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「なにそれ? ありえないでしょう。10万年前の転生者たちとやらは何を考えている訳?」
色々と事情や状況を説明して見たところ、レムシータの結論は今の状況は明らかにオカシイというものだった。
「そもそも、魔物侵攻の脅威が加速度的に上がっているのもおかしいわね。封印システムが機能している限り。魔物の取づ権料がいきなり増えるなんてありえない訳だから」
「それはどういう?」
更に続いたのは聞き捨てならないセリフ。
詳しく聞いてみると、そもそも封印システムは魔物の出現を完全に管理しており、活性化を含む魔物の侵攻の全てが封印システム判断にによって決定しているとの事。
300万年前に彼女たちが造り出した封印システムもそうだし、彼女たちの前の転生者が造り出した酢ステムも同じだったそうだ。
「何故そのようなシステムになっているのですか? それに、魔物の侵攻を完全に管理して、制御できるのなら封印システムは魔物の侵攻を完全に防ぐ事も可能なのでは?」
「可能だよ。でもそれは世界を滅びに向かわせるだけだからやってはいけないけどね」
封印システムは魔物の進行を止める事は出来る。だけども、10万年周期の真の戦いを止める事は出来ない。
だからこそ、10万年周期の真の戦い事に新たな封印システムが造られ続けて来たと言っても良い。
そして、封印システムは魔物の侵攻を完全に制御する事の出来るシステムである理由は、どうやっても必ず訪れる10万年周期の真の戦いによる滅びを防ぐためだそうだ。
「魔物の脅威から解放されれば、確かに十万年の間は平和を享受できる。だけど、平和に慣れて戦う力を失ってしまえば、10万年後に起こる真の戦いを乗り越える事は出来ない。魔物の侵攻を完全に止めてしまえば、平和の果てにあるのは蹂躙の果ての滅びでしかなくなる。だからこそ、封印システムは戦力がある程度のレベルに維持されるように計算して、魔物をこの世界に送り込んでいるのよ」
「そんな・・・・・・」
余りの事に全員が言葉を失っている。
だけど、確かにそれはその通りで、反論の余地はないのも理解できる。
「それがこの世界の魔物の侵攻の、魔物との戦いの真実。全ては真の戦いを前提として仕組まれているのよ」
「それが、この世界の現実ですか」
「そう。そして仕方がない事でもあるわ。世界を守るためには、正確にはこの世界に生きる人々を守るには必要不可欠な方法だから」
確かにね。本当の意味で世界を守っているのは鳳凰たち創造主だ。俺たち人間種は自分たちを護るために戦っているに過ぎないとも言える。
「そして、だからこそ今の魔物の侵攻の状況はおかしいとしか言えない。レジェンドクラスが4人もいれば世界の守りは万全な程に脅威を下げておきながら、僅か数年でジエンドクラスが複数人必要なに状況にするなんて、それこそ人間を滅ぼそうとしているとしか思えない」
「それはつまり、10万年前の転生者たちが俺たちを殺そうとしていると?」
「もし彼らが本当に真の戦いを終わらせようとしていたと言うのなら、その為に人間は不要と判断した可能性もあるわ。滅んだところで創造主たちによってまた造られるのだから問題ないと判断したのかも」
つまりあれか? これから先はじまる真の戦いにおいて世界を解放する為には、人間の存在は邪魔だからまずは滅ぼしてしまう様にカグヤにプログラムされていると?
でも、確かに現状の状況はまさにその通りとしか言えない・・・・・・。
俺たちがゲヘナとアグニの活性化の戦いを切り抜けられたのは奇跡でしかない。それに、レジェンドクラスの試練の後の異変もおかしい。
何故、あんなにも急にジエンドクラスの魔物が当り前のように現れる様になった?
そもそも、いきなり現れたジエンドクラスの魔物を倒せたのは奇跡以外のなにものでもなかった。
そして、もしもその場に倒せるだけの戦力が居なかったらどうなっていたか・・・・・・。
人類が滅んでいたとしてもおかしくはない。イヤ、確実に滅んでいたハズだ。
異常としか言えない速さで脅威を魔も魔物の侵攻が、全て封印システムによって制御されていたと言うのなら、その意図は人類を滅ぼす為と言われても反論のしようがない。
「あくまで可能性のひとつだけどね。人間を滅ぼすのならば他に方法もいくらでもあるし。ただ、どう言う事なのか確かめるためにも早急に封印システムの所に行くべきでしょうね。す国くても次の活性化が起こる前に行くべきよ」
「確かにそうですね。今の戦力ならカグヤに至るのも問題無いハズ」
「そうだな。これまではアベル以外の転生者たちが、まだまだ未熟過ぎるから止めた方が良いと思っていたけど、事情が変わったからな。それにしても、カグヤが魔物の侵攻をコントロールしていたのか」
アスカ氏も自分の知らなかった新たな真実に衝撃を受けているみたいだ。
カグヤに至るには俺以外の転生者たちがまだ未熟過ぎる。
これはアスカ氏が前から言っていた事だ。
そもそも、アスカ氏は6万年前の段階でカグヤに至っている。それなら、俺たちもアスカ氏の力を借りればカグヤに至れるハズだ。
それなのに未だにカグヤに至っていないのは、アスカ氏が俺の力に頼らずに自分たちの力で至るべきだと言っていた事と、もうひとつ、俺以外の転生者たちがまだ未熟過ぎるから、彼らがもう少し育つのを待つべきだと言っていたから。
実際。俺と俺以外の転生者の間には隔絶した力の差がある。
そもそも、条件は同じハズなのに、どうして俺だけがジエンドクラスに至って、他の転生者たちはSクラスに留まっている?
現状を考えれば彼らの中から既に複数のレジェンドクラスやジエンドクラスが出て来ていてもおかしくないハズなのに。
特にヒューマンの転生者のザッシュとかはともかく、レーゼ少年たちなんかはもっと強くなっていてもおかしくない。
と言うか、何故にあった時に既にSクラスに至っている転生者が居ない?
色々と謎なんだけども、とりあえず俺以外の転生者からまだレジェンドクラスもでていない状況じゃあカグヤに至るのは早いって事で、これまで至る事はなかったんだけど。
完全に状況が変わったね。
まるで人類を滅ぼそうとしているかのようなカグヤによる魔物の侵攻の制御の事実が明らかになった以上。その理由を知る為に、そして封印システムの暴走とも言える状況を止めるために、すぐにでもカグヤに至る必要がある。
「むしろどうして今まで、その可能性に思い至らなかったのか、知った後から考えてみたら迂闊でしかありませんよ」
「確かに、魔物の侵攻を食い止める封印とはどういうものか、考えてみれば判るハズだったな」
今更思い至らなかった事を悔やんでも仕方がないんだけどね。それでもぼやかずにはいられないよ。
「もっとも、今はそんな事を悔やんでいる暇はないけどね。それこそ今すぐにでもベルハウゼルでカグヤに至らないと」
「それが良いでしょうね。一刻も早くカグヤに至るべきよ」
そう。むしろこんな所で話を続けている時間こそ勿体ない。
すぐにでも行くべきなんだけども、問題はカグヤに至るメンバー。
俺はほかの転生者たちは実力的にもまだ早いって思ったんだけど、アスカ氏やレムシータは仲間に居る転生者は全員連れて行くべきだって言う。
それから、レイたちジエンドクラスののメンバーも当然参加を表明。
彼女たちからしたら真実を知らないでいるなんて選択肢はないそうだ。
それはまだ残っていたレジェンドクラスのメンバーも同じで、彼らはこの世界の守り手として、いや、この世界に生きる者の1人として知らなければならないと言う。
それは確かにその通りだろう。
ユリィたちも、各種族の王族として真実を知らなければならないと意気込んでいる。
そんな中で問題なのが転生者で、特に活性化の戦いで死を経験して心が折れてしまった転生者たちは、カグヤ行きを拒否している。
そんな事は許されない。行かないなんて選択肢はないってアスカ氏とレムシータが呆れているんだけども、彼らは頑としてカグヤへの同行を拒んでいる。
「何故、そうも固くにな拒むのかな?」
「俺たちはもう戦いたくないんだ。なのにカグヤに行って真実を知れば、絶対に戦いから逃げられなくなる」
「俺たちは真の戦いも、世界の解放もどうでも良いんだよ。ただ平和に、静かに暮らしていたいんだ」
「転生者だからった戦わされるなんて御免だ。この世界には戦わない奴らだっていくらでも居るのに」
彼らの慟哭はある意味で仕方のないもので、これまで鬱積して来た彼らの心からの想いだろう。
彼らの気持ちも判るし、俺は心が折れた彼らが戦う必要もないと思っている。
「それなら、ココでパーティを外れてもらっても構わないけど」
「「「「「なっ!!??」」」」」
俺がそう言うと驚きの声が上がるけれども、そんなにおかしな事を言っただろうか?
「アベル。彼らは現状で私たちの元を離れて国に戻るのはムリよ」
「国として彼ら転生者に力を求めているのは確かですから・・・・・・」
ユリィたちが、彼らは自身がどんなに戦いたくないと願っても、周りが許さない状況に居ると言う。
「むしろその筆頭がアベルなんだけど、自分が置かれている状況に気付いてなかったの?」
同時にもの凄く呆れられてしまった。
確かに言われてみれば俺の立ち位置はかなり厳しいモノかもしれない。途中から面倒になって自分の現状とか無視するようにしていたから気が付かなかったよ。
だけどそうか、この世界は転生者に戦いを強制する。その現実が彼らを何処までも追詰めているんだ。
だけど、このままカグヤに行かないままでいれば、待っているのは人類の滅びだけだ。そして、行かなければ彼らもまた死ぬ事になる。その事に彼らは気が付いているのだろうか?




