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さて、かなり危なかったけど、無事にクリスとヒルデはレジェンドクラスに至る事が出来た。
本気で世界が滅ぶ寸前だったけどね・・・・・・。
これからは、遠慮なくアスカ氏たちの力を借りる事にしよう。
と言うか、次のレジェンドクラスに至る試練の時にアスカ氏たちが居ないとか考えられない。確実に世界が滅ぶよ。
今回、どうにか無事に終わったのはロキに世界を滅ぼすつもりが始めから無かったからに過ぎない。
そう、この世界に現れたその時から、ロキはこの世界、魔物にとって滅ぼすべき対象であるネーゼリアを滅ぼすつもりはなかった。
その証拠が、ロキの使ったあの崩壊魔法だ。
あらゆる存在、物質を跡形も無く消し去る、物理法則すら無視した消滅魔法。あの魔法に込められた魔力。アレを唯の破壊魔法として使っていれば、この星は跡形もなく消し飛んでいた。
それだけの魔力が、あの魔法には込められていたのだ。
だが、実際には直径5000キロ程度のクレーターを造る程度の破壊規模しか持たなかった。
あの後に放たれた100を超える同様の魔法も、結局はスピリットを地上から消滅させる程度の攻撃でしかなかった。
つまりは、はじめからロキの掌の上で踊らされていただけなのだ。
彼は、アスカ氏と言う自分を超える強者の存在を知り、決して勝ち目のない戦いに挑む前に、目の前の弱者の、俺たちの力を試していただけ。
アスカ氏に討たれるのも含めて、全てロキ゚のシナリオ通りだったと言う事。
だけど、そんな幸運はもう二度と起きないと考えて良いはずだ。
次にロキと同等、或いはロキすら上回る魔物が出て来た時、対抗できるアスカ氏が居なければ、その時点で世界の終わりだ。
そんな訳なので、次からは必ずアスカ氏に同行してもらう。
次のレジェンドクラスに至る試練が来るのも確定しているしね。
「次はドラグレーンか」
「龍神様に会いに行くのね」
そう。次は龍神に会いに行く事が既に確定している。
そして、龍神の加護を受けてシャクティとルシリスがレジェンドクラスに至るのももう確定だろう。
そしてまた試練が始まって、終わったと思ったらロキクラスの化け物が出て切るのも確定とみて良い。
・・・・・・本気で勘弁してくれ。
まあ、次々とレジェンドクラス、更に言えばジエンドクラス候補が現れるのはむしろ良い事なんだけど、いくらなんでもあんな勝ち目のない戦いが続くのは困る。
まあ、だからこそアスカ氏たちに丸投げするのだけどね。
実質問題として、今の俺たちではロキクラスの魔物の相手は厳しいと言うか、ほぼ相手にならないからね。
「と言うか、エルフとドワーフの創造主である世界樹に、獣人と天人の創造主の神獣。竜人と魔人の創造主の龍神。今の所この3種との対面を果たしているけど、他の種族の創造主とも相対する事になるのかね」
「それは確実に。月精の国ルナルには月天様が、フレイムシードの国アグニには鳳凰様がいらっしゃいますし」
月天とは月精とヴァンパイアの創造主である精霊のような存在で、鳳凰はフレイムシードと妖法人の創造主。あと、アイシクルレイと水泡の創造主の水燐。王人と鬼人の創造主の真皇が居る。
ヒューマンの創造主? 知らんな。
と言うか、各種族の創造主であり上位種であり、この世界の真の守護者である彼らが居る以上、実は俺たちが命懸けで魔物の侵攻からこの世界を護る戦いを繰り広げているのも、茶番の様なモノと言えなくもない。
と言うか、本当にこの世界が滅びの危機に訪れた時には間違いなく彼らが動く。
明日獅子でも手に負えない状況、Ωランクの魔物が大軍を成して現れるような異常事態に陥ったとしても、天獣や龍神たちが動く事で一瞬にして殲滅して終わりになるし・・・・・・。
或いは、ロキがこの世界を滅ぼそうとし中たのも、そうしようとした瞬間、天獣が動くのを知っていたからかもしれないな・・・・・・。
と言うか、本当に天獣や龍神の実力が全くの未知数なんだけど・・・・・・。
ロキとの戦いで、アスカ氏の全力を垣間見たけれども、それと比べても天獣や龍神の力は桁違いに高いと思う。
実際の所は判らない。ただ漠然とそう感じるだけなのだけども、感覚としては、アスカ氏の力をもってすら天獣の前には赤子同然と言った感じがする。
天獣や龍神が戦っている所を見た事なんてあるハズがないんだから、実際はどうだか判らないけどただそう感じるだけなんだけどね。
だけど、もし本当にそうなら、天獣や龍神はΩランクよりも更に上の力を持っている、更に上のランクが、クラスが存在する証拠なんじゃないだろうか?
まあ、今はそんなこと考えても仕方がないけどね。俺たち自身、未だジエンドクラスにも、Ωランクにも至ってないんだから。
「これから先、各種族の国を回ると、漏れなく創造主との対面が待っていると思うと、気が重いんだけど」
「気持ちは判ります・・・・・・」
「正直、私もこれから龍神様にお会いすると思うと、緊張して・・・・・・」
シャクティとルシリスの2人はかなり緊張しているらしい。
だからこそ、転移で一瞬で行けるドラグレーンに、わざわざヒュペリオンで飛んで向かっているのだけども。どうやら、2人とも気持ちを落ち着かせる時間が欲しいらしい。
「龍神様に会うのは、俺とシャクティとルシリス。それにファファルとなるのかな」
「どうなのでしょう? ライオルさんがまだ未熟とされたので、お兄様もまだ早いのでは?」
「ファファルさんもある意味で脳筋だし」
そう言えばそうだった。と言うか、指揮官としては極めて優れた資質を持っているくせに、どうして戦い方は脳筋気味になるのかが理解不能だ。
何故に部隊を指揮する時みたいに、戦略的な戦いが出来ない?
何故に力押しのゴリ押しの戦い方になるんだよ?
まあ、ある意味では相応しい戦い方の気もしないでもないけど。
「それにアスカ氏もか、と言うか、この後に龍神様にに会いにい食った判っているのに、どうしてアスカ氏は姿を消したんだ?」
「さあ? 正直、あの人が何を考えているのかサッパリですし」
「多分、連絡しないでも、私たちが龍神様に会いに行く時には、何時の間にか来ていると思いますよ」
それは・・・・・・ありそうだな。
でも、連絡しないと怒る気がする。なんと言うか、もの凄くメンドクサイ・・・・・・。
なんて話している内に、どうやらシャクティとルシリスの緊張も解けたと言うか、龍神に会う心の準備も出来たみたいだ。
ついでに丁度ドラグレーンに到着。
王都の空港で待ち受けていたファファルと共に、即座に龍神の元に直行。
「いやあ、本当に楽しみだな」
そしてアスカ氏は、俺が連絡するよりも早く隣に来ていた。
「すぐにまた戻って来るなら、どうして転移で姿を消したんです?」
「ん? なんとなくあの場の雰囲気に合わせて」
意味が判らないんですけど?
考えるだけ灘だと諦めよう。と言うか、そう言う煙に巻いた態度でやらかしていたから、6万年前の人たちに恐れられてしまったんじゃないかと思うんだけど・・・・・・。
言うだけムダな気がするから敢えて言わないけどね。
『良く来たな。高みに至らんとする者たちよ』
「はっ」
ファファルが龍神の前に跪き頭を下げる。シャクティとルシリスがそれに倣い。俺とアスカ氏も合わせて頭を下げる。
「これが龍神・・・・・・」
龍神を前にしてさしものアスカ氏も言葉を失っている。
『我が子ら、そして異界からの転生者よ。汝らの戦いを我らはこれまで見守ってきた。神の戦いが迫る中で、汝らが懸命に力を得ようと努力し続ける姿もな』
「それが、我らが使命でございますれば」
「御身を煩わせる訳にはいきませぬ故」
「この世界に生きる者として、当然の務めを果たしているに過ぎませぬ」
ファファルに、シャクティとルシリスがそれぞれ龍神の言葉に応える。
『だからこそだ。我らは真の戦いが始まるまで迂闊にその力を振るう訳にはいかぬ。10万年前、真にこの世界を解放せんとした者たちとの盟約もある。故に、今、この世界の守り手としての使命を其方らに託すしかないのだ』
「10万年前の転生者たちとの盟約?」
「それははじめて聞いたな・・・・・・」
龍神の語った思わぬ事実に、俺もアスカ氏も驚きを隠せない。
なんだそれは?
天獣は何も語らなかったけれども、彼らも10万年前の転生者たちと同様の盟約を交わしているのか?
交わしているんだろうな。
この世界の真の守り手たる7種。人の創造主たる神にも等しい存在と盟約を交わし、彼らはいったい何を成そうとしていたんだろう?
『いずれ、汝らも全てを知る時が来よう。その時、其方らが望む道を辿れるように、我もまた此処に其方らに力を貸そう。我が子、竜人と魔人の姫よ。汝らに我が加護を授ける』
「「感謝いたします」」
シャクティとルシリスは深々と頭を下げて感謝を表す。
それと、予想はしていたけどファファルへの加護はなしか、まあ、弟子だったハズのファファルにイキナリ俺より強くなられたりしたら、立場がないからありがたいんだけどね。
『其方らが得た力を正しく使い、正しき道を選択する事を願う』
正しき道ね。それが何を指すのかは判らないけど、ただ魔物の脅威からこの世界を解放すれば良いだけじゃないのは確かみたいだな。




