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 さてと、なんだかんだで1週間が過ぎて、今日はいよいよエルフの転生者たちとの対面の日。

 目の前にはエルフの転生者たち。その数30人。・・・・・・聞いていた数より多いんですけど?


「アベル殿。この者たちが我が国で確認された転生者たちとなる」

「判りました。とりあえずみんな、知っているかとも思うけど、俺はアベル・ユーリア・レイベスト。レジェンドクラスの冒険者で、キミたちと同じ転生者だ」


 この挨拶もいい加減慣れて来たな。

 こっちは慣れても、相手は当然だけども驚くんだけど。


「アベル様は転生者なんですか?」

「そうだよ。キミたちと同じだね。ああそれと、様はいらないよ」


 訊ねて来たのは10代半ば、俺と同じくらいの歳の女の子。


「今日こうして集められたのは、私たちが転生者だからだとは聞いています。そして、自分以外にもエルフにこんなに転生者が居たんだと驚いていました」

「だろうね。それに、実はまだ隠れた転生者が結構いると思うし」


 リリアーナみたいに平然と転生者である事を隠し通している人もいるだろうしね。

 まあ実際、冷静に考えれば正しい判断だよ。なにが悲しくて、転生者ってだけで命の危険に曝されないといけないのか。

 まあ、俺の場合はもう割り切って、好き勝手やっているけどね。

 て言うか、俺の場合は完全な自業自得か・・・・・・。

 もうちょっと慎重に行動しろって話だよな。その巻き添えを食った彼女たちこそ哀れだよ。


「どういう意味ですか?」

「ああ、キミたちもこの本を読んで、転生者だと判断されたと思うけど、ある程度の実力者なら、動揺を完全に押し殺して察知させない様にする事くらい簡単なんだ。現に、このリリアーナもそうやって転生者なのを隠していたしね。だから、同じ様に転生者な事を隔している人は結構いると思うよ。まあ、それをどうこう言うつもりはないけどね。転生者である事を隠しておいた方が良いとそり人が判断した訳だし」


 実際。ある意味で賢い選択だと思う。ただし、今の内に力を付けておかないと、後で必ず後悔する事になるけど。


「どうして、転生者である事を隠すのですか?」

「さあね。だけど、多分メンドウだと思ったんじゃないかな。こうしてここに集められたキミたちは、これから俺たちと一緒に旅をしながら魔物の討伐をし、強くなるために鍛錬を続けないといけない」

「えっ?」

「その様子だと聞いていなかったみたいだね。でも、これはほとんど決定事項だよ。と言うか、転生者を一所に集めて置く目的もあるからル」


 とりあえず、俺の所に転生者が集まっている理由を説明する事にする。

 まず一番の目的は、勿論、効率的に戦力を強化する事だ。転生者は総じて高い才能を有しているので、一気に強化して戦力としてしまいたいとの思惑がある。

 次に、ゲヘナでの活性化の戦いの様な、非常事態が起きた時のための特化戦力としての役割。

 そして、転生者だけが10万年前の遺跡に入れることが、ある意味で最大の理由になる。


「キミたちも知っているだろう。ゲヘナでの活性化の戦いで使われた空中要塞。あれらの強力な兵器が10万年前の遺跡には山のように眠っている。それらは、下手をしたら現在のパワーバランスを大きく崩してしまいかねない危険な物でもある。それらを、転生者なら好きに使えてしまう事が問題なんだよ」

「それは、言いたい事は判りますけど・・・・・・」

「さらに言うと、実際に、2万年前、ューマンの大陸を統一して、他種族に対しても戦争を仕掛けて、関係を断絶させる原因となった人物が実は転生者なんだ。そして、もし、そいつが例の殺気の話にも出た空中要塞の様な、10万年前の遺産を使っていたら、歴史は変わって、世界征服すら果たして居たかも知れない」


 本当に、何においてもコイツの存在がネックになるんだよな。


「2万年前に、転生者がそんな事を・・・・・・」

「ついでに言うと、3万年前に大きな被害を出した、魔域の解放も転生者のやった事だよ」


 この時は、10万年前の遺産があったから被害を抑える事が出来たんだよな・・・・・・。

 もっとも、そもそも10万年前の遺産がなければ、魔域が解放される事もなかっただろうけどね。

 ただ、被害を出してはしまったけれども、魔域の解放自体は試して良かったのではないかと思う。魔域が1つ消えたのは確かなのだし、一度実際にどうなるかが判れば、誰も迂闊に魔域を開放しようなどとしないし、エリア・マスターに挑むようなバカなマネもしなくなる。


「そんな訳で、10万年前の遺産が流出してしまわない様に、転生者を一所に集めているのもあるんだよね」

「なにか、問題児だからって隔離されてるみたいです」


 その表現はある意味正しいかも。まあ、今の転生者で一番の問題児は間違いなく俺だけどね。


「それはどうかな。それよりも、キミたちを歓迎する用意が出来ているから、まずは楽しんでほしいな」


 あまりマイナスイメージをはじめに持って欲しくないので、そっさと御馳走で誘惑する事にする。


「メインはユグドラシルの実の蜜漬けでつくったスイーツだよ。これはチョットした自信作だから、楽しみにして欲しいな。あと、ドラゴンカレーも最高だよ」

「ドラゴンカレーですか?」

「そう。ファンタジーの定番のドラゴンの肉を使ったカレー。定番のドラゴンステーキも美味しいけど、このカレーはチョット別格だよ」


 転生者はみんな元日本人だから、このカレーでアッサリ陥落してしまう気がするけどね。


「カレー。久しぶりだな」

「そう言えば、生まれ変わってから食べた事なかった」

「しかもドラゴンの肉を使ったカレーだろ。はやく食いたいぞ」


 うん。エルフと言うか、ユグドラシルでもカレーは何故か食べないからね。ヒューマンの転生者以外は全員カレーに飢えていると思うよ。


「やっぱりカレーが食べたいみたいだね。それじゃあ、全員まずはドラゴンカレーで良いかな?」

「「「「「勿論」」」」」


 うん。見事に揃ったね。

 ヤッパリ、ドラゴンステーキよりも更に別格ってフレーズが効いたかな?

 でも、実際にドラゴンカレーの味は別格だからね。アレはヤバイよ。初めて食べた時は美味しすぎて思わず昇天するかと思ったしね。その後、正気を取り戻すまでにどれだけ食べた事やら・・・・・・。


「それは良いけど一言忠告。ドラゴンカレーは美味しすぎるから、気をしっかり持って挑まないとダメだよ」

「「「「「はい?」」」」」


 俺の忠告に揃って首を傾げているけども、まあ、すぐに判るよ。

 歓迎用の会場には既に沢山の料理が並んでいるけど、その中でエルフの転生者の標的はドラゴンカレーにロックオン済み。

 カレーを確認するとみんな声を上げて喜ぶけど、気をシッカリ持たないと大変だよ?

 まあ、確実に我を忘れてしばらくは貪り食うだろうけどね。


「それじゃあどうぞ」

「「「「いただきます」」」」


 カレーを渡すと待ちきれないとばかりに我先にと食べ始める。

 そして、予想通り一口食べて固まり、その後は我を忘れて食べ続けて行く。うん。予想通り一人残らずカレーの魔力に墜ちたね。


「美味しい。こんな美味しいカレーはじめて」

「それは良かった」

 

 20皿ほど食べたところで、ようやく最初の1人が我に返る。

 我に返ったのは、さっきの10代半ばの女の子。あっ、そう言えば名前聞いていない。


「まだまだたくさんあるから好きなだけ食べていいよ。でも、その前にコッチも試してみたら? ドラゴンステーキ。これもまた別格の美味しさだよ」

「はい。ありがとうございます。それじゃあいただきますね」


 因みにドラゴンステーキはワサビ醤油で食べてもらう。何気に俺が一番気に入っている食べ方で、これが一番美味しい食べ方だと個人的に思っている。


「っ。これも信じられないくらい美味しい」

「まあ、ドラゴンは最弱のやつでもレジェンドクラスの魔物だからね」


 キミがさっき食べた一切れで10万リーゼくらいの値が付いたりするしとは言わないでおく。


「ひょっとして、他の料理もみんな美味しいんですか?」

「それは保障するよ。ただ、流石にドラゴンステーキ並みのはそう多くないけど」


 カオス・フェンリルの肉でつくった角煮なんかは間違いなく匹敵する美味しさだけど、それは言わないでおく、自分でどの料理が地番美味しいか楽しみながら選んで決めて欲しい。


「だけど、間違いなくどれも美味しいから、楽しむと良いよ。ええっと、そう言えば名前を聞いてないね」

「あっそうでした。私はディーナ・ローリエ・メルトリアスです」

「ディーナか。それじゃあデーナ、これからの事はとりあえず忘れて、今は楽しむと良いよ」

「はいっ」


 嬉しそうに頷くと、他の料理も征服しに向かっていく。

 と言うか、あの子はもう料理で完全にコッチに墜ちているな。自分で誘導しておいてなんだけど、ついでに言えば毎度の事だけど、我ながらあくどいよ。

 まあ、後は切り札のユグドラシルの実の蜜漬けのスイーツで、みんな洩れなく陥落するだろうな。

 別に、悪い事はしていないよね?


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