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『アベル』


 ヒュペリオンからユリィとケイの声が響く。

 俺はそれに応えるように手を挙げ、すぐにヒュペリオンに乗り込む。


「ふぁ・・・・・・」


 ようやく死地を脱した。その安心感に、ヒュペリオンな乗り込んだ瞬間に全身の力が抜け、気が付いたら膝をついて大きく息を吐いていた。

 本当に、良く生き残れたものだ。

 だけども、ここでホッとしている場合じゃない。戦いはまだ続いている。いや、これからが本番だ。

 正直、ヒュペリオンの力を持ってしてもサタン・ソウルに勝てるとは限らないと思う。或いは、即座にベルハウゼルなどをここの持ってくるべきかも知れないと思う。

 それ程までに、あのサタン・ソウルの力は別格だ。

 

 だけど、ゲヘナにあるベルハウゼルをレイザラムにまで持ち込むにはいろいろと問題がある。

 そもそも、余りにも過剰過ぎる力を持つアレは、魔域の活性化という非常次第だからこそ使えた。或いは、今はそれをさらに上回る非常事態かも知れないけど、だからと言ってあれは早々簡単に使える物じゃない。容易に使うにはあまりにも危険すぎる兵器なのだから・・・・・・。

 それでも、状況次第では使わざるおえないだろうけれども、その判断をするためにも戦況を知らなければならない。

 この船は、ヒュペリオンはあのバケモノを相手にどれだけ戦えているのか?

 

 そもそも、俺たちは未だにこの船の性能を完全に引き出せてはいない。


 それは当然の事で、この船の性能を完全に引き出しきるにはジエンドクラかの、それも最高位のΩランクの力が必要なのだから、レジェンドクラスに過ぎない俺に使いこなせるハズがない。

 それは判っているけれども、だからこそ、そんな中途半端な力しか発揮できていないヒュペリオンであんなバケモノを倒せるのか不安で仕方がない。

 そんな焦燥にかられながらも環境に急ぐ。

 そう言えば、今この船の指揮をしているのは誰だろう?

 普通に考えるとミランダだけども、ここはレイザラムなのだからケイが指揮している可能性もある。


「艦首の防御フィールドを集束展開。目標に向けて突撃開始。目標の行動に合わせて主砲を撃つから準備して」


 艦橋につくと指揮を執っていたのはミランダだった。ケイはと言うと、砲撃手をしているみたいだ。

 ミランダの指揮の下、ヒュペリオンは目標のサタン・ソウルに向かって最大速で突っ込んでいく。艦首に集束展開された防御フィールドもあって、今のヒュペリオンは全てを貫く神槍に等しい。

 確かにこの攻撃ならば、当りさえすれば確実にサタン・ソウルを倒す事が出来る。だけども、そんな簡単に行く相手な訳がない。当然だけども上空に飛んで回避する。だけども、ミランダにほうもその程度の事は初めから想定済み、相手が避けた瞬間に主砲の一斉射が放たれる。

 時をおかずに放たれた100に及ぶ主砲の砲火を、サタン・ソウルはそれでも容易く避けてみせるが、それで終わる程こちらの攻撃も甘くはない。

 全ての砲火がサタン・ソウルをターゲットに設定し、追尾する機能を有している。

 いや、砲撃を担当するケイが主砲の砲火を操って、サタン・ソウルを追尾させているんだ。

 攻撃にホーミング性能を持たせるのは何も相手だけの専売特許じゃない。有効な手段であるのは間違いないのだから、当然こっちだって同じことをする。

 そして、やられるとこれほどにイヤな攻撃もない。

 何故なら避けても避けても向って来るのだから、撃ち落とすかして無効化しなければ何時までも攻撃に晒され続ける事になるからだ。

 そして、ヒュペリオンの主砲は、俺の攻撃と違ってサタン・ソウルを相手に確実にダメージを与えられる力を持つ。

 更に追撃で放たれた主砲の一斉射により、200を超える砲火に晒され続ける事になったサタン・ソウルは、ムダと判っている回避を捨て、一気に砲火を叩き落とす事にしたようだ。

 砲火と同じ数の魔法を造り出し、一気に放つ。そして全てを相殺する。

 

 一件。全ての攻撃を無傷で撃ち落とされただけに見える。

 だけども、今の攻防だけで、実際にはサタン・ソウルの力を大き削る事が出来ている。

 今の攻防で、俺との戦いの時にはほとんど消耗させられなかったサタン・ソウルの魔力を3分の1近く削る事が出来た。

 これは、ゲームで言えば敵のHPを3分の1削れたのと同じ。MPじゃないのかって? この世界じゃ魔力の残量がHPみたいなものだから。

 だけど、相手もこのままではいないだろう。俺を相手にしていた時と違って、遊んで入れが逆にやられてしまう強敵である事を理解しているハズだ。つまり、向こうも今までと違って全力で来る。

 一撃必殺の戦いであり、同時に少しずつ削り合うギリギリの戦い。だけども、その天秤は少しずつこちらに傾いて来ている。

 続く攻防で更に魔力を消耗したサタン・ソウルには、全ての力を集中させても既に現在ヒュペリオンが展開させている防御フィールドを破れる攻撃は放てない。

 いや、それでも油断は禁物だ。その命の全てを賭けて道連れにすべく自爆攻撃を仕掛けてくる可能性だってある。

 だからこそ、ここで更にもう一手、確実に勝利を掴み取るための行動をするべきだ。そう思っているところで、こちらの想定を根本から覆す事態が起きる。


「魔素よ。我が力となれ」

  

 魔物が喋った? 

 そんな驚きも霞む事態が起きる。魔域に溢れる魔素をサタン・ソウルが取り込み、消費した魔力を回復していく。

 あれは、ヒュペリオンに搭載されている、魔素吸収変換式魔力回復システムと同じ?

 いや違う。もともと行為の魔物が持っていたあの力を基に、10万年前の転生者たちが造り出したのがあのシステムなんだ・・・・・・。


「ミランダ。こちらも最大稼働で媽祖の吸収を。魔域の魔素がなくなれば、魔力の回復はできない」


 まさかココに来てこんな展開になるとは思わなかった。魔域の魔素が尽きるまでお互いに千日手か?

 イヤ、だからこそここで打って出るべきだ。


「俺もラグナメヒルで出る」


 ラグナメヒルとは、ゲヘナでの魔域の活性化の戦い以降、俺が使っている装機竜人だ。10万年の転生者が使っていたフル・オーダーメイド機で、赤と黒の大型のウイングと機体の前兆を超える大剣が特徴的な機体で、ウイングから発生する特殊な漁師フィールドの光力を集束展開する事によって、物理法則すらも塗り替えて光速の3倍もの加速度を引き出す事が出来る機体でもある。また、もうひとつの特徴である大剣には、高度に次元魔法が組み込まれていて、超高出力のディメンションフィールドを展開可能で、事実上ありとあらゆるものを斬り裂ける。

 この機体なら、サタン・ソウル相手にでも十分に戦える。


「私もグリモハウトで出ます」


 グリモハウトは、ユリィがレジェンドクラスに至って以降、専用機にした装機竜人で、超高出力の魔道砲と大型のシールドが特徴的な機体。特に、機体そのものに匹敵する大きさのシールドから発生させられる防御フィールドはヒュペリオンのモノを越える程に強力で、守りの要とも言うべき機体である。

 本当はミランダもケイもでたそうにしているけど、ミランダ以外にヒュペリオンをサタン・ソウルに対抗できる程に使いこなせる者はいないし、ケイが砲撃手をしていなかったら、こっちの攻撃は相手の脅威にすらなり得ない。この2人にはヒャベリオンで戦ってもらうしかない。

 そして、残念だけども他のみんなは力不足だ。グングニール程度の機体じゃあ、サタン・ソウルには力

不足でしかなく、そもそも、最低でもレジェンドクラスに至ってないと、10万年前の装機竜人で武装しても相手にならない。

 とにかく、今は時間が惜しい。俺とユリィは急いで格納庫に向かい、それぞれの専用機に乗り込む。

 魔晶石による魔力の回復は、辛うじて後1回は可能なハズだ。まあ、実際に今の俺は何巻の回復が可能なのか、その正確な階数が判る訳じゃないから、あくまでも感覚的にだけども、そんな事を考えながら魔力を回復させていく。すると何とか回復できたけれども、これ以上は絶対にムリだと本能が告げてくる。

 どうやら本当にギリギリだったみたいだ。

 だけども、今は戦える魔力が回復できたことを素直に喜ぶべきだ。

 期待を起動させた俺とユリィは即座に戦場に出る。同時に、防御フィールドを最大室力で展開し、俺は機体のウイングを展開し、最大加速で一気にサタン・ソウルへと距離を詰める。大剣に最大出力でディメンションフィールドを展開させ、そのまま光速の矢となりサタン・ソウルへと突き進む。

 対してユリィは、強固な防御フィールドを展開するとともに機体の動きを止め、魔道砲を使った固定砲台として確実に狙撃をしていく。

 ヒュペリオンのミランダとケイ、ラグナメヒルを駆る俺とグリモハウトで確実な狙撃をこなすユリィによって、確実にサタン・ソウルを追い詰めていく。

 俺たちの機体にも魔素を吸収変換する無限動力機関は搭載されている。そして、激しい戦いで消費された魔力を補うために、凄まじい勢いで魔域の魔素が吸収されなくなっていく。

 そして、魔力を回復させるための魔素がなくなった瞬間。本当の意味での真の戦いが始まる。


「抹消せよ」


 3対1の不利を自覚しているからこそ、サタン・ソウルはすべての魔力を込めた一撃で勝負をつけようとする。

 ならば・・・・・・。

 俺はユリィの機体の後ろに回り、機体同士のジェネレーターを直結させる。

 俺の意図を理解したユリィはサタン・ソウルの必殺の一撃を正面から受けるために前へ出る。

 それに対してサタン・ソウルはむしろ敬意を表するような顔をし、そして正面から必殺の一撃を放つ。

 ユリィのグリモハウトが正面に掲げたシールドから、俺の機体、ラグナメヒルの力も合わせた2機分の全エネルギーで構築された防御フィールドが展開され。サタン・ソウルの魔法を正面から受け止め、そして防ぎきる。

 瞬間。すべての魔力を使い切ったサタン・ソウルに、ヒュペリオンの放火が集中し、そして残された防御障壁を破壊し、その肉体を完全に消滅させる。




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