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「美味しい。幸せ・・・・・・」

「アベルのつくるのはどれも美味しいけど、これは別格かも・・・・・・」


 完成したユグドラシルの実を使ったスイーツを食べて、ユリィとケイは至福の表情。

 うん。気に入ってもらえてなによりだ。

 因みに、つくったのはパイ。ユグドラシルの実は世界樹の蜜で蜜漬けにしてから使った。

 これが大正解で、この上なく美味。最高の仕上がりとなったよ。

 蜜漬けにして実に、蜜がシッカリと染み込むまでには結構時間がかかるって?

 その辺りは魔法でちょちょいとね。

 それにしても、このユグドラシルの実の蜜漬けは本当に最高だよ。炭酸水に少し落とすだけで最高のジュースになるし、カクテルにも使える。あと、シャーベットとかをつくるのも、こっちの方が確実に美味しくなるよ。


「うん。確かにこれは我ながら良い出来だよ。さて、そうなると、俺たちだけで食べてるとみんなに恨まれるから、今日のティータイムにはこれを出すかな」

「あっ、それはそうかも」

「と言うか、絶対怒るよね」


 うん。特にうちは女性のメンバーが多いからね、最高のスイーツを3人だけで隠れて食べてたなんて知れたら、絶対に大変な事になるよ。

 あと、ティータイムまで待たせるお詫びにパイだけじゃなくて、シャーベットもつくるつもり。

 このあたりの気遣いをちゃんとしておかないと、本気で大変なのはこの3年で判ったからね・・・・・・。

 いやホント、女の子は怒らせたらダメだよ・・・・・・。


「それじゃあ、ティータイムようにつくるとしますか」



「いや、これは本当に美味しいよ」


 さて、そのティータイムなんだけども、メンバーだけじゃなくて王族全員に、ミミールまで参加している。

 王族の方はユリィから話を聞いたのかも知れないけど、ミミールは本当にどこから聞きつけた?

 あと次期国王。オマエが居るとうちの一部メンバーが不機嫌になるから、食べたなら早々と立ち去る事。


「それは良かったけど、ミミールは何でいるの?」

「なんでって、世界樹の花の捜索には私も参加してたから、アベルたちと同じようにここに居たよ」


 そうですか・・・・・・・。

 全く気が付かなかった。

 そうだよね。ミミールも滞在先は基本城になるよね。多分、俺たちが居る離宮とは別の離宮に滞在しているんだろうけど、それにしたって気付かなかったのは本気で迂闊だよ。

 ・・・・・・うん。冷静に考えたら居ないハズがないんだよね。


「それにしても、ユグドラシルの実の蜜漬けがこんなに美味しいなんて、私も早速つくろ」

「アレ、今までした事なかったの?」


 エルフの誰かが思い付いていてもおかしくないと思うんだけど?

 だって10万年以上の歴史があるんだし、思い付かないハズがないと思うんだよ。


「いや、ユグドラシルの実の蜜漬けは確かにあった。しかし、アベルが見付け出すまで、何百年も世界樹の花を見付けられず、蜜を手に入れられない状況が続いたため、ここ200年はつくられた事がなかったのだそうだ。私も、幼い頃に一度だけ食べた事があるだけだった」


 成程、まあ確かに、世界樹の蜜がないと作れないからね。


「私も存在は知っていたんだけど、世界樹の実を食べた事があるからね。それに比べたら、大したものじゃないだろうって気にしてなかったのよ」

「それは残念」

「まったくよ。まさかこんなに美味しいなんて」


 ミミールとしては一生の不覚と言った所みたいだ。


「とは言え、これもそうおいそれと作れるものではないが」

「まあ、そうそう手が出せるものじゃないわよね」

 

 そりぉあね。ユグドラシルの実だけで1000万リーゼもする訳だし、世界樹の蜜なんてそれをさらに上回る高級食材。原材料費だけで信じられない額になるよ。

 ついでに、こうしてパイにするにしても、それだけ優れた食材であるユグドラシルの実の蜜漬けに負けない食材を揃えないといけないので、小麦粉にしろバターにしろ、全てが最高の高級品。なので、例えば店で売り出すとしたらパイの一切れだけで、20万リーゼは確実にする。

 それ値段でも、減価ギリギリじゃないかな。

 とは言っても、ミミールならいくらでもつくれるし食べられる程度のものだけど・・・・・・。


「それが判っているなら、もう少し遠慮したらどうかな?」

「やだな。判ってるから遠慮しないんじゃん」


 だろうね。さっきからスゴイ勢いでパイとシャーベットを食べているからねミミール。


「それに、私はキミの料理を食べる機会がそうそう無いからね。この機会に食べ溜めさせてもらうつもりだし」

「それは私たちも同じだな」


 ああそう。まあ、こちらとしても次期国王以外は別に歓迎だから良いけど、その歓迎しない人物もいるのが問題なんだよ。


「そもそも、俺は本職の料理人じゃないし、俺がつくるのより美味しいモノなんていくらでもあるだろうに」

「んーー、どうだろう? そもそも、アベルは宮廷料理長と比べても遜色ないし、使う食材はどれも最高の物だし」

「確かに、これ程の食材は日常では使えないな」


 だろうね。いくらなんでも、一切れ20万リーゼもするようなパイと同等のモノを毎日食べていたんじゃあ、国庫が破綻してしまいかねないよ。王族は基本高ランクなので、食べる量も多い訳だし。


「別に俺も、毎回そんな特別な食材を使っている訳じゃないんだけどね。それと、俺が宮廷料理長並みの腕とかありえないでしょ」


 気が向いたら気紛れに勝利をするだけの俺が、プロの、それも最高の料理人と同等だなんてありえない。

 実際、俺とクマーラのどちらが料理の腕が優れているかと言えば、間違いなくクマーラの方がはるかに優れているし。


「それに、それを言うならミミールの方がすごいんじゃないかな?」

「ああ、私はつくるのはてんでダメだよ。食べるの専門だから」


 そうかな? 食べるの専門だからこそ、自分の食べるものには一切妥協しなくて、結果として、料理の腕も信じられない領域に達してそうな気がするけどね。

 と言うか、ミミール達は生きて来た時間の桁が違うので、その経験の量は計り知れないし。

 100年ぐらい、趣味で料理の修行に没頭していたとしても驚きはしないし。その上で、もし本当に100年も修行していたなら、どれ程の料理に腕になっているか想像もできないし。

 普通に、宮廷料理長なんて足元にも及ばないくらいの最高の料理人だったりしそうだし。


「ところで、それじゃコレは特別なのかな?」

「新しく合う転生者の歓迎のためにつくってみたのだから、特別と言えば特別かな。思っていたよりもはるかに美味しく出来たから、ちょっと味見をと出したんだけどね。1週間も待たせたりしたら後が怖そうだし」

「それは道理だね。賢明な判断だよ」


 ヤッパリそうだったか・・・・・・。

 本当に、今日出して正解だったよ。ユリィとケイにだけ先に出していたのもあるからね、知られたらどうなっていた事やら。


「それはともかく、話は変わるけど、みみーるばずっとここに居たのなら、どうしてユリィがレジェンドクラスに至った時に出てこなかったのかな?」

「それは、ユリィが私よりもはるかに強くなっちゃったからだよ。私よりも強い相手の試練に出て行って、何をしろと?」


 それは確かにそうか。ミミールじゃあユリィの試練の相手だった、ヤマタノオロチ・スサノオの相手はムリだろうし。

 本当にムリか? て言う疑問はあるんだけどね・・・・・・。


「それなら、ミミールも俺たちと一緒に修行する? ミミールなら一気に強くなると思うんだけど」

「遠慮するよ。今更地獄を見たいと思わないし・・・・・・」


 そうかな、ミミールなら10万年前の転生者が残したメニューも楽々こなしそうな気もするけど。


「何を考えているのか知らないけど、私はキミたちと違って、ジエンドクラスになんてなれないから」

「それは、試してみないと判らないんじゃないかな」

「だとしても、試す気はないよ。私は十分頑張ったし、これからはキミたちの時代だよ」

「それは単なる逃げでは?」


 さっと目をそらしたりもしないで平然としているところがなんとも・・・・・・。

 でもミミールの言ってることもある意味正しいんだよな。彼女がこれまでこの世界を守るために、ずっと努力を続けてきたことは事実なんだし。


「まあ確かに、状況はどんどん悪化しているみたいだし、私も死にたくないから、自分を鍛えなおしてみる気ではあるんだけどね」

「それは賢明だね。それじゃあコレ」

「なにコレ?」

「10万年前の転生者が残した修行法。俺たちもやっているヤツ。このメニューをこなせば、確実に強くなるから。まあ、ペースはお好きにどうぞ」


 修行法さえ渡しておけば、あとは勝手に強くなってくれると思う。

 と言うか、俺たちと一緒にやるよりもハイペースで鍛えていきそうな気がする。ひょっとすると、アスカ氏に次ぐジエンドクラス第2号はミミールかもしれないな。


「だから、ムリをするつもりはないんだけど・・・・・・」


 なんて言いながらシッカリ受け取っているあたり、やっぱりやる気だよ。

 まあ、俺もここまで来たら、身の安全のためにさっさとジエンドクラスに至っていた方が良いと思うから、負けるつもりはないんだけどね。

 はてさて、最初にジエンドクラスに至るのは俺かユリィか、それともミミールかな。



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