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『ケイレーンよ。龍穴にに己が魔力と闘気を注ぐが良い』

「判りました」


 言葉と共にケイは自身の魔力と闘気を龍穴に向けて注ぎ、瞬間。龍脈の力がケイを覆い尽くす。


「これは・・・・・・」

『この星の意思との対話をしているのだ。この星に認められれば、ケイレーンは更る力を手に入れよう』


 それは、ある意味で酷く幻想的な光景だった。

 同時に、見る者の心を鷲掴みにする程の恐怖を与える光景でもあった。

 随分と長い間、龍脈の力に覆われていたように思ったけど、実際には10秒足らずでケイは元に戻る。


「大丈夫かケイ?」

「大丈夫。何があったのかは全く判らないけど・・・・・・」


 どうやら、ケイ自身は星の意思と対話していた時の記憶はないみたいだ。でも、それじゃあ星の意思に認められたのかも判らない。


『どうやら無事、星の意思に認められたようだな。流石と言っておこう。そして、これにて其方の試練は全て終わりとなる』


 もしもし、その言い方だと、星の意思に認めらるのも試練の内に聞こえるんだけど?

 どうやら、はじめから全部この御仁の掌の上だったみたいだ。まあ良いけどね。とりあえず、試練が終わったのならさっさと出るとしますか。

 ケイは早く休んだ方が良いと思うしね。


 試練が終わったあと、城に戻ったケイは、消耗した分を補給する為に何時もの10倍はご飯を食べてからバッタリと倒れるように眠り込んだ。

 そして眠り続けること2日。まだ起きない。


「そろそろ起きても良いと思うんだけどな」

「うん。でも、起きたらびっくりすると思う」


 そこはユリィに同意。でも、こう来るとはじめから予定調和だった気がするよ。

 この2日間の間に、ケイの魔力はユリィとほぼ同じくらいにまで膨れ上がた。つまり、ケイもレジェンドクラスに至ると同時に、ジエンドクラス目前になった訳だよ。

 ここまで来るともう完全に、仕組まれてるとしか思えなくなってくるけど、もう今更だね。この程度の事に狼狽えてたらやってられない。


「それにしても、ユリィがレジェンドクラスに至ったと思ったら、本当にすぐにケイも同じところにまで来たね」

「当然です。ケイですから」


 それは理由になってないよと思いながら、寝ているケイの柔らかな頬を指先でつんつんと突いてみる。

 うん。起きないねと思ったら、どう言う訳か指を小さな口にくわえられてしまう。 

 流石にいきなり指を咥えられるとは思わなかったので、反応できないままそのまま加えられてしまったけど、これはいったい何事?


「アムアム」

「まさか俺の指を食べようとしているんじゃないよねケイ?」


 かわいい寝言と共に甘噛みして来るんだけど、まさか食べようとはしてないよね?


「ケイ、何しているの?」

「どういようかねコレ?」

「どうしようも何も、普通に引き抜けばいいと思うけど」


 確かにね。イキナリの事で気が動転してたみたいだ。

 そっと腕を引いてケイの口にくわえられた指を引き抜く。すると、


「アム・・・・・・、アレ?」

「起きたみたいだね」

「おはようケイ」 


 このタイミングで起きたのは偶然だよね?


「おはようケイ。あの後丸2日寝てたんだよ」

「2日も・・・・・・、それでこんなにお腹がすいているんだ」


 ああそうだね。お腹がすいているよね。大丈夫。シッカリと用意してあるから。


「それじゃあまずはご飯にしようか。ケイはこのあと試練だからね。シッカリと栄養を取らないと」

「そう言えば、試練が終わったと思ったらまた試練なんだ」

「試練?」

「ドワーフ王家に伝わる試練。本当は王位を継承する者だけが受ける試練だったんだけどね」


 ああ、あの試練。王位継承者限定の試練だったんだ。ケイは王位を継ぐ気が始めから無かったから、今まで知らなかったんだな。


「でも、ユリィと同じ様に強くなりたかったから」

「まあ、このタイミングで試練を受ける理由なんて、他にないよな」

「ケイ・・・・・・」


 あのー。2人の間にもの凄く甘い空気が流れているんだけど、こういう時ってどうすれば良いんだろう?


「まあ今はご飯だね。これから始まる試練の事も考えないといけないし」


 どうしたら良いのか判らないのでスルーする事にしました。

 見詰めあう2人を余所にテーブルに料理を並べて行く。メインはケイの大好物のドラゴンの塩釜焼。サーロインにロース、もも肉にバラ肉と様々な部分を塩釜で焼いている。コレは肉の部位の違いの味比べを楽しめる一品。ソースはベリー系の甘酸っぱいソースか柚子胡椒で。薄くスライスして食べるか大きな塊のまま切り分けるかはお好みで。

 デザートにはユグドラシルの実の蜜漬けを使った新作スイーツのレアチーズタルトが並ぶ。これには、ウイ切りにした蜜漬けとジャムにした物の2つを使っている。

 蜜漬けをそのまま煮詰めて作ったジャムは、言うまでもないけど最高だった。


「うわあっ、美味しそう」

「本当に美味しそう」


 どうやら2人とも美味しい匂につられてくれたみたいだ。


「それじゃあ、召し上がれ」

「「いただきます」」


 ケイとユリィは揃ってまずは前菜のトマトフディングを食べる。これは細かく刻んだトマトをゼラチンで固めたスープで纏めたもので、ひんやりと冷たくてさっぱりとした味わいがじつに良い。まあ、トマトのゼリー寄せと言う方が正しい気もするけど。

 俺も席についてスープを口にする。スープは野菜だしのサッパリしたものだけども、具材のベーコンがこくと後味の奥深さを与えている。ニンジンやセロリなど細かく刻まれた10種類の野菜が入った、具だくさんなスープで。味付けは塩コショウとハーブだけの極シンプルなもの。


「それで、ケイの試練についてなんだけど」

「ユリィと同じで、心配ないと思うけど?」


 確かにね。今のケイならヤマタノオロチ・スサノオが出て来ても問題ないから。ただし、1匹だけなら。


「確かにそうだけど、例えば、スサノオが2匹出て来るとか、そんな事が起きる可能性もあるから、油断はしない方が良い」

「そうなると、魔晶石なしじゃあ倒しきれないね」

「それは、俺が魔晶石を用意しておくから、今の内に魔力を込めておといいよ。今まで使っていた魔晶石から魔力を移し替えれば、かなり魔力の消費を抑えられるし」

「そこまで心配しなくても、今日起きたばかりなのに、いきなり試練が始まるなんて事はないと思うけど」


 そこはユリィの言う通りだと思うんだけどね。何事も絶対はない、次の瞬間にはいきなり試練が始まる可能性だってあるし。

 その可能性に思い至ったのか、ケイは俺が魔晶石を渡すと、食事を続けながら自分の今まで使っていた魔晶石から魔力を移し替えて行く。

 何気に、この魔晶石から別の魔晶石に魔力を移す作業、コツのいる高等技術だったりするんだけどね。


「まあ心配のし過ぎだとは思うけどね。いくらなんでも、試練を受ける本人が絶対に倒せない魔物を送り込んできたりしないだろうから」

「でも、アベルの時は凶悪だった」


 確かに、複数のレジェンドクラスの魔物が1辺に出て来るとかざらだったから。

 まあそれでも、一応は倒せるレベルだったハズ・・・・・・。

 実際に倒したんだし、多分そうだと思う。


「それとケイ、ユリィの時は世界樹の意思が力の使い方を教えてくれてたみたいだけど、キミはどうかな?」

「私も大丈夫。この星の意思が、力の使い方を教えてくれたみたい」


 それは何より。


「それじゃあ、私の時と一緒で、1回で試練は終わりかな?」

「多分。そうなると思う」


 用意したのは全部アッサリトほどんどがケイのお腹の中に消えて、最後に食後のデザートを楽しみながら話を続ける。

 ユグドラシルの実の蜜漬けを使ったレアチーズタルト。お茶は当然、世界樹の葉のお茶。


「うーん。コレ本当に美味しい」

「パイも美味しかったけど、これはそれ以上かも」


 俺の個人的な感想では、これはパイには及ばないかなって思ったんだけど、ユリィとケイはどうやらこっちの方がお気に召したみたいだ。確かに、こっちの方がパイよりも後口がサッパリしていて食べやすいかも。


 なんてゆったりとした時間を過ごしていたら・・・・・・。


「まさか、ホントにこのタイミングで試練が始まるとは・・・・・・」

「もの凄く無粋だよね」

「本当にヒドイ」


 とは言え、なんと言った所で始まってしまったモノはどうしようもない。

 俺たちは取り急ぎ、試練が始まろうとしている魔域の中心部へと行く事にする。


「それじゃあ行こうか、ユリィも来るのかな?」

「当然。私もケイの試練を見守るよ」


 そんな訳で3人で魔域まで転移。そこから魔域の中心部まで全速で飛ぶ。群がって来る魔物は俺がすべて片付ける。ただし、急いでいるので倒した魔物を全部回収する余裕はない。Sランクの魔物は流石に回収するけどね。

 そして鳥着いた魔域の中枢。既に漆黒の球体にはひびが入り、何時魔物が現れてもおかしくない状況。

 漆黒の球体に向き合い、戦う準備を始めるケイから、俺とユリィはそっと距離を取る。これから先はケイ1人の戦いだ。

 そして、漆黒の球体が砕け、現れたのは当然のようにヤマタノオロチ・スサノオが2匹。

 それに対して、ケイはまず1匹に相手を絞り、既に用意していた魔法でまずは、1匹を出てきた瞬間に何もさせないまま葬り去る。

 放った魔法はアイン・ソフ・オウル。その一撃で一匹を倒す。

 だが、それで終わりな訳がない。もう1匹は、自分の仲間が倒される前から、攻撃を受けた瞬間からすでに行動に出ている。8つの口を開き、その巨大な牙で噛み殺そうとするかのように狙ってくる。

 しかし、それは囮。巨大な咢から逃れるケイの動きも計算済み。やがて、狙った位置に相手が来ると同時にブレスの一斉射を放つ。

 本当に、魔物と言うのはどこまで戦術に精通しているんだか・・・・・・。

 アレは避けられない。だけども、ケイとしてもこの展開は想定済み。だからこそ対策も既に出来ている。

 反射魔法でブレスを弾き返す。だけども、この攻防はかなりギリギリの綱渡りだ。

 1匹を倒すのにかなりの魔力を使った為、魔晶石で回復しても今のケイの魔力は全快じゃない。全快ならば魔力量にモノを言わせて弾き返すことも出来たけれども、今はタイミングや反射位置などにまで細心の注意を払って限られた魔力で弾き返すしかない。

 だけども、その極めて困難なギリギリの綱渡りを計無事に成功させる。

 そして、春ネ返ってきた自身のブレスで深手を負ったスサノオに、残りの魔力全てを込めたアイン・ソフ・オウルを放ち、確実に仕留める。

 完勝。これでケイの試練もお終いだ。


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