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「よくぞ参られたなアベル殿にミランダ殿。我らエルフは貴殿らを歓迎する。心行くまで滞在されるがよい」
「こちらこそ訪問を許可していただいた事、心より感謝します。せっかくの機会ですので、多くの事を学ばせてもらいたいと思います」
さて、王都ミスティルティンに着いた俺たちだが、今どこにいるかと言えば王城。しかもエルフの王。全てのエルフを統べる統治者であり、ユリィの父でもある人物と対面中である。
王の名はメリアス・ノルン・ユグドラシル。
御年三百歳になり、統治者として二百年に渡り君臨し続けて来た人物であり、俺とミランダと同じES+ランクの実力者でもある。
正直言って威厳が半端ない。
この一年で何人もの王と対面して来たけれども、彼はこれまで会って来た王とは次元が違う。
為政者としての風格と言うのだろうか?
有無も言わさぬ凄みがある。
そして、人を引き付けるカリスマに、覇気が漲っているかのような力強さ。長い年月を経て培われた深い知性を感じる穏やかな瞳は、どんな嘘も見逃さない真実を映す鏡のようだ。
正直言って俺には荷が重い相手なんですけど・・・。
とは言っても、彼のターゲットは間違いなく俺だ。グングニールの一件でミランダにもかなり興味を持っているようだけども、第一目標はどうやっても俺である事に変わりはない。
まあ、それはそうだろうと自分でも思う。
俺がこれまでにやらかしてきた事を考えれば、目標にそえないハズがない。
・・・千年ぶりのレジェンドクラス候補として名が挙がった者の調査に娘を送ってみれば、いきなり古代の遺跡から世界情勢をぶっ壊す様な危険物を発掘し、娘をいきなり弟子にしたかと思えば、少なくても後数年はかかるハズだった娘のSランクへのランクアップを僅か数ヶ月でさせるは、二回の魔域の活性化では信じられない程の戦果を挙げ、挙句の果てに十万年前の失われた魔法を復活させるどころか、オリジナルの強力過ぎる危険な魔法までも開発している。
一体どれだけやらかせば気が済むのだと思うだろう。
一国の王として、エルフと言う種を統べる者として、見逃せない存在だろう事は判る。
後、娘を持つ親としても色々と言いたい事があるみたいだけど・・・。
因みに、どうして俺がやらかした事の詳細を彼が知っているかと言えば、当然だけどユリィが報告しているからだ。
ユリィだけじゃない、ケイもシャクティたちも、携帯を使って子にに定期的に俺の事を報告している。
まあ当然だ。そもそも、本来彼女たちは俺の監視役として、人となりを見極める審査員として派遣されているのだから、俺の事を報告しない方がおかしい。
でまあ、この様子から見ても、報告を受けた各国の王が頭を抱えていたのは間違いないだろう。
うん。冷静に振り返ってみると、これのでやらかしてきたのがハッキリと解る。
なんと言うか、もう少し穏便に過ごせなかったのかと本気で思う。
なにもかも本当に今更なんだけどね・・・。
「そう固くなる事はない。余としても其方とはじっくりと話し合いたいと思っておるのだ」
でしょうね。色々と言いたい事も聞きたい事も山の様にある事だろう。
「ああそれは無理ですよ。この子は躊躇いも無く想像を絶するような非常識な事をやらかすくせに、どうしてか根は微妙に小心者だったりしますから、王の威厳に怖気づいてるんですよ」
「フム。そうなのか?」
ミランダ。事実だけど余計な事を言わない。王も俺の様子を見て納得してしまったみたいだし、どうするんだよこれ本当に・・・?
「なんと言うか、話に聞いて想定していたよりの更に厄介な御仁の様じゃな」
「本当に、まあ年齢を考えれば仕方ない事なのかも知れませんけどね。強さの割に社会経験がほぼ皆無ですし、強くなる事に集中するあまり、一年前まで人付き合いすらほぼ無かったみたいですし」
反論のしようもない事実だけど、本人の前で心底どうしたものかと深い溜息までつくのは止めて欲しい。
「今も反論したいところだけど反論のしようもないから、せめて自分の前で言わないでくれないかなとか思っていますよ。キミの場合は本気でビシッと言っておかないと、何時か本当に取り返しのつかない事を仕出かしそうだから、釘を刺せる時に刺しておかないといけないのよ。判っている?」
「ああ、それは確かにその通りであるな。そもそも、既に取り返しのつかないレベルの事をいくつも仕出かしている気もするがの・・・」
なんだろう、本当に何も言い返せない。特に不要に発掘して危険物については本当に、ミランダがいなかったらどんな事になっていたか判ったものじゃないから、不用意に反論するのは墓穴を掘ることにしかならないとヒシヒシと感じる。
「あの、確かに自分でも色々とやらかしているのは自覚してますけど、そんな取り返しのつかないような事はしてないつもりなんですけど・・・」
「呆れた。まさか本当に全く気付いてないなんて・・・」
「これは本当に、シッカリと常識を解いておかねばならぬな・・・」
何もそんな世界の終わりのような絶望的な顔をしなくても・・・。
イヤ、本当にそこまでか、そこまでの事をやらかしているか・・・?
「其方は理解していないようだがな。例の装機竜人の事以外にも、前回の魔域の活性化で使って見せた魔法の数々も十分に問題なのだよ」
「十万年も前に失われていたハズの魔法に、オリジナルの魔法? そんなものをポンポン使って問題にならないとでも本当に思っていたの?」
どうやらディス・フレイムをはじめとする魔法の数々が大問題らしい。
それならそれで、もっと早くに教えて欲しかったとミランダを見るのだけど・・・。
「まさかその程度の事も判ってないとは夢にも思わなかったわ・・・」
と頭を抱えている。
イヤ、ミランダをしてそこまで言わせるほどの事なのか?
本気で、全く自覚が無いのだけど・・・。
「いい? そもそもキミが復元した十万年前の魔法の数々だけども、どうして使われなくなったのか、失われたのか理解しているの? あの魔法が使われなくなったのは、使えるだけの魔力を持つ者がいなかったのもあるけれども、何よりもあまりなも強大過ぎる破壊力が必要なくなったからでもあるのよ?」
「余りに強すぎる力は逆にこちらの身を亡ぼす。魔法に限らず、様々なものが開発されてはその危険性故に日の目を浴びる事無く封印されてきているのだよ」
こいつダメだと言わんばかりに呆れられてしまった。
しかも全くもってその通りだし・・・。
いや本当に、少しは考えようよ俺・・・。少し考えれば判る事じゃん。どうしてもう少し頭を使えないかな。今更遅いけどさ・・・。
そもそも、ディス・フレイムはともかく、フレイム・ワールドは一度使っただけでヤバすぎると俺も再度封印しただろうが。同じ事だよ。世界中の国や研究者が魔法にしろ魔工学や錬金術にしろ常に新しい研究を続けている。だけど、その中で実際に世に出るのはほんの一部だけだ。中にはその危険性故に研究自体が無かった事にされて完全に消し去られるようにものも少なくはない。
それは世界が変わっても、どんな分野であっても変わる事の無い不文律だ。
「流石に魔法式を流失するような事はしてないからいいけど、それでも、中には興味を持って再現しようとしているバカもいるハズだから、本当に危ないのよ。判ってる?」
ハイ。判っていませんでした。自分の迂闊さと救い様のないバカさ加減に呆れるしかない。
本当に何をやらかしているんだ俺?
「まあ、ここでようやく自覚したのがせめてもの救いか。その意味でも、この面会の席を設けて本当に良かった」
「そうですね。私としてもまさかここまで抜けているとは思いもしませんでしたから、ようやく彼が自分の危険性を少しは自覚してくれたのは何よりです」
二人して言いたい事言ってくれてと文句を言える立場に一切ないのが悲しい。
本気で俺は何をやらかしていたんだと今更ながらにこれまでの事を振り返る。何か、俺が気付いていないだけで他にもシャレにならない事をやらかしている気がして仕方がない。
どうなんだろう、これはまた本気で呆れられるのを覚悟で後でミランダに聞いておいた方が良いな。これ以上、無自覚なままに放置するのはは本気でシャレにならない所の話じゃない。
「しかし、流石に少し不安になるな。ここまで常識外れの者に弟子入りしているとは、娘がとんでもない方向に育って行ってしまうのではないかと不安になるわ・・・」
「お気持ちは判りますが、そちらは大丈夫ですよ。むしろ反面教師としてはこれ以上ありませんから、逆にいい勉強になると思いますよ」
うん。またしても何も言えない。
メリアス王が娘のユリィを心配するのは当然だし、ミランダの言う様に俺は反面教師としてもらわないと、本当に俺の様になったりしたら困る。
「そうだな、それにミランダ殿が一緒であれば何の心配も無かろう。これからも彼の事で苦労する事になるであろうが、どうかよろしく頼む。本当に貴殿がいなければどのような惨事を引き起こすか判らぬ故な」
「お任せを。確かに彼には頭を抱えさせられる事も多いですけど、これまでにないほどに刺激的な日々を送れて充実していますし、新しい発見やこれまで気付けなかったことを理解するキッカケになったりと、私自身も様々な事を得られています。それに、一度係わってしまった以上は放り出す訳にもいきませんし、これからもシッカリと手綱を握らせていただきますよ」
なんだろう。俺を比較対象にしてミランダが信じられない程に常識人になっているんだけど・・・。ミランダってSクラスの中でも特に破天荒で自由奔放をそのまま絵にしたような人物だったハズが、俺を比較対象にしたら比べ物にならない程の常識人になってる?
イヤイヤイヤ・・・。
まさかそんな・・・。そんな事があるハズがない・・・。
俺は前世を平和な日本で過ごした平和主義者だ。臆病者の小心者で、トラブルや面倒事は出来る限り避けたい事なかれ主義者の、どれだけ力があったところで人畜無害の平和な一般人のハズ・・・。
アレ?
そんな訳ないだろと自分で自分に突っ込みを入れたくなってきた。
「ともかく、少しは自分の事を自覚してくれただけでも、こうして会談した甲斐があったというモノ。貴殿らの人となりも知る事が出来たし、とりあえず心配するような事は無いようだ。後は、心行くまで初めて訪れる我が国を楽しんでいくがよい」
「はっ、ありがとうございます」
「こちらこそお会いできて良かったです。しばらくの間お世話になりますがどうぞよろしくお願いします」
こうして、俺にいい加減にしろと注意をするために開かれたようなエルフの国との話し合いの席は無事に終わり、俺たちは正式に客人としてユグドラシルで自由に過ごす許可を得たのだった。




