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 天上の湯には大小さまざまな湯があるけれども、その中でも一番大きな、100メートルプール2つ分くらいはある湯は別格だ。

 標高8000メートルの山の中腹の断崖絶壁の崖の縁にあり、遮るもののない大パノラマを楽しむことができる。

 その光景は、本当に空中に浮かぶ温泉であるかのように錯覚するほどだ。


「これは最高だね」

「気に入ってもらえたようでなによりだよ」


 ついでに、その雄大な景色を眺めながらいただく料理とお酒も実に美味しい。

 料理は生春巻きに少し似た物とかで、お酒はスパークリングワインのロゼ。

 火照った体にキンキンに冷えたスパークリングワインが最高。


「お姉様どうぞ」

「私たちがつくったんですよ」


 それは良いのだけど、ミルカは妹2人にかかりっきりでお世話をされていて、逆にお疲れ気味の様子。

 ライラとラウラ。この2人は本気で重度のシスコンみたいだ。


「アベル殿、我関せずではなくてミルカの元に行くべきでは?」

「カンベンしてくださいよ・・・・・・」


 いくらなんでもあの中に入って行くつもりはない。

 せっかくの温泉なのにあの中に入って行ったら気が休まらないどころじゃないよ。

 間違いなく、あの2人とはこれから係わって行く事になって行く事になると思うけれども、少なくても今はまだ関わり合いになりたくないよ。

 ミルカが助けてってこっちを見ている気がするけど気にしない方向で・・・・・・。

 と行きたい所なんだけどね・・・・・・。


「アベル、一緒に飲もう」


 助けに来てくれないならとばかりにミルカがこっちに来る。

 ミルカだけなら良いんだけども、当然のようにライラとラウラも一緒について来るのはどうにかならないかな?


「ところでそれは?」

「世界樹の蜜酒よ」


 ここぞとばかりに取って置きを出して来たねミルカ。

 それもスパークリングタイプですか。アルコール度数25度くらいあって強烈な強炭酸が爽やかなのど越しの至高の一品。500ミリリットルの小さに瓶で確か1本当たり1000万くらいしたんじゃなかったっけ?

 この世界の1000万だから、日本円にして1本1億円の代物だよ。

 まあ、もう慣れたと言うか金銭感覚が完全にマヒしちゃっているから、金額に驚く事もなくなったけどね。

 ぶっちゃけ美味しければ正義。どんなとんでもない値段でも躊躇いなく出すよ。

 と言うか、この世界だと高ランクの冒険者なんかは、そうやって散財しない経済が破綻しかねない程の財産を貯め込む事になるからね。

 実際、10万年前の転生者たちの遺産とかを含まない、完全に俺が自分で稼いだ資産だけでも既に数百兆に達しているし、使わないと信じられない勢いで溜まって行くだけなんだよね。


「うん。美味しいな」

「あとこれも」


 そう言ってミルカが出したのはロースト肉をスライスしたものに赤いソースをかけたモノ。


「これも美味しい。それに蜜酒に良く合う」

「当然。シャクティやシオン、それにケイたちと一緒に試行錯誤を重ねて辿り着いた組み合わせなんだから」


 成程。竜人に鬼人、それにドワーフと酒飲みの種族たちと研究を重ねて行きついた美味と言う訳だね。

 それにしてもこのソース。赤ワインを煮込んで作った物みたいだけど、濃厚でいながら肉の味を邪魔しないで引き立てている。実に見事だね。

 

「この組み合わせに辿り着くまでに蜜酒を1000本は飲んだからね」

「それはまた豪快な事で」

「それくらいしないとお金が溜まり過ぎてしまうから。私の立場であまり貯め込み過ぎる訳にはいかないし。気を使わないといけない訳なの」


 成程ね。王族というのも本当に大変だ。それにしてもこの組み合わせに至るまでに1000億円は軽くかけた訳か、うん。平然とやってのけてみせるのがスゴイ。


「ついでに言うと私よりも問題はアベルなんだけどね。それなりに使ってはいるけど、入ってくる金額の桁が違うから溜まる一方でしょ」

「それは否定しないよ。と言うか、使おうとしても使い切れないし・・・・・・」


 どうでも良いけど、妹さん2人の機嫌がもの凄い勢いで悪くなっていっているんだけどソッチは放置で良いのかな?


「「お姉様。私たちのことお嫌いになってしまわれたのですか・・・・・・」」


 シンクロして涙目になっているし。この2人本気で面倒だなと思うのは俺だけじゃないハズ。


「そんな訳ないでしょう。アナタたちも食べなさい。これは私たちの自信作なんだから」

「「はい。いただきます」」


 ついでに言うとチョロ過ぎない?

 ミルカが蜜者と一緒に進めると嬉しそうに食べてるし。


「まったく、本当に困った子たちね」

「「私たちの何処が困った子だと言うのですか?」」

「そう言うところがよ」


 そう言いながらも、ミルカも2人にあまいと言うか、ある意味ミルカもシスコンなのかも。 


「仲が良いねキミたちは」

「姉妹だからね。家族なんだから当然と思うけど」

「「はい。当然です」」


 家族だからって必ずしも仲が良いとは限らない事くらい判ってて言っているところがスゴイよね。

 まあ、実のところこの世界で家族仲がよくない家族ってってあまり見た事ないんだけどさ。 

 何処かのシスコン兄みたいに、好きすぎるのが変な方向に行ってしまった挙句に敬遠されたりとかなんて事もあるけど・・・・・・。


「まあ、久しぶりに会ったんだからしばらくは、家族水入らずで良いんじゃないかな」

「何を言っているんだか、アベルも2人の兄になるのを忘れたの?」


 ミルカさんや、その言葉に反応して2人の瞳に怪しい光が宿ったのに気付いているかな?


「「ミルカお姉様は本当にアベル様と結婚されるのですか?」」

「当然。アベル以外に相手なんて考えられないし」


 あの、そう真っ直ぐに好意を向けられると恥ずかしいんですけど・・・・・・。


「「それは、シオン様たちと御一緒のお相手だからですか?」」

「そうとも言えるしそうじゃないとも言えるね。私自身、アベルと一緒に居る内にドンドン惹かれて行ってしまったから」


 どうしていきなりそう言う話になるのかな? 

 聞いているだけでダメージの大きい話が目の前で更に繰り広げられ始めて、硬直したまま動けなくなってしまったんだけど・・・・・・。

 と言うか、人を巻き込んで置いてそっちのけで、こっちが口を挟めない話を始めるのは如何なものなのかな?

 これまでにない程に居心地が悪いんですけど・・・・・・。

 お願いだから初めての夜の詳細な話とか勘弁してください・・・・・・。


 あと遠巻きに見ているみんな、その生暖かい視線も止めてもらえませんか?

 地味に深刻なダメージになるんですけど。

 と言うかミルカさんよ。キミの両親とか兄とかも興味津々で聞いているのに気付いているかな?

 そう言う話は家族相手でもしない方が良いと思うんだ。


「「スゴイですミルカお姉様・・・・・・」」


 とてもじゃないけど聞いていられないようなお話が終わったと思ったら、さっきまで敵意満載だった2人が、恍惚とした表情でこっちを見ているのもモノスゴク気になるんですけど・・・・・・。


「そんな訳だから、2人もこれから一緒に来る事になったから」

「そんな訳だからってどんな訳?」


 それでもって、気が付いたらライラとラウラの2人がミルカについて仲間に入る事が決まったみたい。


「気にしない。気にしない」

「気にしないってねキミ・・・・・・」


 確かに、どんなやり取りがあってそうなったのかを詳しく聞くのは躊躇われるけどね。

 と言うか、目の前で話していたのに内容がまったく頭に入っていないのは、本能が無意識の内にシャットアウトして至った事だよね。

 でも、こうなるなら聞いておくべきだったね。

 いや、魔法で何を話してたか再生すればいいだけなんだけど・・・・・・。

 うん。とてもじゃないけどその勇気がないね。

 シッカリと話を聞いたりしたら恥ずかしさで悶死する自信があるよ。


「それより、2人の事もちゃんと可愛がってあげてよ?」

「はい?」

「「不束者ですが、どうぞよろしくお願いしますアベル様」」


 そういって左右から俺に抱き着いて来るライラとラウラ。

 豊満な胸が実に艶めかしいじゃなくて、どうしてこうなった?

 そこで笑ってないでホントに誰か説明して。

 頼むよみんなさ・・・・・・。


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