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「これは私を貶める策謀だ。私は無実の者に罪を着せる様な恥知らずな事など断じてしていない」


 未だに自分の潔白を喚くケネスに正直ウンザリする。

 そんな事で明らかになった犯罪を、今更無かった事に出来るとでも思っているのだろうか?

 いい加減、鬱陶しい。

 当然だが、ケネスの犯罪が明らかになった事で、サンドニアの街は大混乱に陥った。

 街の名家、貴族家の端に名を連ねる者が、国際法で禁じられた大罪を犯していたのだ。醜態どころの騒ぎではない。話はすぐに国の中枢に伝えられ、ケネスには即座に厳重に監視体制が引かれ、事態の全容を調べるための捜査が始められた。


 そして、国が派遣した監査官に対して、ケネスは一貫して無実を主張しているのだが、そんなモノが通用するほど甘くはない。

 そもそも、犯罪の検挙には専門の魔法が使われ、罪を犯した者は確実に突き止められるシステムが構築されているのだ。

 どれだけ無実を叫んだところで、魔法によって犯した犯罪が明らかになっているのだから無意味。


「無実を証明したいのならば、もう一度魔法によって罪を犯しているかどうかを明らかにすればいい、いくら叫んだところでそんなもの何の意味も無いんだけどね」


 魔法による罪の有無の証明を拒みながら、自分は無実だ、陥れられただけだと喚き続けるのだから、呆れるしかない。

 しかし、予想通り厄介事に巻き込まれたが、今回は自分からトラブルに首を突っ込んだのだから、本気で自業自得だ。


「しかし、無実の者に罪を擦り付けて奴隷に墜とすなんて行為が平然と行われていたとはな」


 今回の件は、マリージアの孤児院で行われていたモノよりもさらに始末が悪い、無理やり借金を負わせて奴隷に墜とすのも決して許される行為ではないが、無実の者に罪を擦り付けて罪人に仕立て上げるような高位が平然と行われていたのだ、司法国家としての機能が完全に瓦解していたと言っても過言ではない


「それにしても、私たちはいつまで付き合わなければいけないのかしら? いい加減、ウンザリして来たのだけれども」


 ミランダは苛立ちを隠そうともしない。

 俺も同意見だ。こんな愚劣な事に何時まで付き合わせるつもりだと苛立ちが募る。

 まあ、混乱がある程度収まるまで、付き合わなければならないのは判っているが・・・。

 因みに、今にケネスの事情聴取に同行して、させられている。


「国の存亡に係わる事態になっているから、しばらくは付き合わされるのは確定だよ」

「それは解っているけど、こんな不毛な聴取にまで付き合わされるのはゴメンよ」

「確かに」


 いくらしばらく付き合わなければいけないのは判っていても、ここまで不毛な見世物に付き合うのは嫌だと俺だけじゃなくユリィとケイも心から同意する。

 今いるのは、俺とミランダに、ユリィとケイの四人だけ、それぞれ、Sクラスとしてや、王族としての立場上、今回の事件の進展を見届ける責任があるのだ。面倒な事この上ないが、仕方がない。

 なお、聴取に立ち会っているとは言え、別に同じ部屋にいる訳ではない。所謂、マジックミラー越しの部屋で様子を見ているのだ。だからこそ、殺気から繰り返される不毛なやり取りにいい加減ウンザリして、好き勝手に愚痴を言っている。

 ここに居ないメリアたち六人は、修行と魔物の討伐に励んでいるが、正直羨ましい。

 重大な事件であるのは判っていても、ここまで不毛なやり取りを見せられてはウンザリする。

 魔物と戦うための防衛都市に来ていながら、一度も魔物の討伐に出ていないのはどうしたものかと思うし、何気にデートの話がお流れになってしまっているのがムカつく。

 全く進展しない捜査状況を見せられてもどうしろと?

 そんなんならデートをさせろと叫びたいが、一転して大混乱の街の状況ではどの道デートを楽しめない。

 本当にとことん不毛だ。


「これだけの騒ぎになってしまった以上、証拠隠滅や揉み消しが成されていないのを証明するために、立ち合いが必要なのは判りますが、不毛ですね」


 ケイの言う通りで、今回の件は俺たち、Sクラス二人に、王族二人の前で発覚したために、揉み消される事も無く逆に世界中に知れ渡る事態になったのだ。

 だから、こうして捜査状況を見守らなくてはいけなくなっているんだが、


「本当にバカバカしい、膿を切り捨てる機会はあったのにしなかったのだから、完全に自業自得よ」


 ミランダ曰く、俺たちがマリージアで起こした騒ぎを受けて、各国が不正や犯罪が行われていないかを慌てて調査し、結果、二か国で同じような事が行われていて、秘密裏に処理されていたそうだ。

 今回の件も、あの時に処理しておけば良かったモノを、放置した結果、こんな国の存亡に係わる混乱を引き起こしているのだから、自業自得以外の何物でもないらしい。

 て言うか、他の国でそんな事が行われていたとは、今まで知りもしなかった。


「それに、あのケネスとか言うバカ、自分がどれだけの事を仕出かしたか理解してないみたいだし、本当に不毛だわ」


 確かに、いい加減にして欲しいモノだ。どれだけの事になっているか説明も受けてないのか?

 今回の犯罪は、決して許されない、人の尊厳を踏み躙り、法治国家の体制を瓦解させる最悪のモノだ。

 何が最悪か、挙げればきりがないが、まず、無実の者を犯罪者に仕立て上げるなどという愚行が、一人だけで出来るハズがない点だ。

 言うまでも無く、この犯罪を実行するには、犯罪を取り締まる警察機構。犯罪の対する刑罰を決っていする裁判員、刑を執行する執行部などの多くの人間が関わっていなければ実行不可能だ。つまり、最悪、この街自体が違法に奴隷の売買を行う犯罪組織になっていた可能性もあるのだ。

 そして、更に最悪なのがこの街が防衛都市。国の、王家の直轄地である事だ。どこかの貴族の領地で行われていたのならともかく、直轄地で平然と行われていたとなれば、この犯罪が国によって行われていた可能性すら出てくる。国の存亡に係わる混乱に陥るのも当然だ。

 更に極めつけに最悪なのが、今回、俺たちが初めて発覚させたのではない事すらも、新たに判ったのだ。

奴隷となっていた内の一人が、実は二年ほど前にこの犯罪の事実に気付き、摘発しようとしたのだ。しかし逆に冤罪を着せられ、奴隷に墜とされていたのが解った。

 今回の件も、もしも俺が一番初めに訪れたのがマリージアでなくてこの国なら、A+ランクと偽証したままだったなら、恐らくは揉み消そうと、俺にも冤罪を賭けて奴隷に墜とそうとしていただろう。

 ここまで来るともう完全に救い様がない。

 既にこの国自体、存在し続ける価値があるのかすら怪しい。

 少なくても、無実の者を奴隷に墜とす行為に加担していた者は全員が極刑だし、現王も退位せずにはいられないだろう。更に、国のどこまでが関与していたか次第で、本当にこの国は消滅する事になる。


「まさか、自分のやらかした事が国の存亡に係わる事態になるとは思ってもみないか、俺としてはこんな国滅んでくれても構わないんだかな」


 マリージアの時はレイルが居たので、個人的に滅んでしまえとは思わなかったが、今回は、エクズシス帝国に何の思い入れもないし、国として救い様がないまでに腐敗しているなら、さっさと新しい国に生まれ変わった方が良いと、むしろ早く滅びてしまえば良いと考えている。

 まだ全容が明らかになってないし、王家や国が本当に関与していたのか、それともこの街だけで行われていた犯罪なのかも判ってないので、気が早すぎるのだけれども、そんな風に思ってしまうくらいには不愉快なのだ。


「それは流石に言い過ぎよアベル」

「新しい国が生まれるまでの混乱で犠牲になる人も多く出るかも知れないから、出来ればそんな事に成らない方が良いよ」


 王族である二人にしてみれば、国の存亡は気易く口にすべき問題ではないのだろう。

 それに、無関係の人が一番被害を受ける事になるのもまた事実だ。出来るなら、最小限の混乱だけで事態が収まるのが一番いいのは確かだ。


「そうは言っても、この国の王族や政治体制についてイマイチ知らないから、何とも言えないんだけどね、ミランダはどうなんだ? この国について知っているなら教えて欲しいんだが」


 三人ともミランダの方を見る。彼女の場合、いくらでも情報を持っている気がするので、知っているなら早く教えて欲しいと本気で思う。

 多分、俺たちの反応を見るために、面白半分で教えないのだろうけど、今回の場合は勘弁して欲しい。


「私もこの国については、それ程詳しい訳じゃないけど」


 来る前に下調べして分かった範囲くらいなら教えてあげるとの事。

 明らかに下調べ程度の情報量じゃないのだけど、そこは突っ込むだけ無駄だろう。ミランダなら何でもありだと納得するのが一番だ。

 さて、そんなミランダによると、今回の件に国の中枢は関与してないらしい。

 現在調査中のハズの一番重要な情報がサラリと出て来るのはどうなんだろう?


「あくまでこの街の中で行われていたらしいわ、それでも、無実の者を奴隷に墜とすのに関与していたのは、少なくても数百人に上るらしいから、かなり大規模な犯罪だったのは間違いないけどね」


 ついでに、あのケネスは事件の首謀者ではなく、数十年前から、街の名家が結託して行われてと、犠牲になった人は、奴隷に墜とされた人は数千人に上るそうだ。


「そんな訳で、この街が犯罪組織に成り下がっていたのは確定。何も知らずに暮らしていただけの一般市民にしてみれば堪ったものじゃないわね」


 それはそうだろう。ギルドでの絶望的な姿を思い出してみても、今まで街を守ってくれる英雄だと思っていた相手が、裏では人を人とも思わない犯罪を平然と行っていたのだ。衝撃と混乱は計り知れない。


「あの、一つお聞きしたいのですが、ミランダさんがそこまでの情報を掴んでいるのなら、この国ももう事態の全容を把握しているのですよね? それなら、どうしてすぐに判決を下して事態の収拾に移らないのでしょうか?」


 それは俺も不思議に思う。事態が長引けば長引くほど、より深刻な問題となって国を混乱させるだけなのは判っているだろう。全容を把握できているなら、早く終わらせるべきなのに、何をグズグズしている?


「ああ、国の方はまだ全部把握していないわよ。これは私が個人的に調べた結果だから、今のままだと全部終わるのに後二か月はかかるでしょうね」

「それなら、その調べた結果を教えてやれば、俺たちがこんな不毛な拘束を受ける事も無くなるんじゃないか?」

「確かにね。でもこの国は、少し自浄作用を働かせた方が良いでしょう」

 

 つまりは、少しは自分たちでどうにかする努力をしろと・・・。

 要するに、俺たちが今こうしているのも含めて、全てミランダの手の内なのでは?

 うん。これは俺が自分から首を突っ込んだ自業自得じゃないな。むしろ、完全にミランダに嵌められている。

 深い、それは深い溜息が自然と出る。一つでなく三つ。ユリィとケイも諦めた顔をしている。

 顔を見合わせて頷き合うけれども、どう言って良いのか判らない。完全に踊らされている。格の違いをマザマザと見せ付けられては、もう諦めるしかない。


「それになら、さっきからの愚痴は一体何なんだ?」

「暇つぶし」


 平然と言い切られては返す言葉も無い。

 俺は、何時か彼女に勝てる日が来るのだろうか?


「勘弁してくれ」


 残念ながら、同じ様に、良い様に掌の上で踊らされている未来しか思い浮かばない。


「とりあえず、あのバカを叩きのめして今日は帰りましょ」


 そう言って実に楽しそうに取調室に入っていく。もう止めようとも思わない。そんなの無駄なだけだと思い知らされた。


「随分と無駄な事を続けているのね」


 この期に及んで、バカに現実を突き付けてもいないらしい聴取官に呆れたように視線を向ける。

 これには俺も同感だ。何かしら思惑があってしているのだろうけれども、無駄としか思えない。

 それにしても、バカを叩きのめすとは、いったい何をするつもりなんだか?


「お前たちは! よくも俺を嵌めてくれたなっ!!」


 どうやら未だに、それも本気で、自分は何も悪い事などしていないと信じている様子。

 これには呆れるどころではない。

 生まれる前から当たり前に行われているのを見ながら育ったので、自分たちがしている事が犯罪だと認識すらしていないとか? 

 ありそうだな。バカバカしいにも程があるけれども・・・。


「あら失礼ね。私たちがあなたみたいな小物を、ワザワザ嵌めるような無駄な事する訳ないじゃない」

「小物だとっ?!」


 思いっきり見下したミランダに激高して見せるが、実際その通りだ。

 俺たちにとってケネスはただのザコに過ぎない。ワザワザ嵌める様な面倒な真似をしなくても、気に入らなければそれだけで失脚させる事だって簡単にできる。

 どうやらこのボンボンはその辺りの事情、Sクラスの権力をよく知らないらしい。本当に残念な奴だ。


「何か勘違いしているようだが、俺たちが本気で潰そうと思えば、一々まわりくどい事をしなくても、お前を失脚させる事くらい造作もないんだよ」

「そう言う事。貴方が捕まったのは、無実の者に冤罪を着せ奴隷に墜とすという犯罪を、国際法で禁じられた許されざる暴挙を犯したからよ。あなたは、それが罪だとも知らなかったみたいだけど」


 いくらなんでもその程度に一般常識を知らないなんてありえないだろうと、四人でワザとらしいほど深く溜息を付く。

 そう言えば、今日だけで随分と溜息をついている気がする。地球では溜息をつくと幸せが逃げるとか言われたいたが、今の俺は確実に幸せじゃないから、あながち間違いでもないかもしれない。


「なんだと?」

「あなたたちの暴挙のおかげで、今この国は大混乱。遠からず滅亡する危険性すらあるわね」


 実際はミランダが既に握っている情報を基に、速やかに適切な処理を行えば問題ないのだけど、万が一にも国が処理を間違えれば本当に終わりだ。他の国の批判云々以前に、ミランダが確実に潰すだろう。


「この街は許されない犯罪組織の巣窟として、今徹底的に摘発が進められているわ。少なくても、あなたを含むこの街の名家に名を綱寝る者は一人残らず極刑に処せられるわね」


 最終的にどれだけの人数が加担していたのか判らないのが怖い所だ。知らない内に利用されていただけの人も要るだろうが、下手をすると数百人どころか千を超える人数が罪を問われるかも知れない。

 それに、少なくてもこの街の司法行政を含む全ての機関は完全に崩壊する。

 犯罪組織のお膝元でその片棒を担いでいた警察機構をだれが信頼する?

 裁判にしてもそうだし、行政府は街の名家によって構成されていたのだから、そもそも犯罪者の巣窟だ。


「加担していた者は全員、終身奴隷として一生最前線で強制戦闘に処せられるでしょうね。あなたがしていたように、違うのは、あなたが連れていた人たちは無実の被害者だったけど、あなたは重過ぎる罪を犯した重罪人と言う事よ」


 ミランダは丁寧に経緯や詳細を説明していく。話を聞くにつれてケネスの顔色が悪くなっていく。


「そんなバカなっ、そんなバカに事があるハズが・・・」

「バカなのはお前の方だろう。どうやら少しは状況を理解したみたいだな」


 うわ言のように繰り返すケネスに呆れるしかない。


「そうだっ!! こんなのは間違っている。俺はSクラスに成る男だぞっ、この国を守る要となる男だ。こんな事で失われていい存在じゃないんだっ!!」


 更に、突然おかしな事を言い出す始末。ついに狂ったか?


「知らず犯罪を犯してしまっていた事は詫びるっ!! だが、俺はこの国に必要な人材だ。失われてはいけないんだ。これから先、多くの命を救うために俺はこんな所で裁かれる訳にはいかないんだっ!!」


 どうやら狂ったのではなく、自分だけ逃げ果せようとしているらしい。


「それなら、素直に罪を認めて原罪の魔法を受ければいい。知らなかったのならば罪も軽減されるだろう」


 そう突き放すと目に見えて狼狽える。

 こちらが何も知らないとでも思っているのか?

 この男が犯した罪は既に明白になっている。

 俺が興味を持って“罪業の御印”、対象者の犯した罪を明らかにする原罪魔法を使うきっかけになった少女に執着し、何としても自分のモノにしようとしたが断られたことに腹を立て、冤罪を着せて奴隷に仕立て上げたのだ。

 そして、自分の好きな様にしてしまおうとしたが、法律によって、奴隷への性行為の強要は、性奴隷は禁じられており、強要すれば奴隷法を定めた魔道ネットワークのシステムによってすぐに発覚してしまうので、戦闘奴隷として酷使して、消耗させて同意させようとしてたいのだ。

 

 捕らわれて既にそれなりの日にちが経っているのに、その程度の事実も明らかになっていないとでも思ったのか?

 この男は、犯罪組織の家に生まれ、知らない内に犯罪の中に身を置いていたのではなく、積極的に犯罪に加担して、己の欲望のままに他人を傷付け続けて来たのだ。


「バレていないとでも思っていたのか? お前のしていた事は全て白日の下に晒されてるよ」


 前世の地球と同じように、この愚劣な事件の詳細は連日ニュースで伝えられている。

 今更どんな弁明をしようが、犯した犯罪の詳細は既に知れ渡っているのだ。


「ふざけるなっ!! やはり貴様らは俺を貶めようというのだっ!! エクズシス帝国にSクラスが仕えるのが目障りだとっ、おい、こんな奴らに惑わされるなっ!! 俺を失えばこの国にどれだけの損害に成ると思っている?!」


 諦めが悪いのか恥知らずなのか、この期に及んでも喚き散らしている。

 ミランダが叩きのめすと言ったのが良く判った。これ以上付き合わされるのはイヤなので、ここで止めを刺しておくつもりなのだ。


「何を勘違いしているのか判らないけど、あなたはこの国にとって害悪にしかならないわよ。ここであなたを庇う様な真似をすれば、この国は終わりなのだから」

「バカを言うな! エクズシス帝国はSクラスが仕える国となるのだ。破滅などするハズがない!!」


 ああ、本当に何も判ってないな。それに、何かどうしようもない勘違いをしている。


「くだらないな。それに、さっきから何か勘違いしているみたいだけど、ひょっとして自分がSクラスに成れると本気で信じているのか?」 

「当然だ。俺がSクラスに成るのは決まっている」


 本気で盛大に勘違いしているバカに、俺とミランダは深い溜息をつく。

 何度、溜息をつかせれば気が済むんだ?

 本気で頭痛がしてくる。頭を押さえて首を振る俺たちに、ケネスは苛立たし気な視線を向けて来るが、苛立たしいのはこっちだ。


「バカバカしい。お前はSクラスにはなれないよ。才能が無い。お前の才能ではどれだけ努力しても今のランクが精一杯だ。身の程に合わない装備や奴隷の力で、辛うじてA+までは成れても、Sクラスにはどう足掻いても成れはしない」


 その程度の事にも気付けないのかと、四人で思いっきりバカにした冷ややかな視線を向けてやる。


「何を言っている。そんなバカげた妄想を信じると思うか?」

「妄想がどっちかも判らないか、まあいいさ、どの道、数年後には現実を知る事に成るんだからな。奴隷から抜け出すためにどれだけ努力を続けても全く実力が上がらない現実に直面するんだから、その時になって後悔して、絶望すると良いよ」


 別にお前が信じなくても、国の上層部が知ればそれで構わないからなと声に出さずに続ける。

 処分を下す国の上層部が、このバカがいずれはSクラスに成ると本気で信じていた場合、最悪、このバカを処罰せずに抱き込もうとするかも知れない。 

 そんな事をすれば、俺たちを敵に回してそのまま滅亡コース一直線なのだが、どこにでもバカはいるのは判りきっているので、念のために釘を刺しておくに限る。

 それに、今言ったのは紛れもない事実だ。

 このバカは、これから先何百年と死ぬほどの努力を繰り返しても、決してSクラスにはなれない。

 純粋に才能が無いからだ。

 この世界は何処までも残酷で、どれだけの努力を続けても、情熱や信念では決して越えられない才能の壁が立ち塞がる。

 このバカがどれだけ信じようとも、Sクラスに成るだけの才能が無い事実は変えられない。


「まあ、キミはこれからは逆に人に使われる立場に成るとはいえ、これまでと変わらない生活を送るのだから、むしろラッキーだったと頑張る事だね」


 最前線で死ぬまで戦い続けるのは今迄もこれからも変わりはしない。

 そう言い残して、俺たちは今回の発端となったケネスのもとを去った。




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