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 さてと、2人の実力も判った事だし。本格的に鍛え上げるとしよう。

 多分、この2人も途中で悲鳴を上げて逃げ出すんだろうけど、残念ながら逃げられない。

 と言うか、逃げ出すまでどれくらい持つか楽しみかも知れない。


 修行の第一段階は、例によって俺の魔力を流し込んでの魔力の拡張。ついでに送り込んだ俺の魔力を全力で制御してもらう。

 コレで飛躍的に魔力コントロールが上手くなる。

 更に同様に闘気のコントロールもやってもらう。

 コレで魔力と闘気の両方の扱いがこれまでとは比較にならない高みに至る。

 それが判っているからこそ、ライラとラウラの2人も真剣に修行に取り組むのだけども・・・・・・。


「・・・・・・も、もうダメ・・・・・・」

「もう無理です・・・・・・」


 1週間で逃げ出した。

 いや。良く持った方かな。うん。

 因みに、この1週間で2人の魔力と闘気4倍以上にまで膨れ上がっている。

 まあまあ順調な強化具合と言えよう。欲を言えば更にその倍くらいまで強化したい所だったんだけども、あまり無理をさせ過ぎるのね。

 

 どの口が言うってみんなに白い眼をされたけど・・・・・・。


「この程度で泣き言をいうようじゃダメだよ」

「この程度って、1週間足らずで4倍以上も魔力が膨れ上がるなんてありえないですから」

「ミルカお姉様が仰っていた通り、アベルさんは異常です」


 異常とは失礼な。

 とは言え、課しているのが想像を絶する程に過酷なのは確かなんだよね。

 ぶっちゃけ、地球の基準で言えば、毎日高地でフルマラソン5回分も走り続けるのが天国に思えるくらいの過酷さだからさ。

 42、195キロトップランナーでも走るのに2時間はかかる。それを5回分だから1日10時間走り続ける事になる。と言うか、どんなに持久力のあるランナーでもフルマラソン5回分を同じペースで走り続けるなんて不可能だ。何とか走りきれたとしてもそれこそ1日がかりになってもおかしくない。そんなのが毎日続くのが天国に思える様な特訓をしている訳だ。

 ぶっちゃけ、肉体的な疲労とかは比べ物にならないくらい、コッチの方が楽だけどね。

 でも、そんなものではない、そもそも生命としての生命力そのものが削り取られる様な修行なんだよ。

 

 まあ、地球基準なら、1日で210キロ以上も走るのを毎日続けるなんて、それだけで命の危険に直結するような過酷な状況だけどね。


「と言うか、強くなっているのが判っているのにどうして逃げるかな?」

「「実感できているからですっ」」


 何故にその返し?

 自分が強くなっているのが実感できれば普通はどんな過酷な特訓でも耐えられるんじゃないの?


「こんな速さで強くなるなんてありえません。このまま強くなっていたなら自分がどうなってしまうのか、考えるだけで恐ろしいです・・・・・・」

「強くならなければいけない事は判っています。でも、このまま強くなって行ったら自分が自分でなくなってしまいそうで恐ろしいです・・・・・・」


 自分が自分でなくなってしまいそうか。力に溺れてしまいそうで恐ろしいっていうのとは違いそうだね。

 圧倒的な力、自分の力そのものに飲み込まれてしまいかねない。そんな恐怖を抱いているんだと思う。

 その感覚は良く分かる。と言うか、俺自身もこれまでに何度となくその恐怖を感じてきた。


 そもそも、自分の中に星どころか宇宙そのものすらも破壊しかねない力が宿っているなんてありえないだろう。

 いや、実際に俺の力で世界が滅ぶ事はない。もし力が暴走したとか、或いは俺自身が世界を滅ぼしてしまいたいと思ったとしても、天獣ら人類の創造主である上位者が止めるから。


 それが判っていてもだ。自分自身の中に宿る力の大きさに恐怖を覚えてしまう。

 多分、ライラとラウラの2人が抱いているのも同様の恐怖だろう。 

 だからこそ、言える事がある。


「別に恐れる必要はないよ。力はただ力、その事さえ忘れなければ良いだけだからね」

「「力はただ力ですか?」」


 極端な話、世界を滅ぼすほど強大な力、或いは兵器などもそれ自体にはなくの意味もない。

 それはただ、世界を滅ぼせるだけの力として存在するだけであって、力そのものが世界を滅ぼす事はない。

 全ては使う者次第。

 だからこそ、自分たちがなんの為に力を必要とするのか、力を振るうのかを、その根本さえ違えなければ問題ない。


「それに、もしもキミたちが力に囚われて道を違えてしまいそうになった時には、ボクたちがその過ちを正してあげるからね」


 人は過ちを犯すものだけど、同時にやり直すことも出来る。

 そして、ミルカは2人が力に囚われてしまいそうになればすぐにでも2人を止めるに決まっている。


「と言うか、力の大きさでキミたちの在り方が変わるなんて事はないよ。どれだけの力を持っていようと、或いは持っていなかったとしてもキミたちはキミたちなんだからね」


 これについてはほとんど詭弁だと自分でも判っているけどね。

 地球の歴史において、力が人を狂わせるのは否定のしようのない歴然たる事実なんだしね。 

 そして、力に人が惑わせれてしまうのはどの世界でも同じなんだから。


「それに、自分たちが力を持つ事とに恐れるその気持ちを忘れない限り、キミたちが力に溺れる事はないしね」 


 恐れる事はないって言った口で何を言っているんだって話だけどね、でも、2人が恐怖を覚えるのは自分自身が間違わない様にするための本能による警告の様なモノだ。

 その恐怖を、警告を忘れなければ、彼女たちが力の溺れる事は、道を違える事はない。


「だから、自分自身を信じる事だね」

「「自分自身を信じる」」


 と言うか、偉そうなこと言いながら一番道を違えそうなのって実は、間違いなく俺なんだよね。

 過去の狂気に飲まれてしまった転生者たちみたいにさ・・・・・・。


「と言うか、修行から逃げ出したのは辛かったからじゃなかったんだね」

「「いえ、辛すぎてもうムリだったのも事実です。これ以上は死んじゃいますよ」」


 あっ、辛かったのも確かなのね。


「いや、あの程度で音を上げられたら困るんだけど、修行の本番はこれからだよ」


 だけどね。これまでの1週間の修行はまだ初歩も初歩の段階だよ。

 魔力と闘気の総量を増やし、同時にその制御能力を高めて行く。それは基礎であり極意なんだけども、当然だけどもそれだけで終わるハズがない。

 そして、最も重要であり、本気で過酷なのが実戦で十分に通用するレベルにまで予測演算による未来予測を高めることだったりする・・・・・・。 

 

 正直、この修行の過酷さが、今までレジェンドクラスに至れるものが、ほとんど居なかった原因なんじゃないかと思っている。

 と言うか、俺がレジェンドクラスに至った時の試練でどれだけの苦労と苦痛を味わったことか・・・・・・。

 実戦の中で同時に修行をしないといけない訳だからね。

 いや、10万年前の転生者たちが残した修行法の中に、当然だけど予測演算による未来予測をの修行のあったからしていたよ。そのうえで、その力の有用性から前から予測演算による未来予測を実践の中で゛当たり前のように使っていたんだけども、それでもレジェンドクラスに必要なレベルには到底及ばなかったんだよ。

 だから、いざ戦ってみると実践の中で想像を絶する激しい修行を行うことになったわけね。それでもまだましだったのは間違いないんだけだけどさ。よかったけど、

 もし、その下準備分がなかったらどうなっていたか・・・・・・。

 やばい、今思い出しただけでも寒気が・・・・・・。

 

 そんな訳だから、実際にレジェンドクラスに至った時の試練で苦労しないように、今の内から予測演算による未来予測の精度を極限まで高める訓練をするんだけどね。

 それが、魔力と闘気の総量を高めるための修行よりもさらに、シャレにならないくらいに苦しいものなんだよね。


 だから、本当に修行の本番はこれからだよって説明氏したら、2人とも真っ青になって今度こそ本気で逃げ出したよ。

 うん。気持ちは判るけど逃がさないから、諦めて修行に戻ろうね。

 

 うん。ミルカたちも通った道だから。


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