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「素晴らしい戦いでしたな。息を忘れて見入ってしまいました」
「こんな素晴らしい戦いを見学できるなど、我々は本当に幸運です」
多胎を見学していた騎士たちが感嘆の言葉をそれぞれに言い合っている。
彼らも全員がA・Bクラス以上の実力者なんだけども、自分たちが目指すべき高みを目の当たりにして興奮しているみたいだ。
「今の戦いを見て、高みへと意気込めるのか」
「彼らはこの国を、世界を護る誇りを持っていますからな。特にSランクの者は、自分も必ずレジェンドクラスに至ってみせると意気込んでいます」
確かに、Sランクのみんなはいずれは自分たちもあの高みにと意気込んでいるみたいだ。この調子なら、そう億なく彼らの中から新たなレジェンドクラスが現れるだろう。
因みに、10万年前の転生者たちが残した修行法は、ゲヘナの戦いがあって、もうパワーバランスがどうとか言ってられル状況じゃなくなったので、ヒューマンを含む全ての国に伝えてある。
結果として、僅かな期間でこの国のSクラスは倍以上に増え、ES+ランクの、かつての俺と同等かそれ以上の力を持つ、レジェンドクラス候補にまで力を付けた人たちもいる。
「とは言え、ケイ殿がレジェンドクラスに至る試練を受けた時の出来事の様な、不安要素もあるのですが」
「それについては様子を見るしかないよ。とりあえず、次の試練の時は、俺たちが完全武装でスタンバイしておくつもりだけど」
それで、なに事もなく無事に終わってくれるとありがたいだけど、そう簡単にはいかないんだろうな。
「それならば安心できますな」
「なにか、どんどん俺たちの負担が大きくなっていってる気がするんだけどな」
これは本気で気の所為じゃないよな。間違いなく俺たちの負担が大きく、重くなってきているよ。
「その事でひとつお願いしたい事が」
「なに?」
話を聞くと、ライオルも10万年前の転生者たちの装機竜人が欲しいとの事。
確かに、レジェンドクラスのライオルが転生者たちの専用機に搭乗すれば、ジエンドクラスの魔物にも対抗できる戦力になる。
「この国でもしもの事態が起きた時、アベル殿に頼る以外に国を、民を護る術がないと言うのは口惜しいのです。それに、なんの対抗手段も持たないのでは、アベル殿が駆け付けてくださるまでにどれ程の被害を出す事になるか」
「確かにね。転移があるとはいえ、知らせがあってから、万全の戦闘態勢を整えて駆け付けるには時間がかかるだろうし」
それ以前に、他の場所で戦っていて駆け付ける事が出来ない可能性だってある。
ジエンドクラスの魔物が世界各地で現れる様な事態になったら、対抗できるのが俺たちだけじゃあ早々に積む。
「確かに必要だね。と言うか、他のレジェンドクラスのみんなにも持ってもらうべきだね」
ミミール達も同様に10万年前の装機竜人を持ってもらえば、ジエンドクラスの魔物に対抗できる戦力が十分に整う。
と言うか、どうして今までこの程度の事を思い付かなかったかな・・・・・・。
マヌケすぎるよ。
とりあえず、兆度良いのでミミール達にも連絡して、全員に専用機を持ってもらおう。彼女たちなら間違いなくすっ飛んでくるし。
「それじゃあ、今からミミール達に連絡して、ついでにヒュペリオンの格納庫に専用機を並べておくから、キミたちは好きなのを選んでね」
因みに、10万年前の転生者たちはそれこそ何万、何十万人と居たので、専用機膨大な数がある。と言うかこれまでに見付けた専用機だけで既に1000機を超えていたりするし。
思いっ切り趣味に走っただろう全身黄金の輝く機体や、燃える様な深紅の装甲に包まれた機体。漆黒としか表現できない機体もある。どう考えても、前世のロボットアニメとかの影響丸出しの機体は、転生者の専用機にはよくある。
まあ、俺も人の事とやかく言えないけど・・・・・・。
とりあえずまずはミミールに連絡してみる。
「私に専用機を? おもしろいね。すぐ行くよ」
と当然のように快諾。気が付けば隣に居る。と言うか話の途中で転移でここまで来てたし。
「アレ、レオシリスはいないの?」
「彼ならライオルが呼びに行ったよ」
本当なら、獣人のもう1人のレジェンドクラスであるレオシリスに先に連絡するべきなんだけど、彼はライオルが呼びにいったからね。
続いて連絡するとレイストリアとレイ、それにファファルもすぐに来た。みんな興味津々ていった感じだ。
そんな訳で急かされつヒュペリオンの格納庫に行って、10万年前の転生者たちの専用機を並べて行く。
まあ、流石に1000機を一度に出すのはムリだから、まずは出すのは50機くらいにしておく。この中から気に入った機体が見付かってくれればいいし、気に入らなければ仕舞ってまた次の機体を出せばいい。
「おお、これは壮観ですな」
「スゴイな。これ程の機体が存在するなんて」
「10万年前は、こんな機体が戦場を駆け巡っていたんだな」
「この機体であれば、ジエンドクラスの魔物とすら対抗できるのか」
「確かに、この装機竜人の力は私たちを遥かに超えてるし」
「これは心が躍るな」
みんな口々に感嘆の声を上げている。
「俺たちの誰かが、ジエンドクラスに至るのにもまだまだ時間がかかるし、今できるだけの備えをしておいた方が良いのは確かだからね。好きな機体を選んで、端末にそれぞれの機体の特性も送っておくから」
ここに並べられている機体にもそれぞれ特性がある。砲撃戦タイプの機体から、接近戦重視の機体。殲滅戦を得意とする機体から、1対1の戦いを前提とした機体まである。
「ほう、これは良い」
レオシルスが選んだのは黄金に輝く装機竜人アマテラス。
と言うかそれを選ぶのね。まあ、彼の場合は金ぴかな見た目で選んだんじゃないのは判っている。この機体の特性が彼の戦闘スタイルのピッタリだからだ。
そして、この機体は転生者の専用機の中でもトップクラスの性能を持つ。
Ωクラスの魔物の魔石を複数融合させてつくられた強力な動力にそのパワーにモノを言わせた過剰なまでの火力と機動性を持ち、使いこなすのがほとんど不可能じゃないかと言う様なピーキーな機体であると同時に、乗り手次第では絶大な力を発揮する。
大火力で一気に戦いを決めるスタイルであると同時に、非常に繊細な、綿密に計算された戦い方をするレオシルスにピッタリな機体だろう。
「自分はこの機体にいたします」
同じく獣人のライオルが選んだのは、全身が銀に輝くツクヨミ。
アマテラスと対を成す機体を選ぶか・・・・・・。
だけど、その期待は確かにライオルの戦闘スタイルと合っている。
ツクヨミは光速近接戦闘用の機体で、俺の機体ラグナメヒルと同じ推進システムが搭載されている。つまりは光速を超えた速度での戦闘を行う機体であり、であるからこそ、近接戦闘特化型になっていると言いう。まあ、高速より早く動くと言う事は、普通に魔道砲の砲撃よりも機体速度の方が速いって事だからね。
生半可な火器を積んでも邪魔になるだけだし・・・・・・。
そんな訳で、かなり癖の強い機体でもあるんだけど、ライオルには合っているだろう。
「私はコレかな」
ミミールが選んだ機体は、巨大や8対のウイングを持つローエングリン。
この機体はひたすらにトリッキーとでもいうべき機体で、巨大なウイングは高速機動のためのモノではなく、ローエングリンの主兵装なのだ。砲撃と近接戦闘のどちらにも対応し、複数の敵を一気に殲滅することも出来る。その代わり扱いは極めて難しく。少なくても俺には使いこなせないと判断した機体でもある。
その事を判った上でローエングリンを選ぶのだから、流石ミミールと言うべきか、と言うか何故にみんな扱いの難しい期待ばかり選ぶ?
「ふむ。では私はこの機体にしよう。」
鬼人のレジェンドクラスであるレイが選んだのは、深紅の鎧武者を思わせる武神。因みに、この機体を使っていた転生者も鬼人だったみたい。
外見は完全に趣味に走った機体だけど、砲撃戦にも近接戦にも隙がなく、ユリィのグリモハウトと並ぶほどの鉄壁の守りを誇る機体でもある。グリモハウトが砲撃戦戦用だったのに対して、ローエングリンは近接戦闘でも圧倒的な力を示す。特に、レイザラム製の巨大な太刀が強力で、剣身に刻まれた魔法紋から強力な魔法を纏わせる事ができ、その一太刀は高位ドラゴンの鱗すら容易く斬り裂く。
「では私はこの機体にするとしよう」
天人のレジェンドクラスであるレイストリアが選んだのは、機体に直結した巨大な魔道砲を2門搭載した砲撃戦専用機サジタリウス。
この機体は内部にブラックホール・エンジンを搭載していて、機体に直結して魔道砲は超重力衝撃砲やブラックホール・キャノンなどを放つためのモノ。正直、扱いを間違えたら一瞬で星が滅ぶほどの超火力を有した重砲撃戦用の機体。
何故にそれを選ぶかなと思わなくもない。
「自分はこの機体にします」
最後にファファルが選んだのは、漆黒の機体ノワール。この機体は可変戦闘機という枠組みとなる。
装機竜人は元々人形と戦闘機と言うか竜に近い高速飛行形態への可変機能を持つ機体だけども、通常はどちらかの計上で戦い続ける事が多い、しかし、この機体は戦闘中に次々と変形を繰り返す事でその真価を発揮する珍しい機体だ。
そもそも、刹那以下の時間が勝敗を左右する戦いの中で、無防備になる変形なと本来ならば致命的な隙にしかならないのだけども、この機体は変形プロセスの中に攻撃や、攻撃へと繋がる流れをくみ込む事で、その隙をなくしている。
それと、漆黒の騎士を思わせる人型形態と、黒いドラゴンそのままの姿の高速飛行形態を持つこの機体は、有無を言わさないくらいファファルに合っている。
ケイの専用機も無事に決まったし、ミミール達も専用機を持った。
これで、出来る限りの戦力強化は出来たな。本当に、これでどうにもならない様な事は起きないで欲しいよ。




