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「賢者の石の精製に必要な素材は全て揃っておる。後はつくるだけよ」

「ああ、素材は揃っているんですか。でも、よく揃えられましたね?」


 元国王とは言え簡単にそろえられるハズもないんだけど。


「城に代々受け継がれてきた品々だ。何時の日か、ふただび賢者の石を精製できるその日のためにとな」

「成程、レイザラムに受け継がれていた訳ですか」


 確かに、賢者の石の再生はレイザラムにとって大きな意味を持つからね。


「ふと疑問に思ったんですが、6万年前にアスカ氏はつくらなかったんでしょうか?」

「いや、アスカ氏なら確実につくっているハズだよ」


 と言うか、むしろつくらない理由がない。

 地球の錬金術において、不老不死の霊薬であるエリクサーと並ぶ錬金術の最秘宝たる賢者の石。アスカ氏の性格からして、そんなモノを造らないでいるハズがない。


「多分、アスカ氏の遺跡に眠っていると思うよ」

「なんと、既に賢者の石が存在すると言うのか? いやそれよりも、そのアスカ氏とは一体?」

「6万年前の転生者で、現在、ただ1人のジエンドクラスですよ」

「なんだとっ?!!!」


 おや? 知らなかったのは少し意外。と言うか、ケイからとっくに話が伝わっているハズなのにどうして知らないかな?

 まあ、この御仁の場合、普通に鍛冶師ごとに没頭してて話を聞いてなかっただけって可能性が高いけどね。


「まあそれはさて置き、早速つくるとしますか」


 用意するのは賢者の石の錬成陣。これがまた信じられないくらいに複雑な陣で、しかも、ほんの僅かな歪みすらも許されないのだから勘弁して欲しい。

 その陣の上に賢者の石の素材を決められた位置に並べ、魔晶石による魔力の補給をしながら陣に魔力を込めて行く。

 因みに、賢者の石の錬成陣は、レイザラム製の特別製で、それ自体が高度な魔道具でもある。だからこそ、賢者の石の錬成などという高度な錬金術の使用に耐えられると言う訳。

 それでも、初めての錬成なので失敗してしまわない過緊張する。

 ゆっくりと、時間をかけて魔晶石からの魔力回復をしながら、自陣の全魔力の5倍に及ぶ魔力を錬成陣の込めて行く。

 そして、錬成陣に魔力が行き渡り、その効力が解放されたところで錬成を発動させる。

 それは世界の摂理すらも捻じ曲げる新たな存在の誕生。

 錬成陣に刻まれた錬金術の秘術が素材を別の物へと変質させてゆき、バラバラだった素材をひとつのあるべき物へと造り替えて行く。

 

 そして、完成するのは賢者の石。それは無色透明であり、同時に光の加減によってあらゆる色を内包するこぶし大の宝珠。


「おお、これが伝説の賢者の石・・・・・・」

「なんて綺麗なの・・・・・・」


 確かに、賢者の石はどんな宝石も霞んでしまうほどの美しさがある。これは少し驚きだよ。


「では、早速使ってみるとしよう」


 俺ですらその美しさに思わず我を忘れて見惚れてしまったんだけども、当然のように1人だけそんなのは胃にも介さない御仁が居た。まあ、この人は本気で鍛冶の事以外は二の次だからな。


「使ってみようって、使い方を知っているんですか?」

「うん? 単に金属の山の前にこれを置いて魔力を込めればいいだけじゃろう?」

「そんな訳ないじゃないですか・・・・・・」


 ダメだコレ・・・・・・。

 と言うか賢者の石についての具体的な情報は残っていなかったのか?


「賢者の石で卑金属を貴金属にするには、専用の錬成陣が必要ですよ。と言うか、錬金術でオリハルコンやミスリルに作り変えるのですから」

「なんと、それにも陣が必要なのか」


 むしろ当然だろうが、賢者の石だけで好きな時に好きな金属を望むままに作り変えられるなら、それこそ本当に反則だ。

 例えば、戦闘中に敵の装備する剣や鎧の素材を脆い金属に作り変えてしまう事なども出来てしまう訳だし。或いは、隊内にある鉄分などの金属質の物を有害な猛毒に作り変えてしまう事も出来てしまう事になる。

 うん。普通に考えてそこまで凶悪なチートも真っ青な事なんか出来る訳ないよね?

 賢者の石は確かにチートに始原物質だけど、そこまで凶悪な兵器ではないよ。

 と言うか、どこかの錬金術で戦うマンガと違ってこの世界の錬金術は完全な生産技術なんだよ。


「それと当然ですけど、変質させる金属によって錬成陣も違いますよ」


 これまた当然な事で、オリハルコンとミスリルを同じ錬金術で一度に造り出せるハズがない。それぞれ、別々の錬金術で造り出すに決まっている。


「そうなのか、では、賢者の石を使うにはその錬成陣が必要と言う事じゃな?」

「そうなりますね」

「それならば、錬成陣を急いで探して来るとしよう。当然、素材など共に受け継がれいてるはずなのでな」


 言うが早いか探しに行く御仁。年寄りはセッカチトデモいうのかな?

 いや、アレは端に鍛冶馬鹿が全快なだけだな・・・・・・。


「本当に、御爺様は相変わらず・・・・・・」

「まあ、あの人はもう変わらないと思うよ。それに、尾の人はアレで良いんじゃないかな」


 何時も周りを振り回している様な人だけども、不思議と憎めない人なんだよな。


「そうだね。御爺様だし」

「そういう事。それよりも、俺としてはこんなに簡単に賢者の石が出来てしまったのが驚きだよ」


 下手をしたら一生かけても素材を集めきれないかもと思っていたのに、まさかの、レイザラム王家に全ての素材が揃っていたと来たものだからね。


「龍玉まで揃っていたし」


 そう龍玉。龍脈の力が結晶化した秘宝である龍玉が、賢者の石の素材のひとつだった訳。

 そんな超絶秘宝が素材のひとつとなっている時点で、賢者の石のとんでもなさが証明されているんだけども、よもやその超絶秘宝が当たり前の様にレイザラム王家に受け継がれているとは思わなかった。


 まあ、とか言いながらその超絶秘宝を持っていたりするんだけど・・・・・・。

 それはあくまで、龍玉を生み出すための10万年まえの遺跡に行った事があったからに過ぎないし・・・・・・。


「どうやって手に入れたんだろう・・・・・・?」


 それと、使う龍玉は流石に何万年分もの龍脈の力が結晶化したモノじゃない。1年程度の結晶だけども、当たり前だけどもそれでもその龍玉に宿る力は絶大なモノ。


「なにがじゃ?」

「もう見付けて来たんですか?」


 まだ捜しに行って1分も経っていないのに、もう戻って来たよ。探し物もバッチリ見付けて来たみたいだし。


「うむ。これが賢者の石を使って錬金術の錬成陣じゃ。それはともかく、どうやって手に入れたとは?」

「いえ、賢者の石の素材のひとつである龍玉。アレをどうやって手に入れたのか」

「アレは、アベル殿も訪れた聖域からもたらされたモノじゃ」


 聖域?

 ああ、初めてこの国に来た時にした儀式と言うか、試しの儀で訪れた場所か、アレでレイザラム製の太刀を手に入れる事が出来たんだよな。

 そう言えば、あの聖域はちょうど龍穴にあったんだったけ・・・・・・。

 だけど、龍穴に位置する聖域だからって、龍玉が出来るなんて事があるの?


「聖域の龍欠は数千年に1度、龍脈の力を結晶化する。我らはそれを大地の恩寵と呼ぶ。そして、もたらされた龍玉は我らに多くの恵みをもたらしてくれる。我ら王家の宝剣も、龍玉をもちいて造られし物じゃ」


 成程、龍脈の力を宿した宝剣ね。そんなのがあったんだ。知らなかったんだけど・・・・・・。

 是非とも見てみたいかも、龍玉ならあるし、レイザラムもあるから同じ様な、それでいて遥かに強力な剣がつくれるかも知れないんだよね。


「それよりも、早速錬成するとしようではないか」


 何時の間にか既に錬成陣の上には賢者の石が置かれ、更に大量の金属も用意されている。と言うか、これって10トンくらいあるんじゃないか?

 いきなりそんなに錬成するのかよ・・・・・・。


「その錬成陣は、ミスリルへの錬成陣ですね」


 因みに、金へする陣もあるけど、当たり前の様に使わない。10トンもの金なんて前世じゃトンデモナイ価値だったけど、こっちじゃミスリルと比べたらカスみたいなものだし。


「うむ。竜騎士団への新たな装機竜人の配備が決まってな。その製作のために大量のミスリルが必要なのじゃ」

「新型ですか」

「うむ。其方らに引き合わせる転生者の1人が、あのグングニールに使われている技術の一部を解析しての、それを基に新たな装機竜人の開発してみせたのじゃ」

「それはそれは・・・・・・」


 どうやら俺やリリアーナと同様の人種みたいだ。しかも、単独で技術解析から新型機の設計・開発までこなしたとなると相当のエンジニアだ。


「それは、会うのが楽しみですね」

「なかなかに強烈な人物じゃったがな。それより、早く錬成しようではないか」

「判りました」


 どうやら、初錬成を自分でとか言う気はないらしい。助かるよ。何かあっても困るし。

 さて、それじゃあ錬成を始めるとしよう。中央に賢者の石を配置した錬成陣に魔力を込める。すると錬成陣は宙に浮かび、錬成対象の金属の山の上に行く。

 更に魔力を込め、錬成を開始させる。すると、錬成が始まった瞬間、陣から下の金属の山に向かって次々と雷が落ちる。


「おおっ!!」


 思わず感嘆の声を上げてしまったのは俺だけじゃない。

 賢者の石による錬成ははじめてだけど、まさかこんな風になるとは思いもしなかった。普通の錬金術による錬成とは全くの別物だ。

 やがて雷は閃光となって金属の山を包み込み、錬成が終了すると共に閃光が消え、ただの鉄や鉛などでしかなかった金属の山は、全てミスリルに生まれ変わっていた。


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