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 そして運命の日、俺たちは妖法の国カイラスで、転生者への試練が始まるその時を待っていた。

 時刻は間もなく正午を迎えようとしている。試練が始まるのももうすぐだろう。


 この1ヶ月の間。俺は遺跡の調査くらいしかしていない。

 後は全てレーゼ少年たちに任せている。

 レーゼ少年は転生者たちを纏め上げて、戦う者とサポートに回る者をハッキリさせた上で、この日のためにできる限りの努力を続けて来た。

 その様子には正直称賛の言葉しかない。

 もっとも、当然のようにそれに反発する者も居て、結局200人ほどの転生者たちが出て行く事になった。

 彼らがこれからどうするのか、それは判らない。

 判らないけれども、彼らの未来はあまり明るくはないだろう。少なくと各国の監視下に置かれる事は間違いないし。

 とは言えそれは彼ら自身が決めた事だ。俺が口を出す問題じゃない。それに、もう袂を別った相手の事を何時までも気にしていても仕方がないし、そんな余裕もない。


 それに、彼らよりもよっぽど可哀想な転生者たちが居るしね。

 うん。妖法の転生者たちだよ。

 彼らはカイラスに来た俺たちの前にすぐに連れて行かれたと思ったら、そのままこの世界の、人類の命運を賭けた戦いに参加する事が決まった訳だからね。

 迫る試練について説明した時の彼らの様子は、本当に哀れだったよ・・・・・・。

 ひとしきり嘆いた後は、やるしかないって腹を括って修行に真剣に取り組んでいたのも印象的だったけどね。

 そんな妖法の転生者の様子に触発されたように、他の転生者たちもやる気を出し始めたりしたし。

 だからと言う訳でもないだろうけど、結果として、この1カ月で転生者たちの実力は飛躍的に伸びた。


 具体的には、まずレーゼ少年が一番手でレジェンドクラスに至った。

 それに触発されてなのか、それとも何か自分自身の内に変化を見出せたのか、ザッシャ、サナ、レベリアの3人もレジェンドクラスに至り、そうして実際に転生者の中からレジェンドクラスに至る者が出始めると、これまでの停滞がウソの様に次々とレジェンドクラスに至る者が出始めた。

 結果として、僅か1ヶ月で40人近くがレジェンドクラスに至ったのだから驚きだよ。


 なんで今まで至れなかったの? って不思議に思うくらいみんな次々とレジェンドクラスに至って行くんだからね。

 なんと言うか、カグヤの10万年前の転生者たちの掌の上と言うか、思惑通りに進んでいる気がするけど、気にするだけムダだね。

 実際問題として、転生者のみんなが奮起する契機となったのだから、この試練は既に大成功と言って良いよね。

 まだ始まってもいないけど・・・・・・。


「彼らのこと心配?」

「いや、もう心配はしてないよ。レーゼ少年に任せたしね」


 まだ試練は始まっていないけど、既に彼らなら今回の試練をのりえられると確信できるくらい、見違えるほどの成長を見せている。

 その原動力になったのは、間違いなくレーゼ少年で、既に彼は転生者たちのまとめ役になっている。


「今の彼らならベルハウゼルの力も十分引き出せるしね」


 そのレーゼ少年は今回ベルハウゼルを駆る。 

 それとサナがヒュペリオンを駆り、残りは全員装機竜人の搭乗している。

 戦力としては過剰と言えるほどに万全を期しているから、まあ、カグヤの10万年前の転生者たちが予告していた以上の魔物を投入してきたりしない限りは勝利は確実だ。


「まあ、あの転生者たちが何事もなく終わらせるとも思えないけどね」

「それも含めて対策済みと」


 うん。当然だけどその自体も想定して対策を立てているよ。俺じゃなくてレーゼ少年がね。

 すっかり指揮官として板についたレーゼ少年は宣言された数の魔物だけで試練が終わらない可能性も視野に入れて、万全の作戦を立てて挑んでいるからね。

 もしもジエンドクラスの魔物が現れたとしても、数匹くらいならば打ち倒せるんじゃないかな?

 本当に、レーゼ少年は指揮官としても司令官としても優秀だよ。


「っ。始まったか」


 なんてミルカと話をしている内に試練が始まった。

 魔域の中心部からまず現れたのはSクラスの魔物の大軍。視た限り100万匹は居るかな?

 それに対して、レーゼ少年が指揮する転生者の部隊は、ベルハウゼルを中心に陣形を組んで一斉掃射で迎撃する。

 凄まじい砲火が魔物を瞬く間に殲滅して行く。

 うん。レジェンドクラスの魔物を相手にするために編成された部隊で、Sクラスの魔物相手に苦労するハズがないからね。

 と言うか、まずは速やかにSクラスの魔物を殲滅しておかないと、この後の戦況に響くからね。

 過剰火力にはならない、それでいて確実に速やかに殲滅できる火器を選択して、そして一切の無駄無く計算された砲火を集中させて現れた魔物を殲滅して行く。

 うん。実に見事だね。


「ホント。レーゼ少年に戦闘指揮の才能がこんなにあったとは思わなかったよ」

「なにか、本人が一番驚いていたけど」


 本人が望む望まないにかかわらず。これから先、レーゼ少年は俺と同じくらい面倒な立場になるのがもう確定している。

 と言うか、ある意味で俺より面倒な立場になるのかな?

 転生者を纏めて指揮する立場になった訳だから。

 

「本命が出て来たね」 

「数はほぼ同数。まずは様子見って事かな」


 第一陣のSクラスの魔物を殲滅し終えるとほぼ同時に、本命のレジェンドクラスの魔物現れる。

 その数はこちらの転生者の数とほぼ同数。

 意図としては試練に臨む転生者の力を見極めるための様子見だろう。


「だけど、そんなのが必要なレベルじゃないよ。今の彼らはね」


 だけどそんなのは必要ない。

 現れたレジェンドクラスの魔物は次の瞬間一匹残らず殲滅される。

 これまた当然の結果だ。

 だって1人1殺すれば殲滅しきれるんだから。

 だけど、それを確実に出来るのは見事だよね。レーゼ少年の指揮能力が高い証拠だよ。

 相手が現れた瞬間に、全員に攻撃対象を指定したからこそ、攻撃する相手が重なって倒しきれない魔物が出るなんて事がなかった訳だからね。

 さて、これで戦況を一気に引き寄せられた。

 もっとも、流石にこのまま終わるほど甘くはないだろうけどね。

 恐らく、次は出現すると宣言された残りの魔物が一斉に出て来る。

 そうなると数の上で圧倒的に劣るレーゼ少年たちでは出現と同時に殲滅しきる事は出来ない。故に、現れた魔物に対して一斉射を行った後は双方煎り塗れての乱戦になるだろう。

 その時にどう戦い切るかがカギになる。

 特に圧倒的な火力を持つが故にベルハウゼルなんかは乱戦になるとその真価を発揮できなくなってしまいかねないからね。

 それを踏まえた上で乱戦の中で味方をどう動かすか?

 レーゼ少年の指揮官としての手腕が問われる戦いになるね。

 当然だけども、ザッシュたち他の転生者たちがレーゼ少年の指示に素直に従わないなんて事になったら話にならないけど、流石にそれはないだろうしね。


「やはり残りの魔物を全て出したね。これからが本番だよ」


 魔域中心部にカグヤの10万年前の転生者たちが今回の試練に出すと言った残りの魔物がすべて現れる。そして当然、同時にレーゼ少年たちが持てる火力の全てを投じた最大火力での一斉射を行う。

 さて、ここまでは予想通りの展開。

 そして、一斉射で倒しきれなかった魔物が転移でベルハウゼルの元に殺到するのも。

 こちらの、敵の最大戦力の力を封じる戦略は戦いの基本だ。


 そして、そうなる事を予想していたからこそ、レーゼ少年は乱戦が始まると同時に、敵の戦力を一気に削る手を打つ。

 乱戦が始まると同時に、ベルハウゼルを中心に陣を展開していた部隊が一斉に離脱する。

 あらかじめ決められていた行動なのでその動きに迷いはなく、敵を前にしながらでありながら混乱もなく速やかに実行される。

 そして、周囲に友軍機が居なくなると同時に放たれるベルハウゼルの広域殲滅兵器。

 無数のレジェンドクラスの魔物を一気に殲滅するにはレーゼ少年の魔力では足りない。これはジエンドクラスの魔石を使って放たれた一撃だ。

 その威力は絶大で、一気に敵の半数を消滅させる。

 同時に退避しながら新たな陣形を整えていた部隊が一斉に攻撃を始め、敵が乱戦に持ち込もうと距離を詰める、或いは転移する前に殲滅して行く。

 当然、魔物もただ殲滅されていくだけじゃない。

 圧倒的な破壊の力を宿す攻撃を反撃として繰り出してくる。

 その一つ一つがカイラスを容易く消滅させるほどの威力を持つが、尽くベルハウゼルの防御フィールドで防がれる。

 本当に見事な戦いだ。

 戦況を全て自分たちの作戦通りに進めている。

 宣言された魔物を倒しきるのも時間の問題だ。

 その上で、問題は次に何が起こるか?

 レーゼ少年たちは見事に試練を乗り越えてみせた。その上で、カグヤの10万年前の転生者たちはどうするか?

 間違いなく、このまま素直に終わらせはしないだろう。



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