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「外宇宙探査船ですか」
「どうします? 元々王が直々に開発したものだし、所有権はアシュラにあると思うけど」
フリングホルニの所有権なんだけども、元々がアシュラの王が建造したもので、王自らが艦長を務めていたとなれば、船の所有権は鬼人の国アシュラが有している事になる。
「確かにそうですけど、いきなり言われましても」
「ですよね。だから、とりあえずは俺の方で預かっておくつもりです」
あまりの事に流石のサクラさんも困惑している。
そもそも、フリングホルニは外宇宙探査間であって、純粋な戦闘艦ではないとは言え、その戦闘力は現在の空中戦艦とは比較にならない程に高いのも事実。
流石にベルハウゼルとか程の戦闘力はないけど、現状の、本来の性能を引き出せていないヒュペリオンなどよりもよっぽど強大な火力を有している。
魔域の活性化などの非常時に使うならともかく、通常戦力として保有しておくには今のところ過剰戦力すぎる。
同じ理由で、アシュラに渡そうと思っていた安土城風要塞も受け取り拒否されたしね、
「そもそも、そのフリングホルニはアベルさん方がいずれ使われることになるのでは? 私たちが外宇宙探査に出ることはないと思いますし」
「それは確かにそうですね。アベルさんがいかれるなら、私もついていくと思いますが、アシュラとして外宇宙探査を行うことはないかと」
とサクラさんとシオン。
と言うかシオン、俺が外宇宙探査に行くならついて行くって。
何気にその発言に、ユリィたちが反応しているし、サクラさんも笑いを堪えているのに当人は気付いているのかな?
「それじゃあ、フリングホルニは真の戦いと言うのが終わるまで、封印で良いね」
「それが妥当でしょう」
俺としては早く行きたかったりもするんだけど、現状のネーゼリアを離れる訳にはいかないんだよね。
結局、使うなら真の戦いとか言う、10万年周期の戦いが終わってからしかないんだよね。
まあ、更に言えば、現状の俺は、まだネーゼリアの全てを見て回って、堪能しきった訳じゃないんだから離れるのも論外なんだよね。
そもそも、既に航路情報などがあるとはいえ、10万年前の転生者たち6万年もかけて回った航海に出るのだから、いくらコールドスリープ機能が搭載されているとはいえ、予めジエンドクラス、Ωランクに至ってなければ途中で寿命が尽きてしまうに決まっているんだけどね。
小梅情報などを持つため、俺たちの外宇宙探査は6分の1以下、1万年もかからずに終わらせられるのは確実らしいけどね。
ああそれと、10万年前の転生者たちが訪れた星は、1万を超えるらしい。
つまり、この宇宙には1万を超える生命を有する惑星があるらしい。
その内のどれだけの星に、文明があるかなんかの情報は、知ってしまったんじゃ面白くないだろう? との理由であえて消去されていた。
まあ、俺もそれについては特に文句はない。
異星人。ネーゼリアと同様の立ち位置にいる人々が存在するのかも含めて、自分たちの目で実際に確かめてこそ面白いのだから。答えを先に教えられたのでは興ざめだ。
「そう言えば、どうしてこんな重要な話をするのに、王が居ないのかな?」
「ああ、父上ならは、穴上たちと一緒に疲労で倒れていますから」
「倒れているってなに?」
イヤ、本気でなにそれ?
意味不明過ぎるんですけど・・・・・・。
「父上たちは今、レジェンドクラスに至るための修行をしていますので。あまりの厳しさに、真皇様の加護でレジェンドクラスに至った私を恨めしそうに見たりしています」
要するに、ライオルとかと同じ状況にいる訳ね・・・・・・。
うん。そりゃあ疲労でぶっ倒れもするだろうね。多分、シオンにキリアたちとかも加わって、徹底的にしごき倒すというか、ぶちのめしているんだろうし。
「俺が言うのもなんだけど、程々にしておきなよ」
「ですが、父上たちには私たちが阿修羅に居る内に、レジェンドクラスに至っていただきたいので」
俺たち次の国に行った後でも、レジェンドクラスに至ったらすぐに引き返して来ればいいだけなんだけどね。
「それに、確かに厳しいかもしれませんが、私たちも更に厳しい修行をこなしていますし」
「うん。あの程度なら問題ないよ」
なんだろう。コレって間違いなく俺のせいだよね?
シオンもキリアも完全に俺に毒されてしまっているよね?
何か、コレって放っておいたらとんでもないことになりそうな気がするんだけど・・・・・・。
周りが俺以外、誰も気にしていないのはどういう事なのかな?
「それよりもアベルさん。今日の遺跡の調査がもう終わりなら、これから温泉に行きませんか? アシュラには名湯と呼ばれる湯が、数多くあるんですよ」
「温泉か・・・・・・」
何とかしないとと思ったんだけど、シオンの提案に一気に心が揺らぐ。
温泉。実に良いね。
「これからは、遺跡の調査が終わったら温泉に湯治に行きませんか?」
「それ良いね。ボクはあそこの、暁の湯が好きなんだよね」
「私はイザナギの湯ですね」
「私は久遠の湯かな」
シオンの素晴らしい提案に揺さぶられていると、キリアが自分の好きな温泉をあげ、ユリィたちもそれぞれ、自分のお気に入りらしい温泉を上げていく。
「それは良いね。どうだいアベル。温泉で軽く一献」
ついでに何故かレイまでのってくる。
だけどその提案は実に魅力的過ぎる。絶景の温泉に浸かりながら、レイ秘蔵の酒を傾ける。つまみは刺身が良いだろう。
と言うか、アレ? コレって完全に混浴する流れだよね?
シオンもキリアも、レイまでがノリノリなんだけど良いのかな。
なんて思っている間に、気が付いたらシオンお勧めの温泉に来ちゃっているし。レイの方も既に秘蔵の酒を準備万端。
それならと、俺も腹を括って最高の刺身を用意する。
アレ?気が付いたら何時の間にかサクラさんが居なくなっているんだけど?
いや、流石にサクラさん混浴するのは問題があり過ぎだから助かるんだけど・・・・・・。
なにかハメられたと言うか、掌の上な感じがするのは気の所為かな?
「はやく入ろうじゃないか」
いち早く衣服を全て脱ぎ去ったレイの裸体が眩しすぎるんですけど・・・・・・。
「うん? 何を照れているんだいアベル」
「そちらこそ、躊躇いがなさ過ぎでしょう」
「キミに裸体を晒すのに躊躇う理由もないしね」
思いっ切り断言されてしまったし。と言うか、気が付いたらついて来たメンバー全員が脱ぎ終わってるし。
あの、婚約しているユリィやケイはともかく、シャクティとかクリスとか、みんな恥ずかしくないの?
と言うか、男の俺の前で裸になっちゃって本当に良いの?
あと、当然のように男は俺しかいない。
レイにメリアたちにミランダ。それにシオンたち各種族の姫君。あとエイルにウラヌスも居るのは何故かな?
とりあえず眼福じゃなくて、目のやり場に困るんだけど、誰も気にした様子もなく、俺も早く服を脱いでくる様にとさっさと温泉に行く。
うん。確かに脱衣場に何時までも居ても仕方がないよ。
でもね、こっちにも心の準備とか色々と必要なんだよ。
なんて言い訳していても仕方がないので、心を無心にして俺も服を脱ぐ。
落ち着けて言い聞かせながらシオンたちの後を追って脱衣場を出ると、目の前には素晴らしい絶景。なのだけども視線はどうしてもシオンたちの姿を追ってしまう。
うん。そちらも素晴らしき芸術の如き美しさ・・・・・・。
全員、既に体を洗い終わって、思い思いに温泉に浸かって楽しんでいるけど、その姿が美しすぎるね。
正直、理性が持つかどうか自信がないんだけど・・・・・・。
シオンたちの姿を見ているともの凄い速さで理性が削られていくので、気合と根性で何とか視線をそらして、俺もまずは体を洗う事にする。
因みに、どうでも良いけど俺はまず髪を洗ってから体を洗う派。
さて、髪を洗い終わって、次は体をと言う所で。
「背中を流しますね」
「いやっ、あの・・・・・・」
シオンの先制攻撃。この展開は想定してなかったんだけど!!!!
背中を洗うと言いながらその豊満な胸が密着しているのは何故っ!!!!!!!!
理性がっ、理性が持たないっ!!!!!!!!!!
「ありがとうシオン。もう大丈夫だから」
「では、先に湯を楽しませていただきますね」
俺の背をその豊満な胸で洗ってシオンは、何事もなかったかのように温泉に戻って行く。
ただし、チラッと見たらやっぱり頬を赤らめていたのが、更に俺の理性を削って行く。
正直、もういつ理性を失ってもおかしくないくらい追詰められているんですけど。
「うむ美味い。やはりこうして飲む酒は格別。アベルも早く来ると良い」
「確かに、普通に飲むのとはまた違って、全身がふやけてしまいそう」
そんな俺に、刺身をつまみに一根傾けている例とミランダが追い打ちをかけてくる。
この状況で酒なんか飲んだらどうなるか判ったものじゃないって、俺は叫びたくなるんだけども、そんなの初めから彼女たちだって判っているよね。
つまり、この状況は彼女たちが仕組んだと言うか、仕掛けてきている訳で・・・・・・。
超絶鈍感とか言われている俺でも流石に判るよ。
判るんだけど本当に良いのかな?
いや、彼女たちからアプローチされているのを拒むとか、どれだけ失礼なんだって、異性としての魅力がないって言っているようなものだって事は判っているんだけどね。
いくらなんでもアプローチが大胆過ぎると思うんだ。
間違いなく、俺がヘタレすぎて、今まで散々待たせ過ぎていた所為なんだけどね・・・・・・。
ダメだ。これ以上考えると自分を抑えきれなくなる。
とりあえず落ち着け。落ち着いて冷静になるんだ。その上で、どうするべきか考えろ。
まずは逃げるようだけど、ジックリと時間をかけて体を洗いながら素数を数えて、とりあえず落ち着こう。
うん。10分近くかけて体をシッカリ洗って、とりあえず落ち着けたれど、それも温泉に入って吹き飛んだね。
周りには美しい女性たちの裸体が溢れていて、当然のように俺に酌をしてくる。
お願いだから待ってください。こんな状況で酒なんて飲んだらどうなるか判らないよ。
辛うじて保っている理性が吹き飛んでしまうよ。
「必死で理性を保とうとするのも良いがな、こうして、其方に好意を持つ者が誘っているのを無下にするのは、男としてどうかと思うぞ」
レイはそう言うと、盃の酒を自らの口に含み、口移しで俺に飲ませてくる。
唇が重なり、互いの舌が求めあう。
うん。口移しに酒を飲んだ瞬間に、俺の理性も完全に消し飛んだよ。
その後の事は、お願いだから聞かないで欲しい・・・・・・。
ただ、俺が一線を越えた事だけは確かだと言っておく。




