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結局、シルバレーンに次ぐ次世代機の開発に役立ててもらう為に、10万年前の転生者たちの専用機をおくる事にした。
ジエンドクラスの魔物と対抗できる機体を隅々まで調べ上げて、その技術を解析して更なる高みに至って欲しいモノだ。
実際、彼らならば光速を超える推進機関とかも造れるようになるかも知れないし。ヘタをしたらラグナメヒルをも超える性能の機体をいずれは開発したりとかするんじゃないかなとか、密かに期待していたりする。
「さてと、それじゃあそろそろ問題の遺跡に行こうか」
それはさて置き、他のカイラスでやるべき事もシッカリとやっておかないといけない訳なんだけどもね、問題の遺跡とは例によって10万年以上前の遺跡。
カイラスには900万年前の遺跡と、500万年前の遺跡の2つがある事が判った。
当然だけども、2つともこのまま放置しておく訳にはいかないので、すぐにでも何の遺跡なのか確かめないといけない。
「そんな訳だけど、覚悟は良いかいミルカ?」
「私はもう覚悟できてるよ」
さて、その遺跡の調査だけどもミルカが同行する事になっている。
自分の国の脅威を放っておけないって事だけどね。覚悟はできていると言っても緊張は隠せないみたいなんだけどね。
まあ、これから行く遺跡が世界を滅ぼす為に残されたモノとは限らないんだから、そんなに緊張しなくてもって言っても逆効果だよね。
「それじゃあ行こうか」
だから、余計な事は言わずに手を繋いで連れて行く事にする。ミルカの顔が赤くなっている気がするけど気にしない。
まず行くのは例によって魔域の中にある遺跡。しかもなんか火山の中、マグマ溜まりの中にあるみたいなんだけどね。
何を考えてそんな場所に遺跡を隠したんだか・・・・・・。
普通なら調査に行くとか不可能なんだけど、俺たちにはそんなのまったく関係ないから、魔法でマグマの熱を遮って進んでいく。
灼熱のマグマの中を進んでいくのは何とも奇妙な感覚。
それと、ウッカリマグマの熱を奪ってしまわないように気を付けないといけない。
さてと、マグマの中を100キロほど下りて行くとようやく遺跡に辿り着く。
それは巨人。
そこに在ったのは全長100キロを超える巨人。この人型兵器そのものが残された遺跡であり遺産なのは間違いない。
なのだけども、これはいったいなんなのだろう?
とりあえず中に入れば判るかと入口を探す。
この手の人型兵器はどれだけ大きくなっても、大体が胸部あたりにコックピットとかがあるんだけど・・・・・・。
あった。首の所に内部へと入れる入り口があったよ。
そこからエレベーターで降りたところがコックピットというか操縦席らしい。
この巨大な人型兵器を1人で動かすのかは謎だけどね。
「さてここが中枢だね」
「広い」
さてと、アッサリと辿り着いた中枢だけども、この人型兵器を1人で動かすためだけの場所だとしたら余りにも大きすぎる。
直径100メートルはある空間だからね。
ついでに言うとここがコックピットだとしたら操縦席と思われるモノがないのはどうしてかな?
「さてと、何処にコレについての情報があるのかな?」
『探す必要はないよ。この時代の転生者たち』
うん。何時もの様にホログラムが登場したね。
妖法の女性。なのだけどもどうにもミルカの母親に似ている気がするのは気の所為かな?
『私はミルカ・オリエ・カイラス。かつての子の国の女王であり。この“ラグナ・ノヴァ”そのモノ』
やっぱりかつての妖法の女王だったよ。
しかも、名前がミルカってこれどんな偶然?
『其方らはこのラグナ・ノヴァがなんたるかを知りたいのだろう』
「そうなりますね。この世界を滅ぼす為の兵器なんて、あっても困りますし」
ぶっちゃけ、滅ぼす為の兵器ならば即座に消し去らせてもらうつもり。俺の力だけじゃ無理だろうけど、ラグナメヒルの縮退対消滅砲とかを使えば可能だろうしね。
『しかり。確かに其方らにすれば、過去に囚われたモノが残せし滅びの化身など、迷惑でしかあるまいよ』
「そう思うのなら、出来ればコレも残さないで欲しかったんですけど・・・・・・」
『そうもいかん。この世界を真に解放する為には、神を殺す剣が必要不可欠なのだからな』
神を殺す剣と来たよ・・・・・・。
この場合の神は、神龍とかのこの世界のあらゆる生命の創造主の事じゃなくて、間違いなく宇宙の中心に存在する高位次元生命体の事だろうな。
てっ言うかアレって殺せるのか?
間違いなく、この世界の全ての争いの元凶なのは確かだから、抹殺できるのなら抹殺しておいた方が良い気も確かにするけどね。
『この世界の果てなき戦いは、神の死をもって本当の意味で終結する。それこそが、上自身が望氏ことでもあるのだ』
「神が死を、殺されることを望んでいると?」
『そう。今の在り方からの解放。それこそが神の望むことなのだから』
その言い分だと、神を本当の意味で殺すことはできないってことじゃないかな?
要するに、この世界と魔物の世界、二つの世界を結ぶ楔としての神を殺すということか?
『どうやら其方らは未だ真実の深淵に至っていないらしいな。ならば、私から話すのは控えるべきだろう。真実は自らの手で辿り着くべきもの故』
「俺たちとしては、とりあえず真実よりもこの神を殺す剣の危険性のほうが問題なんですけど」
初めの言葉で確信したからね。コレは目の前の見る海外の誰にも動かせないモノだって。
つまり、この兵器で何をするもすべてミルカ次第なんだよ。
『私がこのラグナ・ノヴァで何をするかが気になるか?』
「神を殺す力を持つ平気で何をするつもりなのか、気にするなって言う方が無理だと思いますけど」
そもそも、このラグナ・ノヴァはもう完成しているのか? それとも未だ完成していないのか?
完成しているのなら、これまでの10万年周期の戦いで神を殺しに行けばいい。
それをせずにここに居続けているということは、未だ完成していないんだと思うけど・・・・・・。
『案じずとも今はまだ何もせぬ。このラグナ・ノヴァは未だ完成してはおらぬ。そう、いまだ神を殺し得る力に至れずにいるのだ』
どうやらまだ完成していない方だったらしい。
それならとりあえず、完成するまでは安心かな。多分この人は神を殺すこと以外に興味ないし。
問題は何時完成するかなんだけどね。俺たちが挑む真の戦いの終わりまでには完成するのかね?
『だが、此度の真の戦いが始まるまでには完成させられるめどがようやく立った。凡そ100年後、真の戦いが始まった時には私も其方らと共に戦おう』
「今回の真の戦いには間に合うんですか・・・・・・」
それは良い知らせなのか悪い知らせなのか判断に迷う。
「本当に、私たちと共に戦ってくださるんですか?」
『其方は?』
「ミルカ・シーリ・カイラスです。御先祖様」
『ほう。ソナタミルカの名を継ぐ者か』
ミルカの名?
妖法にとってミルカの名には特別な意味があるのか?
『私と同じミルカの名を継ぐ者が此度の真の戦いのいるのは運命であろう。ミルカの定め。それが真に果たされるのかも知れぬな』
ミルカの定めね。また知らないワードが出てきたんですけど、それについても聞いても無駄なんだろうな。
本当に、秘密主義も大概にしてほしいんだけど。
『いずれそなたもミルカの定めの何たるかを知るだろう。さすれば私がなぜ神を殺そうとするかも理解できよう』
それってそもそも妖法という種族そのものが神を殺すために生み出されたってことじゃ?
『時が来ればすべてがわかる。そして、心配せずとも私は其方らの敵にはならぬ。私が望むのは神を討ち、この世界を真に開放すること。世界の滅びを望みはせぬのだからな』
その時というのが何時なのかが気になるというか、知らなければいけないことが山のようにあるハズなのに、その全てがまだ知るには早過ぎるっていうのかね?
まあとりあえず、友好的な関係を築けそうなだけましとしておくか。
このラグナ・ノヴァのミルカが繊維を滅ぼそうとしていたら、少なくても俺たちの命はなかっただろうし。
できれば、もうひとつの遺跡の方も世界を滅ぼそうとかしていないタイプだといいんだけど、そうそう都合良くはいかないだろうな・・・・・・。




