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 中央指令室は1ヘクタール以上ある広大な空間だった。同時に神殿を思わせるような荘厳さがある。


『やあ、良く来たね次代の転生者たち』


 俺たちが全員、中央指令室に入ったのを確認するかのように、ホログラムが現れて語り掛けてくる。


『と言っても、色々と想定外ではあるけどね。まさか次代の転生者だけじゃなくて、私たちの先達まで居るなんて』

『それに、時代の転生者たちがこの世界を任せられるまでに育っていないしね』

『確かにね。アベルくん。キミを除いて他の転生者たちはボクたちの次代を担うに相応しくない』


 だけど、現れたホログラムは10人以上だった。

 これは初めてのパターンだな


『まあ、キミたが色々と聞きたい事があるのは判っているよ。その上で、まずはじめに問い質したいのが僕たちの真意だと言う事もね』

「それならば話してもらおうか。キミたちが何を考えているのかを」


 レムシータが真意を問い質した瞬間。あたりの空気が物理的に重たくなったのを感じる。

 嘘偽りは一切許さないと言う気迫を感じる。恐らく、彼女は10万年前の転生者たちに怒りを覚えている。 

 それが、自分たちの目的のためにならどんな手段も犠牲も厭わないやり方か、それとも別の何かなのかまでは判らないけど。


『判っていますよ。私たちも誤魔化すつもりはないですから。カグヤによる魔物の侵攻の制御。その真意ならば、私たちはこれまでと同じやり方では、真の戦いを終わらせる事は出来ないと思ったからこそ、そうしたんです。その結果、人類が滅んだとしても仕方がないと割り切って』

『そう。ボクたちは人類よりも世界の解放を優先したんだ。それが許されない事である事も理解した上でね』

『でも、何時までも同じ事を繰り返していても何も変わらない。それなら、どんな犠牲を払ってでも全てを終わらせる覚悟が必要だ。俺たちはそう思い。そして全てを賭ける事にした。それがこのカグヤの役割だよ』 

「キミたちの戦いは10万年にもう終わっているハズだけども?」


 世界の解放するためには手段を択ばないと断言する10万年前の転生者たちに、レムシータは鋭く問い質す。


『それはアナタも同じでしょうレムシータさん。貴方の戦いは300万年前に終わっている。だけどアナタはここに居る』

『ボクたちも同じですよ。だから、ボクたちは自らの造り出した封印システムであるカグヤとひとつになった』

『10万年前に果たせなかった事を、今度こそ成し遂げるためにね』

「つまり、貴方たちは再び戦うつもりなんですか?」

『そうだよアベルくん。そして今度こそ、どんな事をしてでも全てを終わらせる』


 俺は話をしていく内に10万年前の転生者たちの中に狂気を感じ始めてきた。

 それは、カグヤによる魔物の侵攻の制御その話を聞いた時から胸の内に渦巻いていたモノだけども、実際に話を聞いて確信した。

 今話している10万年前の転生者たちからは、これまでにホログラムであって来た同じ、10万年前の転生者たちからは感じなかった明確な狂気を感じる。

 しかも、それはこの世界を滅ぼしてしまいたいと願った転生者たちから感じたモノと同質のモノだ。


 彼らは、カグヤに自らの記憶と人格を、魂を移した10万年前の転生者たちはいったい何を願い、何を成そうとしているんだろうか・・・・・・?


「成程ね。目的のために封印システムそのものになった。ある意味で私と同じね」

『そうですよレムシータさん。私たちは同じ目的のために全てを投げ出した』

「だけど貴方たちは私とは違う。私は貴方たちの様に狂気に囚われてはいないし。目的のためにはどんな犠牲も厭わないなんてバカな事は考えないから」

『狂気ですか。否定はしませんよ。たしかにボクたちは狂ってしまていますから』

『でもそれも仕方がないと思うな。むしろ、あの真の戦いを経験して、狂わずにいられる方がおかしい』

『たしかにボクたちは狂ってしまった。そして、この世界を解放したいと願うと同時に、解放できないのなら滅ぶべきだと願う様になった』

『だから私たちは、この世界を救いたいと願いながら』

『同時にこの手で世界を滅ぼしたいと願っているんだ』


 ああ、本当に彼らは狂ってしまったんだな。

 それも、自らが狂ってしまっている事を自覚している・・・・・・。


『だから、この世界に生きる人々が滅んでも、世界の解放に必要なら仕方がないと思っている』

『だけど、それはあくまでも結果としてでしかないよ。ボクたちが積極的に滅ぼしてしまおうとはしない』

『私たちが魔物の侵攻の制御して成しているのはひとえに試練です』

「試練?」

『そう。それもむしろ転生者へのね』


 それは、その可能性はある程度予想していた。

 そして、俺たちが彼らの満足するけっっかを残せていない事も理解している。


『真の戦いを潜り抜けるには相応の力が必要になる。少なくても、Ωランクを超えた力を持つ者が複数人必要な程にね』

『だけども、現状キミたちはアベル以外は、ほとんど無力に等しい』

『ボクたちの時とは状況が違うのも理解しているよ。ボクたちの時にはこれくらいの段階で、既にΩランクに至ってるメンバーが100人を超えていたし。転生者の数も10万人を超えていた』

『それなのに、今のところ僕たちが把握できている転生者は1万人に満たない。転生種そのものの数自体が10分の1に過ぎない状況だからね』

『それでも、アベル。キミしかジエンドクラスに至った転生者が居ないなんて状況は看過できないんだよ』

『今のキミたちでは、とてもじゃないけど真の戦いを潜り抜ける事は出来ない。だからこそ、キミたちに発破をかけて成長を促すための試練を課したんだ』

『結果は不発だったけどね』

「成程ね。それに、結果が不発だったてのも確かに」

『そう。アベルくん1人だけが力を付けただけで、他の転生者たちは委縮してしまい、戦いを恐れるだけの結果になってしまった』

『だからこそキミたちに聞きたい。キミたちはどうして現実から目を背けて、この世界と自分たちのために、力を求めようとしない?』


 10万年前の転生者たちのホログラムが俺以外の転生者たちを向く。

 だけども、その問いに答える者は誰も居ない。


『まあ、キミたちだけを責めるつもりはない。さっきも言った様に今この世界には、1万人の転生者がいる。それなのに、ここに居る転生者は3000人にも満たない』

『ヒューマンの転生者に至ってはアベルを含めて4人しかいないし、まるで転生者が皆、戦いを恐れて逃げているみたいだ』


 戦いを恐れて逃げていると言われた瞬間、ザッシュたちの肩が大きく震える。


『キミたちが何を思っているのかは知らないけどね。転生者だからと言って戦いを強制されるのが辛くても、転生者だからと言って戦わなくて良いって事にはならないんだよ』

『ボクたちからしたら、力を求めないキミたちの方が理解不能だよ』

『地球と比べてあまりにも危険すぎるこの世界で、転生者が生き残れるようにと、力を得る為の方法も残しておいたのにね』


 それも確かにそうだ。俺が手にした10万年前の転生者たちが残した古文書は、本にも多く存在する事が判っている。それなのに、古文書を手にしてジエンドクラスにまで至った転生者が俺しかいないのは何故だ?


『むしろ、転生者以外の人たちが驚異的な速さで力を付けているのが驚きだよ』

『このままならば転生者の力がなくても真の戦いを潜り抜ける事は出来るかも知れない』

『でも反れじゃあ、恐らく真の戦いを終わらせる事は出来ない。本当の意味でこの世界を救うには転生者の力が必要不可欠なんだ』

『だから、キミたちには強くなってもらわないといけない』

『キミたちはそんな事を望まないだろうけどね』

「ボクたちも、今のままではいけない事は判っています。でも・・・・・・」


 レーゼ少年が悔しそうに途中で言葉を詰まらせる。

 彼は俺やアスカ氏を除いた転生者の中で、実は今一番強い。後少しでレジェンドクラスに至れるところにまで来ている。

 だけども、その後少しが遠い。

 何かキッカケがあれば一気に力を伸ばせるはずなんだけども、そのキッカケが掴めないでいる。


「つまり、彼らが力を付けない限りは今のまま魔物を進行させていくつもりなの?」


 言葉を詰まらせるレーゼ少年や、何一つ反論も出来ずにいるいる他の転生者たち変わってレムシータが核心に迫る。

 そう、今回カグヤに来たのは加速度的に脅威度を増していく魔物の侵攻をどうにかするのが目的だ。


『それについてはなんとも、このままやっても転生者たちにテコ入れできないみたいだし』

『でも、彼らをこのままにしておく訳にもいかないのも確かだしね』

『彼らには、自分たちがこの世界の守り手だって自覚を持ってもらわないといけない』

『だから、ボクたちは彼らに試練を与える事にするよ。彼らがその試練を乗り越えられたなら、魔物の侵攻は抑えよう』


 だったハズなんだけども、何か話がおかしな方向に行っていないか?


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