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 戦場でそれは致命的な好きであると理解しているのに、俺は今、目の前で起きた現象が理解できずに茫然としてしまった。

 事象としては簡単だ。ラグナロク・ウル・オーディンの放った全周囲攻撃を俺がラグナメヒルの大剣で切り裂き相殺した。

 だけども、何故そんな事が出来たのかがまるで判らない。

 そんな事が出来るハズがないのだから・・・・・・。


 あの全周囲攻撃が放たれれば、アスカ氏やレイはともかく、シオンたちは成す術もなく死んでいた。

 それを防ぐ手段は中た。いくらアスカ氏たちでも、目の前の敵を無視して、あの全周囲攻撃に対抗する訳にはいかなかったから。

 だからこそ、あの瞬間、シオンたちの死は確定してしまっていた。

 それを理解した瞬間。俺は我を忘れてその確定した現実を阻みに行った。

 そして、確かに俺は確定した事実を覆した。

 だけどどうやって? どうしてそんな事が出来た?


 いや、判っている。自分自身で何が起きたのかは既に理解している。

 自分の体の中に漲る力を感じるのだから・・・・・・。

 だけども、こんなご都合主義が起きて良いのだろうか?

 仲間の危機に対して更なる力に目覚めるなんて・・・・・・。


「こんな形でジエンドクラスに至るのは、流石に想定外なんだけど・・・・・・」


 だけども、今の俺ならば目の前の敵にも対抗できる。

 一気に呆然自失の状態から臨戦態勢に入る。そして、大剣をラグナロク・ウル・オーディンに叩き込む。

 袈裟懸に放たれたその斬撃を、ラグナロク・ウル・オーディンはその手に漆黒の大剣を生み出して受ける。刃と刃がぶつかり合い。そこを起点にぶつかり合うエネルギーが空間を歪ませていく。

 今までの様にその身に受けなかったのは、今の一撃が自分にとっても致命傷になりえる力を持っていると判断したからだろう。今までの様に、ほんの僅かな魔力で無効が出来る攻撃ではなくなったと言う事だ。

 なら、これからは本当に互いの命を賭けた戦いになる。

 刃をぶつけ合わせている状況から、最大出力の推進力で相手を吹き飛ばし、そこから一気に距離を詰めながら突きを放つ。

 これまでの10倍。光速の30倍に及ぶ速度で、機体さのモノを弾丸とする突き。大剣の断層フィールドを最大室力にまで引き上げ、機体全体を防御フィールドで包む事で正しく完全な弾丸となって相手にぶつかりに行く。

 日の全てを貫く一撃に、ラグナロク・ウル・オーディン同じく大剣を突き出して挑んでくる。

 大剣の切っ先同士がぶつかり合い。力と力か拮抗しあいながら衝突する。

 感覚として、この一撃が勝敗を決めると確信する。だからこそ、持てる力の全てを込める。

 どうすれば良いのかは漠然と理解できる。圧倒的な力を持つラグナメヒル。恐らくはΩランクの魔物の更に上の存在と戦う事を想定して造られた機体。

 今まで使いこなす事が出来ずに理解できなかった機体の詳細な情報が、頭の中に流れ込んでくる。、

 そして、同時な理解する。自分がまだこの機体の本当の力を引き出せるまでに至っていない事を。だけども、今引き出せる様になった力だけでも、この状況を打開するには十分。

 シャイニング・ストリーム。

 操縦者である俺がジエンドクラスに至った事で使える様になった、ラグナメヒルの強襲形態。

 機体そのものを弾丸としている今の状況を、更にもう一段高める事が出来る。全てを貫く超光速の弾丸となる。

 問題は俺が使いこなせるか。だけども、そんな事を気にしている余裕も暇もない。

 使いこなせるかじゃない。無理やり使いこなしてみせる。

 シャイニング・ストリームを発動。機体全体を防御フィールドとは全く別の破壊エネルギーが覆う。そして、今までとは比べ物にならない程の推進力が生まれる。

 その全てが純粋な力となって、ラグナロク・ウル・オーディンとの拮抗を崩していく。 

 そして、漆黒の大剣を貫き。その体を貫き。その全てを破壊し、消滅し尽す。

 勝った。本当ならば勝ち得なかった相手に勝利を掴んだ。

 だけどまだだ。まだ戦いは終わっていない。アスカ氏とレイは、既に自分の相手をしていた魔物を打ち倒し、他のフォローに向かっている。

 ならば俺もと、戦場を見渡し、瞬間。考える間もなく行動に移っていた。 

 

 ユリィが相対するのは無数の触手を持つ目そのもの。終焉の瞳と呼ばれる。滅びの象徴。

 そんな魔物を相手にユリィは善戦していた。辛うじて生き延びているだけではあるけれども、既に戦闘開始から10秒が経過している。それは取りも直さず。圧倒的な力の差がある魔物を相手に、10秒も生き延びたと言う事。 

 だけども、その拮抗も崩れる。ユリィがもう持たなくなった訳じゃない。

 それは、アスカ氏とレイが相手をしていた魔物を屠った余波。圧倒的な力の奔流が戦場を駆け巡り。ちょうど敵の攻撃を回避していたユリィの機体は、位置的にその余波の影響を受け、動きを鈍らせてしまう。

 それはほんのわずかな変化。だけども、圧倒的な力の差を持つ格上の相手に対して、辛うじて生き延びていた状況を覆すには十分過ぎる。致命的な隙。

 戦場を見渡した俺は、動きを鈍らせたユリィの機体へと必殺の攻撃を放とうとする魔物の姿を確認し。

 気が付いた時にはその巨体を真っ二つに切り裂いていた。


「アベルっ」

「大丈夫だユリィ」


 余りの出来事に混乱するユリィに、俺は力強く断言する。

 そう。もう大丈夫だ。この戦場で誰も殺させはしない。それだけの力を、それが出来るだけの力を俺は得た。

 なら、後はその力で大切な人たちを護るだけ。力の振るい方を間違えなければ良いだけ。

 戦場を見渡し、俺がユリィを助けた事に気が付いたケイの動きが、驚きの余り鈍ってしまうのを見逃さない。

 確かに、驚くのも判る。だけども戦いの中では致命的な事くらい判っているハズなのに・・・・・・。

 俺はほんの少し苦笑して、ケイの相手をしていた魔物を屠る。


「迂闊だよケイ」

「ゴメン。でもいったい」


 言いたい事は判る。でも疑問も驚愕も、全部戦いが終わってからの話。もっとも、もう既に戦いは終わるけれども。

 俺がケイを助けるとほぼ同時に、アスカ氏とレイが残りの魔物を始末し、全ての魔物が一掃される。


「終わったみたいだね・・・・・・」

「うん。そうみたいだけど、いったいどうしたのアベル」

「それは私も気になる」


 ユリィとケイは、俺の突然の変化が気になって仕方がないみたいだ。だけど、その答えは決まっている。


「いや、ピンチに都合良く力が目覚めただけだよ」

「それって、この戦いの中で危機に陥ったら、何時の間にかジエンドクラスに至っていたって事?」

「そんなのあるの?」


 うん。気持ちは判るよ。俺自身がこんなご都合主義な展開に一番驚いているしね。

 いや、前にも同じような事があった気がするけどね、今回は流石に驚くとかそんなレベルじゃないよ。


「別にそう不思議な事でもないけどね。アベルはもういつジエンドクラスに至ってもおかしくな勝ったから、危機的状況に力を求めたなら、それがキッカケで力が目覚めても、それはごく自然な事だよ」

「そうだな。今回の件はご都合主義と言うほどのモノでもないな」


 そうなの? 本当にそうなの?

 いやまあ、レイにしろアスカ氏にしろ、こんな事でウソをつく理由もないし事実なんだろうけどね。


「むしろ、アベルは漸くかって感じかな」

「確かにね」


 そうなのか?

 つまり2人からしてみたら、何時になったらジエンドクラスになるんだって思ていたと・・・・・・。

 俺自身、ジエンドクラス候補にまで力を伸ばしている事は理解していたけど、それでも、実際にジエンドクラスに至るのは早くても数年は先だと思っていたんだけども、周りからは何時至ってもおかしくないって思われてたのね。


「それでアベル。キミは無事にジエンドクラスに至った訳だけど、早速カグヤに至るのかな?」

「揶揄うのは止めてください。今の俺じゃあ、カグヤに至るには力不足だった判っているくせに」

「確かにね。今のキミじゃあカグヤに至る事もまず不可能だし。カグヤに至る事が出来たとしても、本当に知りたい真実を得る事は出来ない」


 そんな事は言われなくても判っている。全てを知る為には、俺はまだ力不足なんだ。

 少なくても、ジエンドクラスに至ったとは言え、今の俺の力がアスカ氏とレイと比べて遥かに劣る事くらいはハッキリしている。

 この差を埋めない事には、少なくても同等の力を得る事が出来なればカグヤに行くなんて不可能なのだから。


「道程が果てしなく厳しいですけど」

「それはかつて、俺も感じた事さ。そして、今は更にその先の道程の厳しさを感じている」


 何千億年も、それこそ数えきれないほどに繰り返されてきた戦い。

 その連鎖を断ち切ろうとする試みは幾度となく繰り返されてきて、その全てが失敗に終わっている。

 その失敗を繰り返しながらも残されてきた希望と思いを受け取り、この世界の在り方を変えるために行動するのか、それはまだ判らない。

 だけども、確かにこの先の道程がこれまでとは比べ物にならないくらい厳しいのだけは確か。

 むしろ、カグヤに行くまでの道程くらいを厳しいとか言っている場合じゃないんだろうな・・・・・・。

 出来れば勘弁して欲しいけど。


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