360
さて、約1週間後に始まると予測される魔域の活性化の戦いに参加することが決まったわけだけど。当然だけどもその1週間の内にやるべき事が山ほどある。
まずは遺跡の調査。これはベルハウゼルみたいに活性化の戦いで使えるものが出てくる可能性もあるし。取り植えずいくつかは回っておく予定。
後、一応アスカ氏とかのジエンドクラスのメンバーにも声をかけておく。来てくれるかは判らないけどね。まあ、一応の保険として。
それと、転生者については後回しにしようかとも思ったんだけども、基線的に転生者は全員が戦いを避けられない家柄に生まれるから、活性化の戦いに参加する事はどの道避けられないんだよね、
そうなると、シャレにならない脅威が襲い来る戦いである以上、戦死してしまう可能性もかなり高かったりする。それなら、転生者として迎え入れて、俺たちの傍である程度安全を確保しなガニ戦いの厳しさを目の当たりにしてもらった方が良いだろうと言う事になって、急遽フレイムシードの転生者は俺たちの元に集結する事になった。
まあ、基本的には10万年前の装機竜人を使って戦ってもらう予定だからそう危険もないと思うから頑張ってくれとしか言えない。
それよりも、重要なのが鳳凰の元に向かう事になった事。
これは当初。活性化の戦いが終わってからの予定だったんだけども、鳳凰自らアシャとミルカを呼んだため予定が変わった。
当然だけどもアスカ氏も呼んで(呼ばないと後が怖い)、鳳凰と対面するのは俺とレイとアスカ氏、それにアシャとミルカの5人。
何か炎王も行きたがっていたけど女王が張り倒して阻止していた。因みに、その女王は恐れ多いと固辞。
「此処が原初の炎封」
「そうです。鳳凰様が生まれた地とされ、鳳凰様が守護する地です」
原初の炎封と呼ばれる地は、耐える事ない炎が支配する領域。
地上1万メートルを超える高地の内側であり、底の見えない深い火口の内側は絶える事ない炎で支配されている。
そして、その炎はマグマや溶岩によってではない。その方のの全てが鳳凰の存在によって成り立っている。
つまり、原初の炎とは鳳凰そのものでもある。
と同時に、原初の炎とは法王を生み出したものでもあるというのだから矛盾している。
まあ、その辺りはいくら考えても答えは出ないだろう。法王に直接聞けばわかるかもしれないけどね。
と言うか、そんないくら考えても答えの出ないことを気にする前に、ミルカの事を気にかけてあげるべきかな。
現在、ここにいる5人の中で一番緊張しているのが間違いなくミルカなんだよね。
うん。それはもう、傍から見てかわいそうなくらい緊張している。
まあ、緊張するのも仕方がないけどね。
俺はもう慣れた。天獣から始まってもう何度目になるかだし、アスカ氏は完全に興味が勝っている。レイも自分がジエンドクラスに至る時ので耐性がついているだろうし、アシャは自分の国なのでミルカよりは比較的マシ。
とは言えアシャも緊張でガチガチなのは変わらないんだよね。
「2人ともそこまで緊張しなくても」
「緊張するなって方がムリだから」
「そうですよ。もし無礼があったらと思うと」
今までの経験から言って、態度が無礼だとかそんな些細な事で起こるような存在じゃないけどね。
彼らにとって重要なのは、俺たちに、今回の場合はアシャとミルカに、この世界を護るために命を賭けて戦う覚悟と決意があるかどうかだけだと思う。
それ以外の、態度だとか自分多への畏敬の念なんてカケラも関心がないんじゃないかな?
まあ、そんな事を言っても仕方がないと思うけどね。何と言っても空いては鳳凰。彼女たち2人にとっては種の創造主。神そのものなんだからね。
まあ、この場合の神は前世における宗教的な神とはまた異なる概念になるんだけどね。その辺りを説明すると本気で長くなるから此処では割愛。
と言うか姿を現していないだけで、既に鳳凰は俺たちの事を見ているよね。この領域の全てが鳳凰の支配下にあるんだから当然だけどね。
『そう畏まらずとも良いぞ我が子らよ。其方らは其方らの思うが儘にあれば良い。そして良く来たな異界よりの転生者よ』
こちらの考えてることも全部お見通しとばかりのタイミングで現れるね。
それにしても鳳凰か、見た感じではむしろ蒼い火の鳥。朱雀とか言われた方がシックリくるかな。
それにしても、判っていたけれども本当に圧倒されるほどの存在感だよ。それに俺自身がジエンドクラスに至った事で、アスカ氏が言っていた事が良く分かる。本当にどれだけの力の差があるんだろう?
いや、これはもう力の差なんて生易しい次元の問題じゃないね。存在としての根本的な格が違う。
いや、そんな表現でもまだ言い表せ聞けない程にそもそもが決定的に異なる。
『今、この国を覆う事態は我も理解している。それ故に、我は其方らを呼んだのだ。我が子たるフレイムシードと妖法人の姫よ。2人に問う。其方らにこの世界を護るために自らの命を賭ける覚悟があるか?』
それは2人の覚悟を問う審問。ほんの僅かな迷いであっても鳳凰は見逃さないだろう。自らの全てを賭けて本当の意味でこの世界を護るための戦いに身を投じる覚悟があるか、この問いに偽りはおろか迷いすらも許されない。
だからこそ、2人は時間を置いて自らの心を落ち着から、想いを定める。
「「好みの全てを賭して、この世界を守り抜いてみせます」」
それは不退転の誓願。2人にとって絶対の誓い。
『其方らの覚悟をしかと受け取った。なれば我は其方らに加護を与えん。その力を持って迫る危機を祓ってみせるが良い』
だからこそ、鳳凰も2人の誓いに偽りがない事を認める。
そして、言葉と共に鳳凰の羽根が2人の中に入り込んでいく。アレが鳳凰の加護。アシャとミルカに得られた力そのもの。
『其方らが我が加護を何処まで使いこなせるか楽しみにしておるぞ』
そう言い残すと鳳凰はその姿を消す。
こっちにはまだまだ色々と聞きたい事があったんだけども、そんな事はお構いなしに用は済んだとばかりの唐突さ。
いや、なんとなくまだこちらの事を見ている気がするんだけどね。それでもこちらの疑問に答えてくれることはなさそうだよねコレ。
「2人はこのタイミングでレジェンドクラスか」
「実感が湧かないんだけどね」
「と言うか、活性化が始まろうとしている、このタイミングで試練なの?」
ああ、そっちの問題もあったよね。ついでに言うと。
「それとアベルは私の試練について来るの? ついて来るならカイラスへの初訪問になるけど」
「いや、元々の予定通りにアグニの後に行く事にするよ」
今行くともの凄くメンドウな事になりそうな気もするしね。
「と言うか、カイラスの方でのミルカの試練はともかく、アグニでのアシャの試練は本当にどうなるんだ?」
「さあ? とりあえずミルカには私がついて行くから、アシャの方はキミとアベル氏も呼んでおいた方が良さそうね」
「それだけで済むかどうかも不明な気もするけど」
本気でジエンドクラス全員を招集する事も視野に入れておいた方が良いんじゃないか?
多分、呼べば全員来てくれると思う。報酬として差し出せる切り札もまだあるしね。と言うか、報酬としてこんなのを用意していますと伝えれば確実に全員来てくれると思う。
過剰戦力過ぎるとも思うけれども、活性化が起きようとしている最中での試練、しかもほんの少し前にジエンドクラスの魔物が大軍を成して現れるなんて異常事態が起きたばかりでなのだから、用心するに越した事はないよ。
「此処で戦力集中させると、狙った様に他の所で異常が起きそうな気もするけど」
「そうなったらすぐに散って対処してもらうよ」
その時にはさらに報酬を弾まないといけなさそうだけどね・・・・・・。
と言うかアレ? 俺が報酬を払わないといけないのかな?
いや、元々が10万年前の転生者たちの残した遺産だったりするから、俺が貯め込んでいないで放出した方が良いに決まっているんだけどね・・・・・・。
何か釈然としない様な、気にしても仕方がないね。
仕方がないとは思うんだけど、何だろう・・・・・・。
「なにかこれからの事を考えるだけで、どっと疲れたんだけど・・・・・・」
「アスカ氏はともかく、他は私が対応するからアベルはそんなに気にしなくても大丈夫よ」
あっそうか、今はレイが居るんだった。
そうだね。もともと長い付き合いのあったメンバーなのだから、レイに任せた方が良いよね。
「とりあえず、試練が終わったら父上が用意していたらしい火神全席で英気を養おうよ」
「それは良いかも」
と言うか何気にずっと気になっていたんだよね火神全席。
うん。今から楽しみだよ。そんな訳で食欲のためにも面倒事は速攻で終わらせるとしようかな。




