4(改修版)
Aランクの魔物であるルビー・クラブは、花咲ガニに似た名の示す様にルビーの様に輝く鋭いとげに覆われた強固な殻を持つ、3対の巨大なハサミを持つ10メートルを超える巨大な蟹の魔物。
強固な殻は生半可な攻撃では傷一つ付けられない。それこそ、バスーカー程度の火力じゃあ話にもならない上、3対のハサミからは真空の刃や鋼鉄すらも易々と切り裂く圧縮したウォーターカッターを無尽蔵に放ってくる。攻守共に盤石なまさにAランクに相応しい凶悪な魔物。
同じくAランクの魔物であるアイス・ロブスターは、2対の巨大なハサミを持つ純白に輝く甲羅に覆われた、全長10メートルの巨大な海老の魔物。
アイスの名に相応しく、氷と冷気を自在に操り、無数の氷の槍や刃を生み出し自在に操り、鋼鉄の複合装甲すら貫通する氷の弾額をマシンガンの様に乱射し、或いは自身の周辺を氷点下200℃以下の子の世界に変える事で近付く者を氷増に変えてしまうその様は、氷と冷気の化身と呼ぶに相応しい。
そんな凶悪なAクラスの魔物が、目の前に蠢いている。
その数、実に200匹。呆れる程に大漁だ。
10メートルを超える巨体だ一匹でも食い応えは抜群だろう。それがそれぞれ100匹以上。飽きるまで食べ尽してもまだ余るほどだ。
イセエビやボタンエビ、前世で少しだけ食べた事のある最高級の美味しいエビ、それらよりも更に、比較にならない程に美味しいエビ。
刺身で食べたりしゃぶしゃぶにして食べる新鮮な生のカニ、ジックリと焼き上げる事で香ばしく味も引き立つ焼きガニ。
どれも大好物だった。
そして、勿体ないから試した事にない食べ方とか色々ある。
これだけの量があれば本当に好きな食べ方を飽きるまで楽しめる。
「いきなりこんな大漁なんて、なんて幸先が良いんだ」
俺の中で食欲が暴走しているのが良く判る。だけど、止めるつもりは全くない。
Aランクの魔物が200匹もの大軍を成している。普通の人なら絶望に嘆くか、恐怖に身を震わせながら一瞬で命を失ってしまう状況だけども、俺には関係ない。
俺にとっては単なる漁の時間だ。
ルビー・クラブが放つ水と真空の刃も、アイス・ロブスターの放つ無数の氷の弾丸も冷気も俺の展開する防御障壁に阻まれて無力。
つまりは、俺の脅威ではないのだ。
ほとんど弱い者イジメそのままの構図だけども、だからと言って止めるつもりはない。目の前には最高の海の幸が並んでいるんだ。これを逃すなんて論外。
さて、問題はどうやって倒すかだ。ルビー・クラブもアイス・ロブスターも、カニやエビの魔物であるためか、普通のカニやエビを絞める手順で倒せたりするのは確認済み。とは言え、戦車の装甲の比じゃない固い外殻に覆われているので、生半可な一撃じゃあ占めるなんて不可能。
かと言って当然だけども、せっかくの絶品の海の幸、傷付けてしまって味を落とすようなマネをするのは論外だ。
ハサミや足の関節を狙って切り落とすなんて論外だし。強力に攻撃でバラバラにしてしまっては目も当てられない。
要するに、たた討伐するだけじゃなくて、いかにして素材を傷付けないで倒すかが、冒険者の腕の見せ所であり、同時に収入にも直結する訳だ。
さて、その上で俺はどうやって倒すか?
方法は決まっている。
激しい攻撃を全て展開した防御障壁で防ぎながら、極限まで圧縮した雷の針を相手の倍の数つくりだす。
そして1匹につき2本ずつ掃射する。それで終わり。
まず、1本目が相手の防御障壁を砕き、2本目が硬い外殻を貫き、突き刺さった頭の中で炸裂する。
局所的に放たれた超高電圧で残らず即死。身が焼き切れてしまわない様に調整してあるので、中身は刺身で食べられる超新鮮な完全な状態。
うん。今から今日の夜ご飯が楽しみだ。
ひとつ言っておくけれども、俺は別にフザケテいる訳でも、食材調達だと遊び半分でいる訳でもない。
ルビー・クラブやアイス・ロブスターの攻撃は、さっきも説明した通り人間なんて一瞬で死に至らしめる圧倒的な脅威だ。俺だって、もしも防御障壁を破られでもしたら、次の瞬間には即死だ。
それが判っているからこそ、躊躇いなく全力で瞬殺しているのだ。1匹ずつ相手をしていくなんてそんな事をしている余裕はない。全力で即座に全滅させる。魔物との戦いにおいてこれは基本だ。だからこそ、はた目には弱い者イジメの蹂躙劇になっても気にしない。
そんな訳で、戦闘と言うか蹂躙も終わったし、早速美味しいカニとエビを回収しよう。
まずは魔石の回収からだ。魔物の素材の中でもっとも重要なモノと言っても過言ではないので、これを回収するための専用の魔法があって、これを覚えるのは戦闘職にある者の、冒険者や軍人、騎士の係わりなく必須だったりする。
倒した、つまり死んだ魔物限定だけども、その魔法を使うと、魔石が実種の手元に現れる様になっている。しかも、どう言う訳か体内にあるハズの魔石がまるで空間転移でもしたかのように現れて、魔物の体には傷一つ付かないのだから、非常識としか言い様のないチート魔法だ。
そんなチート魔法なのに、ほとんどだれでも使える簡単な魔法なのだから何かがおかしい。明らかにオカシイのだけども、そこは突っ込むだけムダだろう。
とりあえず、魔石を回収したら次は本体の回収だ。美味しいカニとエビを次々とアイテムボックスに放り込んでいく。
アイテムボックスについては説明するまでもないだろう。所謂ゲームとかでお馴染みの便利機能やアイテムの事だ。
これについては特に説明する必要もないかも知れないが、一応言っておくと、この世界ではマジックアイテム、魔道具のアイテムボックスが主流だ。
魔法で同じ効果を造り出すことも出来るけれども、その場合は中に何か入れている間はずっと魔法を展開し続けないけいけない。その上、集中力を乱したりしたり、気絶したりした時には魔法の効果が途切れて中に収納していた物が全て溢れ出てしまう欠点もある。
実際、慣れないうちは睡眠中に魔法が途切れてしまって溢れ出した物で押し潰されてしまったりとかもしやすいらしい。
そんな訳で、基本的にマジックアイテムのアイテムボックスが主流になるのだけども、これは、淹れられる容量によって2つに分けられる。
容量の小さいモノをマジックバック。
容量の大きいモノをアイテムボックスと言う。
当然ながら機能によって値段も跳ね上がって、トラック一杯分程度の荷物を入れられる程度のマジックバックなら数万リーゼ程度、高級ブランドバック程度の値段で買えるけど、俺が持つのみたいに、無限に近いような容量のアイテムボックスとなると、億の単位どころじゃない値段が付く。
俺のは自作なので、実際にいくらくらいするのかは正確には知らないけど、まあ、原子力潜水艦がオプション丸々込みで買えるくらいの金額は最低でもすると思う。
まあ、そんな話はどうでも良いか。
それよりも、幸先よく絶品のエビ・カニを大量にゲットできたんだ。
となると次の獲物はどうするか?
元日本人としてはマグロは絶対に外せない。それにタイやヒラメといった高級白身魚も忘れてはいけないし、ブリやサケなんかも大好物。味やサンマなんかの青魚も逃してはいけないし、タコやイカは絶対だ。アワビにサザエ、ホタテやハマグリみたいな貝類も外す事は出来ない。
当然だけども、それらの魔物だ。
マグロやタイの魔物と言うのが存在するんだよこれが、まあ、タコやイカの魔物は前世でも有名だったけど、他にも色々と居るんだよ。
さてさて、まだまだ時間はあるし、次の獲物を狙ってみるのも良いかも知れない。
そんな訳で索敵魔法を展開して、周囲の魔物の様子、分布を調べてみると、明らかにおかしな事になっている。
「うん? これはどういう事かな・・・・・・」
そう言えば、大漁だと大喜びしていて気付かなかったけど、さっきのルビー・クラブとアイス・ロブスターの大軍も普通に考えたらおかしい。
Aランクの魔物が、200匹もの大軍を成しているなんて明らかに異常事態だ。
数匹程度の群ならともかく、そんな大軍が魔域を出てこんな所まで進軍してきているんだ。本来なら非常事態警報が発令されてしかるべき緊急事態だ。
さっき索敵魔法で確認した結果も明らかにオカシイ。
周囲50キロほどの範囲をとりあえず調べてみたんだけども、A・Bランクの魔物だけで600匹近くは居る。
魔域に近い防衛都市周辺とは言え、いくら何でもこの数は異常だ。
確実に何かが起きている。
問題は、いったい何が起きているのかだ・・・・・・。
そんな事を考えながら魔物の位置と動向を監視していると、一部の魔物の買う先に思い至る。
あの先は、確か初心者冒険者用の狩場だ。
初心者用の狩場とは、その名の通り、実力がまだ未熟なE+ランクまでの冒険者のために、安全に実戦で経験を積めるようにと、ギルドが先のエリアでD-以上の魔物を間引いて、E+までの魔物しかいない様にしている練習用の狩場の事だ。
若手育成のためのサポートの一環でもある。
当然、そこではE+ランクまでの若手冒険者たちが魔物の討伐をしている訳だけども、どうもそこに向かって大量の魔物が押し寄せているようだ。
しかもそのその大半がDランク以上。A・Bランクの魔物までいる。
探ってみると、数十組の冒険者パーティーが居るみたいだけども、彼らじゃあ全員そろって一丸となって挑んでも、Bクラスの魔物が一匹襲ってきたら成す術もなく全滅するしかない。
「放っておく訳にはいかないよね」
ギルドの方でも流石にもう異常に気付いているハズだし、早急に対策も取られているだろうけど、間に合わなかったら彼らは成す術もなく死んでしまう事になる。
そして、俺には彼らを護り、助けられるだけの力がある。
助けられるのだから助けるべきだ。そんな言い訳をしながら初心者用の狩場に向かいながら、そこへと向かう魔物を片っ端から倒していく。
当然だけども、倒した魔物の回収も忘れない。
いや、救助に行くならそんな事してないで急げよと言われそうだけど、これだけは譲れない。
だって、倒した魔物の中には俺が欲しかった海鮮系の魔物がこれでもかといるんだよ。
せっかく倒したのに回収しないで、それを無駄にするなんてもったいない事出来る訳ないじゃないか。
それに、向こうにつくまでに出来る限り多くの魔物を倒してしまえば、それだけで自由文な助けになるし。
そうやって片っ端から魔物を叩きのめしながら初心者用の狩場に向かった俺は、そこで戦5美人組の少女たちを見付けた