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「はじめましてウラヌス。私はヴァルキュリアシリーズのエイルです」
「はじめましてエイル。これからよろしくお願いします」
エイルとウラヌスが挨拶を交わしているけど、やっぱり2人はどことなく似ていて、なんとなく見ているとほっこりする。
それはともかく、さしあたっての問題はウラヌス以外の自立型ゴーレムを起こすかどうか?
「まあ、起こさないて選択はないんだけどね」
「ですね。真の戦いに必要不可欠と言う事ですから。ただ、それならばこそ、何時起こすかと言う事が問題です」
「少なくても、今すぐに起こすのは止めた方が良いよね」
建設的な意見をありがとうシオンにキリア。
うん。俺としても今すぐに起こすのは止めた方が良いと思う。人数が人数だしね。
と言うか、ウラヌス以外の独立型ゴーレムを起こすのなら、エイル以外のヴァルキュリアシリーズも起こすべきだろう。
そうすれば圧倒的な戦力を確保できるので、これから先の戦いもかなり優にに進める事が出来る。
・・・・・・過剰戦力過ぎる気がビシビシするけどね。
「それと、もうひとつの遺跡で見付かった黒い球体ですか」
「完全に正体不明っていうのも初めてだよね?」
そう。ついでにもうひとつ、正体不明の物体を見付けたんだよね。
直径5キロ程の真っ黒な球体。継ぎ目もない1枚の外殻に覆われていること以外、何ひとつ不明の物体。
ただし、何か危険な気配がビシビシとする怪しげな危険物。
「黒い球体ですか?」
「そう、キミを見付ける前に立ち寄った所にあったんだけどね。直径5キロくらいの黒い球体」
「それは、まさか・・・・・・。全てカグヤに封印されているハズでは」
アレ。その反応はもしかして?
「知っているのか?」
「実際に見てみなければ判りませんが、恐らくはそれは対消滅爆雷かと」
対消滅爆雷? 何か嫌な予感がするんだけど。
「みなさんは魔域の中心部に現れる漆黒の球体をご存知ですか?」
「ああ、これまでに何度も遭遇したよ」
「アレは、本来この世界に現れる事の出来ない存在が、次元を超えて現れるためのゲートなのです。恐らく、現在はカグヤの封印によって、レジェンドクラスやジエンドクラスの魔物が現れているハズですが、本来は更に上位の存在が現れるためのモノなのです」
それは、あまり聞きたくない真実だな。
つまりあれは、本来は神龍たちが相手にする、恐らくは真の戦いの相手が現れるためのモノだった訳だ。
「対消滅爆雷“ラグナロク”はその漆黒の球体、ゲートを対消滅させる事で、真の脅威の出現を食い止めるために造られたものです」
「それはスゴイ」
「はい。ですが、当然ながら扱いを誤れば最悪の事態を引き起こす諸刃の剣でもあります」
あっ、やっぱりね。とんでもない危険物な気がしてたけど、実際その通りで、凶悪な何かが現れるのを食い止めてくれる強力なアイテムってだけじゃない訳だ。
「あの漆黒の球体は次元そのものを歪めるだけでなく、私たちの住むこの次元と魔物の存在する次元の存在する意味そのものを書き換える事で成り立っています。それを対消滅させるラグナロクには、同等の力があると言う事です。そして、もしもその力が、互いに対消滅する事なく解放された場合、2つの次元は最悪崩壊します」
はい?
「それはつまり、この世界と魔物の世界、2つの世界が消滅しかねないと?」
「その通りです。ラグナロクは扱いを間違えれば、世界そのものを崩壊させてしまいます」
本気で勘弁してくれ・・・・・・。
必要だから造ったのは間違いないんだろうけど、なんてモノを残してくれたんだよ・・・・・・。
と言うか、確かにこれはカグヤに全部封印されていなければいけないモノだよ。それがどうして地上にあるんだよ本気で。
「ラグナロクの存在は、10万年においてもトップシークレットでした。その存在を公表してしまえば、どんな混乱を引き起こすか判らないからです」
「だろうね。世界を護るために世界を滅ぼしかねない物を使っているなんてね」
「ですので、ラグナロク事は絶対に漏らさない事をお勧めします」
「漏らしてたまるかっての、と言うか、俺のアイテムボックスに封印したままにするから、みんなも良いね?」
問うとウッカリ話を聞いてしまったメンバー全員が、無言のまま何度も頷く。
これは絶対に誰にも知られてはいけない秘密だ。と言うか、この場にサクラさんたちとかが居なくて良かったよ。
話の場をヒュペリオンの中にしたのは本気で正解だった。
「因みに、ラグナロクは最悪の場合、対高位次元生命体用の最終兵器ともみなされていました」
「いや、そう言う情報は本気でいらないから・・・・・・」
なんだその最終兵器ってのは・・・・・・。
場合によっては神を殺すつもりだったのか、10万年前の転生者たちよ?
「と言うか、アレは本当に地上に1個だけしか残されていないんだろうな?」
「判りません。そもそも、ひとつだけでも地上にあったこと自体がおかしいのですから」
だよな。なんでこんな凶悪なモノを地上に残したんだよ。絶対に誰の目にも止まらない様に、カグヤに全て封印するべきだろうに。
「ひょっとしたら、これから先また同じ物が出て来る可能性もある訳だね・・・・・・」
「アベルさん。その時は人知れず回収だけをお願いします」
「うん。あったとかの報告もいらないから、ただ、回収して封印だけしてね」
シオン、それにキリア、いや言いたい事は判るよ。確かに次に見付けても誰にも話すべきじゃないわ。
だけどさ、俺ばかり胃が痛くなるような秘密をどっさりと抱え込むのはどうかと思うんだよ。いい加減俺が今までに抱え込んだ秘密の内にいくらかくらいは共有しない?
そんな風に思ってしまうのは悪くはないよね?
「うん。忘れよう。無かった事にするのが一番だよ。と言う事で、みんなも良いね。今の話はなかった、キミたちは何も聞いていないからね?」
「「「「「「「はいっ」」」」」」」
うん。素直で大変よろしい。
と言う事でこの話はこれでお終い。
「それじゃあ、次の遺跡にでも行ってみるかね」
「この状況で次に行くとは、キミも大概だね」
俺もそう思うけど、他にどうしろと?
「むしろ気分転換だよ。気分転換に向かって、更にとんでもない事になる可能性も高いけどね」
「それが判っているなら止めればいいのに、てっどのみち無駄なんだね」
うん。そうだよキリア。残念ながら遺跡の調査はしない訳にはいかないので、ここで行かなくても単なる先延ばしにしかならないんだよ。
だからこそ、あえて今行く。
「出来れば、次の遺跡がそう大したものじゃないのを祈っててくれ」
「祈るだけムダだと思いますけど」
俺もそう思うよ。だけど気持ちだけでもね。
「ならみんなも一緒に行く?」
「いえ、此処で平穏を心の底より祈らせてもらいます」
なんだろうね。まあいいや。遺跡の調査については完全に俺に丸投げされている状況を改善するのはもう不可能と、諦める事にしたしね。
もう気にしてもムダだと次に行く。
次もまた魔域の中の遺跡。とりあえず魔域に埋もれている遺跡から攻めていく事にする。
大河の底、岩山の地中深くと来て、次は海の底。
これまでに何度も調査してきた海魔素この遺跡。調査ついでに海の幸と言うか、魚介系の魔物を仕留めて行くのも変わらない。
しれっとまたレジェンドクラスの魔物を仕留めながら海底に辿り着く。
2匹目のレジェンドクラスの魔物となると、これはもう何か異変が起きているのは確定と考えて良いだろう。
いったい何が起きているのやら、面倒事は本気でゴメンなんだけど・・・・・・。
なんて思ってたら、海底でまたレジェンドクラスの魔物と遭遇。
なんだろう? 見た目はイカとタコの中間みたいな魔物。ただし、足と言うかゲソ? 触手は全部で1000本近くある。しかも、1本1本が直径10メートル以上あるし、長さなんて最大で500キロ以上ある。とりあえずキモイ。
なにか18禁のゲームに出て来そうな魔物だ。
持って帰ったら女性陣から色々と言われそうな魔物だけども、此処で放置する訳にもいかないので倒す。
それと、防御障壁があるから届かないから良いんだけど、その無数の触手を俺に向けて来るのは本気で止めてくれ。単に攻撃してきているだけなんだろうけど、精神的に来るモノが半端ない。
戦いが長引くと、当りの被害がシャレにならない以前に俺の心が持たない気がするので瞬殺。
こんな気分になったのは初めてかも知れない。出来れば味わいたくなかったけど・・・・・・。
それはともかく、倒した得体のしれない魔物を回収すると、それまでその陰になっていた場所にお目当ての遺跡があった。
それは戦艦。空中戦艦ではなくて、正確には宇宙戦艦だね。
だけど、その大きさがこれまで見て来たものとは比較にならない。ベルハウゼルなどの要塞と比べても遜色のない大きさだよ。
高機動要塞とでも言うのかね?
目の前にはあまりにもバカげた大きさの戦艦かあった。




