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そんな訳でやって来たエクズシス帝国。砂漠地帯は日中六十度越えすら当たり前、夜になれば氷点下まで冷え込む、人が暮らすには厳しいどころではない自然環境の厳しい国。
途中で立ち寄った二つの国はどうした? と聞かれれば、珍しく、俺としても全くの予想外の事に特に何のトラブルに巻き込まれる事も無く、快適に過ごす事が出来たのでスルーで、
セイグケート王国、ルシン皇国共に、一週間ほど滞在して、王都と魔域に接する防衛都市を周ったのだけれども、突然発生した魔域の活性化に巻き込まれる事も無く、バカ共に絡まれで面倒事に巻き込まれる事も無く、実に快適に過ごす事が出来た。
そんな訳で、二週間の快適な旅を経て、目的地であるエクズシス帝国に到着できたのだ。
今は、王都エクスケーラの観光を終えて、魔域に接する防衛都市の中でも最大規模のサンドニアに、百五十万の人口を誇る都市に来ている。
この街の向こうには、広大な砂漠地帯の魔域が広がっていて、変わらないようで刻一刻と変化し続ける光景は、実に壮大だ。
「とりあえず、冒険者ギルドに行こうか」
特に目的があって来た訳ではないけれども、旅の途中で立ち寄っただけのセイグケートとルシンとは違って、この国にはしばらく滞在する予定なので、きちんと到着報告をして情報を仕入れておいた方が良い。
それに、冒険者ギルドはそれぞれの国によって雰囲気も違うし、行ってみるだけでもなかなか楽しいものだ。トラブルに巻き込まれる確率が一番高い場所でもあるけれども、冒険者なのに冒険者ギルドを避ける訳にもいかないのだから、諦めるしかない。
エクズシス帝国はエジプト風の国と言うべきだろうか?
砂漠に位置する国だから勝手にそう思うだけかもしれないが、これまでのヨーロッパ風の国々とは明らかに文化形式が違っていて、街並みを見ているだけでも十分に楽しめる。
「わあっ、綺麗ですね」
「後で買ってみるのも良いかも知れないわね」
メリアたちは初めて見る衣装に興味津々のようだ。
今迄の国とは明らかに違う服装。イスラム風よりもインド風に近い、鮮やかな色彩のそれらは、女心をくすぐるに十分だろう。
ちらりと見れば、ミランダまでその気になっているみたいだ。
「気に入ったのならプレゼントするよ。後でどんな服が似合うか見て回るのも良いかも知れないな」
「本当。ありがとう」
イエイエ。お礼を言うのは此方です。みんな似合うだろうし、目の保養です。
「そう言えばキミは、アスタートでも彼女たちにドレスを選んだんだって? 超絶鈍感の癖に、やる事はそつないんだねえ」
ミランダがしみじみと、呆れた様に俺を突いて見せると、どうしてか他の皆も頷いている。
「それに、アベルさんはどうしてか服のセンスもいいんですよ。それぞれに一番合う服をコーディネートして見せるんですから、どうかしてます」
アレッサよ何が不満なんだ?
別に俺はファションセンスがあるとかでなく、個人的な趣味でそれぞれに一番似合う服を選んだだけなのだが、思いの外、好評だった。
「アレは俺の好みでコーディネートさせてもらったんだけど、気に入ってくれたなら幸なんだけど、どうして不満げかな?」
「言えません。自分で考えてください。男の子なんだから、それくらいの事は当然の義務ですよ」
義務と来たか、どうなんだろうとも思うが、一対九では分が悪いのでここは大人しく引いておく。
とりあえず、この場合の義務は、少なくても師としての義務じゃあなくて、男として女の子の気持ちを知らなきゃダメだという義務な事くらいは判る。
「それならまあ、がんばって考えてみるけど、あまり期待しないでおいてくれよ。自分で言うのもなんだけど、俺は人の心の機微とは対極にいる存在だから」
「ホントに、ソレを自分で言っちゃうんだ。まあ、自覚が無いよりはマシかもしれないけど・・・」
堂々と宣言してみせると、流石のミランダすら呆れたように肩を竦める。
本当の事を言っただけなのだから呆れられても困るのだけど、イヤ、呆れられて当然かと流石に俺も思い直す。
「正直な話、今まで強くなること以外、興味も無かったから、完全に他人との付き合いとか無視してきていたし、ここまで強くなり過ぎると、感覚が人と合わな過ぎてどう接していいのかも判らないし、ついでに、余り合わせようとするとバカ共が寄って来るしで、もう殆ど諦めてるんだけどね。それに、ミランダも同じようなモノなんだから、流石にキミに呆れられる謂れはないと思うんだかって、キミの場合は、理解した上で丸ごと無視しているんだから違うか」
「キミは本当に人の心の機微を知らないね。判っていても言わないものなんだよまったく。まあ、私もキミと同じところがあるのは認めるし、興味が無い相手には全く関心を持たない主義だからね。ついでに、興味を持つ相手も限られてるし、中々やりたい放題しているのは判っているよ」
俺とミランダの言い合いを、ドッチもドッチだと見詰めているソコの八人。キミたちも俺たちと同じ穴の狢になるのが確定しているのを忘れてないかい?
「まあ、Sクラスに常識を求めるなと言う事で、ついでに言うと、キミたちも他人事じゃないんだから、いずれは自分たちも俺たちと同じようになるって理解している?」
常識の治外にいるSクラス。なら、Sクラス通しならば判り合えるか、同じ常識を共有しているかといえば、そんな訳がない。一般人から見たら、個性豊かな変人列伝でしかないSクラス同士で、共通認識はあっても、互いに通じ合う常識など皆無に等しい。
それで、そんなSクラスにユリィとケイは数か月後には、メリアたちは数年後には成るのだから、常識だなんだと言っても、実は既に一般人から見たら非常識でしかないかもしれない事を知っておくべきだ。
そう注釈すると目に見えて落ち込む。そんなにイヤか?
イヤだろうな。自分では常識人のつもりが、何時の間にか非常識の変人に片足を踏み込んでいる現実。見ないフリをしてきた現実と向き合うのは嫌だろう。
「てっ、なんでこの国の服でも後で見て回ろうかて話してたのが、こんな話になっているかね? 不健全だからこれまで、あまり気にしても仕方ないよ」
このままいくと、際限なく空気が重くなりそうなので、ここで話をぶった切る。
「そうですね。せっかくアベルさんの方からデートのお誘いがあったんですから、ここは素直に受ければいいんですよね」
何時デートに誘った?
ああ、服を見に行こうと言ったのか、これは、アスタートの時と同じように、一人一人と出かける事になりそうだ。別に不満はないし、構わないのだけどいいのだろうか?
「フム、デートか、私とは初めてだな。楽しませてくれたまえよ」
それは中々に難しい要求だと思うんだが、
「こちらこそお手柔らかに、とりあえずまずは目的を果たしてしまおうか」
話を脱線させている間に冒険者ギルドに着いた。
デートをするにしても、ギルドで用事を終わらせてホテルに戻って、明日以降。まだ十分に時間はあるのだから、これからどうすべきかを真剣に悩まさせてもらおう。
国が変わっても相変わらず変わらない、役所を思わせるギルドに入る。
地球のファンタジーモノだと、掲示板に依頼書が一杯に張ってあって、冒険者がその中から仕事を選んで受付で受理されて、それぞれの仕事に行くのが定番だけども、現実のこの世界ではそんなテンプレは存在しない。これまでも何度も説明している通り、冒険者は純粋に戦闘職であり、魔物を倒すために存在するのであって、街の何でも屋ではない。
小説などでよく冒険者ギルドに依頼される雑事は、実際には専門の業者がいるので其方に依頼されるし、こちらもよくある何時までに一定数の魔物の素材が欲しいなどの依頼も、実際には商業ギルドの管轄で、冒険者に直接頼むなんて事はまずありえない。
そして、何よりも決定的に違うのは、どこかの村や町が魔物に襲われたので、魔物を討伐して欲しいなどという依頼が、実際にはありえない事だ。
まあ、これは普通に考えたら判るだろう。
実際に魔物の脅威に晒されてから、冒険者ギルドに討伐依頼を出して、冒険者が来るのを待つなんて猶予が現実にある訳がない。そんな悠長な事をしていたら、どれだけの犠牲者が照るか判らないどころか、いくつもの村や町が壊滅してしまう。
よって、現実にはそんな非効率的な事などするハズもない。
ネーゼリアにおいては、魔物の脅威に対抗できる為に、最低限、人の居住する村は数千人以上の人数は確実に居る。地球の様に、精々数百人、場合によっては数十人程度の住人しかいないような村など、そもそもが存在しないのだ。
当然、村には魔物の襲撃に備えて、ライフルや機関銃で武装した警備兵が守りについていて、ゴブリン程度の襲撃ならば簡単に撃退できるし、手に負えない規模の魔物が襲って来ようとしているのならば、真っ先に軍や騎士団に救援要請を出す。
魔物の脅威に常に晒されている世界で、魔物の脅威に何と抵抗も出来ない無防備な村など造るハズもないし、いつ来るかも判らない冒険者を当てにして、住人を危険に曝すようなバカな真似をするハズが実際にはないので、ネーゼリアの冒険者ギルドには、依頼書を張る掲示板自体がそもそも存在しない。
まあ、その事実を知った時は、俺もガッカリしたものだけれども・・・。
冷静に考えてみれば、平和な地球で考えられた定番が、実際の異世界にそのまま通用するハズがないのだから、当然だと諦めるしかない。、
そんな訳で、依頼を受けるために立ち寄る必要のない冒険者ギルドは、冒険者の管理をする場所であり、基本的には魔物などの情報の共有と、何よりも討伐した魔物の討伐報酬を受け取り、倒した魔物の素材を売り渡して換金するための場所である。
その仕事の内容から、役所の様な雰囲気になるのも当然だろう。
ついでに、これもお約束の仕事を受けるための朝の混雑自体がそもそも存在しない代わりに、倒した魔物の換金のための、夕方の混雑はある。
そんなくだらない事を考えながら、さっさと到着報告を済ませて、この辺りの魔物のデータをもらいに受付に行くが、俺たちが入ってきてギルド全体が緊張しているのが解る。
これまでにない反応だ。何をそんなに怖がっている?
気にはなるが、一々気にしていてもきりがないのでスルー。さっさと用事を終わらせる事にする。
「ES+ランクのアベルだ。到着報告に来た。それと、この周辺の魔物の詳細を」
「同じくES+ランクのミランダよ到着報告に来たわ」
俺とミランダに続き、全員が到着報告をして、全員がAランク以上な事にどよめきが起こる。
「ところで、何か怯えられている気がするのだが?」
初めての街でここまであからさまに怯えられる理由は無いはずだ。
疑問に思って聞くが、口ごもって話してくれない。
「それはですね・・・、・・・あの」
「アスタートで叩きのめしたバカ共の件でしょ。そのくらい察しなさいよ」
明らかに怯えている受付嬢に見かねて、ミランダがヤレヤレと助けに入る。
しかし、なんで今更、あのバカ共の事で怯えられなければならない?
「要するに、あの時、私がコテンパンに叩きのめした中でも、この国の大使たちが一番ボロボロのズタズタになったのよ。自業自得だし、同情の余地は全くなないけど、そのおかげで私たちはすっかり怯えられちゃったみたいね」
成程、そう来るか、あの時、ミランダに情け容赦なく、徹底的に叩きのめされたバカ共の末路に、逆らったらどうなるか、怒らせたら自分たちもああなると怯えていると・・・。
更に、あの時の大使はこの街の出身でそれなりの人気もあったらしいのが拍車をかけているんだろうとの事。一体どこからそんな情報を仕入れて来るのだか?
ついでに、どうして今になって言うかね?
もっと早く教えてくれてもいいはずなのに、今まで黙っていたのは絶対にワザとだ。
とりあえずこれは、うん。どうしようもないね。下手に何かするのは確実に逆効果だ。
ここは何もしないのか一番だ。
「自業自得の自爆で怖がられても困るんだが、まあ良いか」
一言だけ残してさっさと撤収するとしよう。
そう思った途端にまたギルドが騒がしくなる。
何事かと思えば、ギルドに新しく入ってきたパーティーが注目を集めている。
「ほう。この街でトップの冒険者のご登場だね。ケネス・ゼレイグル。この街の名家の出身で、二十歳にしてAランクまで上り詰めた実力者らしいよ」
本当に、その情報網は何処からくるのだろう?
そりゃあ、俺とは比べ物にならない事くらい判っているが、何もかもお見通しとまでなると流石に怖くなるし、そこまで知っているなら最初から教えてくれと言いたくなる。
それはともかく、Aクラスか、俺たちにとってはタダのザコに過ぎないけれども、独学で二十歳で上り詰めたのなら大したものだ。相当な才能に恵まれて、努力も惜しまなかったのだろう。
それだけなら、素直に称賛できるのだけど、彼のパーティーメンバーを見て、その称賛も消し飛ぶ。
別に悪い事ではないのだけども、どうにも、やはり俺は受け付けない。
「パーティーメンバーは全員奴隷か」
そう。彼の引き連れるメンバーは全員が奴隷だった。
全員が、奴隷である事を示す首輪をしている。
前世の影響で、個人的に奴隷に忌避感を覚えているが、別にこの世界の奴隷制度に否定的な訳ではない。
そもそも、この世界の奴隷は、犯罪者奴隷と借金奴隷の二つに分けられる。
犯罪者奴隷はその名の通り、罪を犯した者への刑罰として、刑の執行機関を奴隷として使役するモノで、謝金奴隷はその名の通り、謝金の返済が出来無くなった者が、借金の返済まで奴隷として働くモノをいう。
この世界における奴隷はこの二つだけで、所謂、前世の地球の様に、商品として売買される奴隷は存在しない。
因みに、犯罪者奴隷には、盗賊や殺人者などの凶悪犯をタダ死刑にするのではなく、戦闘奴隷として死ぬまで戦わせる意味合いもあるし、借金奴隷になるのは、大半が冒険者である。
要するに、一獲千金を夢見て冒険者になったけれども、才能の壁の前に挫折した者が、初期投資の費用の返済の為に借金奴隷として働くのだ。
実際の所、冒険者学校を出た後、冒険者として活動していくには相当の資金が必要となる。
メリアたちの様に、余程の才能が無ければ、魔物を倒す為の銃も、魔物の攻撃を防ぐ防具もかなりの物を用意しなければいけないし、それらを頼りに戦い続けていれば、当然ながら維持費などの出費も嵩み、思う様に稼げない。そのままダラダラと続けていく撃ちにケガをして引退を余儀なくされる者、才能の無さに気付いて諦める者、どちらにしても、初期出費分の費用を返済できなければ、しばらくは借金奴隷として返済する事になるし、もう一つのパターンとしては、中堅の冒険者が一流を目指して挫折するケースだ。
E+ランクまで行ってもD-にランクアップできない冒険者が、これまで使っていたのよりもランクの高い装備を整えて、ランクアップを目指して挫折するケース。この場合、装備を揃えるために中堅冒険者としてため込んできた資産を使い果たして、更にかなりの借金までしているので、その返済の為に奴隷として働く事になる。
ぶっちゃけ、冒険者は夢とロマンに溢れた職業ではなく、才能の無い者にはトコトンシビアで厳しいブラック企業に近いという事だ。
そんな訳で、個人的に毛嫌いしているが、奴隷制度そのものは別に悪いものではない。この街の名家の出ならば、奴隷を使っているのもむしろ当然だし、気にする必要も無いのだが、
「随分な人気だな」
「そりゃあこの街の出身で一番の出世頭、それも、命を賭けて街を守っているとなれば人気も出るでしょ、二十歳でAクラスにまで上り詰めれば、いずれ、Sクラスにもと期待されてるでしょうし」
その通りなのだけども、なんだか気に入らない。別に奴隷とパーティーを組んでいる冒険者と会うのが初めてでもないのに、
そもそも、どうしてあいつはパーティーメンバーを奴隷だけにしているんだ?
一人や二人ならともかく、自分以外の六人全員が奴隷なのは一体なんだ?
「随分と騒がしいけど、どうしたんだ?」
「あっ、はい。ES+ランクのアベル様とミランダ様がいらっしゃいまして」
なんて考えている内に、受付まで来ていたケネスとやらが尋ねて、答えに自然と注意が俺たちの方に向く。
「ああ、キミたちが、噂は聞いているよ。俺はケネス・ゼレイグル。いずれはキミたちの同じ所まで行くからよろしく」
にこやかに話しかけて来るが、その態度に呆れずにいられない。狭い世界で挫折知らずで上り詰めて、天狗になっている典型的にボンボンだ。
付き合うだけでバカらしい。適当にあしらって早々にサヨナラするのが一番だ。
「アベルだ。そして彼女たちは俺の弟子たち、全員Aランク以上の実力者だ」
「ミランダよ。キミを私の噂は聞いているのなら、気をつけるのね」
ミランダの方はさっさと逃げ出せと宣言している。彼女の方も、この男を初対面で随分毛嫌いしているようだ。
「スゴイですね。噂には聞いていたけれども、短時間でそこまで弟子を育て上げるとは」
こちらの意思を全く理解していないらしい。それよりも、若干こちらを見下した雰囲気があるのは気のせいか?
気のせいじゃないな。独学でAランクまで上り詰めた事に驕って、俺の弟子になる事でAランクまでなれたメリアたちをバカにしている。
実際は、ユリィとケイは元々A+ランクで、しかもお前よりも年下でなっているんだがな、
ああ、関わり合いになりたくないタイプだ。毛嫌いしているのは直感的にソレを察したからか?
「彼女たちに実力があったからこそ成長できたんだ。それに、彼女たちもいずれSクラスにランクアップするしね」
どうにも気に入らないので、事実を突き付けておく。数年後には彼女たちは確実にSクラスに成っているのた。お前はどうだか知らないがな。
「それは凄い。これ程の才能が一堂に会しているなんてありえない事ですよ」
ワザとらしく驚いて見せるが、考えている事がまる判りだ。
正し、言っている事は正論だ。現状で俺たちは既にバランスブレイカーになりかねない異常な集団になっている。
「そちらも皆かなりの使い手のパーティーのようだが」
相手にするのも面倒なので、俺は注意を奴隷たちに移してみる。
見てみると、全員が犯罪者奴隷のようだ。凶悪犯を死刑にする代わりに戦わせているのか?
だが、どう見てもそうは見えにいのだが、特に、メリアたちと変わらない程の美少女が目を引く。
彼女はどう見ても犯罪者には見えない。見た目で贔屓するのではなくて、純粋で真っ直ぐな瞳が犯罪者の物とは別物なのだ。彼女の瞳には、自分の今の境遇にも決して屈しない強い意志が宿っている。
おもしろい。純粋に興味が湧いた。彼女は犯罪者奴隷だ。一体どんな罪でそこに墜ちたのか?
知りたいと自然と好奇心が湧きたった。
「ああ、己の罪を悔い、償うために懸命に努力する者達だよ」
己の罪を悔い、ケネスが言った瞬間。明らかな嫌悪が瞳に宿った。
やはり、これは何かあるか?
ここで首を突っ込むのは、自分でトラブルを呼び寄せる様なモノだが、仕方ない。
「罪を悔いてか、成程。・・・汝の罪を示せ“罪業の御印”」
俺は犯罪の捜査にも使われる、その者が犯した罪を明らかにする魔法を使った。
結果、示されたのは、
「無実の者に何の罪があるのかな? 犯罪者よ?」
奴隷となっている彼女らに罪はなく、ケネスが彼女らに冤罪を擦り付け、無理やり墜とした許されざる犯罪者だという事実だった。




