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 そんな訳で無事にローレラントの魔域の活性化も切り抜けられて、ようやく念願のゆったりとした観光旅を楽しめる事になった。

 勿論、新たに仲間に加わった三人を含む弟子の強化はシッカリと続けているし、その過程で魔物の討伐もある程度はしているけれども、特にトラブルに見舞われる事も無く平穏な日常を過ごしながら、様々な国を巡り観光を楽しみ、その国の料理を存分に味わいながら、半年にわたる気楽な旅をつづける事が出来た。

 そう、半年もの間気楽に旅を続けられたのだ。

 その前の激動の半年は一体何だったのだというくらいに穏やかに過ごせた。

 メリアたちとの関係も多少は改善できたと思うし、本当に有意義な時間を過ごせたものだ。


 で今、俺が何をしているかと言うと、装機竜人の実戦テストを行っている。

 この半年間の間、発掘した装機竜人の研究をひたすらの様に続け、ある程度自分のオリジナル専用機の設計についても目途がついてきた。

 だけどまだ完璧ではない。と言うのも、俺自身がこの機体の性能を完全に把握しきれているとは言い方からだ。

 これまでにも幾度となく動かしてはいるが、中々全ての性能を出し切らせる機会はなく。レジェンドクラスに匹敵する機体性能を完全に体感できていないのだ。

 この機体のフル・スペックはどれだけのモノなのか?

 その真価を実際に体感しなければ、俺はこの機体の全てを把握する事は出来ない。

 

 俺の目標はこの機体を上回る性能を誇る機体を造り上げる事だ。そのためにも目標となる機体の全てを知っっておかなければならない。

 今の俺はどの程度のレベルの機体を造り上げられるのか?

 今の俺の技術はどの程度のレベルなのか?


 この実戦テストを経て、築き上げた技術の全てを賭けて造り出す機体が、一体どの程度の性能を発揮してくれるか?

 これ以上ないくらいに楽しみであり、不安でもある。

 まあ、不安に思う方がおこがましいのは判っている。

 素人が初めて造った試作機が、はるか昔に実戦機として配備されていた優れた機体に敵う訳がない。

 まあ、とりあえず今はようやくフル・スペックで動かせられるこの機体の圧倒的な性能をとことん楽しもう。


 因みに、どうして今までフル・スペックを出さなかったのかと言うと、単純に機会が無かったからだ。

 ローレラントの魔域の活性化の間に試しておけば良かったのだけど、ついうっかり見逃してしまった為、フル・スペックで動かしえる機会を失てしまったのだ。

 後になってその事実に気付いた時には、ミランダと一緒にのた打ち回って後悔した。

 それと、せっかくの機会を見逃したのは他のSクラスたちも一緒で、、どうしてせっかくの機会をミスミス不意にしたのだろうと後になってから真剣に悩んだりもした。

 まあそれはともかくと強い、ぶっちゃけ、リミッターを解除したこの機体のスペックは想像を絶する。

 チョット動かしただけでシャレにならない環境破壊を引き起こすので、下手な場所で稼働実験を行う訳にもいかないのだ。

 まあ、そちらは実験区画を完全に結界で覆ってしまえばどうとでもなるのだけど、実のところもう一つ結構深刻な問題があったりもする。

 それは、Sクラスの最高峰である俺とミランダの操縦による機体性能の詳細なデータを欲する各国の技術者たちだ。彼らからしてみれば、俺たちがフル・スペックで機体を動かした時の観測データですらも喉から手が出るほどに欲しい貴重な情報の山だ。

 そんな貴重な、それこそこれからの研究・開発にどれだけの意味を持つか想像もつかない程に貴重なデータを得る機会を目の前にして黙っていられるハズがない。

 彼らはそれこそ俺たちが引くほどの熱意と情熱をもって詰め寄ってきた。

 それはどの国でも同じ事で、これまで、世界中をゆったりと旅して周りながらもフル・スペックで動かせる機会を探していたのだけども、正直、どこの国でも技術者たちが虎視眈々と狙っていてその機会がついぞなかったのだ。

 更に言うと、機体性能を完全に引きだして詳細なデータを収集するのに必要な条件が中々揃わなかったのも大きい。 

 そもそも装機竜人は魔物の脅威に対抗するために造られ決戦兵器だ。

 それ故にその真の成果を存分に発揮するのは魔物との戦闘において。例えばミランダの駆る機体と模擬戦を行ったとしても、確かにフル・スペックで動かした詳細なデータを得る事は出来るがそれはあくまで不完全なものでしかなく、実際にフル・スペックの機体性能の完全で詳細なデータを得る事は出来ないのだ。

 正直、本気でローレラントの魔域の活性化中に装機竜人を使わなかったことが心から悔やまれる。

 どうしてあんな絶好の機会をミスミスのがしてしまったのか・・・。


 そんな中でとうとう見つけた千載一遇のチャンス。

 この機会を逃すほど愚かではない。

 そんな訳でやって来たぜ。グレイブノヴァの魔域。


 グレイブノヴァ帝国が接する魔域において異変が起き始めたのはつい一週間ほど前の事だ。

 異変と言っても魔域の活性化が始まる予兆などではない。ただ、明らかな高位の魔物が通常よりも多く出現し始めたのだ。

 C+までの魔物の出現が途絶え、代わりにSクラスを含む高位の魔物だけがゲートから現れるようになった。

 こういったケースは過去にも幾度となく起きている。

 別に警戒する程の異常ではないのだけども、国としては看過できない脅威である事に変わりはない。

 と言いうか、活性化中でもないのにSクラスの魔物が多ければ一日に数十匹以上も現れるのだ。ハッキリ言ってシャレにならない脅威である。

 とまあ、そんな絶好の狩場、実験場が現れたのだ。存分に有効活用させてもらう所存だ。

 情報を入手するとともにまっ先に向かったにも拘らず、既に来ていたSランクたちの順番待ちで一週間も待つ羽目になってしまったけれども、講師で無事に順番が来たからにはおもっいきりやらせてもらう。


 事前に入手した情報では、今日はES+ランクの魔物の姿も複数確認されているらしい。機体性能の確認にうってつけの相手だ。

 実の所、今日までにこの装機竜人のフル・スペックを確かめようと魔域内部でSクラスの魔物との実戦テストを行った中には、その日はSクラスでも低位の魔物しか現れなくて不完全燃焼のまま終わってしまったのも少なくない。

 機体性能が高すぎる故に、少なくても相手もES+ランクの魔物がそれも複数でなければ真の成果を発揮する事は出来ないという現実が生んだ悲劇で、せっかくの機会だったのに、肝心のデータが取れなかった可哀想なSランクは、もう一度魔域内部での実戦テストを行うためにまた順番待ちをしている。

 

 どうやら俺はそんな悲劇を味合わなくてよさそうだ。

 レーダーに魔物の反応。ES+ランクの魔物十匹。慣らしの相手としては十分だ。

 一気に速度を最大地まで引き上げて探知した魔物の元に向かう。リミッターを外したこの機体の最高速度は秒速百キロを超え、俺の最高速度の三倍に及ぶ。

 圧倒的な速度でものの数秒で距離を詰めると同時に、こちらに気付いて魔法による迎撃をしてくる相手の魔法を尽く避け、そのままの速度で交差する瞬間に剣で切り裂く。

 更に機体を一気に反転させ、速度を落とさないままもう一匹の魔物に向かい一閃。

 そのまま最高速度での高速反転を繰り返し、十匹を残らず斬り倒す。


 うん。これは凄い。云うまでも無く無茶にも程があるような荒業だったけれども、機体は問題なくついて来てくれた。

 最高速度のままでも敵の攻撃を確実に躱せる機動性を発揮できるのも確認できた。

 因みに、魔物との交戦地帯である半径百キロの空間に結界を張ってから戦闘を開始したので、尽く避けた魔物の攻撃も一切周りに被害はしていない。


 うん。魔域の活性化中ではこんな心遣いなんてしている余裕も無かったし、そう言う意味では本当にフル・スペックを出せたか怪しいし、むしろやらなくて良かったのかも知れない。

 てそれよりも実戦テストの続きだ。

 今ので近接戦闘についてはある程度のデータが取れた。

 次は魔竜砲を含む砲撃戦用兵装の確認だ。

 特にリミッターを解除したこの機体の魔竜砲は現在の装機竜人のモノとは比較にならない威力を持っているのだし、他の本来ならばサブ・ウェポンに過ぎない兵装も、Sクラスにすら十分通用する強力な兵装になっている。それらがどれだけの効力を発揮するのか、実際に確かめなくてはいけない。


 レーダーには五十キロ先にAランクの魔物の群と複数のSクラスの魔物の反応がある。これを相手にまずはプラズマ・ブラストを試してみよう。

 プラズマ・ブラストは追尾機能のあるプラズマの弾丸で、ロックした標的に命中すると直径五百メートル程の破壊力場を生み出してその中の魔物を分子レベルで崩壊させる。

 そして、五十キロ程度の距離ならここからでも十分射程範囲内だ。

 ターゲットをSクラスの魔物にロックして放つ。プラズマ・ブラストの砲門は六、六の砲門から放たれた一メートル程のプラズマ球は次の瞬間には五十キロ先の標的を捉える。

 圧倒的な破壊の奔流を宿したエネルギーフィールドがAクラスの魔物を一瞬にして消し去る。そしてターゲットのSクラスの魔物も最後の爆縮の瞬間に共に跡形も無く消し去られる。

 十分過ぎる破壊力だ。これを最大で一門につき毎秒五発のペースで打ち出す事が出来る。

 殲滅兵器。無限に溢れ出る魔物に対抗するために造られた兵器としては十分過ぎる性能だろう。と言うよりも、こんなトンデモ兵器を数千、数万と揃えて一斉に放たなければならない程、十万年前の戦いは熾烈だったのかと改めて戦慄する。


 まあ、それについては今同行考えても仕方がないので無視。残りの搭載兵器のテストを続ける。

 うん。どれもこれも今の物とは比べるのもバカバカしい危険物だよ。どれだけの重火器を満載にすれば気が済むんだってレベルの極悪さ加減にいい加減胃が痛くなってくる。

 何だこの極悪な兵器は?

 本気でどうにかしているとしか思えないんだけど、遺跡に残されたデータだと、この量産型装機竜人グングニールは当時十万機以上が生産され、運用されていたという。

 これはつまり、当時は最低でも十万人以上のSランクがいたのは確定と言う事なのだけれども、いや、他にも量産型の装機竜人は何種類もあるとされていたし、そもそも、Sクラスの全員が装機竜人に乗る訳でもないのだから、そう考えると百万どころか一千万人近くいとしても不思議ではなかったりして・・・。


 それにしてもこうして実勢に戦ってみるとその力を実感する。

 この機体を使っていれば、ローレラントの魔域の活性化ももっと楽に戦えたのにと本気で思う。

 実際、機体の駆動の為に使っている俺の魔力など微々たるものだ。当然だが機体動力の大半は動力部の魔石が担っている。それも、この魔石、間違いなくレジェンドクラス級の魔力を蓄えられるように錬金術で造り替えられている。

 まあ、考えてみれば当然の事なんだけども、レジェンドクラスの魔物に対抗しようと思えば、それと同等の魔力出力が必要になる。つまりは、動力としてレジェンドクラス級の魔石が必要と言う事だ。

 そんなレジェンドクラス級の魔力を動力として持っている機体で戦うのだから、当然生身とは比べ物にならない程ら消耗は少なくて済む。

 その上、この機体の搭載兵器ならば魔域の活性化中の膨大な数の魔物の殲滅にも適している。

 と言うか、活性化などの比ではない十万年前の激戦を想定して設計されているのだから、むしろ活性化程度の魔物の殲滅戦など余裕に決まっている。

 本気で何をやっていたんだかと思うが、今はそれよりも残りの最後のテストだ。


 最後に残った大本命。魔竜砲。ドラゴニック・カノンの性能実験。

 フルパワーで放たれたこの兵装が一体どれだけの破壊係数を発揮するか、正直言って恐ろしいが、試さない訳にはいかない。

 レーダから魔物の配置を確認すると、人形から竜型に変形し、一気に駆け抜けて魔物を誘導して行く。

 魔物が一直線になるように上手く誘導して行き、大半の魔物が射程に入ったところで再び人形に変形し、最高速度から一気に停止。同時に射線に入った魔物の群に向かって魔竜砲を放つ。

 瞬間。辺りを閃光が貫く。半径二百メートル千キロにも及ぶ絶対の破壊の奔流。全てを無に帰すエネルギーは射線上に居た全てのモノを完全に消し去った。

 圧倒的。その一言に尽きるだろう。ES+ランクを含む百近いSランクの魔物に、数え切れない数のA・Bランクの魔物を跡形も無く消し飛ばした。

 計算上、ドラゴニック・カノンは五十回は撃てるはずだ。その破壊係数がどれだけのモノになるか想像もつかない。

 閃光が過ぎ去った後には何も残っていない。もし、この一撃が大地に降り注いだのなら、破壊の奔流に消し飛ばされた跡地に残るクレーターの直径は二百キロ程度では済むはずがない。確実に著計千キロを超える範囲が全てを消し去られた後の荒野になっているのは確実だ。

 場合によっては、それこそ魔域そのものを完全に消し去る一撃。そのあまりの力に思わず震えてしまう。

 これが、十万年前の戦いの鱗片・・・。


 これは考えを改めないとシャレにならない事になる。

 こんな危険物に匹敵する様な機体なんて造れるかっ!!

 俺は俺の造りたいように造る。こんな危険物には間違ってもしない。所詮は趣味の塊なのだから、自分の好きな様に思いっきり拘って造ってやる。

 

 とりあえずは、この危険物の更に詳細なデータを取るために、新たに現れたSクラスの魔物へとドラゴニック・カノンの照準を向ける。



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