2(改修版)
「マリージアか、見た感じだとイタリアに近いかな?」
まあ、前世で実際にイタリアに行った事なんてないので、あくまでそんな気がするってだけだが。
マリージア王国は人口3億人を誇る、ベルゼリアとほぼ同等の、ヒューマンの国では有数の大国だ。
今更だけども、ココでこの世界の事を少し説明しておこう。
この世界、ネーゼリアの総人口は凡そ100億人。その内の約半数をヒューマンが占めている。
ヒューマンは、地球の人間と基本的に同じで、それ以外の種として、ファンタジーの定番であるエルフやドワーフ、獣人や竜人など14の種族が存在し、それぞれの種族ごとに国を成している。
要するに、この世界の人間種は15種族の総称を指す訳だ。
そんな15種族の一角を成すヒューマンだけども、ぶっちゃけた話、全種族の中で最弱だったりする。
人口は全種族の中でブッチギリに多いし、俗にヒューマンの大陸と呼ばれる、レザリア大陸の全域を支配している訳だけども、ヒューマンの全ての国の国力を統合しても、例えばエルフの国ユグドラシルの10分の1にも満たないだろう。
それ程までに、ヒュマンと他の種族との間に隔絶した力の差があるのには当然理由があるのだけども、その理由の一端は、ヒューマンと他種族との間の交流、国交が完全に断絶している事にある。
詳しくはいずれ話すけどこれは、2万年ほど前にヒューマンから他種族への侵略戦争を仕掛けたのが直接の原因で、それ以前にも色々とやらかしていたのもあっても、もう我慢の限界に達したかららしい。
因みに、この時の首謀者はどうやら転生者らしい・・・・・・・。
本気で何をやらかしてくれているのか・・・・・・。
おかげで、せっかくエルフとかが実際に居る世界に転生したのに、これから先あえる機会が来るかどうかさえも不明と来た。
・・・・・・これでは、せっかく転生したのに楽しみが半分奪われたようなものだ。
まあそれはひとまず置いておいて、この世界の説明に戻ると、エルフとか所謂、地球ファンタジーでは長命種とされていた種族だけども、この世界では種族によって寿命が変わる事はない。だから、ヒューマンもエルフも基本の寿命はほぼ同じだ。
ただし、その代わりにこの世界では力の強い者ほどに長寿になる。
つまり、強ければ強い程に寿命も延びる訳だ。
具体的に説明すれば、まずこの世界の一般人の平均寿命が、凡そ80歳なのに対して、D-まで力を付ければ、寿命は一気に1、5倍の120歳以上にまでなる。更に、老いからも解放され、寿命で死ぬ時でも精々40代後半程度までにしか老いない。
そして、力が上がれば上がるほど、当然ながら寿命も延びて行き。B-ランクにまで成れば寿命は250歳を超えるし、Sクラスになれば最低でね600歳以上生きるのは確定。SSランク以上に成れば1000年以上生きる事になる。
そして、レジェンドクラスの超越者になれば数千年を生きる事になるし、10万年まえの超絶チート転生者たちの様なΩクラスになれば1万年の時を生きる事になるそうだ。
そこまで行くと、もう想像も出来ないのだけど・・・・・・。
とりあえず、今の段階で俺の寿命は1000年を超えている事だけは理解してもらえたと思う。
そして、そんな長い時を国に雁字搦めにされて生きたくない気持ちも判ってもらえると思う。
この世界、と言うか俺たちの種族であるヒューマンにとって、Sクラスの実力者は本当に貴重なのだ。だからこそ、もし俺が既にSクラスになっている事がバレたりすると、本当に面倒な事になるのは決まっている。
・・・・・・さっきも説明したけど、ヒューマンはこの世界の人口の半数以上、50億を超える人口を誇る種族だ。
ただその一方で、最弱の種族でもある。
例えばの話、ヒューマンが一致妥結してエルフやドワーフの戦争を仕掛けたとするとどうなるか?
一瞬で返り討ちにあってお終いだ。50億の人口を誇るヒューマンが総力を挙げて挑んで、3億程の人口のエルフに手も足も出せずに敗退する事になる。
どうしてそんな事が断言できるかって?
実際に2万年程前にあったからだよ。
そして、そのバカげた戦争を仕掛けたのが、ヒューマンが他種族から関係を断絶された理由でもある。
まあそれはとりあえず置いておいて、そんな最弱の種族であるヒューマンには現在500人のSクラスが居る。
逆に言えば、500人しかSクラスの実力者が居ない。
そして、その数少ないSクラスの実力者たちは、戦力としてだけではなく、本当に文字通り魔物の侵攻に立ち向かう為に必要不可欠な存在なのだ。
何故か?
言うまでもなく、これも前に説明したけれども、この世界の巨大ロボット、装機人や装機竜、そして装機竜人と言った強力な兵器は、Sクラスの実力がなければそもそも造る事が出来ないからだ。
巨大ロボットの装機竜人などを駆る竜騎士は国防の要だ。ベルゼリアやマリージアなどの大国は、500機を超える数を保有している。
逆に言えば、1機でSクラスの魔物と対抗できる兵器をそれ程の数を揃えなければ、魔物の脅威に対抗しきれないとも言える。
そして、当ゼタだけどもどれだけ強力な兵器であろうとも、戦い続けれは損傷し壊れてしまいもする。
日々の整備や多少の修理程度ならば、整備員で何とか出来るけれども、大破してしまった機体の修復や、修復が出来ない機体の代わりを用意するとなると、それはSクラスの力がなければ出来なくなる。
これで、Sクラスの重要性が理解してもらえただろうか。
詰まる所、国を護るための戦力を確保するために、Sクラスの実力者の協力が必要不可欠な訳だ。
で、そんな超重要人物であるSクラスの500人なんだけども、その中で国に仕えている人は、僅か10分の1の50人しかいない。
その上、祖国ベルゼリアには今兆度Sクラスが居ないのだ。
これで、俺がSクラスになっている事がバレたら、絶対に面倒な事になる理由も理解してもらえただろう。
「とりあえず、無事に国を越えられたから問題無い訳だし、これからの事を決めるかな」
と言っても、この国の王都に行くつもりは無い。観光なら王とはメインスポットになるのだけども、国を出て時間も経っていないのにいきなり行くと、今度はこの国で面倒な事になりそうなのが目に見えているので、行くとしたら次回来た時とかになるだろう。
そうなると、必然的に行き先も決まってくる。
「防衛都市に行くとして何処にするか」
防衛都市とは、その名の通り国防の要となる都市であり、魔域に接する国境線上に等間隔で並ぶように造られている。魔物との戦いの為の防衛拠点。
ここで、要塞や城塞などの完全な軍事拠点じゃないのかと不思議に思うかも知れないけど、魔物との戦いは戦争の様に終わりのあるものじゃあない。
この世界では、何十万年、何百万年と続く日常の一部なのだ。
だからこそ、防衛都市と言う形が成り立つ。日常を護るための最前線に位置する都市。それと同時に日常を維持するための最前線でもある都市。
護るためと維持するため、どちらも同じだろうと思うかも知れないけれども、微妙に違ったりする。
魔物は、確かに人類にとって脅威であると同時に、なくてはならない資源でもあるからだ。
まずは食料として大変に優秀だ。
と言うか、魔物の肉は本当に美味しい。
それも、強い魔物ほどその味は至上のものになって行って、B・Aランクの魔物の肉は、前世の高級ブランド肉や熟成肉よりもはるかに美味しいし、Sクラスの肉となるともう比べることも出来ない至上の味だ。
そう、一年前に偶発的に倒したバジリクスの肉。アレは本当に至上の美味なんて生易しい言葉じゃあ言い表せない至高の美味だった。
他にも、修行しながら倒したBランクのサンダーバッファローやジェノサイドボア、Aランクのロック鳥やフレイムマンモスも最高の美味だった。
本当に、食に関してはこの世界に転生した事を心から感謝する。それくらいこの世界には想像を絶する美味が溢れている。
だからこそ元日本人としては、海の魔物、その味に期待して、心躍らせずにはいられない。
と話が逸れた。とりあえず、食料として大変優秀である事は理解してもらえただろう。
それ以外にも、角や牙などのや外殻などの素材は、剣などに使われたり鎧などに使われるだけでなく、戦車などの装甲や装機竜人などの兵器の材料としても使われる。
他にも、最高級の素材として、王侯貴族のドレスなどにも使われる。
そして、何よりも重要なのが、魔物の心臓部とも言える魔石。
これこそが、この世界の文明を支える最重要物資であり。魔物から取られる資源の中でも最も価値のあるものだ。
魔石はこの世界におけるエネルギーシステムの根幹をなしている。
言ってしまえば、地球なおける電気やガス、その基となる石油や核物質などと同じ役割を担っているわけだ。
科学技術の代わりをなす魔工学や錬金術で作られた魔道具など、魔道四輪や飛空艇などの動力としても使われ、また都市のエネルギー源としても使われている。
電気やガスに相当するライフラインは、魔石から魔力として供給されているのだ。
それに、水道設備を動かすのにもつかわれているので、魔石がなければ都市のライフラインは完全に停止してしまう。
そして、魔物の進行に対する防衛にも魔石の力は必要不可欠だ。
魔物の侵攻から都市を守る決壊もまた、魔石の魔力を基に展開されているし、魔物を打ち倒す兵器の動力もまた魔石になって成り立っている。
そんな訳で、この世界の生活は魔物という資源を活用することで成り立っているといっても過言じゃあない。
だからこそ、日常を維持するために、倒した魔物の素材を回収して、活用できるためにするための拠点、都市が必要になる訳で、防衛都市とは、魔物の進行を食い止めるためにあると共に、魔物の素材を集めるための一大拠点でもある。
さて、その中のどこに行くとしようかな?