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 目の前にはありえない程に巨大な戦艦。

 全長100キロ、船幅も10キロを超えているだろう。本気でこれはもう船の形をした要塞だね。

 早速、中に入ってみたいんだけど、その前に周りをどうにかしないといけない。

 レジェンドクラスのイカとタコを合わせたような魔物が触手を振り回して暴れた所為で、辺り一面の海流がとんでもない事になっている。 

 ぶっちゃけ、音速を超える勢いで荒れ狂っているよ。

 魔法で無理やり抑えて行くけれども、コレ、周辺国に数百メートル規模の津波になって押し寄せるのは確実だね。

 まあ、その程度なら特に災害として問題にもならないけど。

 海の中の生態系とかには結構深刻な影響が出てしまいかねないね。

 まあ、それを言うならこの巨大な戦艦を回収した時にも、かなり海流に影響が出るのは間違いないんだけどね。

 全長100キロ、横幅10キロもある戦艦だよ。それをアイテムボックスに収納してなくなったら、空いた空間に当然だけど海水が流れ込む訳で、相当な影響が出るし、かと言ってこの戦艦をそのまま会場に浮上させたりしたら、更にとんでもない影響が出るよ。

 と言うか、10万年前にココに沈める時もどうやったんだろう?


 まあ良いか、考えても仕方ないし。

 とりあえず海流をある程度収められた事だしさっさと戦艦の中に入る事にする。

 しかし、コレって絶対に宇宙での仕様限定の船だよな。いくらなんでもこんな巨大な戦艦、地上じゃ使えないし。

 それなのに何故日常に残されたのかが謎なんだけどね。

 とりあえず甲板部分に降り立ってみると、丁度ロックがすぐそこにある。

 船の出入り口となるとメインは船体の横なんだけどね。イヤ、宇宙戦艦となるとそれも当てはまらないか。

 さっさとロックを解除して中に入る。

 中に入ったらまずは環境を目指す事にする。格納庫とかも気になるんだけどね。まずはこの戦艦と言うか機動要塞がどんな物か確かめないと。

 戦艦に見えて実は戦闘用じゃない可能性もあるしね。流石にその可能性は少ないとも思うけど。

 船の大きさがあまりにも桁違いなので、入口から通常ルートで環境に向かうのにもかなりの時間がかかるので、入口地近くにあった端末の情報から艦橋の位置を割り出して転移で移動。

 まずは第一艦橋から調べる。

 因みに、この船は艦橋だけで15もある。

 まずは艦橋内の端末からデータを読み取って行くけれども、残念ながらこの船の詳細についての情報は見付からない。

 代わりに、艦長室、この船の損責任者の部屋がこの第一艦橋の真上にあるのが判ったのでそちらに行ってみる事にする。

 艦長室。艦橋からエレベーターで直通。

 艦長の私室なんだったら、いくら何でもプライバシーがなさ過ぎる気がするんだけど、まあいいや。

 なんて考えながら艦長室に入った瞬間、ホログラムが現れる。


『やあ、此処に入って来たと言う事は、キミは私たちと同じ使命を持った、10万年後の転生者と言う事だね』


 穏やかに語りかけて来るのは、20代前半くらいに見える黒髪の女性。

 この人がこの艦の館長を務める転生者なんだろう。


『本当ならば私たちがすべてを終わらせるつもりだったんだけど、残念ながら私たちは失敗してしまった。だから、この世界の命運はキミたちに託すしかない』


 託すしかないと言った時、彼女は確かな自傷気味に笑った。


『都合の良い話だけどね。残念だけど私たちにはもうできる事がないんだ。だから、この世界の行く先はキミたちに託すしかない。だけど、私たちの後を継げと言うつもりはないよ。この世界の真実を知って、その上でどうするかはキミたちの自由だ。だからこそ、私たちはキミたちに余計な情報を和えないたるに、真実をカグヤに封印したとも言えるからね』


 どうやら、真実の隠蔽は俺たちに余計な情報なしに、先ずは世界を見て回らせるためだったらしい。


『もっとも、最終的に真実に辿り着いて、そもそも選択肢なんて始めから無いだろってなるかも知れないけどね』


 むしろ、確実にそうなると確信している気がするんだけどね。


『まあそれでも、この世界を今で通り、10万年周期の戦いの輪の中に留めておくか、その輪からの解放を目指すかの選択は、キミたちが確実に迫られる事だけはここで言っておくよ。ひょっとしたら、キミたちも既に薄々気が付いているかも知れないしね』

「確かに、その可能性は考えていたけど、此処で暴露か」


 まあ、少なくても2つの選択肢がある事だけは確定した訳だ。

 間違いなく、彼女は自分たちと同じ選択をすると確信しているみたいに思うけどね。


『まあ、それもまだキミたちにとっては先の話だろう。それよりも、この船のフリングホルニの事を話そう』


 フリングホルニか、確か北欧神話で光の神バルドルが持つとされる世界の如何なる船よりも大きい大船だったかな。規格外の大きさのこの船には確かにお似合いの名前だう。


『アッと忘れてた、そう言えば自己紹介をしていなかったね。私はアシュラ・ムゲン・カレン。フリングホルニの製作者であり艦長でもある。そして、鬼人の国の10万年前の王でもある』


 アシュラの姓から王家の生まれなのは間違いないと思ったら、王になっていたんだこの人。物好きと言うか何と言うか。


『今物好きな事でとか思っただろうけど、私も別に自分から進んで王になろうと思った訳じゃないんだよ。ただ必要に迫られてなるしかなかっただけだからね』


 シッカリとこっちが想った事を言い当てたね。て言うか、10万年前でも王になるなんて転生者の認識じゃ物好きだったんだね。

 まあでも、アスカ氏とか実際に王になった転生者もそれなりに居るんだけどね。迷惑なだけのバカも居るけど。


『さて、このフリングホルニの外観から、この船を戦艦だと思ったかも知れないけど、それは違うよ。この船は外宇宙探査船だ』


 外宇宙探査船と来たか、つまり、銀河の果て、或いは別の銀河まで行く事を目的に造られた宇宙船だと言う事だけど、それならどうして此処に封印されている?


『フフフ。外宇宙探査船がどうして此処にあるかって不思議に思っているね? 答えは簡単だよ。この船は6万年に渡る後悔を終えてこの星に戻ってきた後に、此処に封印されたからだよ』


 はい?


『キミたちももう知っているかも知れないけど、この宇宙にはネーゼリア以外にも、生命体が存在する惑星が多数存在する。10万年周期の真の戦いが終わった後、次の戦いのために渡値従造り上げた兵器や叡智を封印して残し、平穏になった世界が問題なく機能するように社会体制を整えて、強大過ぎる力を持った自分たちが必要なくなったのを確認してから、私たちはそれらの星を巡る旅に出たんだ』


 それも知ってる。10万年前の転生者たちが他の星へと旅立って行ったのは・・・・・・。

 だけどまさか、宇宙を巡って帰って来ていたとは思いもしなかった。


『光速を超える超光速航行と空間転移による長距離ワープ。それでも長い歳月がかかる分をコールドスリープによる人工冬眠で補って、6万年に及ぶ航海を経て、他の生命だ生きる星々を巡って来たんだ。そして、他の星々の状況と、この世界、この宇宙の更なる真実を知り、舞い戻ってきた私たちは、此処にこの船を封印してカグヤに帰った。だから、今こうしてキミたちにメッセージを残しているのは、実はキミたちから見たら4万年前からなんだよ』


 なんともまあ、壮大な旅をしたものだ。しかし、他の星に移住するかと思ったら、命を育む星を全て回って帰って聞いたとは驚きだよ。


『因みに、フリングホルニにはその航海と航路のデータが丸々残っているから、興味があるならキミたちも行ってみると良いよ』


 それは非常に魅力的だな。

 芯の戦いとやらが終わったら星を巡る旅に出るのも悪くないかも知れない。


『星を巡る旅は本当に有意義だったよ。この星に居ただけでは知り得なかった事実を知ることも出来た。そして、私たち10万年周期の戦いに望む転生者の持ち、本当の意味も知る事が出来た。そして、その事実をキミたちに伝える事が出来るのだからね』


 この星に居ただけでは知り得ない真実か・・・・・・。

 彼女たちが帰って来たのが4万年前なのだから、6万年前にカグヤに至ったアスカ氏は知り得ない真実だな。

 実際、この宇宙でこの星だけが、ネーゼリアだけが魔物の侵攻の脅威に晒されているのかとか、色々と判らない事が多いからね。それらの答えも今はカグヤにあるって事だ。


『それらを知って、キミたちが何を思うかは判らない。だけど、願うならは正しい決断を、悔いの残らない、後悔しない行動をとる事を』


 後悔しないか、彼女は、10万年前の転生者たちは自分たちのした事を後悔したのだろうか?

 真の目的を果たせなかった事を悔やんだのだろうか?


『私から言える事はそれだけだね。それじゃあ、キミたちの武運を祈るよ』


 そう言うとカレンのホログラムは消えた。

 悔いのない選択か、それが一番難しいだろうなと思うけれども、出来るのならば、後悔しない選択をしたいとも思う。

 彼女たちの想いに応えられるかは判らないけれども・・・・・・。


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