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1(改修版)

「美味してモノを手に入れたら、すぐに持って来てよね」


 旅立ちを送る言葉としてそれはどうなんだと突っ込みたいけど、我が姉ながらメリルはこういう人物なのだから仕方がない。


「アベルなら大丈夫だろうけど、一応気を付けろよ」


 うん。旅立ちに送る言葉ていうのはこういうのだよな。姉のメリルに比べて、兄のベイルの常識人ぶりが光る。


「むしろ、余りやり過ぎないように気を付けるのだぞ。国に囲われるのが嫌なのだったら、そちらの方に注意しないとな」

「そうは言っても、アベルちゃんですからね。行く先々で騒ぎを起こしそう」


 父の忠告にに母が突っ込むけど、反論できない所が辛い。

 この7年間で自分でも色々とやらかしている自覚はあるし、その度に散々家族に迷惑をかけたのも確かだ。

 何時の間にかSクラスになっいたのなんてその筆頭だろう。

 因みに、どうして判ったかと言えば、実戦形式での修行中。魔物が溢れ出て来る魔の領域、魔域の淵で魔物の討伐を行っていた時に、どう言う訳か、運悪くSクラスの魔物、バジリクスと遭遇してしまったのだ。

 バジリクスは地球でのファンタジー系の物語でも定番の魔物で、石化能力を持つ竜種の魔物である所までは変わらない。

 ただし、石化能力を持つ瞳を開けた所で鏡に映して逆に石化してしまうなんて定番でお手軽な方法が取れるような相手じゃない。

 バジリクスはSSランクの魔物で、地竜系の亜竜に分類される。サイズは頭から尻尾の先までお合わせて全長およそ15メートル。凡そ10トンを超す巨体のコモド・ドラゴンを巨大化して凶悪化したような巨大なトカゲ型の魔物だ。空を飛ぶ事は出来ないが、その走行速度は音速の10倍を超え、鋭利な刃の様な突起を持つ皮は装機竜人など巨大ロボットの装甲に使われるほどに強靭で、当然の様に強力な防御障壁を展開しているため、例えば戦車大隊が一斉砲撃を仕掛けたとしても、傷一つ負わせる事すら出来ない。

 まあ要するに、およそ1年前に何の不幸かそんな化け物とウッカリ遭遇してしまった訳だ。

 普通ならこの時点で万事休す。成す術もなく殺されるだけなんだけれども、こんな所で殺されてしまうかと、破れかぶれで向かっていった所、アッサリと倒せてしまったのだ。

 これには一緒に居たベイルもメリルも驚いてたけど、一番驚いたのは俺自身だよ。

 前世では若干20歳でアッサリ死んでしまったんだし、今度こそ長生きしようと意気込んでいたのに11歳で呆気なく終わりとかふざけるなって、もうムキになって立ち向かったんだけども、それでも倒せるなんて夢にも思ってなかったし、ココで終わりかと諦めていたんだけど・・・・・・。

 自分でも何が起きたのか理解できないくらいアッサリと勝っていたんだよね。

 ようやく倒したんだと実感できてからが本当に大変だった。


 今、この国にはSクラスは居ない。

 王家の人たちも、竜騎士隊の騎士たちもA+ランクまでが最高で、Sクラスに至った実力者はこの国にいない状況で、現れたSクラスを見過ごすハズがない。なんとしても国に取り込もうとするに決まっている。

 マジでどうしようと頭を抱えたけれども、そちらの方な何か冒険者ギルドのギルドカードの謎仕様で助かった。

 冒険者ギルドへの登録は本当なら15歳になって成人してから行うんだけども、12歳で働き始める子もいるので、成人前でも仮登録を済ませる事が出来る。

 それに、武系の貴族家などに生まれて、将来騎士に成るのが決まっている場合は、10歳になる前からすでに訓練の一環として魔物の討伐なども行ったりするので、要するに俺たちみたいに、修行で魔物を討伐する貴族家の子息は、討伐した魔物の清算の為なども含めて、冒険者ギルドに登録するのが当たり前なのだそうだ。

 そんな訳で取得していたギルドカードは、転生物のテンプレとでもいうべきハイスペックの魔道具で、魔物の討伐記録が自動的に表示されたり、私有車の能力の詳細すらも検知したりと至れり尽くせり。最大魔力値と魔法を使って消費した残存魔力値すら把握できる、要するにゲームで言うところのマジックポイントの残量も確認できるのだから、何処までハイスペックなのだと呆れるばかりだ。そんなギルドカードには何やら謎の機能がついていて、その中にはどう言う訳か、討伐した魔物の情報を秘匿する機能であったし、何故か能力の偽造まで可能だった

 明らかに用途が理解不能な機能なんだけども、それのおかげで、バジリクスを討伐した事も秘密に出来たし、既にSクラスの実力を持っているのも隠す事が出来たので、謎ではあっても文句は言えない。

 とまあ、そちらの方は良かったのだけども、問題なのはその時ベイルとメリルが一緒に居た事。

 行きなり現れたバジリクスへの恐怖で固まり、俺が倒したのを見て完全に思考停止した所から何とか回復して、状況を理解して大混乱。

 いやまあ、気持ちは判るし当然の反応なんだけどね・・・・・・。

 何とか宥めて、落ち着かせて、この事は家族だけの秘密にしてもらうのにどれだけ苦労したか・・・・・・。

 とは言え、ココでもしも国にばれたりしたら俺のこれからの人生プランは語は三なので必死に説得して、家族のみんなも理解してくれて何とか収まったけど、だからこそ、俺は秘密を守ってくれている。我儘を聞いてくれている家族に頭が上がらないとも言う。


「判ってるって、それに転移魔法があるから、帰って来るのも簡単だし、定期的に帰ってくるつもりだから心配しないで、それと、俺は目立つ積もりは無いから、無茶をしたりはしないよ」


 既にSクラスを討伐したりしている癖に何を言っているんだとか突っ込まれそうだけども、これは俺の本心で、正直異世界転生無双とかしようとは思わない。目的はあくまでもこの世界を見て回る事で、下手に無双なんてしたら厄介事に巻き込まれるのがオチだ。

 まあ、俺の最大の目的は巨大ロボットをこの手で造る事なので、装機竜人を造るためにいずれはSクラスになっている事を明らかにする事になるし、そもそも、偽装しているA+ランクにしたって、12際の年齢を考えれば十分に異常なんだけども、もうその辺りは、気にしても仕方がないだろう。


「それなら良いけど、それよりアベルちゃん。最低でも月に一度は帰ってきてくれると嬉しいわ」

「まあできるけど、それもどうかと思うんだけど・・・・・・」


 転移魔法があるから、月1どころか毎週、毎日帰って来る事も可能なんだけど、出来ればしばらくは国に戻りたくないんだよね。

 いや、自分でも色々とやらかしている自覚はあるので、ほとぼりが冷めるまでは帰ってこない方が良い気がするんだよ。


「とりあえず、そろそろ行くね」

「「「「行ってらっしゃい」」」」

「行ってきます」


 家族の見送りに応えて、旅の一歩を踏み出す。

 行く先は国境の街セイベリア。そこから隣国マリージアに向かうつもりだ。因みに、セイベリアまでは転移魔法で一瞬。

 転移魔法は、本人が一度行った事のある場所にしか行けないが、どれだけ距離が離れていても一瞬で移動できるチート魔法。

 でまあ、転移できるのだから当然、俺は既にセイベリアに行った事がある訳だ。

 と言うか、国内の主要な場所には一度入っている。これはまあ要するの貴族の義務みたいなものだ。

 転移魔法が使える人間は限られているけれども、だからこそ、使える人間は有事の際にはすぐに駆け付けられる様に、国内の主要な場所を訪れて万が一の時にはすぐに駆け付けられる様にしておく。

 と言っても、俺が非常時に即座に救援に駆け付けるのではなくて、何かあった時に救援部隊を即座に送り届けられる、要するに輸送役としての役割だったりするんだけども、まあ、普通に考えても転移魔法は卑怯なくらい便利なんだから、その活用法はシッカリと確立されていて当然だろう。

 俺としても、修行の傍ら色々な所を周れた訳だし、観光と思えば悪くなかった。費用は国の方で出してくれたりするし。


 まあそんな訳で、国境まで一瞬で到着した俺は、そのまますぐに出国窓口に向かう事にする。

 マリージアに行くなら、別にこの街に来なくても、王都から直通便が出ているんだけど、今回は出国て出来るだけ目立たずに済ませたかったので、こちらを選んだ。

 さっきも言った様に色々とやらかしている訳だし、その内のいくつかはバレていないにしても、既に結構な数の政略結婚の話が俺に来るくらいには目を付けられていたりするんだよ。


「出国手続きを」


 俺としては政略結婚なんてゴメンだし、それをしてしまったら完全に国に捕らわれてしまうので、その手の話のほとぼりが責めるまでは出来れば国に戻りたくも無かったりする訳だ。


「はい。確認しました。A+ランクのアベル・ユーリア・レイベスト様ですね。どうぞお通りください」


 はいこれで終了。

 出国手続きと言っても、身分証を提示してそれでおしまい。入国手続きも同じだ。


「入国手続きを」


 今度は、入国するマリージア側の窓口に身分証を、つまりは冒険者ギルドのギルドカードを提示すればいい。


「はい。A+ランクのアベル・ユーリア・レイベスト様ですね。ようこそマリージアに」


 冒険者はどの国にも属さなにフリーランスと言う位置づけになる。

 よって、犯罪歴がない限りは基本、どの国にの行き来自由なのだ。

 それに、魔物の大軍がどこかの国に押し寄せて来たなどの非常時に、一々面倒な出入国手続きなんかをしていたら、救援に間に合わなくなってしまうかも知れないと言う理由もある。


 まあ、何はともあれマリージアに入国できた俺、無事に旅の始める事が出来た訳だ。



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