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さて、弟子たちが休みに入って一週間、魔域の活性化が始まってもう三週間にもなり、どうやら活性化が終わるより先にメリアたちが戦線に復帰しそうなんだけども、本当に何時になったら終わるのだろうか?
流石に、一向に終わる気配がないのにいい加減苛立ってきているんだが、こちらの事など一切お構いなしに、当たり前だけど活性化中の魔域は異界から魔物を掃いて捨てるほど呼び出し続けている。
本気で異界の生態系が崩れてもおかしくない程、数えるのもバカらしい数を殲滅しているのに、一向に終わりが見えないのはどういうことなのだろう?
ていうか、ゲームじゃないんだから無制限に魔物が湧いてこれるハズもないのに、いったい異界にはどれだけの数の魔物が溢れているんだと突っ込みたくなる。
「まあ、突っ込んだところで答えが返ってくる訳がないんだから無駄なんだけどね」
「判っていても突っ込みたくなるのよね。私もどうなってるのて何度思ったか」
答えが出ないこの疑問は、昔からずっと議論され続けて来たらしい。
今回の活性化で討伐された魔物の総数は確実に数億にのぼっている。或いは十億に達していてもおかしくない程の魔物が倒されているのだ。
半年前のマリージアでの活性化と併せて、一体どれだけの魔物が討伐されたか、それこそ本当に、異界の生態系が崩れておかしくないし、絶滅する種だって出ない方が逆に不自然な程なのに、どの種の魔物も変わらず現れ続けるし、本気で魔物の住む異界とはどんな場所なんだと不思議でならない。
「まあ、これだけ倒しているんだから、今回の活性化が終わったら、しばらくは起きないでしょ」
「それについては、本気でそう願うよ」
シャレや冗談でなくもう魔域の活性化なんて非常事態はお腹一杯だ。マリージアの時にも言った気もするけど当分は関わりたくない。
このローレラントで起きた魔域の活性化は、別に俺が行くのを決めたから起きた訳では、俺の責任ではないハズなのだけども、ミランダ曰くまったく無関係とも言い切れないとの事。
どういう事かというと、そもそもわずか半年足らずで魔域の活性化が起こるようなこと自体がまずありえないとの事。
活性化は数百年から数千年に一度の凶事。だけど、魔域は全ての国が接している。つまり、この世界には百を超える魔域があるのだ。
それ故に、一つの魔域が活性化を迎えるのは数百年から数千年に一度でも、世界全体では数年から数十年に一度のペースで起きている(最悪の凶事でありながらペースが速すぎるだろ)のだけども、流石に半年足らずの間に二度も起きるのは異常事態だそうだ。
それも、俺が発掘した装機竜人の事で頭が一杯のSランクが職場放棄したタイミングを狙い定めたかの様に起きたのだから、ものの見事に俺の行動の結果に思えなくもない。
それだけは何としても願い下げしたい。
俺の所為で起きたなんて事は絶対にないはずだ。
もしそうならトラブル体質とか厄介事に巻き込まれる運命なんて生易しいレベルの話じゃなくなる。
少なくてもそんな行く先々に血と殺戮と悲痛の連鎖が広がるような殺伐とした、不幸を撒き散らす宿命なんてゴメンこうむる。
だから、断じてこの魔域の活性化はは俺の所為で起きたのではないと断言しておく。
うん。そんな事は絶対にないはずだ。
てそうじゃなくて、確かにどれだけ殲滅しても絶滅しない魔物の生態系は謎以外の何ものでもないけれども、流石に一定数以上を倒すと個体数の回復の為かしばらくは異界から送り込まれなくなるらしい。
流石にげーるの様に無制限の無限湧きはしないらしいのでホッとするのだけど、要するに二回の活性化で短期間の内に膨大な数の魔物が討たれたので、今回のが終われば、少なくても無効数十年くらいは活性化が起きる心配はないらしい。
それならこの活性化もさっさと終われよと、もうそろそろ湧いてくる魔物の方も限界が来てもいいんじゃないかと思わなくもないけど、残念ながら今の所、終焉に向かう予兆も見られないのは困ったモノだ。
基本的には魔域の活性化は、次第に溢れ出す魔物の数が減少していく形で、終焉の予兆がみられるとの事で、マリージアでの様なケースは珍しいどころか初の事態らしい。
で、活性化は長くても一か月程度で終わるモノなので、そろそろ終わりに向けで魔物の出現数が減少し始める予兆が出始めて良い頃なのに、どういう訳だか、魔物の出現数は一向に減る様子を見せない。
これ以上の長期化は本気で勘弁して欲しい所なんだけど、どうしてか終わる気配は一切ない。
「ていうか、もう普通に、活性化を終わらせるのに十分な数の魔物を殲滅しているハズなんだけどね」
「あー、その辺りは統計学的なモノでしかないから、多分まだ誤差の範囲内なんじゃないかしら」
わざわざ、危険を冒して魔域内部で魔物の殲滅をするのは、それによって活性化の終焉が早まると証明されているからだ。
で、彼までにあれとミランダが魔域内部で倒した魔物の数は、これまで活性化を終わらせるのに必要とされていた魔物の討伐数をはるかに上回っている。
それなのに、どう言う訳が活性化は終わる気配すら見せない。
本気でどういう事だと問い質したい。 誰に問い質すんだという話になるけれども・・・。
「そんなに心配しなくても、アベルの所為で活性化が起きるなんてあるハズがないんだから気にしなくていいと思うけど」
「ありがと。そう言ってもらえると助かるよ。俺だってそう思うんだけどね。旅に出てからのトラブルの多さを考えるともしかしてを思ってしまうんだよ」
「あら、どうやら本気で気にしていたのね。焚き付けた私が言うのもなんだけど、一々そんなこと気にしていたら持たないわよ」
本気で心配になってきた俺にメリアがフォローを入れ、本気で感謝しているとミランダに笑われてしまった。いや、そこで本気で笑わなくてもいいだろう。
俺としては結構本気で悩んでいるのだ。
「とりあえず、メリアたちもまた戦場に出る事になるけど、大丈夫?」
まあ、これ以上この話題を続けるのも何なので、ひとまず話題を変える。
「大丈夫ですよ。アベルさんは心配し過ぎですよ」
「うん。本当にそうだよ。もっと私たちのことも信じてくれていいんじゃないかな」
なのだけど、若干不服そうにアレッサとメリアに返されてしまった。
アレ? 心配してはいけないのだろうか? どうにも良く判らない。
それに信じていない訳じゃない。彼女たちの実力は良く理解しているし、状況判断の的確さも年齢を考えれば完璧と言って良いレベルだ。ミランダのサポートもあるし、滅多な事ではやられないと判っているけれども、それでも、心配なのは変わらない。それだけの事なんだけど・・・。
「いや、大丈夫だとは思うんだけどね。前回のマリージアでの様な事もあるし、活性化中は何が起こるか判らないから」
なんだか言い訳くさい事を続けている自分に、アレっと不思議に思う。
まあ、実際に活性化中は何が起きても不思議じゃないのは事実だ。今回も何かやたらと長期化して見せているし、マリージアの時のような異常事態が起きないとも限らない。
「心配症というべきか、ニブチンというべきか、キミも本気で大概だね」
「甚だ不本意な言われようだと思うんだが・・・」
そう思うのは俺だけらしく、周りはそろって頷いているのが納得できない。
「まあ、鈍いというか、自分の事に無頓着でよく見えてないのは私も同じだけどね」
それはフォローなのだろうか?
ミランダの場合は無頓着ではなくて、全て判った上で振り回して遊んでいる気もするんだけど・・・。
「まあ、確かに気をつけておくに越した事はないけど、私が見ているんだから心配はいらないよ」
そういえば、戦線に復帰しても魔域内部での戦いにはミランダの付き添いがあるのだから心配する必要も無いんだった。
ああ、これは心配症とか、もう少し信じて欲しいと言われても仕方がないかも知れない。
「それに、私たちもこの一週間、別に遊んでいた訳じゃあありませんから。大丈夫ですよ」
それはまあ、シャリアの言う通りだ。戦線から遠ざかったとはいえ、別に彼女たちは遊んでいた訳じゃない。負傷者の治療など後方支援に積極的に加わり、結果として前線で戦うのとはまた違った多くの経験を積んでいる。結果として彼女たちは一週間前よりもはるかに強く、たくましくなっている。
・・・いや、女の子にたくましくはないか、経験を積んで人として成長したというべきだ。
「悪い悪い。キミたちが戦線に戻るよりもわ早く終わらせる予定だったのが、何時になっても終わる気配がないからいい加減ウンザリしていてね」
元々、活性化中に戦線に復帰させるつもりは無かったのでどうにも不安になってしまう。
というかマリージアでのあの現象。活性化の終わりの時のアレが、短時間で想定外の数のSクラスの魔物を殲滅した事でバランスが崩れて起きたのなら、今回も同じ現象が起きてもおかしくないハズなのに一度もそんな気配はない。
短時間に強力な魔物を倒し過ぎた事が原因で起きたんじゃないのなら、アレは一体何だったのか?
疑問ばかり増えて行くけど、答えを知る方法が無いのが困りものだ。
本当にどうにかならないものか?
ひょっとしたら、十万年前の転生者なら答えを知っていて、どこかに答えを残しているんじゃないかと思わなくもないけど、流石にどれだけチートでも全知全能じゃあるまいし、何でも知っているハズがないし、何でもかんでも過去の転生者の遺産に頼るのは良くない。
そんな事じゃ、この世界を本当の意味で存分に楽しめない。
それに他人に頼るのはともかく、頼り切るのは、任せっ放しなのは俺の主義に反する。
やっぱり、困難な事ならばこそ、自分の手で一つずつ解決していかないといけないと思う。その方が絶対に楽しいし、生きている充実感がある。
「ああ、それには同意するね。私もそろそろ飽きて来たよ。本気でさっさと終わらせてクレストでまったりのんびりを再開したいよ」
ミランダも元々ゆったり休むのには大賛成で、何時終わるともしれない激戦に身を投じていると余計に早くゆっくり休みたいと思うモノだ。
前世では死亡フラグの一つにされていた気もするが、そんな物は力尽くで叩き壊す。何が何でも叩き壊してまったりとして平和な日常を絶対に手に入れてやる。
死亡フラグが怖くてこんな想像を絶する世界で生きてられるか!!
なにかもう、この世界に毒されて開き直ってきている気がする。
いやそれで良いのだけれども・・・、むしろ、何時までも前世の地球の常識や考え方に囚われている方がどうかしている。
俺は上条刀ではなくアベル・ユーリア・レイベストだ。対までも元日本人としての感覚に囚われていたらこの世界では生きていけない。
まあ、人ではなく魔物とはいえ躊躇いも無く殺せるのだから、十分この世界に順応できているのかも知れないけれども、その辺りは転生した時の特典か、精神に異常をきたしているらしい影響だろうからどうともいえない。
・・・いや、本当に転生時に精神的に大きく変えられているのかは判らないんだけどね。
「俺も本気でさっさと終わらせてのんびりと食べ歩きでもしたいね。ここの料理も本当に美味しいんだけど、戦うためのエネルギー補給の面がどうしてもあるから、純粋に食事を楽しめないんだよな。やっぱりおいしい物は存分に楽しんでこそだし」
まあ少なくても食事に対しては、転生して呆れる程に貪欲になった事は確かだ。
そんな訳で食事についてはうるさいのだけど、今の食事自体には不満はない。ローレラントでも最高の料理人が腕を振るった最高の料理なのだから文句のつけようもないのだけども、どうしても明日の戦いの為のエネルギー補給をしているという感覚が付きまとって、食事自体を心から楽しめていないのだ。
食事を楽しめないのは単にお前の気持ちの持ちようの所為だろと反論されれば何も言い返せないのだけども、必要に迫られてではなくて、純粋に自分の好きに食事を楽しみたいと思うのだ。
「うん。私もそう思う。今のご飯は本当に美味しい物ばかりで、すごく美味しいのにどうしてか幸せな気持ちになれない」
我儘といえば我儘なのだけど、どうやらそう思うのは俺だけではないようで、ノインも俺と同意見のようだ。
「活性化が終わったら今度こそゆっくりとのんびり休もうって話をしようと思ったのが、どうしてご飯の話になるかね。まあいいんだけど」
ノインもちゃんと食事を楽しむ幸せを感じて、それを欲しいと思う様になったのは本当にいい事だねと声には出さずに続けて、ミランダは大げさに肩を竦めて見せる。
そう言われると何よりもまず食い気なのもどうなんだと思わなくもないけど、実際、今の所ほかに楽しみたいモノもあまりないんだよな。
自分の専用装機竜人を造るのはまあ、確かに本気で楽しくて熱中しているけど、まだ発掘した装機竜人の解析段階で、こうすればこんなにも効率が上がるのかなどと、新技術を覚えるたびに興奮して、楽しくて仕方ないのは確かだけど、まだ設計に入るのにすら結構かかりそうな状態だし、
転生してからというもの、強くなる事と自分の専用装機竜人を造る事くらいしか考えてなかったから、他に趣味といえるようなモノなんてそれこそ食道楽確定のご飯の事くらいしかないんだよな。
「いや、元から活性化が終わったらクレストに戻って、あの店で一日食い倒れからののんびりを再開する予定だったし。その意味では食べ物の話になってもおかしくはないハズ」
なんとなく言い訳はしておくけど、確かに宣言していたので間違いない。
「まあ、この溜まりに溜まったストレスを解消するにはいい方法だと思うけど」
前世だったらストレス発散に爆食いを敢行したら体重が恐ろしい事になってしまっているが、体重も糖尿病の心配も無くひたすらおいしい物を思う存分楽しめる。
まあ、あくまでも高ランク者の特権のようなモノだけど、いや、食費だけで信じられない金額が消えていくんだから特典といえるモノでもないか・・・?
「まあ、それの活性化が終わってからの話、今はとりあえずは、倒した魔物の肉尽くしの食事でストレス解消と行こうか」
そう言えばこうして全員そろって食事をするのも久しぶりかも知れない。
活性化に対抗するための戦線に加わってからのこの三週間は、戦場に出る時間帯も違うしそれ以外にも何かと忙しいので、全員で揃ってご飯を食べる機会そのものがなかなか無かった。
今更ながら、どうやら俺が食事を楽しめなかったのは、全員そろって楽しく食べる事が出来なかったからみたいだ。
久しぶりに仲間が揃って囲んだ食事は最高だったのだから疑いようもない。
これは本気で、俺はどうやら彼女たちに心を奪われている、彼女たちを大切に感じているらしい。
彼女たちが一緒に居る、それだけでこんなに心が穏やかに、安らかになるとは思わなかった。
これってつり橋効果とか、危機的状況を共に過ごす事で生まれる心理的な一体感とかそういう類のモノからなのかなとも思うが、そうだとしてももう逃がすつもりは無い。
ここまで来れば自分の気持ちを理解せざるおえないんだから、自分の気持ちに正直に確実に活かせてもらおう。まあ、自分の気持ちに気付けただけでも、今回の魔域の活性化に参戦した甲斐はあっただろう。




