ。

 あらかじめ下見をしていたなら、転移魔法で一瞬で行けるのだけども、今回は儀式の舞台となる魔域と聖域の近くには近寄らない様にしていたので、転移は出来ない。

 まあ、飛行魔法でも最大速度とまではいかなくても、ある程度の速度を出せばすぐに辿り着ける。

 その辺は別に問題ない。

 なお、この儀式の間はヒュペリオンは使わない。

 移動も全て自分の力だけで行うのも一つの定められた条件らしい。

 王都から目的の場所までは三千キロ以上ある。それ程の長距離を飛行魔法で飛ぶのも、あまり経験のない事だけども、それだけにむしろオモシロイ。

 あまり速度を上げ過ぎると景色を楽しめないけれども、中々楽しめる。と言うか、どうして今までコレを忘れていたのだろう。 

 飛行魔法で気ままに飛び回るのも魔法のあるこの世界の楽しみの一つだろうに

 これからも折を見て楽しむ事にしよう。


 結局、あまり速度は出さずに一時間ほどをかけて飛行を楽しみながら目的地に到着。

 飛空魔法から潜水、水中活動用の魔法に切り替えて、海の中に入っていく。

 既にここは魔域の内部。当然ながら相応に危険も脅威も増している。

 なので、慎重に行こうという考えは、現れた魔物を前に一瞬で崩れ去る。

 ES+ランクの魔物、ラグナ・サーベントナーガ。

 実は、かつてマリージアの魔域の活性化の折に一度だけ遭遇し、倒した物の回収出来なかった事がある魔物だ。

 そして、後になってこの上なく後悔したのを覚えている。

 目の前の魔物は、水生の魔物の中でも最高の美味として知られる魔物だと後で知ったからなのだけども、同時になかなかお目にかかる機会のない魔物なのも判明して途方に暮れた・・・。

 現実問題として、魔域の活性化などの非情事態でもない限り、ES+ランクの魔物が現れるなんて事はそうそう無い。

 その意味で、非常時にのみ取れるレア食材なのも判るのだけども、更に海にある魔域からしか現れないのも拍車をかけて滅多にお目にかかれない高級食材になっている。

 イヤ、普通ならば遭遇したら全滅必至の海の死神なんだけどね。

 俺にとってはまさにこの上なく美味しい相手なのだ。

 次にいつ相手に出来るか全くわからない事を覗けば・・・。


 これまでも海に魔域がある国に行った時には、ワザワザ魔域の中まで調べに言って探したりして、ユグドラシルでもさり気なくあたってみたのだけども、結局見つからなくてほとんど半ば諦めていたんだけどね。

 それがこんな所でアッサリ出会えてしまうなんて!!

 今度こそ確実に持ち帰る。

 海鮮系の魔物で最高と謳われるその味を存分に堪能させてもらう。

 選定の儀が終わったらだけどね。


「はは


 思わず笑いが零れる

 これは嬉しい誤算だ。まさかどう考えても厄介事でしかないだろうと思っていた今回の一件で、一年も探し続けていたモノに巡り合えるなんて思いもしなかった。 

 絶対に逃がさない。

 他にも何か魔物の姿が見えた気がするけれども、今の俺の目はに移らない。

 一気に終わらせると、ラグナ・サーベントナーガを目指して駆け抜けていく。

 


 戦い。イヤ、蹂躙はすぐに終わった。

 この周辺に俺以外の誰もいないのは確認済みなので、広域殲滅型アストラル魔法一発で終わらせた。

 今は倒した魔物の回収を急いでいるのだけども、本気でやり過ぎたと今更ながら後悔し始めている。

 ラグナ・サーベントナーガと共にいた魔物以外にも、かなりの広範囲にわたって魔物を一掃してしまい。回収にとんでもない時間と労力がかかていたりする。

 結局、五百匹近くに魔物を一掃したみたいで、その回収だけでも一苦労どころじゃない。

 まあ、どれも美味しくいただける魔物ばかりなので、ここは残さずに回収させてもらうけれどもね。

 だけど、戦いは一瞬で終わったのに、回収に一時間以上かかるとは思いもしなかった。

 とりあえず、ようやく回収も終わったので先に進む事にする。

 辺りの魔物を一掃したのだし、少し遺跡調査をしてみたい気もするけれどもここは我慢で、始めたら何か成果を見付けられるまで終わらせられない気がする。

 そうなると一体どれだけ時間がかかるか判らないので、さっさと鉱山の方に行く事にする。

 鉱山の入り口は、かつて実際にドワーフたちによって使われていた場所。この奥には、ドワーフによって掘り進められた坑道が続いている。

 ただし、既に海底に沈んで三十万年以上。更に魔域に呑まれてその在り方は大きく様変わりしている。ここはまさに海底ダンジョンだ。

 初めてのダンジョン探索が海底とはまた乙と言うべきか?

 とは言っても、鉱山のルートは把握されているので、中に入り込んだ魔物に気をつける以外は特に問題はない。

 光源となるライトの魔法をともして中に入っていくと、水の純度が信じられない程に高いので、辺り様子がハッキリと見える。

 行動は高さが六メートル程、幅が十メートル程のかなり広いものだけども、流石に高ランクの巨大な魔物が入り込む余地はない。

 とは言っても、さっきの広域殲滅魔法もこの中にまでは効果が及んでいないので、中には魔物が待ち構えているのは間違いないので気を抜いてはいけない。

 なんて思っている矢先にいきなり来た。巨大なウミヘビ型の魔物だ。

 そう言えばこのタイプの魔物なら巨体でも中に入り込める。忘れていたというよりも油断していたというべきだろう。

 巨大な口を開いて俺を一飲みにしようとあっと言う間にこちらに来る。

 だけど、口を開いているのはこちらにも好機だ。

 と言うか、一度飲み込まれてしまえば逆に防御障壁を気にせずに一方的に攻撃して倒せたりする。

 そんな訳で、相手が俺を一飲みにしたところで内場派からの一撃でジ・エンド。

 早速外に出て倒した魔物を回収する。

 名前は忘れたけれども、確かこれもSランクの魔物でかば焼きにすると絶品だったはず。

 これでまた、楽しみが増えた。

 回収を終えると早速奥に進んでいくのだけども、次から次へと魔物が襲ってきてなかなか進めない。

 理由は判っているんだけどね。 

 光源のライトだ。

 これに魔物が集まってきているのは判っているのだけども、あえて使い続けて魔物を殲滅し続けている。

 実は特に意味はない。ライトで辺りを照らさなくても、暗視魔法を使えば普通に活動できるのだけども、ここはこの行動に入り込んだ魔物を殲滅する勢いでライトを使い続けよう。


 それにしても、一体どれだけの魔物が入り込んでいるのだろう?

 無限ホップでもしているかのように、後から後から湧いてくるのだけど・・・。

 因みに、ゲームならダンジョンには宝箱が付き物だけども、当然だけどそんなものは現実にはない。

 そもそも、既に幾度となく攻略されているハズのダンジョンに、一体誰が宝箱を置いていると?

 前世でゲームとかをするたびにその矛盾に突っ込んだりしていたけど、小説とかだと確かダンジョンそのものが一つの魔物扱いで、獲物をおびき寄せるための罠としてダンジョン自体が宝箱を生み出しているとか言うのもあったと思うけれど、流石に魔物扱いするのにも無理がある気がする・・・。

 どちらでもいいか、随分と時間がかかったけれども、ようやく鉱山の最奥。採掘した者によってその在り方を変える特殊な鉱物が取れる場所に辿り着いた。

 さて、では早速採掘をとはならない。

 坑道の最奥。かつての採掘地だった場所の中心に、巨大な黒い塊が浮かんでいる。

 正体は一切不明の謎の球体に魔力と闘気を注ぎ込む事で、目的の鉱物は生み出される。

 

 実は、この仕掛けも十万年前の転生者たちがやっていたゲームの中にあったものらしい。

 その彼らをして詳細は全く不明。開発者に、運用に聞かなきゃ判るはずがないとの事。

 それでもまあ、害はないのは確定なので、早速魔力と闘気を注ぎ込んでみる。

 どれくらいの量を注ぎ込むかは本人の自由との事なので、ここは全力で。

 瞬間、照明のライトの光も通さない桎梏に球体が激しく輝いたかと思うと、目の前に鉱物が出現した。

 これで目的は達成したので早速戻るとしよう。

 ただし、鉱山の中は転移魔法が使えないようなので、外に出てからそのまま一気に王都に戻る事にしよう。



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