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「久しぶりですなアベル殿」


 獣人の国スピリットに到着した俺たちを出迎えたのは何故かライオルのバカ。


「久しぶりって程でもないと思うけど」


 このバカとはゲヘナの魔域の活性化の戦いで会ってるし。と言うか、暑苦しいからもう2・3年は会わなくて良いと思っていたんだけど、どうしてこんなに早く再開するかね?


「と言うか、どうして此処に?」

「恩師をお出迎えするのは当然ではありませんか」

「イヤそうじゃなくて、キミ、何時スピリットに戻ったの?」


 ゲヘナの戦いの後、ライオルはそのまま旅にでたハズなんだけどね。


「ああその事ですか、あの後、アベル殿に引き渡すまで転生者たちを鍛えて欲しいと連絡がありましてな。獣人の転生者の指導をおこなっう為に戻って来たのでありますよ」

「それじゃあ、転生者たちは今、キミの指導を受けているの?」


 それは本当にご愁傷様。心から同情するよ獣人の転生者たち・・・・・・。

 よりにもよってこの脳筋が指導役とか、どれだけ過酷な地獄の訓練を続けて来たのやら・・・・・・。人の事とやかく言えない? うん。それは判ってるけどね。


「アベル殿を見れば判りますが、本当に転生者とはスゴイですな。修行をはじめてまだ2ケ月も経っておりませんが、既に5人がSクラスへと至っております」


 コレは手遅れなくらいやり過ぎなのが確定なんだけど・・・・・・。

 5人もSクラスに成っているって、どんだけムチャをさせたんだライオルのヤツ?


「それより、俺たちは何時転生者たちと会えるのかな?」 

「アベル殿がお望みならば、今すぐにでも可能です」

「それじゃあ、すぐに会えるようにしてくれる」

「ではすぐに」


 こちらとしても待たされるよりは良いけど、こんなにアッサリと対面と行くとは思わなかった。ライオルが気を使ってくれたってことなんだろうけど、その気遣いを指導した転生者にも少し使ってあげればよかったのに。


「何か意外な展開になってきたかも」

「それはクリスの言う通りだと思うよ」


 正直、あった時の転生者の反応が予想できないんだけど・・・・・・。

 間違いなく、ライオルの地獄の修行から解放されるのを喜ぶと思うけどね。

 ただ、うちに来ても地獄なのは変わらないよ。なにせ目指せジエンドクラスだからね。特にライオルの下でSクラスになった子たちには期待してたりするし、頑張ってほしいんだけど、あまりやり過ぎるとみんな途中で脱落しちゃいそうなんだよね・・・・・・。


「お待たせしました。準備が整いましたぞ」 


 30分ほどで転移してどこかに行っていたライオルが戻ってきたので、彼について行くことにする。

 因みに、歓迎の他のご馳走については心配いらない。アイテムボックスの中に山のように入っている。ドラゴンカレーとかも大丈夫だし、ユグドラシルの実の蜜漬けを使ったスイーツ各種もそろっている。

 さて、ライオルに連れられてきたのは城の修練場。そこにはクリスの家族のスピリット王族が勢ぞろいしていて、それと一緒に、ピシッと整列している40人ほどの少年少女たちが、獣人の転生者だろう。


「アベル殿をお連れしました」

「「「「初めましてアベル殿。これからよろしくお願いします」」」」


 整列している少年少女が、俺の姿を確認てると一斉に頭を下げる。

 ・・・・・・いや、なにその完全な体育会系のノリは? コレって間違いなくライオルに教育されちゃっていると言うか洗脳セされているよね。


「ああよろしく。そんなに硬くならなんていいよ。俺たちはこれからは仲間なんだから」

「そういう事。あまり気構えなくても大丈夫だよ。あっ、俺はヒューマンの転生者でザッシュだ。よろしくな」


 ナイスだザッシュ。因みにザッシュも既にES+ランクの実力者。レジェンドクラスに至る可能性が見えるまではいってないけど、十分な強者だ。 

 まあ、コイツがレジェンドクラスに至る日が来るかどうかは謎なんだけどね。


「とりあえず、俺たちはキミたちを歓迎する。そして、これから一緒に戦うキミたちを歓迎するパーティを開きたいと思う」

「楽しみにしていると良いよ。アベルの料理は絶品だから」

「うむ。アレは絶品であった」


 なにか獣王が思い出したように何度も頷いているんだけど、コレって間違いなくキミたちも食べる気満々だよね。と言うその為にココに集まているよね。獣王家の皆さん?

 まあ、それも何時もの事なんだけどさ。 


 もう良いや、突っ込んでもムダそうだから、場所を用意してもらってアイテムボックスから料理をだしていく。

 獣人はある意味で当然のように肉好きなので肉料理を中心に並べて行く。あと、魚好きな獣人も結構いるのでソッチも取りそろえる。


「おお、本当に美味しそうですな」


 と言うか、オマエも食べるつもりかライオル。イヤ良いんだけどね。オマエも何言ってもムダそうだし。

 てっ、食うのは良いが転生者を差し置いて真っ先に食べ始めようとするんじゃない。今日の主役は、お前のシゴキに耐え抜いて俺たちの仲間になる転生者たちなんだよ。

 断じてオマエではない。


「さあみんな。遠慮しないで食べてくれ。俺としては、まずはこのドラゴンカレーがお勧めだよ」

「カレー。こっちに生まれてから初めて・・・・・・」

「この匂い。本物のカレーだ」


 カレーの匂いに誘われて40人が一斉に殺到する。

 うん。気持は良く分かる。転生者の中で最年長の子は20歳近くくらいだったし、そうなると20年ぶりのカレーになるわけだしね。


「うまい。こんなうまいカレー食ったの初めてだ」

「おお、これは確かに信じられぬほどの美味っ」


 だから何故にオマエが混じっているライオル?

 イヤ、よく見たら獣王も一緒になってカレーを楽しんでいるし・・・・・・。

 もう良いや、気にしてても仕方がないので俺も食べるとしよう。因みに、俺はカツカレーでいくつもり。さらに言えばドラゴンのカツでいくつもり。

 このドラゴンカツ。実は結構な問題児なんだよ。と言うか、カツの味に敵うソースがまずない。どんなソースを使っても、カツの味にソースが負けてしまうわけで、結局、一番美味しく食べられる方法が、このドラゴンカレーとの組み合わせの、カツカレーになる訳。

 それでもって、このドラゴンカツカレーは本気でシャレにならないくらい美味しい。

 これはちょっと反則なレベルだ。


「カツカレーですか。アベル殿。それも美味しそうです」

「ああきみも試してみると良い。この組み合わせは最高だよ」


 転生者の1人、最年長組の1人が目をキラキラして訪ねてくる。


「その様子だと、カレーが好きみたいだね」

「勿論です。前は週2は絶対に食べてましたから。それなのに、コッチに生まれ変わってからはカレーが食べられなくて、これまで地獄だったんですよ」


 どうやら彼女はホントのカレー好きみたいだ。


「そうやく食べられたカレー。しかもこの信じられない美味しさ。アベル殿。一生ついていきますからね」

「流石にカレーで人生を決めるのもどうかと思うけどね。と、そういえばまだ名前を聞いていなかった」

「そうでした。失礼しました。私はメルティ・ローラ・グランベア。金熊の獣人です」


 金熊ときたか。確かに、彼女の頭についている丸いクマの耳も、長い髪も綺麗な金色だ。ついでに瞳も同じ色で、それとクマの獣人だからか、女性としては大きめで身長が2メートル近くある。


「メルティね。さっきザッシュも言ったけど、そんなに硬くならなくて良いんだよ」

「あ、この口調は元からでして。他のみんなは、ライオル殿に矯正されましたから、後でアベル殿から普通の喋り方で良いと言っていただければ、みな喜ぶかと」


 私は騎士の家に生まれましたので自然とこうなりましたとメルティ。

 いや、俺も一応は騎士の家に生まれているけど、口調とか言葉遣いとか気にした事もないんだけど・・・・・・。一応は相手によってシッカリとしているつもりだけどね。


「それはそうと、キミはこのまま俺たちの仲間になるのを良しとしているのかな?」

「当然です。ライオル殿の元を離れられるなら、例え何処へでも行きます」

「いや、それは気持ちは判るけど・・・・・・」


 完全にライオルのやった修行がトラウマになっているよ。


「それに、ライオル殿からゲヘナの戦いについて聞いています。私たちには強くなるしか道は残されていないのでしょう」

「確かにね。でも、キミは戦うのが怖くないの?」

「怖くないと言ったらウソになります。ですが、戦わなければ守れないモノがありますから」


 成程ね。彼女は自分の中にシッカリと戦う意味を見出していて、戦う覚悟が出来ているみたいだ。


「それでも、ライオル殿の修行はもう絶対にゴメンです。いくら強くなれるにしても絶対にイヤです」

「いったい何をしたライオル?」


 そんな彼女をここまで言わせるとは、本当にあのバカは何をしたんだろう・・・・・・?


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