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『良く来たな我が子らよ』


 それは黄金の巨馬。額に角を持つ馬、それで一番に思い浮かべるのはユニコーンだろう。しかし、目の前の存在、真皇はむしろ麒麟に近いのではないだろうか、そんな印象を受ける。

 黄金に輝く美しく体躯に白銀の水晶のように煌めく角。翼を持たないのに大地を駆けるだけでなく点も自在に駆け巡る事を容易に想像させるその姿は、ユニコーンやペガサスなどの幻獣の王を思わせる。イヤ、神の方が正しいか。


「お初にお目にかかります。我らが祖」

「お目にかかれて光栄の極みです」


 シオンとキリアは片膝をつき頭を下げ、最高礼を持って挨拶をする。

 

『そう畏まらずとも良い。其方らは我が子。そして、我は其方らがこの世界を護るために命を賭けて戦い続けて来たことを知っている』


 精神に直接響き渡ってくるその声は、何処までも穏やかで、それでいて圧倒的なまでに重厚だ。存在の格の違いがただそれだけでも実感できる。


『天獣や龍神から話を聞いているかも知れんが、我らは真の戦いが始まるまで迂闊に動く事は出来ん。それ故に、これからさらに激しさを増す魔物の侵攻を、其方らに任せなければならん』

「その話はお伺いしました。ですが、どうして動けないのですか? 10万年前の転生者たちとの盟約とも聞きましたが」

『あの盟約か、そうであるな。我らが動かない理由のひとつは、確かに10万年前の転生者たちとの盟約にもある』


 いったいどんな盟約を結んだんだよ10万年前の転生者たちは?

 と言うか、良くこんな頂上の存在と盟約を結べたな。盟約を結ぶと言う事は、10万年前の転生者たちはこの真皇たちと対等に近い関係にあったと言う事だろう?

 うん。どう考えてもムリだと思うんだけど・・・・・・。


「どのような盟約が結ばれたのか、教えてはいただけませんか」

『ふむ。・・・・・・いや止めておこう。ここで我らがその答えを示すべきではなかろう。其方ら自身が自らの力で辿り着いてみせるが良い。全ての答えは、カグヤにあるのだからな』

「カグヤにですか?」

『そう、10万年前の転生者たちが造り出した人工天体。このネーゼリアを魔物の侵攻より護る封印であるあの星は、アレは我らが盟約の要でもある』

「それは知らなかったな。どうやら全部を見て来たつもりだったけど、見落としがあったらしい」


 真皇の言葉にアスカ氏は悔しそうにこぼす。どうやら、実際にカグヤに行った彼も、アレが盟約の要である事は知らなかったようだ。


『ふむ。其方は6万年の時を超えし者だな其方の事は我も覚えておる』

「おれっ、イヤ、私の事を?」

『うむ。其方はいずれジエンドクラスの楔を超える可能性を示した。それは、じかに会わずともハッキリと確認でたのでな』

「ジエンドクラスの楔・・・・・・。それは、私もいずれ貴方たちの領域に至れるって事ですか?」

『左様。果てなき努力を怠らなければ、其方もまた、いずれ10万年前の転生者たちと同じ頂へとたどり着けるであろう』


 ああ、やっぱり10万年前の転生者たちはジエンドクラスを超える実力を持っていた訳だ。

 まあ、ヒュペリオンやベルハウゼルとかの性能である程度は予想で来ていたんだけどね。

 あれらの機体の本来の性能はジエンドクラスの領域を遥かに超えている。もっとも、今はまだ使う俺たちの力が足りな過ぎて全くその性能を発揮できていないけど・・・・・・。

 実際、ロキとの戦いの後、更に詳しく調べて持た結果、ヒュペリオンにはその性能を十分に発揮できない様に封印が施されていた。理由は、使いこなせるだけの実力がないものがその力を手にした時、どんな災いが起こるか判らないから。

 まあそうだよね。使いこなせもしない力なんて危険なんてもんじゃない。

 実質問題として、ゲヘナの魔域の活性化の戦いを、本来の力を発揮したならば、ヒュペリオン一隻で全て対応できるだけの性能があるみたいだし・・・・・・。

 あの果てどなく姿を現したジエンドクラスの魔物を含めた、活性化で現れた全ての魔物を容易く殲滅しくれるだけの力が、本来ヒュペリオンにはあるらしい。

 と言うか、ヒュペリオンでそれなら、ベルハウゼルなんかはいったいどれだけの力を持っているのか、想像するだけで怖いんだけど・・・・・・。


「なんだ。俺はまだ本当の高みに至ってはいなかったのか・・・・・・・」

「ジエンドクラスを更に超える高み、実際に今、相対しているのにまるで想像できませんよ」


 アスカ氏は感慨深げに呟くが、俺としては完全に理解不能の領域だよ。

 本気でいったい何なの?

 あのロキでさえ、ジエンドクラスの中では精々中堅に過ぎなくて、ジエンドクラスのアスカ氏には遠く及ばなかった。そんな、常軌を逸したアスカ氏の至った高みですら、ただの通過点に過ぎないって?

 パワーインフレも大概にして欲しい。


「まあその気持ちもわかるけどね。ついでに、俺はどうやらまだ本当の真実にはたどり着けていないみたいだから、もう一度カグヤに至らなければならなくなったね」

「カグヤこそが盟約の要ですか・・・・・・」


 単に、魔物の侵攻を防ぐための封印システムではなく、更に重要な役割を持っていたとは本気で驚きだよ。

 と言うか、間違いなくその盟約こそが、10万年前の転生者たちが真に成し遂げたかった事の本質につながるんだろう。


『ならば、もう一度、今度こそ本当の意味でたどり着いて見せるが良い。この世界の真実へと』

「当然ですよ」


 ああ、完全にアスカ氏にスイッチが入ったな。ロキと戦った時並みの本気モードに入ってるよ。


『とは言え、今はまずは我が過誤を授けるとしよう。我が子たる鬼人と王人の姫よ。其方ら2人の覚悟を我は既に知っている。其方らは我が加護を受けるに相応しい』


 真皇はそう宣言すると共に、額の角をシオンとキリアへと向ける。すると淡く輝く光の球が角から生まれ、シオンとキリアの2人へと吸い込まれていく。


『其方らであれば我が加護を正しく使う事が出来るであろう。世界を、自らの大切な者を護るために正しく力を使うが良い』

「身心のままに」

「必ずや、ご期待に応えてみせます」


 シオンとキリアの2人の言葉に満足げに頷くと、真皇はそのまま姿を消した。


「ふう。これで3度目だけども、流石に緊張するよ・・・・・・」

「確かにね。あの存在感は流石だよ」


 どうやら、アスカ氏でも真皇と相対するのは緊張するみたいだ。そう言えば、言葉遣いも変えていたし、イヤ俺もなんだけどね。

 流石にあの存在に適当に話しかけるとかムリ。


「さてと、とりあえずは2人の試練の事に集中しないといけないんだけど・・・・・・。間違いなくまた出て来るよね」

「出てこないと期待する方が間違てるだろ」

「「確かに・・・・・・」」


 アスカ氏から絶妙なツッコミを頂きました。

 まあね。俺ももう諦めてるし・・・・・・。

 ただ問題は・・・・・・。


「この前まで見たいに、どちらか一方だけだと助かるんだけど、それもそろそろ期待しない方が良いと思うんだよね」

「ああ成程な。確かにそれも考えておいた方が良いな」

「私とそちらのアスカさんが、それぞれ付けば問題ないかと」


 確かに、シオンとキリアにアスカ氏とレイがそれぞれついてくれれば、両方の試練の後に異変が、ジエンドクラスの魔物が現れたとしても問題なく対応できる。


「まあ、実際に俺たちが動くかどうかは、その時次第だがな」

「どういう意味です?」

「現れた魔物が、こいつらで対抗できるレベルだったなら、その時はこいつらに戦ってもらうって事だよ」


 ああやっぱり。アスカ氏ならそう言うよね。


「この試練の後の異変。イヤ、更なる試練は、オマエたちにとってある意味で格好の機会だ。オマエたちが更なる高みに至るためのな」

「それは理解してますよ。実際、戦いを経て俺たちは大きな経験を得ましたから」


 本当に命懸けのギリギリの戦い。生死の境を彷徨う駆け引きの続く戦いは、俺たちを何処までも鍛え上げて行く。

 経験に勝るモノはない。とはよく言うけれども、これはある意味その極みかも知れない。


「そうだな。これくらいは教えても良いだろう。実際に来れは試練なんだよ。レジェンドクラスに至るための試練と同じく。10万年前の転生者たちが仕組んだ、この世界を護る力を鍛えるための試練だ。だからこそ、オマエたちはこの試練を乗り越えてみせなければならない。これから先、世界を護る、そして真実へと至る資格を示す為にな」


 なんとなくそうじゃないかと思っていたけど、やっぱりコレも10万年前の転生者たちの仕込みだったか。

 こうなると、最近の魔物の侵攻が激しさを増しているのも、少しずつ真の戦いに向けて力を付けて行くために、10万年前の転生者たちによって仕組まれている可能性が高いな。

 とは言え、それも当然の配慮なんだけどね。

 だって、今まで対した魔物の脅威もなかったところに、イキナリ、数百を超える様なジエンドクラスの魔物が当り前のように現れる様になったりしたら、それこそ何ひとつ対抗できないまま瞬殺されてこの世界諸共に終わりだよ。

 そうならない為に、少しずつ封印が弱まっているように見せかけがら、魔物の侵攻の脅威を増していくように仕掛けられているんだろう。

 そうする意味は判るし、当然の配慮なんだけども、実際にそれへの対応で四苦八苦している身としては、納得できなく思ってしまうのも仕方がない事だと思う。



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