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さて、活性化の戦いが終わった事で、アグニの遺跡の調査も本格的に始められる。
そこで問題になって来るのが、10万年以上前の遺跡。
既にアグニにはそれがある事が判っている。何時の時代の遺跡かは判らないけどね。
まあ、流石に1億年以上前の遺跡とかはないと思う。
いくら魔法で保護されていてもそんなに持たないとかじゃなくて、流石に1億年以上も発見されずに残っている遺跡はないだろうって意味でね。
まあ、そのあたりの事はどうでも良いんだけどね。
問題は、その遺跡が世界の滅亡を求めて残されたモノか、それとも世界を救うために真の戦いを終わらせる事を願って残されたモノなのかと言う事。
前者なら早急に遺跡を破壊するなり停止するなりしないといけない。
そして後者ならば、或いは今まで知り得なかったこの世界の真実の一端な触れられるかも知れない。
そもそも俺たちは未だに10万年周期の真の戦いについて何も知らないに等しい。
これは本来ならありえないことなハズだ。
だけども、10万年前の転生者たちが意図して徹底的に情報を消し去っているため、現状ではほとんど何も知らないに等しい。
10万年前の転生者たちがどうして真の戦いにいての情報を隠蔽したのか、その意図は不明。
それにどんな意味があるのかも判らない。
まあ、意味があるのは確かなんだろうけど、その理由が判らない今は納得できないのも確か。
だからこそ、10万年以上前の遺跡にその答えの欠片でもないかなと期待していたりもする。
「遺跡の調査に行くの?」
「当然。せっかく見つかったんだからね。急いで確認しないと」
「それなら、ボクも連れて行ってくれないかな?」
これは意外な提案だね。まさかアシャが遺跡に連れて行ってくれと言うとは思わなかったよ。
「イキナリだね。どんな心境の変化かな?」
「心境の変化と言う程じゃないけど。ボクも何時までもアベルに任せっきりじゃいけないと思ったからね。転生者が残したモノだから、転生者が何てのはおかしいし」
「成程ね。でも今から行くのは、10万年以上前の遺跡だよ」
「だからこそだよ。その遺跡はこの世界への希望か絶望が込められているんだよね。10万年周期の真の戦いを終えた後の転生者たちの想いが」
この世界を護り抜いた人たちに、その上でこの世界を滅ぼしたいと思わせてしまったのはいったい何故なのか?
この国の、フレイムシードの王族としてその想いを確かめないといけない。アシャはそう続ける。
「ボクたちは知らないといけないと思うんだ。キミを含む転生者が、何故この世界に生まれるのかを」
「この答えは俺もぜひ知りたいよ」
間違いなく、10万年前の転生者たちがカグヤに隠した真実の中にそれもあるんだろうけどね。
「それに、ボクはキミと並び立ってみたいんだ。キミに護られるだけじゃない、キミを助けられる様になりたい。だからこそ、キミにばかり頼っている様じゃいけないと思ってね」
「俺と並び立つね」
「ボクだっていずれは鳳凰様の加護を使いこなして、ジエンドクラスに至るんだからね」
うーん。どうも創造主の加護は更にその上を見据えている気がして仕方がないんだけどね・・・・・・。
それも今のところ仮定の話だけどね。
「うん。期待しているよ。とりあえず。今回はアシャも一緒に来るって事で良いのかな?」
「今回はじゃなくて、アグニの遺跡の調査にはこれからボクも、必ず同行するからね」
おやおや、途中で腰が抜けないと良いけどね。
イヤ、一番危険なのはこれから行く遺跡か。本当に、果たして希望と絶望、どちらの想いと共に残された遺跡なんだろう。
「それならその決意を尊重するとするよ。後で後悔しても知らないけど」
「後悔しても先に進めるなら良いよ」
これは決意は固そうだね。それに後悔しても先に進みたいと思えるなら大丈夫だね。
「それじゃあ行こうか、活性化の戦いで存在が明らかになった遺跡へ」
「うん」
そうなんだよね。今回行く遺跡の存在が明らかになったのは、活性化の戦いの影響なんだよ。
要するに、活性化の戦いで魔域内部のいたる所に巨大なクレーターが出来た事で、今まで発見されていなかった遺跡が姿を現したって訳だね。
「それにしても、まさかこんな魔域の中心部付近に遺跡があるなんてね」
「確かにね。ただ、まあひょっとしたらここはかつては魔域ではなかった可能性もあるからね」
10万年前の戦い以降は間違いなくこの地は魔域として存在する訳だけども、この遺跡が造られた当時はこの地は魔域ではなかった可能性だってある。
その遺跡は、活性化の戦いでできた巨大なクレーターの中に平然と存在している。
その内また地中深くに埋もれる事になるのだろうけれども、今のところは魔域の自己修復機能もほとんどなされていないような状況で、魔域の中に活性化の戦いの傷跡が残ったままになっているので、この遺跡も姿を現したままになっている。
「それにしてもこれは鏡?」
「それにしては大き過ぎるけどね」
どうにも遺跡は直径100キロを超える巨大な丸い鏡のように物体なんだけど・・・・・・。
クレーターの中に巨大な鏡がひとつだけ転がっている様子はかなりシュールだよ。
「とりあえずあからさまに入り口らしきところもあるし行ってみようか」
「あの紋章って鳳凰様の・・・・・・」
鏡の縁に当たる部分に鳳凰の紋章が刻まれている箇所があるんだけど、ソコが入り口になっているらしいんだよね。
それより、この遺跡の防御システムはどれだけのモノなんだ?
確かこの辺りは活性化の戦いで縮退対消滅砲で跡形もなく消し飛ばした場所だと思うんだけど。まさか縮退対消滅砲すら無効化してこうして残っているなんてさ・・・・・・。
流石にありえなくない? って思うよね。
「鳳凰の紋章か、アグニに残されていたのも考えると、この遺跡を造ったのはかつてのフレイムシードの転生者なんだろうね」
「ひょっとして、フレイムシードの王族に転生した人とか?」
「かも知れないね」
入口のパスワードは鳳凰と対を成す̪四霊は?
中に入ると、すぐさまこの遺跡の中枢部となっているみたいだ。
「さて、多分のの遺跡を造った人の、ついでに残した人のメッセージがあるハズだけど」
「ねえ、やっぱりこれって下手に触ったりしない方が良いよね?」
「それは当然。下手に触って遺跡を稼働させてしまったりしたら一大事だからね」
この遺跡が世界を滅ぼす為に残されたモノだとしたら、起動してしまったらそのまま終わりになりかねない。
間違いなく鳳凰らの存在を知った上で、一度動けば創造主たちですらも世界の滅びを止められないように造られているハズだから。
本気でそう言う執念はカンベンして欲しいんだけど、俺もひょっとしたらこれから始まる真の戦いが終わった後には、世界の滅びを望む様になっているかも知れないんだよね・・・・・・。
『良く来たな10万年周期の真の戦いに挑む転生者。それに我が子孫』
そんな事を思っていると何時もの様にホログラムが現れる。
フレイムシードの女性。とても穏やかな表情をしながら、こちらの全てを見透かすような雰囲気がある。
『私はレムシータ・レゼル・アグニ。キミたちから見て300万年前の転生者であり。当時のこの国、アグニの王でもあった者。そして、真の戦いにおいてこの世界の解放を望み。叶わなかった者だよ』
「300万年前の御先祖様・・・・・・」
『そうなるね。キミの名前を聞いて良いかな?』
「アシャ・イグニ・アグニです」
『アシャか、良い名前だね』
チョット待て、これはメッセージじゃないのか?
どうしてこのホログラムは普通に会話をしている?
『別にそう驚くほどの事じゃないよ。私自身がこの遺跡の制御システムそのものになっているだけだからね』
「つまり貴方は」
『そう。遺跡のシステムに人格を移植した訳だよ。何時の日か臨んだ未来に至る時を見るためにね』
この世界の解放。その為に自分自身をこの遺跡とひとつにして残した訳か・・・・・・。
『だから、私はキミたちが知りたいであろうことのほぼ全てを知っている。だけど、残念だけど今は教えるつもりはないよ』
「なんとなくそんな気はしていましたけど、理由をお聞かせ願いますか」
『簡単だよ。それはキミたちが自分の力で辿り着くべきものだからさ。私もまた。自分の力で真実に辿り着いたのだからね』
「ヤッパリ、10万年周期の真の戦いを終えた転生者は、次の、10万年後の転生者から真実を隠すのが繰り返されてきていた訳か・・・・・・」
そうなんじゃないかと思っていたけど、この世界、10万年周期の真の戦いが終わる度にその真実を隠されてきたんだね。
「いったい何時から続けられてきたんだか・・・・・・」
『さあね。ひょっとしたらすべての始まりからかも知れないよ』
「はじまりから・・・・・・」
一瞬、何を言われたのか理解できなかったけど、そうだよね。この世界の10万年周期の真の戦いとやらも永遠と続いているけど始まりがあるんだよね。それが何億年前なのか、それとも何兆年前なのかは知らないけど。
『それにしても本当に運が良いよ。300万年かけてようやくこのセラヒィムが完成したと思ったら、すぐにキミたちが来てくれたんだからね』
「運が良いとは?」
いきなり話が変わってついて行けないんですけど?
と言うかこの遺跡完成しているのか・・・・・・。しかも完成したてと?
『簡単な事だよ。このセラヒィムと私レムシータはキミたちと共に行き、力となろう』
はい? 何かトンデモナイこと言い出した気がするんですけど?




