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「ユリィの試練も無事に終わったし後は、エルフの転生者の確認だけかな?」


 当然の様に、ユリィの試練は簡単に終わった。

 と言うか、1回だけだったよ。

 試練の始まりを感じ、魔域へと向かった俺とユリィの前に、何時もの漆黒の球体が現れ、やがてそれが砕け散り、例によってヤマタノオロチ・スサノオが現れた。

 だけど、こちらとしてもそれは想定済み。

 事前にユリィが用意していた全力のアイン・ソフ・オウルの一撃で、手で来た瞬間に瞬殺。

 結果、試練はそれで終了。


 そんな訳で、世界樹の花も無事に見つけたし、後はエルフの転生者の確認が出来ればOK。

 その後は、うん。レイザラムに行って、ドワーフの転生者の確認もしておこうか。


「20人くらい確認できたって聞いているけど」

「20人か、なにか一気に人数が増えてきているよね・・・・・・」


 次から次へと転生者が新たに加わるので、人数がすごい事になってきているんだけど・・・・・・。

 ついでに、俺の負担がどんどん多くなっているのは気の所為じゃない。


「と言うか、エルフの転生者については、基本、ユリィが指導しない?」

「なんで、いきなりそうなるの?」

「だって、ユリィはもうレジェンドクラスだし」

「そうだった・・・・・・」


 しかも、既に俺と同等の力を持っているからね。ぶっちゃけ、もう弟子の範疇には入らないよ。 


「そんな訳だから、ミランダと同じく、これからはユリィにも指導を手伝ってもらうよ」

「了解。確かに、私ももう指導しないといけない立場だしね」


 いや、普通はSクラスの段階で指導する側なんだけどね。まあ、うちの場合は基本仲間になったと思ったら一気にSクラスまで行ったりするからね。同じSクラス相手に指導もないから、今まで放置してきた感じになっているけど。


「でも転生者を指導するのか・・・・・・。みんなすぐに私より強くなりそう」

「さすがにそれはないと思うけど?」

「だってアベルと同じなんだよ?」

「どうしてそこで俺が出てくるのか知らないけど、それを言ってら、今のキミは俺と変わらない実力だからね」

「今はそうだけど、アベルはすぐにもっと強くなって、ジエンドクラスになるでしょ」


 いや、それはまだ判らないから・・・・・・。

 とは言えないか。もう、ジエンドクラスに至るのは確定していると思っていいからね。


「確かにそうだけど、それはキミにも言えるんだよ。世界樹の加護を受けてレジェンドクラスに至ったユリィ」


 そう。世界樹の意思によって、ジエンドクラスに至ろうかという力をもってレジェンドクラスに至ったユリィもまた、既にジエンドクラスに至るのは確定といっていい。


「・・・・・・やっぱりそうなのかな」

「間違いないと思うよ」


 と言うか、それだけじゃなくて、世界樹の意思によって、その加護を受けてレジェンドクラスに至ったユリィは国にとって最重要人物といって良い存在になっている。

 下手をすると、次期国王の座がユリィのもとに飛んできかねない。

 と言うか、確実にそういう話も既に出始めているはずだよ。


「まあ、キミの場合は王位とかの話の方が、まず問題になると思うけど」

「それについては、しっかり対策を取ってあるから大丈夫。レジェンドクラスに至るかもしれないって判った時点で、もう動いておいたから」


 成程。そっちの方はすでに手を打ってあった訳だ。うん。伊達に王族なんて面倒な地位にいる訳じゃないね。


「それなら問題なさそうだね。それじゃあ転生者の方は・・・・・・」

「1週間後くらいに対面だって」


 ああ、もう話は進んでいたんだね。

 それにしても1週間後か、微妙に時間が空くな。王人の転生者たちの修行を続けてもいいんだけど。今はあの子たちの指導は、基本リリアーナがやっているんだよね。

 リリアーナは王人の中でも特に功績の高い有名人だし、ES+ランクの実力者だから、ベルナデットちゃんたちも真剣に指導を受けているよ。

 因みに、そのリリアーナに対しては俺が指導をしていたりする。

 本人は今更って言っていたんだけど、俺からしたら、リリアーナは確実にレジェンドクラスどころか、ジエンドクラスに至ると思うんだよ。

 と言うか、初めて会った時の感想が、アレ、どうしてこの人はレジェンドクラスに至っていないの? だったんだよね。

 本人は全く気付いていないみたいだけども、王人の転生者の中で一番の才能を持っているのは、間違いなくリリアーナだよ。


「1週間後かそれまでどうしようかな」

「ここのところ忙しかったし、観光でもして少し休まない?」

「それは良いかも」

 

 と言うか是非ともそうしたい。いや、そうするべきだ。


「それじゃあ、まずは私の果樹園でも行かない?」

「ユリィの果樹園?」

「そう。きっと驚くよ」


 果樹園で何に驚くと言うのだろうか?

 でも、そう言われると興味が湧く。


「それじゃあ行かせてもらおうかな」

「それじゃあ早速案内するね」


 そう言うと、ユリィか俺の手を掴んで転移する。

 転移先は、当然だけどもユリィの果樹園。なんだけども、ここが果樹園?

 目の前には、高さ500メートルはある、幹の太さも直径50メートルはあるんじゃないかと言う巨木が、数百本と佇んでいるんだけど・・・・・・。

 この巨木が果樹なのかな


「これはスゴイね。いったい何の樹なのかな?」

「世界樹よ」


 はい?


「正確には世界樹の孫やひ孫の樹。世界樹の子樹は知っているでしょ。その子樹の更に子供の樹よ」 

「なんともまあ・・・・・・」


 これは確かに驚いたよ。驚くなっていう方がムリだよ。


「子樹とは違って、孫以降となる樹は聖樹との繋がりは持っていないの、だけど、特別な気である事は変わりないわ。だからこそ、こうしてしっかり管理しているんだけど」


 まあ、エルフにとって何よりも神聖や存在の血を引く樹な訳だしね。


「そしてこの木も、世界樹と同じように年に1度、花をさせて実をみのらすの」

「成程それで果樹園」

「そういう事。世界樹の実とは流石に比べられないけど、ここで採れるユグドラシルの実も本当に美味しいよ」

「だろうね」


 ユグドラシルの実か、まあ世界樹に連なる樹から採れる実なのだから、エルフの国の国名を冠していておかしくないよ。と言うか、これまでに何回か来ているのに、コレの事を全く知らなかった俺がマヌケすぎるよ。


「因みに、1つ1000万リーゼだよ」


 果実ひとつで1億円ね。まあ、そのくらいするだろうよ。世界樹と同じように、ひとつしか実を付けないのなら、ここで採れるのは樹の本数と同じだけになる。

 ここと同じような果樹園が他にもいくつかあるんだろうけど、それでも採れる実の数は限りがあるのだから、値段が高くなるのも当然だよ。

 あと、間違いなくその値段に見合う味なのだしね。

 それと、どうやら此処には600本の世界樹の孫の樹が植えられている様なので、実も600個収穫できるとなると、此処の収益は年間60億リーゼとなる。

 10億は諸経費とかにかかるとしても、残りの50億はそのままユリィの手取りになるのだから、うん。この果樹園があるだけでユリィは一生安泰だね。


「因みに、此処に連れて来たと言う事はその実は」

「勿論あるよ」

「何個までなら購入できるかな?」

「10個までなら良いよ」

「それじゃあ、10個買うよ」

「毎度ありがとうございます」


 買うのは初めてだけどね。

 仲間なのに普通にお金を払って買うのかって? 当然だよ。その辺りはシッカリしておかないとね。


「まあ、私たちが結婚すれば、此処もアベルのモノになるんだけど」

「イヤイヤ、結婚してもユリィのモノでしょ」


 なにか爆弾を放り込まれた気がするよ。


「この身はどう食べるのが一番美味しいのかな?」

「凍る寸前まで冷やして食べるのが、私たちは一番美味しいと思うけど、アベルならこれを使って美味しいスイーツもつくれるかも」


 成程。エルフは冷やしてそのまま食べるのが好きなのか。

 でも、たしかにこの実、スイーツの材料にもってこいな気がするんだよ。

 パッと思い浮かぶのはまずシャーベット。それにパイにしてもよさそう。苺の代わりにショートケーキに載せてもよさそうだけど、それよりもひと手間加えた方が美味しそうな気がするんだよね。


「そんなに期待されても、美味しく出来るか判らないけど、とりあえず、エルフの転生者の歓迎メニューとして考えてみようかな」


 しばらくは、なんちゃってパティシエでもしてみるかね。

 まあ、息抜きにはちょうど良いかな。


「うん。楽しみ。それと、試作品とかでも出来たら、私に味見させてね」

「はいはい。判りましたよお姫様。その代わり、手伝ってもらうから」


 1人でやるより、ユリィも一緒の方が楽しいし、アイデアも浮かびやすいからね。 

 エルフを唸られる一品が出来ると良いんだけど。


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