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 ようやく書けました。

 ヤッパリ指を穢すると日常生活や仕事でも色々と支障が出て大変です。

 もう少しで完治してくれそうですが、どうにも治るのに時間がかかって困りました。

 こちらの気合に応える訳ではないだろうけど、試練を終えたばかりの魔域に更なる異変が訪れる。ケイの時と同じように、魔物の世界へと繋がるゲートがその姿を現し、この世界と魔物の世界を繋ぐ楔であるエリアマスターが激痛にその身を震わせる。

 そして、ゲートから本来は現れるハズのない魔物が無理やり通り出て来る。

 それは、3メートル程の身長の男の姿をしている。

 その姿を見た瞬間、ラグナメヒルのアーカイブがその正体を告げる。

 ロキ。閉ざす者、終わらせる者の意を持つ北欧神話の神、フェンリルやヨルムンガンドの父たる存在の名を持つ魔物。

 一目見ただけで判った。これはサタン・ソウルすら上回るランクの魔物だ。

 今の戦力は、サタン・ソウルを倒した時よりもはるかに充実している。それでも、倒せる保証はない。


「クリス、シャクティ下がれ。ヒュペリオンに」


 魔力を使い果たしたクリスやまだSクラスのシャクティではコイツの相手は出来ない。それどころかシャクティはコイツから放たれる重圧だけで死んでしまいかねない

 俺の言葉と同時に、ロキの放つ圧倒的なプレッシャーに硬直してしまっているシャクティを抱きかかえて、クリスはヒュペリオンに退避する。

 同時に俺は初めから全力の攻撃を叩き込む。

 ウイングを展開し、光速の3倍と言うこの機体だからこそ許される、理を超えた速さでロキに向かい突き進み、大剣に魔力を集中し、機体ごと弾丸となって必殺の一撃を叩き込む。

 この一撃がまるで通用しないようなら、実質、俺たちに勝ち目はない。

 事実、この一撃にはサタン・ソウルであれば倒す事も可能な程の、機体のエネルギーほぼ全てを収束した滅びの力が宿っている。

 だが、そんな一撃を、ロキは無造作に、正面から受け止め、いとも容易く相殺してみせる。


 何の冗談だ。


 いくら俺が機体の力を完全に引き出せてはいないとは言え、今の一撃にはΩランクの魔物すら滅ぼせるだけの魔力が込められていたハズだ。

 それがいとも容易く相殺された。しかも、ロキの魔力は全くといって良い程、それこそカケラほども消耗していない。

 もし、サタン・ソウルが相手だったのなら、今の一撃で滅ぼせるか、そうでなくても、魔力の半分は確実に奪えたと断言できる一撃。

 その一撃が、何の意味もなさない。


「ミランダ。すぐにアスカ氏たちに救援要請。現れた魔物はロキだと伝えろ」


 それでも、希望が無い訳じゃない。

 アスカ氏たちならば、このバケモノすら倒せるはずだ。

 アスカ氏と、レイストリアたちの3人のジエンドクラス。彼らが専用機に乗って戦えば、Ωクラスの魔物大軍すら退けられる戦力になるハズ。


「そんな、攻撃が通らない」


 俺に続いて攻撃を仕掛けたユリィたちも、必殺のハズの一撃が何の意味もなさない事に驚愕する。


「それでも攻撃を集中させろ。アイツを自由にさせるな」

「了解」


 ダメージを与えるどころか、ほんの少しの消耗すら強いることも出来なくても、攻撃を続けていればその動きをほんの少しだけでも制限させられる。

 今は、その程度が精一杯だと理解するしかない。


「本気でなんだこのバケモノは」


 そう判っていても、思わずそう零さずにはいられない。

 目の前の魔物、ロキがサタン・ソウルよりも強い事は理解していた。

 ・・・・・・いや、理解しているつもりだった。

 それが間違いだった事に今更気付く。

 強いとかそんな次元の話じゃない。桁が違う。間違いなく、2つの魔物の間には、Aクラスの魔物とSクラスの魔物と同じくらい、隔絶した力の差がある。

 サタン・ソウルをオーガとすれば、ロキはさながらワイパーンだ。

 サタン・ソウルを何とか倒せる程度の俺たちでは、ロキの相手はまるで務まらない。

 こうして、ほんの少しだけでも時間を稼げているだけで奇跡に近い。


 だが、当然だがそれもそう長く続くハズがない。


 ロキが煩わしそうに左手を振るう、それだけで俺たちの攻撃は全て霧散してしまう。

 それだけじゃない。ただ手を振るっただけ、それだけなのに俺たちリ元まで信じられない程の衝撃波が襲い掛かってくる。

 10万年前の転生者たちが使っていた専用機。Ωランクの魔物すら屠れるハズの機体が。無造作に、煩わし気に振るわれた手が引き起こした衝撃波によって後退させられる。

 それは、俺たちがこの機体の性能を全く引き出せていない証明でもある。

 判っていたつもりだった。それでも、ここまで遠いのかと愕然とする。


「いけない。全員退避だ」


 だけども、今はそんな事を考えている余裕はない。

 ロキを自由にしてしまった。つまり、ロキの攻撃を許してしまうと言う事だ。

 その攻撃がどんなモノなのかは知らない。だけども、こちらの攻撃がまるで通用しなかったのだから、こちらの防御で防げるハズもないだろう。

 魔域の中心部から全速力で逃げ出す。

 そもそも、こんな化け物を魔域の中心部に何時までも居させる方が危険だ。それこそ、エリアマスターを屠って魔域を開放してしまいかねない。

 俺たちが逃げたしてからロキが行動に移るまでの時間は3秒。それだけの時間があったのは幸運以外のなにものでもない。

 もし、撤退と同時に攻撃されていたら確実に成す術もなく全滅していたハズだ。

 そして、ロキが無造作に放った閃光がヒュペリオンを襲う。

 攻撃対象がヒュペリオンだったのも幸運だ。もし、俺たちの狩る機体が攻撃対象になっていたなら、機体の全魔力を込めて防御フィールドを展開しても、成す術もなく貫からてお終いだった。

 だが、ヒュペリオンの展開した多層防御フィールドと反射魔法は、辛うじてロキの攻撃を弾く事に成功する。

 弾かれた閃光は魔域の大地へと向かい。大爆発。などと言う表現では言い表せない破壊の暴虐を生み出す。

 そこにあった全てが一瞬で跡形もなく存在を消滅させられ、一瞬どころか刹那にも満たない破壊の嵐の後には、直径5000キロ、深さ2000メートルを超える巨大なクレーター。いや、風穴が出来ていた。

 そこにあったの全てが物質としての存在そのものを完全に消滅させられて出来た、消滅と言う名の破壊の爪痕。


「冗談だろ・・・・・・」


 それはロキの渾身の一撃に余て生み出されたモノではない。ただ単に、露造作に繰り出された攻撃が残した爪痕に過ぎない。

 現に、ロキの魔力は今の攻撃でまったくと言って良いほど消耗していない。

 更に言えば、今の攻撃はヒュペリオンの防御フィールドで3分の2程度にまで力が減衰していたハズだ。

 それなのにこれだけの破壊をもたらした・・・・・・。


 当然だけども、同じ事は俺にだって出来る。

 この星そのものを跡形も無く消し去る事だってある意味で容易い。

 そして、相手の魔物が同じだけの力を持っているのも当然だった。

 だけども、物質の崩壊、存在の消滅などと言った超高位魔法をまるで消耗した様子も見せずに容易く使って来るとなると話が違う。今相手をしているロキはこれまで相手をしてきた魔物とは次元が違い過ぎる。

 

 はじめてヤマタノオロチ・スサノオと相対した時も、ここまでの絶望は感じなかった。

 確かに、初めて相対した時、ヤマタノオロチ・スサノオは俺よりもはるかに強大な力を持っていた。しかし、それでも決して倒せない相手ではなかった。

 だけど、今は違う。ロキはどうやっても倒しようがない相手だ。

 これまで感じたことのない絶望と無力感が全身を覆い、心の奥底から戦う意思を苛んでいく。

 そう。これは恐怖だ。絶対の強者に対しての生命の根源的な恐怖。

 今更そんなモノに苛まれるとは思わなかった。


 だけども、そんなモノに気を取られる訳にはいかない。

 絶望に身を震わせ、恐怖に竦んでしまっていては待つのは死だけだからだ。

 勝機がまるでなくとも戦い続ける。


 それに、今みたいな幸運が何時までも続くなんて思えない。

 今のロキ゚の攻撃、ヒュペリオンが弾いた先が魔域の中でなかったら、魔域の外に弾かれていたらどうなっていたか・・・・・・。

 魔域の外周に着弾していたとして、複数の防衛都市が消滅し、数百万から一千万以上の犠牲者が出ていたのは間違いない。

 それでも被害が最小限に済んだ方で、可能性としては、今の一撃でスピリットが壊滅してしまっていたかも知れない。

 ロキにとっては戯れ程度の些細な攻撃であっても、絶対に魔域の外に出す訳にはいかない。

 そんな事になったら、どれだけの死者が出るか判らないのだから。


「クッククククっ」


 そんな俺たちの決意を嘲笑うかのように、嘲笑を上げながらロキが攻撃をしてくる。

 そう。確かにロキは俺たちを嘲笑っている。

 その証拠に、放たれた攻撃はさっきと全く同じものだ。ただし、その数は優に100を超える。

 確かに、俺たちはその攻撃に成す術もなかった。虫けらに等しい弱者をいたぶるには相応しいやり方だろう。

 だけども、それはさっきまでの話だ。

 一度見た魔法の構成くらい見抜けないとでも思うのか?

 存在の崩壊因子を無効化する事で、その魔法は相殺できる。そして、その為の魔法式の構築は既に完成している。

 即座に放たれた閃光と同数の相殺魔法を放ち、ロキの攻撃を無効化する。


「ほう」


 まさか相殺されるとは思っていなったらしく、ロキが素直に感嘆の声を上げる。

 当然と言うか、ロキの知性は間違いなく俺たちよりも上だ。或いは対話すら可能かも知れない。相手に俺たちと対話をする意思があればの話だけども・・・・・・。


「おもしろい。取るに足らぬ弱者かと思ったが、そうでもないようだ」

「お褒めに預かり光栄って言うべきなのかな?」

「その必要はあるまい。我に滅ぼされるのは変わらぬのだからな。ただ、我を感歎せしめた事は誇るが良い」


 何処までも傲慢に、強者の余裕と風格を漂わせてロキは平然と語る。

 だが、それよりも俺は当り前のように会話が成立したことに驚きを隠せない。

 ・・・・・・本当に、ごく自然と当り前のように会話が出来た。


「確かに、今の俺たちには対抗する手段はない。それでも、負ける訳にはいかない」

「その意思や良し。互いに相いれぬ存在である我らだからこそ、その戦いは正々堂々と、己の意思によって成り立つべきなのだからな」


 その言葉に俺は戦慄する。

 ロキは、この魔物は間違いなく戦いの元凶。或いは本質を理解している。

 俺たちの住むネーゼリアと魔物が済む世界。2つの世界の間で繰り広げられる戦いの真実を理解している。


「それが神に、高位次元生命体に操られていたとしても?」

「だからこそ、己が意思を曲げぬための戦いを欲する」

「それは良いな。まさか魔物を相手に共感する日が来るとは思わなかったよ」


 俺とロキ゚の会話に割って入って来るのは、俺が待ち望んだ人物。

 ジエンドクラスの超絶者。この世界で最強の存在は、自分の装機竜人のコックピットらその身を乗り出して、真っ直ぐに瞳でロキを見据えていた。

 



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