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 レーゼ少年たちによって試練に投入されると宣言された魔物は全て殲滅された。

 だからこそ、問題はこれからだ。

 カグヤの10万年前の転生者たちが、このまま何もせずに試練を終わらせるとは思えない。

 それが判っているからこそ、レーゼ少年たちも全ての魔物を殲滅し終えあもなお、警戒を緩めずに何かあった時に即座に動けるようにしている。


「はじまったな・・・・・・」


 そして、予想通りと言うか、予定調和と言うか、魔域の中心部で更なる異変が起こり始める。

 見慣れた漆黒の球体がひとつ姿を現す。

 つまり、これからがある意味で本当の試練の始まりと言う事だ。

 問題はどんな魔物が現れるかだけども、少なくてもジエンドクラスの魔物である事は間違いない。

  

 漆黒の球体が現れると同時に、レーゼ少年たちは攻撃の準備を始める。

 砕け散ると同時に魔物が現れた瞬間、全力の一斉掃射で確実に相手を仕留めるためだ。

 実際問題として、その先制攻撃で倒せなければレーゼ少年たちに勝機はほぼない。


 俺の元のまでレーゼ少年たちの緊張が伝わってきそうな静寂の後、漆黒の球体が砕け散り、試練の終わりを告げる魔物が現れる。

 そして、その姿があらわになるよりも早く、レーゼ少年たちによる一斉攻撃が行われる。

 持てる火力の全てを注ぎ込んだ方かが現れた魔物に襲い掛かる。

 そして、攻撃が終わると同時に、レーゼ少年のベルハウゼル以外の全機が戦線を離脱する。

 正しい判断だ。もしも、この一斉攻撃で相手を倒しきれていない場合、その後の戦いにベルハウゼル以外は対応できない、むしろ足手まといにしかならない。

 だからこそ、結果御確認するよりも先に離脱するのが最も正しい選択になる。

 そして、その選択の正しさがすぐに明らかになる。


「ガァァァァァァァァァァッッ」


 一斉攻撃による破壊の奔流を消し飛ばす咆哮が鳴り響く。

 同時に姿を現すのは全長100キロを超える漆黒の邪竜。カオス・ドラゴン。混沌を統べる邪竜の名を冠せし禍々しい竜。

 レーゼ少年たちの一斉攻撃をもってしても傷一つ負ってすらいない邪竜は、その姿を現すとともにブレスを放つ。

 それはカオスの名に相応しい混沌を具現化したかのようなブレス。

 そのブレスを、レーゼ少年は正面から受け止める。そして、そのまま弾き返す。

 ディメンション・ワーム・シールド。次元の穴を通してそのまま敵の攻撃を跳ね返すのは、俺も良くなる戦法ではあるけれども、あえてこの状況でやるか。

 だけども、圧倒的に不利に状況だからこそ、やる価値は確かにある。

 カオス・ドラゴンは跳ね返ってきた自らのブレスを防御障壁で防ぐ。当然、レーゼ少年も今ので相手を倒せるなんて思ってはいない。だけど、同時に防御障壁を削れたのは確かだ。

 そして放たれる縮退対消滅砲。

 それをカオス・ドラゴンはブレスで迎撃する。

 全てを消し去る虚無と原初の混沌がぶつかり合う。そして、互いの全てを飲み込み合って消滅する。圧倒的な力のぶつかり合いがあった痕跡すら一切残さず、完全に跡形もなく消え去る。

 と同時に、レーゼ少年とカオス・ドラゴンが動く。再び交わされる砲火。そそれは同じく跡形もなく消え去る。

 三度繰り返された応酬の後、レーゼ少年とカオス・ドラゴンは距離を詰める。そして正面からぶつかり合う。

 ベルハウゼルの防御障壁を最大出力で展開しての特攻。突撃はその質量と光速を超える絶対的な速度によって如何なる兵装よりも強力な武器となる。だけど、それはカオス・ドラゴンも同じ。全長100キロを超える巨体と想像を絶するスピード。そして膨大な魔力によって展開される防御障壁はブレスを持超える破壊力を持つだろう。 

 その2つがぶつかり合い、その衝撃で魔域の地形が一変する。

 そして、先に次の一手を仕掛けたのはレーゼ少年。

 ぶつかり合ったままの状態で放たれた、ゼロ距離からの縮退対消滅砲。

 放たれた虚無は互いにぶつかり合う運動エネルギーごとカオス・ドラゴンを飲み込んでいく。だが、当然このままではベルハウゼルも飲み込まれてしまう。

 そんな事は初めから判っているとばかりに、レーゼ少年は縮退対消滅砲を放つと同時にブースターを切り、虚無に運動エネルギーを飲み込ませる事でベルハウゼルの動きを止め、更に重力ブレーキを切った上で虚無に向かって主砲の一斉射を行い、その反動でベルハウゼルを一気に後退さらる。


「いくらなんでもムチャが過ぎるよ」


 アレじゃあベルハウゼルにも、レーゼ少年自身にも相当な負担がかかっているハズだ。

 と言うか、一歩間違えればレーゼ少年も道連れになっていた。しかも、それだけの無茶をして、ようやく倒せたかと言えば、そうじゃない。

 圧倒的な力が縮退対消滅砲の虚無を消し飛ばす。

 直撃を受けてなお、虚無そのものを力尽くで無効化してしまう。そんな常軌を逸した、論理的にありえない事を実際に成し得るのがジエンドクラスの魔物。


 そんな理の治外に位置する怪物と相対した経験は、レーゼ少年にとってこれ以上ない糧と成るだろう。


 そして、この勝負は、レーゼ少年の勝ちだ。

 カオス・ドラゴンが虚無を消し飛ばすと同時に、ベルハウゼルの砲火がその巨躯を撃ち抜く。

 放たれたのはアストラル魔法。アイン・ソフ・オウルと同じ効力を持つ一撃。

 Ωランクの魔石の魔力全てを注ぎ込んで放たれたその一撃は、カオス・ドラゴンの魂を完全に消失させる。


「お見事」

「スゴイ。1人で倒したんだ」


 そして、試練は無事に終わりを告げた。

 流石にコレ以上は何もないみたいだ。ひょっとしたら、この後更に追加の魔物が投入されて来るんじゃないかとヒヤヒヤしていたので、ホッとする。

 同時に、戦線から離れてレーゼ少年の戦いを見守っていたザッシュたちが割れんばかりの歓声を上げる。

 彼らの戦いも見事だった。

 今回の試練を経て、彼らも本当の意味でこの世界に生きることを理解した。


「なんとか無事に終わりましたよ」

「お疲れさま。だけどいくら何でもムチャをしすぎだよ」


 疲れた様子のレーゼ少年から通信が入ったので労いつつも、ムチャをし過ぎだとクギを刺しておく。

 正直、レーゼ少年があんな無茶をするとは思いもしなかったから、見ていて心臓に悪かったよホント。


「自分でもそう思いますけど、今のボクじゃあ、ああでもしないと絶対に倒せませんでしたから」

「相打ちになってでも倒せればって思ったの?」

「まさか、生き返る事が出来ると判っていても、自分から死にに行くなんて事はしませんよボクは」


 うん。そうであってくれると本当に助かるよ。

 司令官が死を恐れない特攻タイプとかシャレにならないからね。部隊を統率する指揮官は臆病なくらいじゃなきゃね。


「それより、こうして無事に試練を乗り越えたんですから、お祝いのパーティーは期待していますよ?」

「それは任せて。そのせっかくだからそのカオス・ドラゴンも使って、たっぷりと御馳走を用意するから」


 と言うかお祝いの御馳走は既に山のように用意してある。レーゼ少年には特に腹一杯食べてもらうとしよう。


「ドラゴンの肉なら、ヤッパリドラゴンステーキですかね。ドラゴンカレーも良いですけど」

「イヤイヤ、ドラゴンシチューを忘れちゃいけないよ」


 何が良いかなと悩むレーゼ少年にミルカがシチュー押しで割って入ってくる。

 確かにドラゴンシチューも絶品なだけどね。ミルカさんや・・・・・・。


「今日はレーゼ少年たちの祝勝会だよ」

「それは判っているけど、ドラゴンを食べられる機会なんて流石にそうないんだし」

「そうですね。それに僕たちもみんなに祝ってくれた方が嬉しいですし」


 思いっきり食べ尽す気満々のミルカにレーゼ少年がフォローを入れる。

 なんだかね。

 まあ、確かにドラゴンの肉を食う機会なんて流石に早々頻繁にはない。

 イヤ、俺たちだけなら毎日食べても食べきれないくらいの量が、10万年前の転生者たちが残した遺産であるよ?

 だけど流石にさ、俺たちだけで好き勝手食べてしまって良いものじゃないと思うんだよ。

 これから先のために獲っておいた方が良いとも思うしね。

 だから、ジエンドクラスのドラゴンの肉を食べたりするのはそれこそ、今回みたいな特別な時だけにしているんだよね。

 だから、実は俺自身も久々のドラゴン肉が楽しみで仕方なかったりするから、ミルカの事とやかく言えないんだけどね。

 それはともかく、ドラゴンシチューも確かに良いね。うん。クマーラたちにも頑張ってもらって、沢山作ってもらうとしようかな。


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