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 活性化の戦いが始まって5日目。

 既にどれだけのジエンドクラスの魔物を屠ったか数える気にもならない。

 そして、戦局は日に日に激しを増している。

 既にアグニの部隊にも少なからず被害が出ている。

 こちらはまだ犠牲者を出していないが、フレイムシードの転生者たちなど、戦いになれていない者たちの中には、装機竜人を大破させるなど、かなり危険な状況に追い込まれる物も相当数出て来ている。

 このまま行けば、そう遠からず俺たちの中からも犠牲者が出る事になるだろう。

 それは仕方がない。むしろこれまで犠牲者が出なかったのが奇跡なんだから。

 それに、もし戦死者が出ても今ならば生き返らせる事が出来る可能性が高い。

 細胞の人カケラも残さずに消滅したとしても、くしなどに残った髪の毛などの痕跡から蘇生させることも出来る。

 それに、この戦いで死ぬかもしれないのは俺だって同じ。アスカ氏やレイたちだってそうなのだ。そして、当人たちは今更その事に恐怖を感じたりしない。

 だからではないけれども、俺も死ぬことを恐れて立ち止まるつもりはない。

 それは、恐らく10万年前の転生者たちも同じだったんだろう。彼らも幾度となく死に生き返る、ゾンビアタックを繰り返して真の戦いを切り抜けたのだと思う。

 そして、そうまでしても本当の目的は果たせなかった。

 本当に、この世界はどこまで恐ろしいんだろうと思うよ。


「アベル・ユーリア・レイベスト。ラグナメヒル出る」


 前世のロボットアニメの発艦シーンの様に宣言して、ベルハウゼルのカタパルトからラグナメヒルで飛び出す。

 今日はベルハウゼルの指揮でも、生身の戦闘でもなく、ラグナメヒルを駆って戦う。

 今の自分がこの機体の性能を何処まで引き出せているのか?

 何処まで戦えるのか?

 その確認をするため。

 ベルハウゼルの戦闘領域から一気に魔域中心部へと駆け抜ける。それだけでそれまでの間に居た魔物は全て殲滅している。

 まあ、レジェンドクラス以上の魔物が居なかったからだろうけれども、攻撃をいちいちするまでもなく数百万の魔物を殲滅してしまうのだから恐ろしい。


「来たな」


 目標地点に到達し即座に機体を止め、ラグナメヒルの特徴とも言える大剣を構える。

 目の前では既にジエンドクラスの魔物が現れようとしている。

 目前には無数の漆黒の球体がある。その数は、広大な魔域の中心部を埋め尽くすほどだ。

 その漆黒の球体が次々と砕け散ろうとしている。だけども、それは決して同時ではない。同時にこの数の漆黒の球体からジエンドクラスの魔物が現れたのならば脅威どころの話ではないけれども、タイムラグがあるのならば問題ない。

 現れた準に1匹ずつ滅して行けばいいだけ。

 自分よりもはるかに格上のジエンドクラスの魔物、それも総数で百を超える相手にそんな事を思えるのだから驚きだよ。

 まあ、俺1人で相手をする訳じゃないのも大きいと思うけどね。

 同じく魔域の中心部にはミミール達も同様に、今にも砕けそうな漆黒の球体と相対している。

 彼女たちなら俺よりも確実に、容易く対処してみせるのは確定。

 本当に、頼りになる仲間がいるのは心強いよ。 


「ヴォォォォォォォォ」 


 予想通り、目の前にあった漆黒の球体が一番初めに砕け散る。

 そして、現れたのは体長10万キロを超える巨人。その余りの巨躯に思わず息を飲む。

 その姿は余りにも異様だった。カタチは10万キロを超える巨体である事を覗けば筋肉質な人間の男の姿だが、その全身に無数の目を持っていた。

 大きいモノは数百キロを超える目が体中のいたる所に、それこそ隙間なくある姿は、見る者に根源的な恐怖を与えてくる。

 マハーカーラ。ヒンドゥー教の神の1柱でシヴァの別名とも呼ばれるモノ。マハーは「大いなる」カーラは「暗黒、時間」を意味し、世界を破壊する時には恐ろしい黒の姿で現れ、シャマシャナの森林に住み、不老不死の霊薬を持ち、力尽くで人々を救済するとも言われる、仏教では大黒天の名を持つ者。

 日本で七福神の1柱に数えられる神の名を持つとは思えない姿の魔物だ。

 思わず苦笑したくなるけれども、そんな余裕はない。

 その巨きが現れると同時に、発動した魔法がマハーカーラを討つ。

 放った魔法はアイン・ソフ・オウル。ラグナメヒルの魔道機関を通して増幅されたその一撃は、本来なら俺の魔力量をを込めても倒せないハズの圧倒的強者を容易く屠る。

 屠ったマハーカーラは即座に回収する。こんな恐ろしい巨人の素材が何かに仕えるか判らないけれども、少なくても魔石は貴重な資源になる。

 これからの戦いの事を考えれば、前哨戦にすら過ぎない今の状況で、10万年前の転生者たちが残した遺産の魔石などの動力を消耗し過ぎるのは危険だ。遺産に頼るしかないのはともかく、出来得る限り魔物を討伐した際の資源を回収しておかなければ、後で取り返しのつかない事になる。

 なので、同じように漆黒の球体から現れたジエンドクラスの魔物をアイン・ソフ・オウルで屠って行き、そのまま回収して行く。

 だけども、当然だけどもそうそう上手く行き続けたりはしない。

 現れた漆黒に輝くドラゴンにアイン・ソフ・オウルを放つが相殺されてしまう。

 こっちの攻撃を認知してから対応できるだけの余裕なんて与えていないハズなのに、当たり前のように相殺されて消されてしまう。

 確実に相手をして目られるよう様に十分な魔力を込めて放った魔法なのにだ。

 ・・・・・・魔晶石での回復分を含めて考えて、1回の魔法使用に凡そ全魔力の3分の1を込めている。それがラグナメヒル魔道機関で増幅されて、100倍を超える威力にまで高められている。

 つまり、俺の全魔力を込めた魔法の30倍以上の威力があると言う事だ。

 そんな魔法が、アッサリと相殺されてしまった意味は大きい。

 このドラゴンはさっきまで屠ってきた魔物とは別格だ。

 即座に次の魔法を用意する。しかし、確実に俺よりも相手の方が速い。

 3分の1の魔力を込めた魔法が相殺された事をふまえて、万全を期して魔晶石の回復も込めて全魔力の2倍分を込めて魔法を構築する。

 だけど、当然だけどもそれだけの魔力を込めてとなると発動までに時間がかかる。

 それまでにこのドラゴンにどれだけの行動を許す事になってしまうか・・・・・・。

 緊張を高めて、ドラゴンの動きを見据えると、イキナリ横からの攻撃で崩れ落ちる。


「アレはまだキミには厳しいよ。今構築している魔法でも多分倒せないから」

「助かりました」


 ミミールが助けてくれた。

 2倍の魔力を込めた魔法でも倒せないと言うのは事実だろうから、正直本当に助かったよ。本当にこの戦いにミミール達も参加してくれてよかった。俺とレイとアスカ氏だけだったら持ち堪えきれなかったかも知れない。

 いや、実際に持ち堪えられなかっただろう。

 本当にふざけた数の魔物が進軍をしてくる。


「それにしても、本当にいい加減にして欲しいな」


 心の底からの叫びと共に、ちょうど構築し終えた魔法で新たに出現した魔物を屠る。

 辺りを見渡せば漆黒の球体はすべてなくなっている。とりあえずは、コレでジエンドクラスの魔物のラッシュは終わりと言う事だろう。

 同じようにまた100引く単位で一気に現れるのも確定だろうけれどもね。


「本当にね。終わりかと思っても終わりじゃないしね」

「まあ、まだ活性がが終わるハズもないから仕方がないんだろうけど・・・・・・」


 本気でいい加減にして欲しい・・・・・・。

 まあ、活性化の戦い中の魔域の中心部に魔物が途絶えるハズがないんだけどね。


「ミミール達はいったん下がって。広域アストラル魔法で殲滅する」

「了解。それじゃあアアベルの次は私が行くよ」


 広域殲滅魔法での大量虐殺。ただし効果範囲にエリアマスターを入れてしまわないように注意が必要。それこそ数えきれないほどの魔物を殲滅しなければいけない活性化の戦いにおいて、最も効率的な戦略。

 集中しながらも確実に、速やかに魔法を構築していく。広域アストラル魔法。それに込めるのはさっきのアイン・ソフ・オウルを上回る4倍の魔力。

 今の俺の全魔力の4倍。これならば半径1万キロの領域の魔物を確実に全て殲滅できるだろう。複数のジエンドクラスの魔物が居ても、流石にさっきのドラゴンレベルの化け物は居ないからね。


「この程度の領域の魔物を殲滅するのに、4倍もの魔力を必要とするんだから、俺のまだまだだよな」


 ジエンドクラスに至ったと言ってもまだまだ力不足。

 その現実を噛みしめながら、俺は構築した魔法を発動した。


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